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FJCCIA 発足と ASEAN 事務総長対話の経緯

ドキュメント内 助川, 成也 (ページ 112-119)

第 5章 AFrA の制度改善と産業界の関与

第 1 節 FJCCIA 発足と ASEAN 事務総長対話の経緯

前章では、 AFTAの関税削減・撤廃面で後発加盟国の取り組みを検討するとともに、先 発・後発加盟国双方において、日系企業のAFTAの利用状況、輸出面でのFTA利用データ

からみたAFTA利用状況、そして残された関税面以外での課題への対応を考察したロ 本章では、 ASEANがAFTAやASEAN+lFTAの更なる利用拡大・活性化を目指し、

制度や規則の改善や見直しを行う際に、民間部門、特に ASEAN大に生産ネットワークを 張り巡らせる「ASEAN最大のステークホルダー」(スリン・ピッサワン) 1である日系産業 界がどのように関与してきたか考察するロ具体的には、 2008年以降、 ASEAN事務総長の 要請で組織化された「ASEAN日本人商工会議所連合会(Federationof Japanese Chambers  of Commerce and Industry in ASEAN : F JCCIA) JとASEAN事務総長との定期対話を取

り上げ、日本企業の AFTAを中心とした域内経済協力政策や制度構築・改善への関与の実 態を考察するロ

1.  FJCCIAの機能と役割

2008年に設立された FJCCIAは、 ASEAN加盟国に所在する日本人商工会議所の連合会 である。当時、日本商工会議所に登録されていた在ASEAN日本人商工会議所は、 7カ国8 会議所2で会員数は4261社 3で、あった。特に、 FJCCIAの特徴は、同連合会参加企業は日 本企業4である一方で、全てがASEAN法人ということである。 ASEANとして域外国の産 業界と対話を行っているのは、米国、 E Uなどがあるに米国の団体は 1984年に設立され

ASEANの日本商工会関係機関との初めての対話での発言(2008910

2当時、カンボジア、ラオス等にも日本人商工会的な組織が存在した。 1992年に十数社で発足したカン ボジア日本商工会は、当初、治安についての情報交換や親睦が中心だ、った。ラオスでは、ピエンチャン

日本人商工会議所が200910月に設立された。

20071214日時点。

4会員資格は各々の商工会議所によって異なるが、日本人の在籍を資格条件にしている会議所も多い。そ の場合、企業の出自の国籍に関わらず、会員となっている企業もある。

5米国はUS‑ASEANビジネス評議会、 EUEU‑ASEANビジネス評議会。

ているものの、主に米国本国企業がメンバーとなり活動をしている。後者は EU本国の多 国籍企業の他に、在ASEANのEU加盟国の商工会議所会員も参加可能であるロしかし、

その活動の歴史はFJCCIAよりも浅い。非公式に活動が開始されたのは2011年、規約を設 置するなど正式に設立されたのは2014年になってからのことであるロ

日本も本社が参加する形で、ASEAN日本経済協議会(ASEAN・JapanBusiness Council)  が設置されているロこれは日本および東京商工会議所、日本経済団体連合会とが設立母体と なり、その設立は 1980年に遡る。会長は発足以来、日本商工会議所会頭が務めており、そ のメンバー30人は、設立母体となった機関の役員を務めるなど主要大企業である口一方、

FJCCIAはあくまでも在ASEAN日本人商工会議所を組織化したものであり、その会員企 業は全てASEAN法人であることから、ASEANの活性化や競争力強化の観点からASEAN 事務局に意見具申が可能である。また、ASEAN法人であるため、日本とは関係のない事項、

例えば日本以外のASEAN+lFTAの制度改善についても、改善提案等声をあげることが出 来るなど、特異な組織である白

2.  産業界の積極関与を求めるASEAN

AFTAについて、 ASEANは前章でも見た通り、同制度の積極的な活用を通じた企業活 動の活性化および ASEAN自体の競争力強化を目的に、利用手続き緩和などを継続的に行 ってきた白例えば、前章で AFTAの自己証明制度に向けた取り組みを概観したが、同制度 ではC/0発給手続きの簡素化に加えて、特に近隣国でのAFTA利用時に発生する「輸入国 側通関時に C/0発行・提出が間に合わない」 6という問題の解決も意図したもので、あった口

しかし、自己証明制度の構築に際し、加盟国の思惑が交錯、正式導入に時間を要した。

そこでASEANは調整に時間を要する自己証明制度と切り分け、当該問題の解決を図る 制度改革を実行した口具体的には、これまで、ASEANにおいて C/0は輸出時点または申告 した出荷日から 3日以内に申請・発給することになっていたが、 2014年 1月に OCPを改 正し、出荷に先立つてフォーム Dを発給出来る船積み前発給を認めることで問題解決を図 ったにここでみられたように、 ASEANは実際にAFTAを利用する民間企業の声に耳を傾

6ヤマハ(タイ)へのヒアリング(2011527日)に基づく。

ASEAN物品貿易協定(ATIGA) Annex 8の運用上の証明手続き(OCP)では、原産地証明書の発給につ いてRule10・2で、「Inexceptional cases where a Certicateof Origin (Form D) has not been issued at  the time of exportation or no later than three (3) days omthe declared shipment dateJとされてし、

け、制度改善を図ってきた。

ASEANはこれまでも東アジアで自らの中心性の維持・向上に注力すべく、自らを企業 の取引を阻害しない最も自由度の高い地域であることを常に追い求めてきた。理想、とする 地域を実現すべく、 ASEANは産業界に積極的関与を求め、内外の産業界との対話を通じ て、その要望や課題を吸い上げ、改善に繋げてきたD ASEANで合意し導入した規則や制 度であっても、それに甘んじることなく産業界の声を踏まえて不断に改善作業を行ってき たことは、 ASEAN自体への信頼感向上に繋がっているD ASEANが不断の改良・改善作 業を通じて形成してきた規則や制度は、「ASEANモデル」として、 ASEANが絡む他の東 アジア地域経済圏に伝播することも少なくない(表5‑1)口またこのことは、 ASEAN企 業の域外でのビジネス展開をより容易化するのみならず、より広範な経済圏構築にも貢献 出来るロ

表5‑1 AFTAにおけるこれまでの手続きにかかる条件緩和など 改定(導入)

種 類 概 要

年月

2003年9月 利用対象範囲

仲介貿易(リ・インボイス)での利用を容認(AFTA評議会)

の拡大

2003年9月 利用対象範囲 「Backto Back原産地証明書』の導入(域内国でAFTA特恵対象 の拡大 品目を在庫として持ち、必要な時に必要なだけ特恵関税で輸出)

関税番号の統 関税番号をASN統一関税品目表(AHTN)に移行 2004年4月

一化 (2003年8月のASN財務相会議で「AHTN実施に関わる議定書」

に署名)

2005年4月 原産地規則の 「部分累積jを導入(対象はRVC20%以上40%未満の品目)

救済規程導入 (2005年4月のASEAN経済相会議で部分累積の対象範囲を決定)

2008SJ:! 原産地規則の 一般原則を「累積付加価値率(RVC)40%以上Jから、「RVCJと「関 緩和 税番号変更基準(CTC)』の選択性に変更

2008年8月 原産地規則の デミニミス・ルール(僅少の非原産材料に関する規則)を導入 救済規程導入 (FOB価格の10%以下であれば、関税番号変更を求めず)。

発給手続き簡 「自己証明制度』の導入を目指し、第1パイロットプロジェクト開始 2010年11

素化 (シンガポール、マレーシア、ブルネイ)

幽 ・....................0..  ・0 一・. .m.・.一 momo............

2014年1月 原産地証明書 FOB価格記載要件の緩和

の簡素化 (原産性審査でRVCを使わない場合、FOB価格記載義務を免除 2014年1月 発給手続き条

原産地証明書の船積み前発給の容認(船積み3目前から)

件の緩和

2014年1月 発給手続き簡 「自己証明制度Jの導入を目指し、第2パイロットプロジェクト開始 素化 (インドネシア、フィリピン、ラオス)

出所)各種ASEAN事務局資料より作成。

たが、 20141月の改正OCPでは、「Subjectto the submission of all documentary requirements, the  Certificate of Origin (Form D) shall be issued by the issuing authorities of the exporting Member State  prior to or at the time of shipment or soon thereafter but should not be more than three (3) days from  the declared shipment dateJと改正された。

その取り組みの代表例が、 2008年から始まったASEAN事務総長と FJCCIAとの対話 である。 ASEANは1967年8月8日にASEAN設立宣言、いわゆる「バンコク宣言」によ

り設立されたが、その取り組みを支える事務局の設置は 1976年 2月の ASEAN外相会議 まで待たねばならないD 初代事務総長にはインドネシアからダルソノ元シリワンギ師団司 令官が就いた口事務総長は加盟国のアルファベット順による持ち回りである。設置当初、事 務総長の任期は2年であったが、現在は5年に延ばされている。

2008年、ASEANは第 12代事務総長にタイ出身のスリン・ピッサワン元外相を迎えた口 その前年2007年 11月に、 ASEAN首脳会議において、「ASEAN憲章」が署名されるなど 折しもASEANに注目が集まった時期であるロ ASEAN憲章では、 ASEANは政府問機関と

して法人格を持つ(第3条)ことが示された。また、 ASEAN加盟各国はASEAN事務局が あるインドネシア・ジャカルタに大使級の常設代表部を置き、常設代表委員会を構成(第 12 条)するなど、 ASEANの機能強化が図られていた。

スリン事務総長が就任した2008年、同氏がタイ出身ということもあり、在タイ日系産業 界は日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所が主導する形で、次期同事務総長と接触、

日系産業界との対話実現に向けて調整を図った口その結果、実現した最初の対話は2008年 9月にバンコクで開催されたが、それに先立つ2008年 1月に作成された内部文書8では、

意見交換会開催の目的として、在ASEAN日系企業が抱える ASEAN経済統合上の課題や 問題点、経済統合の進捗に関する産業界としての評価などについて、スリン事務総長と ASEANに展開する日系産業界のトップ(日系商工会議所会頭又は副会頭)との聞において 忌憧のない意見交換を行うことにより、ASEANの経済統合の着実な推進とその日系産業界 の事業展開との調和を可能な限り追求することJが掲げられている。

2008年9月にバンコクで行われた初めての対話では、 ASEAN各国に所在する日本商工 会関係機関が初めて一堂に会し、各地の日系企業を取り巻くビジネス環境、課題、改善要望 等を各々スリン事務総長に紹介したロこれに対し、スリン事務総長は、「日本はASEAN地 域における最大のステークホルダーロ今後、日本・ASEAN相互がウィン・ウィンの結果が 出せるよう、本対話を継続し、相互に協力していきたいjと語った上で、 ASEAN単位で日 本人商工会議所連合会のようなものを立ち上げ、ASEAN事務局に要望書を提出することを

8ジェトロバンコク事務所作成内部文書「ASEAN事務局長と在ASEAN日系産業界との意見交換会の創 設について」。

ドキュメント内 助川, 成也 (ページ 112-119)