十3~ § 軸
第 2節 AFTA の利用状況とその特徴
AFTAが発効し、以降、関税削減・撤廃が進展してきた。またASEANはAFTAの利用 促進を目指し、規則や制度について不断に改良・改善作業を行ってきた。しかし、 AFTAに ついて、貿易額ベースでの利用統計や企業の利用状況など、 ASEANで包括的に取りまとめ て公表している統計は存在しない口
特に、 ASEANでは各国の投資誘致機関から資本財や原材料・部材の輸入免税措置を取 得しているケースや、フィリピンに代表されるように、最終生産品は輸出向けのため、 FTA
4 ASEAN物品貿易協定第四条(g。)
5ギソン製油所は2017年4月に完工し、約1年後の2018年5月にガソリン製品を初出荷、本格稼働に 入った。日量20万バレルの原油精製能力を有する。運営会社には日本から出光興産、三井化学が参画し ている。
6石、油エネルギー技術センター(2016、) 9‑10頁。
7石、油エネルギー技術センター(2017、) 30‑‑31頁。新たな製油所の精製能力はフェーズ1、2合計で年 間500万トン、 2017年5月に起工式を行っている。
を利用せずとも輸出入に関税が課されない輸出加工区(ExportProcessing Zone:EPZ)に 立地している企業も多い口その場合、在ASEAN企業が輸出入においてFTAを利用する必 要がないなど、 AFTA利用の全体像を把握するのは難しい口
しかし、 ASEAN自体が毎年、堅調な経済成長を続け、徐々に市場として見倣されるよ うになってきたこと、 ASEAN域内で継続的にAFTA特恵関税が削減され、 2010年には先 発加盟国で、 2015年には一部品目を除き後発加盟国で、それぞれ関税撤廃を完了させたこ
と、また、 2000年代に入札 ASEANは東アジア域内で対話国とのFTA構築を開始、 2010 年にASEANは中園、韓国、日本、豪州、|・ニュージーランド、そしてインドとの FTA、い わゆる 5つのASEAN+lFTAが出揃うなど、 ASEANのFTAネットワークが東アジアに 拡大していること等とが相候って、実態面でより FTAが利用されるようになってきた口
これらの状況を把握するには、企業に対するアンケートベースでの調査に依存せざるを 得ない。ジェトロは毎年、在ASEAN日系企業に対し、その活動の実態を把握すべく、アン ケート調査を実施しているが、 2006年以降、 FTAの利用に関する設聞を設け、その全体像 を把握しようと試みているロ
在ASEAN日系企業のFTA利用状況8について、 2006年時点でのFTA利用企業の割合 は輸出入とも 2割以下に過ぎなかった。以降、輸出は2010年で4割、輸入は2013年で4 割を超え、 2015年は輸出で43.1%、輸入で44.7%となるなど、年々、 FTA利用が企業に浸 透してきている(図4‑2。)
8 FTAを有する固との輸出入を行っている企業が、いずれか1つでも FTAを使っていれば「利用してい るJにカウントされる。
図4‑2 在ASEAN日系企業のFTA
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EPA利用率(%) 50
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内 角 『 ‑ , , . . 37.2 29
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2006 07 08 09 2010 11 12 13 14 15
(年) 出所)在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査(各年版/ジェトロ)。
注) 2006〜09年は製造業のみ。以降、全産業。
ASEANが締結する FTAのうち、最も認知度が高く、且つ利用されているのはAFTA である。 2015年度の調査において、 ASEANがFTAを締結している国・地域と貿易取引 を行っている在ASEAN日系企業に対し、 FTA毎に利用の有無を聞いている 9 (表4‑ 5)。まず輸出について、在ASEAN日系企業の中で実際にASEAN域内向けに輸出してい る企業のうち、 AFTAを利用している企業は45.8%であった口利用率ではASEAN韓国 FTA (AKFTA)の 49.5%に及ばないが、 AFTAを利用している企業の実数はAKFTAの それの 5倍超にのぼる。特に、 AFTAは在ASEAN日系企業の中でも最も認知度が高い FTAであり、業種別でみると、輸送機械器具関連企業の利用割合は66.7%に達し、他の機 械分野(一般機械器具: 44.4%、電気機械器具: 33.0%)を大きく上回る。また、他に利 用割合が高い業種として、化学・医薬分野(利用割合66.1%)、食料品(同 56.0%)があ げられる。
一方、 ASEAN域内からの輸入がある企業のうちAFTAを利用して調達している企業の 割合は47.6%である口ここでも輸送用機械器具関連企業の利用割合が75.0%に達するな
ど、同分野がAFTA利用を牽引しているD 他の機械分野において、一般機械器具が 11.8%
10、電気機械器具で21.8%であり、輸送用機械器具が抜きん出て利用割合が高い。それ以 外にAFTAを比較的利用している業種として、食料品(利用率66.7%)、化学・医薬(同
9 この設問について、まず輸出で有効回答640社、うち 469社が製造業である。 一方、輸入については、
有効回答576社、うち413社が製造業である。このうち20社以上の有効回答がある業種を抜き出して比 較した。
10一般機械器具分野は有効回答数が 17社のみであり、数値はあくまで参考として記載。
56.6%)があげられる。輸送用機械器具、食料品、化学・医療の 3業種は輸出入両方で AFTA利用が浸透している口
表 4‑5 在ASEAN日系企業のFTA・EPA別利用企業比率(2015年)
槍出 崎入
有効回 利用中 利用を 利用して 有効回 利用中 ;利用を 利用して 答 利用率 検討中 いない 答 利用率;検討中 いない AFTA 640 293 45.8 69 278 576 274 47β 57 245 ACFTA 268 120 44.8 19 129 417 160 38ぷ 50 207 対日 FTA 737 261 35.4 69 407 950 371 39.1
I
128 451 AKFTA 109 54 49.5 6 49 139 54 38.8! 19 66 AIFTA 181 78 43.1 20 83 65 20 30.8! 4 27 対事州 FTA 115 47 40.9 9 59 33 11 33.3! 3 19 対NZFTA 56 21 37.5 6 29 13 3 23.1 ! 10 出所)在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査(2015年版)より著者作成。2015年 1月、 AFTAの下でベトナムを筆頭とする後発加盟4カ国が総品目数の 7 %とセ ンシティブ・高度センシティブ品目を除き関税を撤廃した。これを受けて、これら国々に 進出している日系企業のAFTA利用割合も上昇した口統計的に比較可能な2012年から 15 年において、在ASEAN日系企業のAFTA利用割合について、先発加盟国は伸び悩みを見 せている中、後発加盟4カ国に進出している日系企業について、 2014年までは輸出は35
〜36%、輸入は30%台前半で推移していたが、 2015年には各々47.5%、42.8%へと利用 割合が約 1割程度向上した。 2015年の後発加盟国によるAFTA特恵関税撤廃を踏まえて AFTA利用に踏み切ったことがうかがえる(表4‑6口)
表4‑6 在ASEAN日系企業のAFTA利用割合(先発・後発加盟国別)
単位:%
2012 2013 2014 2015 ASEAN 48.3 45.4 46.0 45.8 輸出 先発加盟国 50.0 47.7 48.3 45.3 後発加盟国 36.8 36.1 35.0 47.5 ASEAN 46.6 44.9 46.1 47.6 輸入 先発加盟国 50.5 48.5 50.3 49.5 後発加盟国 30.3 34.3 33.1 42.8 出所)在アジア・オセアニア日系企業実態調査(各年版)。
既述のFTA利用率は、 ASEAN進出日系企業を対象として、どの程度の企業がFTAを 使っているか、アンケート結果をベースに利用企業の割合を算出したものであるD そのた
め当該企業の輸出入取引のうち、 FTAを利用した取引額やその比率を表しているわけでは ない
一方、実際の貿易額をベースにしたFTA利用率については、前述の通り、原産地証明書 発給ベースでのFTA利用輸出額を当該国向け総輸出額で除することで、名目ベースの FTA利用率が算出出来る(表4‑7口)
表4‑7 タイの輸出相手国別AFTA利用率(2011
〜
2015年) 単位:%2011 2012 2013 2014 2015 ASEAN全体 28.4 26.3 31.4 31.1 35.9 インドネシア 60.0 54.3 66.1 62.2 66.0 マレーシア 25.2 23.1 27.4 28.3 30.8 ベトナム 45.3 42.6 52.1 53.2 64.8
:シ?..1.ン.リガピポ;
ν
ール 474..15 483..87 .§.39..J8 .?..~.:.~ 4.2 §..1.8.:..?..3ラオス 4.0 3.7 3.8 4.2 4.4 ブルネイ 15.2 10.3 11.8 17.4 16.4 ミャンマー 0.9 2.7 6.9 9.9 16.0 カンボジア 4.3 3.7 5.4 8.0 8.2
出所)タイ商務省、通関統計をもとに著者作成。
2011年以降 15年迄のタイのAFTA利用輸出比率について、 ASEAN向けでは2010年 に先発加盟6カ国の関税が基本的に撤廃されたことから、 2010年以降2015年までの間 に、 ASEAN全体で30%台半ばにまでAFTA利用輸出比率が伸びている。 ASEAN加盟国 の中で、特に利用率が高いのが人口規模が大きいインドネシア、フィリピン、ベトナム向 けである口これらの国々向けは凡そ2003年以降、他の国々を尻目に、タイのAFTA利用 輸出を牽引してきた。
人口規模以外にも、これら3カ国向け輸出でAFTAが利用されている理由に、 MFNベ ースで関税撤廃品目が少ないことも少なからず影響しているとみられる口 2015年時点にお いて、全品目に占める関税撤廃品目比率11は、フィリピンで3.4%、インドネシアで 12.7%、ベトナムで35.4%である。日本や米国など概して先進国の関税撤廃品目割合は高 く12、それら市場に有利にアクセスするにはFTAは有効な手段であるD 輸出面でのFTA 利用率について、インドネシア、フィリピン、ベトナムの 3カ国の後塵を拝しているマレ ーシアについて、同国では日本や米国を上回る総品目数の65.6%の品目で関税が撤廃され
11 WTO (2016).
12先進国の関税撤廃品目割合では、日本が53.0%、米国45.9%であるが、 EUは27.2%にとどまる。
ている口先発加盟国の中で唯一、利用率が最も低いグループに入っているシンガポール は、アルコールなどごく一部品目を除き関税が撤廃されており、関税撤廃率は四捨五入し た後で 100%になっているロ
ベトナムを除く後発加盟国向け輸出における AFTA利用率は低水準にとどまっている が、人口規模を鑑みた経済規模や所得水準に加え、これらの国々には日系など外資系企業 の進出が依然として少なく、グループ内相互補完体制などを敷いている企業は限られてい ること等が影響しているとみられる。ただし、 2010年代に入札タイの慢性的な労働力不 足と賃金上昇により、国境を越えて一部の労働集約的な工程をカンボジア、ラオス、ミャ ンマー等に移管する動きもある。これらは「タイ・プラスワンJと称されるが、元々のタ イ拠点と周辺国の衛星工場との取引に際し、 AFTAが積極的に使われている 130
2015年にはベトナムを含む後発加盟4カ国の関税が総品目数のうち 7%分の品目および 一部の未加工農産品や武器・弾薬等の一般的除外品目を除き撤廃されたことから、ベトナ ムのAFTA利用率は前年の53.2%から 15年には64.8%へ、 CLMV全体では24.9%から 31.5%へと、利用率が向上した。
なお、タイのASEAN向け輸出における FTA利用率について、その多くが2010年をピ ークに2年連続で下落したロこれは主にタイの国内要因によるところが大きいのは前述の 通りであるが、第一に2011年 10月にタイ中部を襲った大洪水の影響により、自動車組立 企業の製造・輸出が軒並み1カ月以上もの問、停止を余儀なくされた。第二に、当時のイ
ンラック政権が導入した自動車購入促進策の影響があげられる。タイにおいてAFTAの利 用率は、自動車産業の動向に大きく影響される傾向がある口