XV. 岩谷産業株式会社殿訪問インタビュー調査報告
1. 事業概要
(1) わが国の水素市場の状況
① わが国において産業用として出荷される水素の量は,全生産量の約1%程度である(図 XV-1)。日本では,製油所等で自家消費している分の方が圧倒的に多い。
② 当社グループは,産業用水素販売のトップシェアである約34%を占めている。
③ 近年では,景気の影響や水素を大量に消費する企業においてメタノール改質などで水 素を自前で作るといったオンサイト化の動きもあり,出荷量は減少傾向にある(図 XV-1)。
④ 日本全体で圧縮水素の工場は自家消費を除くと約40箇所ある(図XV-2)。工業地帯と 隣接してほぼ海岸沿いに多く点在している。全体のうちソーダ工場からの副生水素が 半分程度であり,その他は石油関係の改質やCOG,メタノール改質などである。
⑤ 液体水素の工場は,産業用のコマーシャルベースで今あるのが岩谷瓦斯(尼崎市)と 太平洋液化水素(大分市)の2ヶ所だけである。他には,JHFCのデモプラント(君 津市)と,来年春に当社と関西電力の合弁事業として立ち上がるハイドロエッジ(堺 市)がある。(図XV-3)
図 XV-2 日本の圧縮水素プラント(産業用)
(2) 岩谷産業の事業概要
① 当社の事業には大きく分けて総合エネルギー事業と産業ガス事業がある。
② 総合エネルギー事業では,LPガスを中東から輸入して各工場まで運び,シリンダーに 詰めて出荷している。小売りも行っている。全体の4割程度はLPGを海外から直接輸 入しているが,残りは国内の石油会社から購入している。近年では一部 LNG を扱っ ている。これは,電力会社からの購入が多い。また,最近は DME車向けの DME供 給や風力発電などにも取り組んでいる。
③ 水素ビジネスは産業ガス事業として展開している。1941年から余剰水素の販売を開始 した。それ以降,水素の大量輸送方法を開発したり,1971年にはわが国で初めて尼崎 に液体水素製造プラントを建設したりして,ロケットに用いる液体水素を供給するな どを行ってきた。WE-NETでは,大阪の水素ステーションや,横浜市鶴見へ初のオフ サイトステーション建設に参画した。JHFCプロジェクトへは,有明の水素ステーショ ンでは昭和シェル石油と合同で,また鶴見ステーションで鶴見曹達と共同で参画して いる。
(3) ハイドロエッジプロジェクトについて
① 大阪地域の液体水素・空気分離ガス製造会社「株式会社ハイドロエッジ」を関西電力 のグループ会社である堺LNGと岩谷産業との合弁会社として設立した(2004年4月 1日)。2006年4月から工場が稼働する予定である。
② 隣接する LNG 基地の冷熱を利用した空気分離装置があり,そこで製造した液体窒素 の冷熱を利用して,天然ガスから改質して作った水素を液化する。
③ 関西を中心に,半導体や水素添加を行う化学工場,光ファイバーを扱う電機メーカな どに液体水素で輸送する予定である。
④ 将来の LNG を使う大規模な水素供給方式の一つのビジネスモデルがハイドロエッジ である。普通に液体水素を作るよりは液体窒素の冷熱を使う分効率面のメリットはあ るが,事業となると,経済性も加味してシステムを設計することになる。