訪問インタビュー調査報告
訪問日時 平成17年10月26日(水)14:30~16:30 場 所 東レ株式会社 機能材料研究所
応対者 機能材料研究所
1. 東レの研究開発戦略
① 先端材料による事業拡大を目指し,先端材料を意識した研究開発を行っている。
② 研究本部は,技術センターの中にある。研究本部で研究を推進し,研究から事業に至 るまでの開発の推進や事業に向けた様々な取り組みを推進する部署が技術センター である。技術センターは本社直轄で,所長は副社長である。
③ 東レでは,携帯機器用を中心としたDMFC用の炭化水素系電解質膜やMEAの研究開 発をしており,自動車用への展開も図っている。これらは研究本部の機能材料研究所 で担当している。GDL については,複合材料事業本部のコンポジット事業部ですで に事業として展開している。
2. 東レにおける燃料電池への取り組み
(1) 全般
① 電極基材(ガス拡散層)と,携帯機器用DMFC,自動車用PEFCの電解質膜,MEA について検討を行っている。
② DMFCについては,携帯モバイル機器のエネルギー容量不足を補うため,またリチウ ムイオン電池に対する駆動時間や充電時間といった不満解消のため,さらに新たな電 源ニーズを担うという位置づけで開発を進めている。
③ 自動車用に関しては,炭化水素系電解質膜の研究を平成 17 年度からの NEDO プロ ジェクト研究に参画して行っている。
(2) DMFCへの取り組み状況
① MCO(メタノールクロスオーバー)の低減をさせようとすると,従来のフッ素系電解
質膜に比べて触媒と膜との界面接合がうまくいかないという課題がある。結果的に,
良い膜ができても発電性能が乏しくなってしまうようなことがあるため,膜だけでな
(3) NEDOプロジェクトによるDMFC研究について
① 平成13年度から平成16年度までNEDOプロジェクトで高効率DMFCの研究開発を 行った。
② 当プロジェクトは平成16年度で終了し,平成17年度はまた新しい委託を受けて検討 を行う。
1) 電解質膜
① 従来のフッ素系電解質膜のメタノール透過機構を解析するため計算化学を活用し,メ タノール透過のコンピュータシミュレーションを行い,クラスター領域におけるメタ ノール透過量が最も多いということがわかった。また,フッ素系電解質膜では,クラ スターのサイズを小さくすると MCOが低減するが,伝導度も低下するというトレー ドオフの現象をコンピュータシミュレーションにより確認した。
② コンピュータシミュレーション技術を活かして,新たな電解質膜の設計を行い,プロ トン伝導度が従来のフッ素系電解質膜比1.0で,MCOだけを0.1以下に低減した炭化 水素系の新規電解質膜を作製し,トレードオフを解消することができた。
③ 新電解質膜は,従来のフッ素系電解質膜のような疎水と親水の相分離構造ではなく,
明確に相分離構造を持たないポリマー構造になっている。これが,プロトン伝導を維 持し,MCOを低減できた要因と考えている。
2) MEA
① 新規電解質膜のMEA化については,伝導度が同じ膜であれば,出力的にも従来のフッ 素系電解質膜と同等以上のMEA化手法を開発した。
② 新規膜を適用したMEA性能は,MCOを低減させた上で,従来のフッ素系電解質膜の 出力性能に比べて,2割~2倍くらいの出力アップを達成した。
③ 新規膜を用いたMEA と従来のフッ素系電解質膜を用いたMEAの温度とメタノール 濃度と出力の関係を比較したところ,温度40℃,MeOH濃度10%でフッ素系電解質 膜と同等, 60℃においては,濃度10%と30%でフッ素系電解質膜よりも高い出力を 得た。これにより目標レベルの効率に達することが可能と考えられる。
④ 耐久性に関しても,60℃,濃度3%,250mAでの500時間運転した結果であるが,フッ 素系電解質膜の出力低下率に比べて,新規膜では大幅に向上した。
3) 触媒
(4) DMFCの駆動試験
① 2年程前に携帯電話とPDA の駆動実験を行った。PDA程度になるとポンプとファン が必要であったが,全てセル出力で賄い運転を行った。
② 昨年のナノテクフェアにDMFCでビデオを駆動させた。また,ノートパソコンの駆動 も行っている。
(5) 自動車用電解質膜の開発について
① 従来,DMFC主体で研究を進めてきたが,今後,この技術を自動車用の電解質膜の研 究開発に活かしていく。
② 平成17年度から5年間の新たなNEDOプロジェクトでは,とくに自動車用を目標に した炭化水素系の電解質膜を中心に検討を行う。具体的には,耐久性,高温電解質と いったテーマが中心になっていくと考えている。
③ 炭化水素はいろいろな種類,バリエーションがあり,設計の自由度が数限りなくある。
当社のナノ技術を活かし,自動車用の炭化水素系の膜を力強くプッシュしていく。
3. 国プロへの参画状況について
① NEDOの「固体高分子形燃料電池システム技術開発事業 固体高分子形燃料電池要素 技術開発等事業 高効率ダイレクトメタノール形燃料電池の研究開発」に参画した。
平成13年から平成16年までの4年間である。具体的な研究内容は,MCOの低い電 解質膜の開発および高活性アノード触媒,新規構造MEA開発による高効率化である。
② 平成17年度から3年間の計画で,「固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発事業」
の「要素技術開発 高性能炭化水素系電解質膜の研究開発」と「実用化技術開発 炭 化水素系電解質膜およびMEAの量産化技術開発」に参画する。
以上