訪問インタビュー調査報告
訪問日時 平成17年10月26日(水)9:00~11:00
場 所 株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション 京都本社 応対者 研究開発センター 第三開発部
1. 燃料電池に関する取り組み状況等の概要
① 株式会社ジーエス・ユアサは2004 年4月に日本電池とユアサコーポレーションが統 合し,発足した。
② 燃料電池に関する取り組みについては,旧日本電池においては,アルカリ型 FC から 研究開発をスタートし,PEFC に関してはシステムそのものよりも電極の性能向上の ための要素技術開発に注力してきた。
③ 旧ユアサコーポレーションでは,DMFC の研究開発に取組んでおり,とくに DMFC をいかに商品化していくかというシステムに注力して開発を行っていた。
④ 統合した現在は,日本電池とユアサの両メンバーとも,第三開発部では,一つの部署 に集結して研究・開発を行っている。第三開発部はバッテリーの将来技術の開発や DMFC,PEFC,電池の管理システムなどの研究開発を担当している。
⑤ PEFC に関しては,現在電極の性能向上技術の開発に注力している。コストや耐久性 等の解決すべき課題が多く,そうした問題が解決するまでは,PEFC の製品化は難し いと考えている。それには何らかのブレークスルーが必要と考えている。開発中の電 極技術は,主に白金担持量の低減を狙ったものであり,用途を限定したものではない。
⑥ 基本的に社内では,MEAの開発に注力しているが,これだけでは評価が出来ないため,
スタックを組んで実証を行っている。例えば,平成12年度から16年度まで,NEDO のプロジェクトに参画し,開発中の電極を1kWのスタックに搭載して実証運転を行っ た。
⑦ セパレータについても,カーボンセパレータの溝の加工は自社で行っている。流路技 術についても学会発表を行っている。この技術は,例えば流路を2つに分けて,大電 流のときは分けた流路で流して圧損を少なくし,低電流の場合は,2 本をつなげて 1 本にして流速をかせぐという技術である(ガス流路可変機能)。
2. PEFC に関する開発状況について
(1) 白金触媒低減技術
① 電極触媒の白金量を大幅に低減するための技術を開発している。目標は今の現状の白 金使用量を1/10にすることである。現在のチャンピオンデータでも2~3g/kWの白金 を必要としており,自動車用FCの目標コストである3,000~4,000円/kWのほとんど を白金代が占める状況にある。現状技術の延長線上には解決手段はないと考えており,
新たな技術を開発する必要があると考えている。
② 一般的には,カーボンに白金を担持したものを触媒メーカから購入し,高分子電解質 溶液に混ぜて製膜し電極を作成する。弊社の方法では,カーボンと高分子電解質を混 合して製膜しておき,そこに白金を担持する方法である。
③ 従来の方法では,反応に寄与しない部分にも触媒が付いてしまうが,この方法では電 解質の反応に寄与するクラスター部分にのみ選択的に触媒が担持されるため,白金量 を低減させることができるという利点がある。
④ 具体的には,電解質のスルホン酸基にイオン交換によって白金のある錯体(アンミン 錯体)の陽イオンを付加しておく。この錯体は電解質の骨格部分にはまったく付かな いものである。製膜後,水素還元を行うことによってカーボン担体界面に選択的に白 金析出させる。
⑤ この技術により白金使用量は,初期性能が同等のものに対して大幅に低減できている。
⑥ この技術により担持した白金触媒は,加速試験や連続試験等の結果をみると,凝集が 非常に制御されていて,触媒の活性の低下が他社製に比べて非常に遅く,耐久性能が 高いという結果が得られている。例えば,活性な表面積の維持率が,他社製では60~
70%であるものが当社のものは90%程度になっている。
⑦ 白金の粒子サイズを小さくして表面積を上げたり,カーボン担体に対する高分子電解 質の被覆率を高めるなど,他の技術と組み合わせて,さらに白金使用量を低減すべく,
現在検討を行っている。一般に白金粒子を小さくすると凝集しやすくなるが,当社の 技術ではクラスターに白金が包含されているため,凝集が進みにくいという特長があ る。
⑧ ルテニウムの溶解の問題に対してもこの技術の活用によりいいデータが得られてい る。他社ではルテニウムが溶出するような条件で運転しても触媒構造の変化がなく,
対CO被毒性能が長時間維持されることを確認している。
⑨ この白金触媒量を大幅に減らす技術は,コストのみならず耐久性能にも寄与すると感 じている。FCV用のみならず耐久性能が重視される定置用でも非常に有効な技術であ ると考えている。
⑩ 白金量を減らすとリサイクルでの回収が困難になるという課題については,FCが大量 に普及する頃には,必ずそうした技術が確立できると考えている。
(2) その他
① 現在のPEFCの課題としては,触媒の凝集やカソードにおける白金の活性な表面積の 低減,アノードのルテニウムの溶出による対 CO被毒性能の低下などがある。さらに フラッティングの問題や電極内の高分子電解質の劣化もある。
② 現在,定置用では過飽和にしないと膜の劣化が抑制できない。一方でフラッティング もおきるので,非常にバランスをとるのが難しい。理想的には相対湿度 70~100%の 間で稼動できるようになることが望まれる。
3. DMFC に関する研究・開発状況について
① DMFCに関しては,ユーザー限定で商品の販売を行っている。2005 年9月の甲府で のIFCWでも1kW級と100Wの可搬型電源を製品として展示した。
② 1kW 級システムについては,現在三重県で温室栽培用途として実証運転を行ってい る。冬季の日照不足を解消するため,夜明け前に燃料電池の発電電力で照明を点灯さ せ,発生するCO2をイチゴ等の発育の促進に活用し,熱は温室内の温度低下防止に利 用するというものである。運転温度は60~70℃である。
③ 今の触媒を使っている限り副生成物として両極にホルムアルデヒドが必ず出る。ア ノード側では,現在は燃料の利用率が 100%ではないためリサイクルする過程で生成 されたアルデヒドやギ酸が酸化され,燃料中ではある濃度レベルで平衡に達する。大 きいシステムではアノード側で反応に水が必要なため,カソードからの生成水を回収 する際にホルムアルデヒドやギ酸も一緒にアノードに返すような方法を考えている。
大型のDMFCであれば,吸着塔によって回収することも可能である。
④ 投入するメタノールは,体積を抑えるためには 100%が好ましいが,危険物の指定を 受ける。現在は規制のかからない54%のものをリザーバータンクに蓄えている。セル スタックに投入されるのは,大体3%に希釈されたメタノール水溶液である。
⑤ メタノールのクロスオーバーは運転方法によって多少は改善される。効率を上げるた めには,アノードでのメタノールに対する活性が低いのが最大の課題である。
4. FCV 用, HEV 用二次電池に関する研究・開発状況について
① FCV用,HEV用として全ての二次電池の開発に携わっている。バッテリーの専業メー カとして全方位であらゆるメーカに提供するスタンスである。
② 実車への搭載については,ニッケル水素電池はないが,リチウムイオン電池について は,三菱ふそうのシリーズハイブリッドバスに搭載されている。2002年サッカーW杯 の送迎用に使われ,その後遠州鉄道の路線バスとして運行されている。現在まで何の 問題もないとの評価である。鉛酸電池ではマイルドハイブリッド用途としてトヨタク ラウンに搭載された実績がある。
③ ニッケル水素電池とリチウムイオン電池では,性能とコストの関係ですみわけが生じ ると考えている。HEVが普及した際には,コンパクトカーではコストが重要視される のでニッケル水素電池,SUVやピックアップなど高付加価値車ではコストアップ分を 吸収できるのでリチウムイオン電池が搭載されると考えられる。
④ 現状でニッケル水素の出力密度は1,400W/kg,リチウムイオンでは最大3,000W/kgに 達する。しかし,生産上リチウムが水分を嫌うためドライルームにするための設備を 必要とするため高コストとなる。さらにリチウムイオン電池は水溶液を使っている鉛 酸やニッケル水素に比べて伝導度が一桁小さく,その分を電極を薄くして面積を大き くすることでカバーしているが,Wh 当りの電極面積が大きくなるため加工費が高く なる。そのため,Wh 当りの究極の価格はリチウムイオンの方が若干高くなると予想 される。
⑤ 三菱ふそうのHEVに搭載のリチウムイオン電池の耐久性は,推定では5 年以上もつ と考えているが,数が出ていないため現状では判断できていない状況である。
⑥ カリフォルニアのZEV規制で要求されているバッテリーの耐久性の15 年15 マイル は使い方次第と考えられるが,まだ保証できると言い切るのは難しい状態である。