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AFTA の原産地規則とその改善

ドキュメント内 助川, 成也 (ページ 71-79)

1.  AFTAにおける原産地規則

ASEANは、「関税撤廃だけでは、聞かれた市場は創出されない」 24として、関税面以外 でも制度や規則改善を通じ、域内貿易拡大・円滑化を推進する姿勢を示している。域内市場 の統合を実現するには、域内関税の撤廃もさることながら、 AFTA利用手続きの円滑化、輸 出入手続きの簡素化、非関税障壁の削減等が重要で、ある口例えば、原産地証明書発給手続き や税関手続きの簡素化、シングル・ウインドウ化、輸入制限措置の削減・撤廃等がある。

ASEANの域内取引でAFTA特恵関税の適用を受けるには、当該製品がAFTAの下での ASEAN原産品であることを証明する必要がある。 ASEAN原産品かどうかを判定する規則 が原産地規則である。原産地規則を満たした品目は ASEAN原産品とよばれ、原産地証明 書フォームDが発給されるD 輸出国側で発給されたフォームDを輸入者側が入手し、輸入 通関時に提示することで、AFTA特恵関税が付与される。原産地規則は域内貿易円滑化の鍵 であり、同規則の恋意的な運用は予見可能性の低下を招き、自由貿易を阻害する非関税障壁 になる特性を持っている口

AFTAの原産地規則は1993年の発効以降、ASEAN累積付加価値基準(ASEANRegional  Value Content : RVC) 40%以上(FOBベース/本船甲板渡し条件)が用いられてきた。

もともと 1977年のPTAではASEANコンテントについてインドネシアが60%以上を、そ れ以外の加盟国は 50%以上を、それぞれ求めていた 25。しかし、 1987年の「ASEANの PTA特恵関税拡大の改善に関する議定書」で、 5年間に限り条件に応じて各々42%、35%

に削減されたa AFTA発効後、 1995年に署名された「ASEANのPTA協定における修正議 定書」では、 ASEANコンテントは加盟国共通で 40%に修正された。インドネシアとそれ 以外の加盟国との聞をとった形になったロ

一方、他の域内経済協力措置についてみると、 1988年のBBCスキームで規定されてい るASEANコンテントはPTAに準じることになっていた。 AFTA発効後の 1996年に締結 された「ASEAN産業協力に関する基本協定」で稼働したAICOでは、 AFTA‑CEPT協定の

24 ASEAN Secretariat (2011), p. 10. 

25 PTA協定ではASEAN原産比率について、 FOB価格から非原産材料(ASEAN域外産材料及び原産が 不明な材料)を除く形で算出する間接方式(控除方式)で規定されている。

原産地規則がそのまま条件となっている。

このようにASEANの域内経済協力措置では、特恵関税付与条件となる原産地規則には ASEANコンテントが用いられてきたが、2000年代に入り、その見直しがえ且上にのぼったD

2001年11月に開催された第7回ASEAN首脳会議で「ASEAN統合ロードマップ(Roadmap for the Integration of ASEAN (RIA) J策定の必要性とその作業を開始するよう関係閣僚と 高級官僚に指示することを首脳間で合意したことを受けて、翌 2002年の AFTA評議会で は、 RIAの物品貿易分野で、①後発加盟国が関税削減対象品目(IL)内で関税率 0〜5%の 品目数を最大化する基準(ベンチマーク)、②後発加盟各国のAFTA実現期限の加速化、③ 輸入関税撤廃のスケジュール、④非関税障壁の漸進的撤廃、に加えて、⑤CEPT原産地規則 の見直し、について合意された26ロ以降、 AFTAを用いた域内貿易を促進すべく、原産地規 則の改良が重ねられていくことになった口

2.  AFTA利用拡大に向けた改善への取り組み

2003年 9月に開催した第 17回AFTA評議会では、 AFTA利用の拡大に向け原産地規則 の強化策について話し合われた。ここでは、 ASEANコンテントの計算方法を明確に定義す るとともに、 ASEAN由来となるコスト決定の原則とガイドラインについて盛り込まれた

「改定 CEPT原産地規則jを承認した。同様に、「運用上の証明手続き」(Operational  Certification Procedures : OCP)についても改定した。

改定OCPには、多国籍企業がAFTAをより利用出来るよう、第三国が取引に介在する 仲介貿易、いわゆるリ・インボイスについても明確にAFTA利用対象としたロ当時、ASEAN では、商流にシンガポールや日本など第三国の企業やグループ。内地域統括拠点を経由した 取引が増えつつあり、それら取引がAFTAの適用対象になるのかどうか明確で、はなかったロ ジェトロ調査27では、 2007年時点で在ASEAN日系製造企業570社のうち、アジア域内向 け輸出で仲介貿易を利用している企業は 93社、利用比率は 16.0%であったD AFTAを手始 めに、アジアで締結される FTAではリ・インボイス利用を明示的に容認するようになると、

その利用も増加していった0 2013年の向調査ではその比率は33.7%と、 3社に 1社が利用 するまでになっている。ASEANはAFTAにおいてリ・インボイスの利用を容認するなど、

26 ASEAN Secretariat (2002). 

27ジェトロ(2007,2013)『在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査』。

より多様な取引をも AFTAの対象にし、域内貿易活性化を図る方向に舵を切った(図 3‑

4口)

図3‑4 在ASEAN日系企業(製造業)の仲介貿易利用割合(2007年/2013年)

50 {%)  45.8  46.6 

2007年 ロ2013

40  34.1  33.3  33.1 

「寸 30.0  30 

20  10 

ASEA N 計 タイ マ レ ー シ ア シ ン ガ ポ ー ル イ ン ド ネ シ ア フ ィ リ ピ ン ベトナム

出所)在アジア・オセアニア日系企業実態調査(2007年度調査・2013年度調査)を もとに筆者作成。

2007年調査は製造業のみ。対象国はASSEAN6カ国。比較のため2013年調査も それらを抽出した。

リ・インボイスと軌をーにして導入したのが、連続する原産地証明書、いわゆる Backto  Back原産地証明書である口前述のリ・インボイスを用いた取引は、物流(貨物)は原産地 証明書を発給した輸出国から特恵関税を享受する輸入国へと直送し、商流(インボイス)の み第三国経由となるが、 Backto Backの場合、取引形態は商流、物流ともに第三国経由で 行われる。例えば、自動車部品をフィリピンから ASEAN域内にAFTAを使って輸出する 場合、当該製品を一旦夕イの物流倉庫に保管し、 ASEAN各国の顧客の発注に応じて在庫を 切り分けて輸出する際に、元々の生産・輸出国であるフィリピン政府発行の原産地証明書フ ォームDを基に、タイ商務省が輸出数量に応じて分割して原産地証明書(Backto Back原 産地証明書)を発行することで、各々の ASEAN輸入国側で特恵関税を付与するものであ る。

また、 ASEANで採用されている原産地規則である付加価値基準について、完成品を構 成する部品各々が ASEAN原産品か非ASEAN原産品かの判断は、各々の部品のASEAN

コンテントが関値40%を超えているか否かで判定される口同コンテントが40%以上であれ ば、ロールアップ・ルールで、その部品全体が ASEAN原産と認定される 280 一方、 40%未

28輸出産品の生産に使用される原材料の中に非原産材料が使われていたとしても、当該原材料が原産品 と判断される場合、当該原材料の価額全体を原産と扱うことが出来る。

満であれば、逆にロールダウン・ルールで、非ASEAN原産品目とされていた 290 その上で ASEAN原産品とされた部品価額と国内での付加価値を合算し、完成品価額の 40%以上が ASEAN原産であれば、当該製品に対し輸出国側で原産地証明書が発行され、輸入時に AFTA特恵関税が享受出来た口

ASEANは完成品を構成する部品各々がASEANコンテント 40%未満であっても可能な 限り救済すべく、 2004年9月に開催された第 18回AFTA評議会で、部分累積を認めるこ とで合意した口これは、これまで非ASEAN原産とされてきたASEANコンテント 20%以 上40%未満の部品について、中間財価額のうちASEAN原産品のみを抽出し、付加価値に 組み入れる救済ルールで、あるD これは、より多くの品目をAFTA利用対象とすることで、

域内貿易を活性化することが狙いであった。

3.  AFTAの原産地規則の改良とその影響

ASEANがこれまで利用してきた原産地規則の付加価値基準は、為替レートや関係する 国際商品価格の変動に影響を受ける特性を持つ。例えば、為替レートや原材料費の変動、ま た特に電気製品では製品サイクルの短期化に伴う急速な価格下落によって、原産比率が変 動するリスクがある。そのため、多くの企業はこれら変動を見越して 5〜 10%程度のバッフ ァー(余裕)を確保した上で、 RVC40%を下回らないように注意を払いながら利用してい るD また、企業は同一の機能を有した製品で、あっても、各々のモデ、ル毎に原産比率管理が求 められる口原材料や部品の価格情報を含めた製造コストを常に監視するなど、モデ、ルを数多 く有する企業の場合、その管理だけで相当な負担になっていた口

ASEANは、 AFTAの利用促進を目的に、原産地規則の改善と強化を目指し、 2002年に CEPT‑AFTA原産地規則タスクフォースを設置した 300 2004年 11月に採択した「ビエン チャン行動計画」 31では、原産地規則について「WTOの原産地規則を含むその他の地域貿 易協定(RTA)のベストプラクティスを考慮し、透明性、予見可能性、標準化を強化し、代 替基準として実質的変更基準を採用することで CEPT原産地規則を継続的に強化するjこ ととした。原産地規則の見直しは、具体的には、実質的変更基準として関税番号変更基準

29輸出産品の生産に使用される原材料が非原産材料と判断された場合、たとえ当該非原産材料の中に原 産材料が含まれていたとしても、当該原産材料の価額全体を非原産として扱う。

30 ASEAN Secretariat (2002). 

31 ASEAN Secretariat (2004). 

ドキュメント内 助川, 成也 (ページ 71-79)