十3~ § 軸
第 3節 AFTA の利用円滑化に向けた更なる取り組み
ている口先発加盟国の中で唯一、利用率が最も低いグループに入っているシンガポール は、アルコールなどごく一部品目を除き関税が撤廃されており、関税撤廃率は四捨五入し た後で 100%になっているロ
ベトナムを除く後発加盟国向け輸出における AFTA利用率は低水準にとどまっている が、人口規模を鑑みた経済規模や所得水準に加え、これらの国々には日系など外資系企業 の進出が依然として少なく、グループ内相互補完体制などを敷いている企業は限られてい ること等が影響しているとみられる。ただし、 2010年代に入札タイの慢性的な労働力不 足と賃金上昇により、国境を越えて一部の労働集約的な工程をカンボジア、ラオス、ミャ ンマー等に移管する動きもある。これらは「タイ・プラスワンJと称されるが、元々のタ イ拠点と周辺国の衛星工場との取引に際し、 AFTAが積極的に使われている 130
2015年にはベトナムを含む後発加盟4カ国の関税が総品目数のうち 7%分の品目および 一部の未加工農産品や武器・弾薬等の一般的除外品目を除き撤廃されたことから、ベトナ ムのAFTA利用率は前年の53.2%から 15年には64.8%へ、 CLMV全体では24.9%から 31.5%へと、利用率が向上した。
なお、タイのASEAN向け輸出における FTA利用率について、その多くが2010年をピ ークに2年連続で下落したロこれは主にタイの国内要因によるところが大きいのは前述の 通りであるが、第一に2011年 10月にタイ中部を襲った大洪水の影響により、自動車組立 企業の製造・輸出が軒並み1カ月以上もの問、停止を余儀なくされた。第二に、当時のイ
ンラック政権が導入した自動車購入促進策の影響があげられる。タイにおいてAFTAの利 用率は、自動車産業の動向に大きく影響される傾向がある口
しており、輸入国側通関時にフォーム D提出が間に合わないことが散見された。また、国 によってはフォーム D取得にかかる手続きが煩雑との声も挙がっていた。例えば、ジェト ロが2009年度に実施した在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査では、 FTA活用に際 しての問題点として、実際に活用中の在ASEAN日系製造企業216社のうち34.3%は「特 に問題はない」としている一方で、 30.1%の企業は「C/0取得手続きが煩雑である」と回答 している口以前から FTAを利用している企業は通常のオベレーションの一環として手続き が社内で浸透している一方、関税削減対象国や削減幅の拡大に伴い、利用を開始したばかり で利用経験が浅い企業を中心に手続き面で課題を抱えている。
ASEANはC/0発給時間の短縮と手続きの簡素化・円滑化、AFTA利用の拡大を目指し、
ASEAN地域自己証明制度(ASEAN・WideSelf‑Certification: AWSC)導入に向けた取り 組みを開始したロ 2010年8月にベトナム・ダナンで開催されたASEAN経済相会議で同制 度のパイロットプロジェクト実施にかかる覚書(MOU)14をシンガポール、マレーシア、
ブルネイの 3カ国で署名した。 ASEANが実験的に実施する自己証明制度ノ〈イロットプロ ジェクトの利用対象は全ての製造者・輸出者ではなく、予め発給部局がその利用を認めた認 定輸出者に限られる。そのためこの制度は、「認定輸出者自己証明制度」と呼ばれる。認定 輸出者になるには、参加国によって細かい条件は異なるとみられるが、タイの場合、 ATIGA 原産地規則と運用上の証明手続き(OCP)等に精通していることや、これまで税関のブラッ
クリストに掲載されたことがないこと等が条件である口
これは認定輸出者が、自ら作成したインボイス等の商業上の書類に輸出貨物が原産品で ある旨の申告文言を記入した上で、当該インボイス等を輸入国に提出、輸入国側税関で AFTA特恵関税を適用するものである。 MOUに署名した3カ国は2010年 10月29日、同 プロジェクト実施にかかる批准書をASEAN事務総長に付託、ASEAN事務局は同日、パイ ロットプロジェクトを 11月1日から同プロジェクトを開始することを発表した。なお、タ イは約1年遅れとなる 2011年7月に、カンボジア 15は2015年7月に、ミャンマーが2016 年2月にそれぞれ参加した。
インボイス申告をする場合、インボイス上に定型の原産地申告文言として「この文書の 対象となる産品の輸出者(認定輸出者番号・・・・・番)は、別段の明示をする場合を除くほか、
14 ASEAN Secretariat (2010).
15カンボジアは、商業省令(2015年8月13日付221号)により 2015年8月17日から参加企業の募集 を開始した。
ATIGAのもと原産分類:・・・・・でASEAN原産品(ASEAN原産国:・・・・・) として原産地 規則を満たす産品であることを申告する」 16と記載し、申告者名とともに署名をすることに なる。
また、認定輸出者のインボイスを輸入者が入手出来ない場合、具体的には、仲介貿易を 行う場合も、認定輸出者は請求明細書、配送指示書、納品書などインボイス以外の商業書類 上で原産地申告を行うことが出来る柔軟な制度設計がなされている。
2. 原産地証明手続きを巡る域内対立
シンガポール、マレーシア、ブルネイ、タイなどは自己認証制度の導入を挺子に、 AFTA 利用取引の円滑化と拡大とを目指している中、同制度に参加していないインドネシア、フィ
リピン、ラオスの 3カ国間で異なる枠組みの「認定輸出者自己証明制度」(第 2自己証明制 度)を構築した。これら 3カ国は2012年8月にカンボジア・シェムリアップで開催された ASEAN経済相会議にあわせて MQU17を締結し、 2014年 1月にパイロットプロジェクト を開始した口以降、第2自己証明制度には、第 1制度にも参加しているタイが2015年 5月
18に、またベトナム 19が2014年 12月に、それぞれ参加している。
第2自己証明制度は第1自己証明制度に比べ、利用制限的に制度が設計されている。具 体的には、①認定輸出者は製造事業者のみ、②原産地申告文言の記載は商業インボイスのみ、
③署名権者は 3人まで、等である。
現在運用されている AFTAにおける第三者証明制度の下、AFTA利用者は輸出者であり、
製造事業者に限らない。同一国内に複数の製造法人を有するグループ企業の場合、輸出業務 を統括法人が製造法人に代わって行う場合もあるロこれら企業が第 2 自己証明制度の下で AFTAによる特恵関税を享受する場合、自己証明手続きは各々の製造法人で行うか、または
16インボイスに記載する文言は覚書 Memorandumof Understanding among the Governments of the Participating Member States of the Association of Southeast Asian Nations (ASEAN) on the Pilot Project for the Implementation of a Regional Self‑Certi五cationSystem,,の規則12B(インボイス申 告)による。.
17 ASEAN Secretariat (2012).
18タイは2015年5月1日付で受諾書をASEAN事務局宛に寄託した。また、 2015年4月30日、他の第 2PP参加国からの自己証明を受け入れる通達を発出、正式に第2PPに参加した。
19ベトナムは、 2014年12月19日付で受諾書をASEAN事務局宛に寄託した。その上で、 2015年8月 20日付商工省通達(28/2015/TT‑BCT)で10月5日よりパイロットプロジェクトを開始すると発表した。
ただし、参加出来る企業は現行のフォームDによる域内輸出額が年間 1000万ドル以上の企業に限られる など、限定的な形で実施している。
自己証明制度利用を諦め、従来の第三者自己証明制度を利用する必要がある口また、原産地 申告文言の記載はインボイスに限られていることから、リ・インボイスによる仲介貿易では 自ずと使えないことになるなど利用形態が制限される。そのため、仲介貿易を利用している 企業を中心に、第2自己証明制度に対する懸念の声があがっている(表4‑8。)
表4‑8 .N.官GA自己証明制度(第 1制度と第2制度との相違事項)
111定睡出者自己E明制度 | 第2盟定槍出者自己
lシンガポール、マレーシア、ブルネイ、タイ、カン|
参加国 | lポジア、ミャンマー |インドネシア、フィリピン、ラオス、タイ、ベトナム| 寵定輸出者資格|輸出者(製造業者か貿易業者かは問わない。) |製造業者
|認定輸出者作成のインボイスに加え、パッキング|認定輸出者作成のインボイスのみ 申告書類 | PJスト等商業上の書類による申告も可能。 | |(他の商業書類は認められない。)
人の数 i制限なし IJ.企園業員た,'z~.名京支息…………一一一-·-·-·-·-·-·-·-一一一一一-·-·-·-·-·-·…l
署名人・輸出品||提出は義務付けられていない I! As臥N事務局に対し、認定輸出者の署名人リストおよび
l.'J.~.I:: ..…………l一一一一一一一一一...………11.なポ《2玉県告が認め長むな輸出品92_11.~r.査提出一一 |
インボイス申告
r
|定められた申告文言に加え、輸出品のH s
コードおよび認|| i定められた申告の文言および署名 |
ょの必要情同報…l………一一一一i定主札た署金〔F早期主払た~MQ:>..=主._I_;_~各ずるよ……
;
第の扱い
3
国インボイス||可能| |不可(輸出国側のインボイスよでの申告のため、インボイ| |ス・スイッチは不可能)出所)第1および第2地域自己証明制度パイロットプロジェクトにかかるMOUより著者作成。
また、 ASEANの自己証明制度に対する誤解も利用を限害しているとみられる口日本で は認定輸出者自己証明制度を日スイスとの経済連携協定(EPA)で導入したのを手始めに、
日ベルーEPA、改正日メキシコ EPAでも導入した200 ここでは、第三者である日本商工会 議所による原産性審査がなく、企業等利用者自らの責任において原産性確認を行う必要が ある。これは商品が相手国に輸入される際に関税減免を受けることになるため、企業側はコ ンブライアンス面を鑑み、入念な確認が必要となるD
一方、 ASEANで導入しようとしている自己証明制度は、原産性審査はフォームDと同 様に政府部局が行い、その上で、輸出時にフォーム Dの発給を受ける代わりに、自らインボ イスに原産地申告文言を記載することになる口そのため企業がコンブライアンス上の責任 を一身に負う日本の自己証明制度と大きく異なる。 ASEANの自己証明制度は、最後の発給 を企業自身で行うのみであり、コンブライアンス面ではこれまでの第三者証明制度と大き く変わるわけではない。そのため ASEANの同制度は、企業にとってより利用され易いと みられるロ
ASEANは2014年中に第 1および第2自己証明制度のパイロットプロジェクトを評価
20 2015年1月に発効した日豪EPAでは、輸出者に加え、生産者または輸入者が自ら証明書を作成出来 る「自己申告制度」が導入されている。