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目 ASEAN 連携の深化と対話の成果

ドキュメント内 助川, 成也 (ページ 128-169)

第 5章 AFrA の制度改善と産業界の関与

第 3 節 目 ASEAN 連携の深化と対話の成果

28 ASEAN日本人商工会議所連合会(2012

29筆者は2012830日に開催されたAEM‑METIに事務方として参加し、同発言を聴取した。

30日本の場合、 201759日の閣議決定を経て、 2017516日に発効した。

31経済産業省2015 1217日付プレスリリース。

1.  引き継がれる FJCCIAとASEAN事務総長との対話

2008年にスリンASEAN事務総長の誕生とともに生まれたFJCCIAとASEAN事務総 長との対話は、スリン事務総長が2012年末を以って5年間の任期を終えて退任し、替わっ て2013年に就任したベトナム出身のレ・ルオン・ミン事務総長の下でも続いた口

2014年6月にフィリピン・マニラで開催した第7回目となる対話では、FJCCIAはAEC 実現の最終ステージとなる 2014年から 2015年の2年間を対象に、優先的に取り組むべき 項目を提示したロ FJCCIAは2014〜15年にかけての具体的要望項目を、(a)2011〜13年の 要望項目の中で引き続きフォローが必要な事項、(b)2013年対話において 14年以降の新規 要望として提示した事項、(c)新たな要望事項、の 3つに分類するとともに、 2015年末の AEC創設後を見据え中長期的な取り組み事項について、(d)ポスト 2015、として再構成し

たロ

そのうち、「(a)2011〜13年の要望項目の中で引き続きフォローが必要な事項」について、

とりわけ日系企業がその進捗に高い関心を有し、ビジネス実態に促した運用改善を求めて いる事項は、①通関手続きにおける事前教示制度32の導入徹底と運用改善、②ATIGAにお ける産業界のニーズ・貿易慣行に即した自己証明制度の導入、③原産地証明書フォームの FOB価格不記載の例外なき実現、などである。特に①については、事業上の予見可能性向 上には不可欠な事項であった口

ASEANにおいてFTAを使う際に頻繁に発生する問題が、関税番号に関するものであるロ 関税番号はHSコード(商品の名称および分類についての統一システム)33とも呼ばれるが、

関税番号 6桁は基本的に世界共通で、ある。 ASEANの場合はHSコードを更に 8桁レベル まで域内で共通化するASEAN統一関税品目表(AHTN)を用いている。 HSは、技術の進 歩や新たな概念の製品の登場もあり、世界関税機構(WCO)により基本的に 5年毎に見直 しが行われるロ特に電気機械は、新たな技術や機能を取り入れた製品が次々と開発されてお り、その度ごとに、どのHSコードを付与するかなどが議論になる口実際、同一製品で、あっ

32事前教示制度は、貨物の輸入前に当該貨物の①関税分類、②原産地、③関税評価、④減免税について、

税関に照会を行い、回答を受ける制度。

33  世界税関機構(WCO)は国際貿易の円滑化に向け、各国の関税率表の品目分類等を統一するため、 HS 条約を採択、 1988年11日に発効した。 HS条約の締約国は、自国の関税率表及び統計品目表を HS 品目表に適合させる義務がある。 wco事務局によれば、世界貿易の98%超をカバー(200カ国・地域以 上が使用)し、 HS条約締約国は154 (153カ国・地域+EU)(20165 12日現在)という。

ても、 HSの改正によってHSコードが変更される事例も少なくない(表5‑4)340 また、

HSパージョンの移行に伴って、 HS番号が統合される場合もある口それら統合される複数 の品目について関税率が異なる場合、意図的に高いほうの税率に統合されるリスクもある。

ASEAN各国は 2017年以降、新たに HS2017ssを踏まえたAHTN2017を適用している。

HS2017バージョンではHS6桁ベースで233品目について改正された口

表5‑4 5年ごとの改訂でHS番号が変わった例

HS2002

HS2007 

HS2012  852812 

852812  852540 

852580  852432 

852340 

852341  850910 

850811 

850780 

850760 

また、 FTAの有無にかかわらず、輸入相手国税関によって異なる HSコードの適用を指 示される場合もあるロこれはHS8桁まで統ーしているはずのASEANでも発生するロタイ で家庭用エアコンを製造しているダイキンは、エアコン(HSコード:8415.10)を製造し、

ASEAN域内に輸出している口その際、 AFTA特恵関税を享受すべく、タイ商務省外国貿易 局に原産地証明書フォーム Dの発給を申請している口マレーシアが輸入する際はタイ側と 同じ HSコードが用いられるが 全くの同一モデルであるにも関わらずフィリピン税関で は同製品は HS8415.82、ベトナム税関では HS8415.81と判定されているといにそのた め、商務省外国貿易局に対し、仕向け地に応じHSコードを変えてフォーム Dを発給する よう毎回依頼せざるを得ないという 360

34日本ASEANセンターが201625日に実施したASEANシンポジウム「メガFTAASEAN 貿易投資環境jで、上之山陽子は「企業から見たFTA活用上の課題」と題した発表の中で、この問題を 具体的に指摘している。

35 HS2017での改正は、①社会的要請を受け番号を新設・変更、②技術革新を反映した番号の新設、③貿 易額の少ない品目番号の統廃合、によるもの。①については、国連食糧農業機関(FAO)の提案で、食糧 安全保障問題に関し途上国において重要なたんぱく源として利用されている魚及び食用の魚のくず肉

(頭や尾等)について番号を設置、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約に関し、発がん性・

生殖毒性の恐れがあること等が明らかになったマイレックス等多数の物質の番号を新設した。②につい ては、ハイブリッド自動車及び電気自動車について、個別の番号を新設、③でタイプライターの番号を廃 止した。

36ジェトロバンコク事務所および、海外産業人材育成協会バンコク事務所は、タイ商務省シーラット貿易交 渉局長の要請を受けて在タイ日系企業との対話の場を設定した。この関税番号に関する問題は、ダイキン インダストリーズ(タイ)から問題提起があったものである(201176日)。また同日別途行われた デンソーインターナショナルアジア社との面談でも、同社は中国との間で同様の問題が発生していると

した。

関税番号について、輸入税関で輸出者側が当初想定していたHSコードと異なるコード が付与されれば、場合によっては関税率自体が異なり、市場での販売価格にも影響する可能 性がある。そのリスクを予め軽減するのが事前教示制度である口事前教示制度は輸入前にカ

タログや商品情報を輸入国側税関に提供し、 HSコードを予め決定するものであるロ

ASEANはFJCCIAを中心に産業界からの強い要請もあり、加盟各国に事前教示制度の 導入を働きかけてきたロ実際の輸出入取引に影響しないような期間で関税番号が決定され る実務的な制度の導入が求められる。その結果、 2017年まで、に関税分類については、

ASEANlOカ国全てで事前教示制度が導入された口今後、 ASEANは、関税評価および原産 地認定についての事前教示制度を導入していく予定である。

(b)2013年対話において 14年以降の新規要望として提示した事項」でFJCCIAは、非 関税障壁(NTBs)の削減・撤廃に向けた取り組みの加速化の重要性を強調したD 産業界に とっての具体的障害を再特定し、それを除去する有効な措置の提示が望まれる。 FJCCIAお よびジェトロは2014年に共同で非関税障壁に関するアンケート調査37を実施、特に船積み 前検査について、その必要性を踏まえた対象品目の見直しゃ二重検査防止の徹底をASEAN 側に要望したロ

(c「)新たな要望事項」としては、 ATIGAやASEAN+lFTAの運用上の解釈の相違を是 正する取り組み強化を求めた。 FTA利用に際し、条文解釈をめぐる見解相違により、原産 地証明書の発給や輸入通関の段階で支障が出るなど様々な運用上の問題が発生している口 そのため、実態把握と個別問題に即した共通解釈設定などによる事態の改善を求めた口

また、「(d)ポスト 2015」として、 ASEANが実現した自己証明制度やC/0の簡素化など 手続き・ルールを他のASEAN+lFTAで展開・波及させることの重要性を説いた。

これに対しASEAN事務局は、「①通関手続きにおける事前教示制度の導入徹底と運用改 善」について、加盟国によって運用は異なるとした上で、 ASEAN通関手続・貿易円滑化作 業部会で事前教示結果を他国に共有する用意がある国に対し、 AHTNタスクフォースを通

じた情報共有を図るよう呼びかけていると説明した口

また、「②ATIGAにおける産業界のニーズ・貿易慣行に即した自己証明制度の導入」につ いて ASEAN事務局は、 FJCCIAからの要望を十分に考慮し、現行のパイロットプロジェ クトの評価を行うことを約束したロ「③原産地証明書フォームの FOB価格不記載の例外な

37 ASEAN日本人商工会議所連合会・ジェトロ(2014

き実現」についても、 ASEAN事務局は、 RVCで原産性審査を行う場合でも FOB価格記載 義務が撤廃出来るかについて、原産地規則専門家会議のもと議論を始めていることを紹介

した。

また、ポスト 2015に向けAFTAの取り組みをASEAN+lFTAに拡大する要望について ASEAN事務局は、 ACFTAの原産地規則について一層の自由化、貿易円滑化、また他の ASEAN+lFTAと調和した形に改訂すべく交渉していると回答したロ

2.  対話を踏まえたFJCCIA要望事項の実現状況

ASEAN経済共同体(AEC)の設立目標最終年となった2015年8月21日、 FJCCIAは マレーシア・クアラルンプールにてレ・ルオン・ミンASEAN事務総長との第 8回目とな る対話を行った。 FJCCIAからの要望に対し、 ASEAN側に腰を据えて取り組んで欲しいと の共通認識から、前年2014年の要望書は翌2015年までの2年間の要望書としていた口

そのため、 2015年にFJCCIAが提出した要望書は、 ASEAN側のこれまでの取り組みの 成果についてFJCCIAの視点から評価を行い、更に残された課題を整理したものである380 更に、同年の要望書では、 AEC発足後の 10年間、 AEC2025を見据えた中長期的課題と改 善要望も提示した 39。これは、 2014年 11月に聞かれた第 25回ASEAN首脳会議におい て、 AEC発足後 10年を見据えたビジョンの方向性が示されたことを受け、在ASEAN日 系企業の声を今後策定される AEC2025に反映させることを目的に作成された口

2015年までに8回の対話がFJCCIAとASEAN事務総長との間で行われたが、FJCCIA のAFTAにおける要望とその履行状況を評価した(表5‑5)。ここで「AFTAのスケジュー ル通りの履行J、「原産地証明書(フォームD)への FOB価格記載を廃止」、「原産地証明書 発行審査の迅速化」についての要望は概ね実現しているロ特にFOB価格記載の廃止につい て、 ASEAN事務局は、「民間産業界からの要望を受け、 2014年 1月より FOB価格記載義 務の撤廃を実現した」として、FJCCIAの要望を踏まえて実現に取り組んだとしている 400

38なお、要望書には一部、在ASEAN日系企業から新たに挙げられたビジネス改善要望も含まれた。

39 FJCCIA2015年に提示した「ポスト 2015(AEC2025)を見据えたFJCCIAの提言」においてFTA についての言及は、「広域経済連携の推進」の項で、「AECが有する高い自由化レベルを、ASEAN+lFTA および東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などのASEANが中心性を有する、より広域な経済連携の 枠組みにおいて、可能な限り維持することを求めるJとされている。

40 2014624日にフィリピン・マニラで行われた第7FJCCIA ASEAN事務総長対話において、

進捗報告を行ったASEAN事務局ヤップ競争・消費者保護・IPR課長補の発言。

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