オーガナイザー/座長:
若田 好史
徳島大学病院座長:
堀田 春美
済生会熊本病院Basic Outcome Master(BOM)の特性はアウトカムと観察項目の標準化とバリアンス集積・分析業務 の効率化であり、さらに多施設に導入されることにより、導入施設間での様々な比較(ベンチマーク)お よびアウトカムレベルでのバリアンスデータが共有可能となる点です。
ここ数年、BOM導入について、様々な事例や課題が報告され、導入後の活用に関しても今後の目指 すべきものについて非常に活発な議論がなされるようになってきました。
それを踏まえて一昨年、昨年のBOMセッションでは導入4施設で運用されている腹腔鏡補助下大腸 切除術のクリニカルパスにおけるアウトカムと観察項目、タスクの設定、バリアンス分析の実際につい て各施設にご発表いただき、同じ大腸切除術パスで、どのような違いがあるのかを検討し、BOM本来 の目的であるベンチマーキング、医療の質改善につながる分析について多施設のデータを利用し試行す る取り組み行ってきました。その結果、一昨年のセッションではアウトカム-観察項目の標準化、さら に翌年にはタスクの標準化が必要であることも明らかとなり、特に合併症や疼痛の評価方法の標準化が 重要な課題として具体的に挙げられました。
3年目となる今年は過去2回の課題を反映してどれだけ本来のBOM使用目的に近づけたか、また残さ れた課題は何なのかについて、これまでの取り組みにご参加いただいた施設だけでなく、新たなご施設 にもご発表いただき議論を深めていきたいと思います。
一方、BOMに関する議論の高まりの中で、2015年には日本医療情報学会と日本クリニカルパス学会 両学会の合同委員会が設立され、4施設、4ベンダーの電子クリニカルパスをベースに、クリニカルパ スデータの現状を把握、整理し、標準出力形式である標準データモデル案の構築に取り組んできました。
さらにこの取り組みがAMED「クリニカルパス標準データモデルの開発および利活用」事業(通称;
ePath事業)として採択され、昨年10月から開始されています。
BOMと標準データモデルはクリニカルパスデータ標準化の両輪であり、これらを整備し精緻化する ことは、クリニカルパスデータを利用した診療プロセスの再構築や最適な診療プロセスを求めるための 多施設間での効率的な解析において、欠くことのできないものです。今回は本事業実証施設およびそれ 以外の施設からの発表を含めて、これまでの学会での標準化の取り組みとの関係性についても議論した いと考えています。
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S4-1 S4-2
大腸切除パスにおける
バリアンス分析と質改善のプロセス 大腸切除術パスの疼痛バリアンス分析と対策
~薬剤師の視点から~
北村 佳代子
(きたむら かよこ)1、川畑 恵理子
1、 山下 貴範
2、中島 直樹
21九州大学病院 看護部、
2九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター
西 健太郎
(にし けんたろう)11済生会熊本病院 薬剤部
第19回日本クリニカルパス学会学術集会において、腹 腔鏡補助下大腸切除術パス(以下、大腸切除パス)のバリ アンス分析に基づくパス改定について報告した。疼痛に 関連するアウトカムは、「創痛のコントロールができてい る」で、アセスメントは、客観的指標である疼痛の適正 値の設定がなく、鎮痛剤投与により痛みがコントロール できれば、バリアンスとしない状況であった。また、適 正値がないことで、看護師の裁量によりバリアンスの有 無が判断されていた。そのため、バリアンスデータは不 正確となり、バリアンス分析に基づくパスの改定はでき ていなかった。当院は、2018年10月に、AMED事業
「ePathプロジェクト」の実証病院となり、2019年7月よ り、ePath標準の大腸切除パスを運用している。疼痛に 関するアウトカムは、「疼痛コントロールができている」
へ 変 更し、アセスメントは「Numerical Rating Scale:
NRS値3以下」とした。疼痛管理は、硬膜外鎮痛法の有 無にかかわらず、カロナール内服、アセリオ・ロピオン の静脈注射、ソセゴンの筋肉注射等を術後指示に基づき 投与している。術後の十分な疼痛コントロールは、早期 離床やADL拡大、肺炎や深部静脈血栓症の術後合併症 予防の観点から重要と考え、積極的に介入を行っている。
バリアンス結果の収集は、オールバリアンス方式で行っ ている。ePath標準パスとなり、疼痛評価を客観的に捉 えることで、バリアンスデータの信頼性と分析可能性は 確実に向上すると考える。今回の発表では、ePath標準 パスのバリアンスデータを基に、疼痛を中心とした分析 方法と結果を報告したい。
【はじめに】
術後疼痛は、患者の苦痛や不快感、合併症の 要因となりうる。また医療者においても看護ケアの増大 やリハビリテーションの遅延が生じるため、術後の疼痛 管理は重要な課題である。当院の大腸切除術パス(以下、
パス)は、医療の質向上を企図し継続的に改訂してきた。
今回はパスの疼痛管理に焦点をあて、これまでのバリア ンス分析と対策について報告する。
【活動内容】
術当日の疼痛評価は、手術の30、60、120分 後、以降は2時間おきに行い、術翌日からの評価は1日4 回としている。BOMは“疼痛のコントロールができてい る”、バリアンスはNRS≧3とし、その都度バリアンス 記録を発生させ、NRS値、疼痛の部位、性質、タイミン グ、プランを記載している。2015年、我々は患者の早期 退院を目標として、経口摂取が可能となる術後2日目か らのアセトアミノフェン錠の定期内服をパスに設定した。
その結果、NRSとバリアンス件数が低下したが、術後0、
1日目は依然としてNRSとバリアンス件数は高値であっ た。そこで2017年には、術後0、1日目にアセトアミノフェ ン注を投与するパスを作成し、術後のバリアンス件数の 低下が認められた。
【考察】
以前から、術後数日は硬膜外鎮痛や麻薬による鎮 痛が手術室から継続されていたが、疼痛コントロールは 不十分であった。基準に沿った疼痛評価を行うことで、
バリアンス件数の推移やNRSが明確になり、アセトアミ ノフェンを追加した多角的鎮痛法が術後疼痛に有用であ ることがわかった。
【結論】
術直後からアセトアミノフェンを定期投与するこ とで術後疼痛が改善した。今後は、バリアンス記録内容 をさらに活用し、バリアンス発生の要因や、疼痛と合併 症の関連を明らかにしていきたい。
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S4-4
大腸がんパスにおける
疼痛管理のバリアンス分析の取り組み
石井 敦子
(いしい あつこ)1、丸本 結実
2、佐藤 賢太
21社会福祉法人三井記念病院 看護部、
2社会福祉法人三井記念病院 診療情報管理部
【はじめに】
当院では、正確なバリアンス分析を可能にす るため、クリニカルパス委員会で年度ごとに段階的な目 標を置き、活動を行っている。大腸癌パスを例にその取 り組みと成果について報告する。
【活動内容】
2017年にBOMを用いたアウトカムと観察項 目とタスクがセットになった「周術期標準セット」を作成 し、全手術症例パスに組み込んだ。それにより、大腸癌 パスには、全病日のアウトカムに「疼痛のコントロールが できている」、観察項目に「NRS(適正値0〜3)」、タスク に「観察項目:疼痛」 「指導・教育:疼痛時の対処の指導」
が組み込まれた。また、正確なバリアンス分析に向けて、
記載の統一も行った。疼痛の記録は、疼痛の有無「+・-」
で記載、「+」の場合は、テンプレートを用いて「痛みの部 位・性状・NRS・対応方法」を記載し、対応方法に応じ て、疼痛の再評価を実施し、アウトカム評価を行っている。
2018年度まではバリアンス分析の土台づくりを行ってお り、実際の本格的なバリアンス分析については、今後実 施していく予定である。
【結果・考察】
バリアンス分析をするためには、観察・介 入・教育結果を適切に記録することが重要である。患者 の反応として、本人の理解度や対処方法などを同時に記 載することも、ケア効果、質の改善につながるバリアン ス評価が可能となると考える。そして、 「患者アウトカム」
を達成するために、看護介入(指導教育)をどのタイミン グで行うか、また多職種はどこで何を介入するかを検討 することができると考える。医療の質・看護の質につな がるようなパス改定ができるように今後も活動を継続し ていく。
S4-3
アウトカムと観察項目(判断基準)の 標準化への活動
羽藤 慎二
(はとう しんじ)1,2、小畠 誉也
1、片山 洋子
1,3、 砂野 由紀
1,2、清水 弥生
3、相原 宏紀
1、石川 宏昭
2、 浅木 彰則
1、青儀 健二郎
1,2、河村 進
21国立病院機構四国がんセンター クリニカルパス推進委員会、
2同 クリニカルパス管理委員会、3同 看護部
【背景】
Basic Outcome Master(BOM)は、パスの記録や 施設間比較等の分析に活用されることを通じて、医療の 質向上に役立てる目的で開発された。しかし、第18、19 回日本クリニカルパス学会学術集会において、現状では 施設間比較分析は困難であり、BOM活用のためには「ア ウトカムと観察項目(判断基準)の標準化」が重要であるこ とが明らかとなった。その結果を受け、四国がんセンター ではBOMと判断基準の標準化をめざしてパス改訂を進 めてきたため報告する。
【方法】
大腸切除パスにおけるBOMと判断基準について 検討した。パス改訂の前後に分けて、アウトカムと判断 基準の設定の変遷についてレビューし、また、術後疼痛 に関して分析を行った。
【結果】
パス改訂の例として「合併症の症状・所見がない」
という大きなアウトカムから「イレウスの症状・所見がな い」といった合併症種別ごとの粒度に統一した。また疼 痛に関するアウトカムについて、判断基準に客観性が必 要との判断から、NRS:3以下を適正値と設定した。こ の客観的基準の導入については、評価者(看護師)にアン ケート調査し、アウトカム評価しやすくなったと回答を 得た。また、疼痛の記録に+/–式からNRS標記が導入さ れた結果、詳細なデータ分析が可能となった。術後1日 目の最大NRS値が3以下であった(アウトカム達成)症例 割合は、2017年4〜6月(改訂前)の30例中18例(60%)に 対し、2019年4〜6月(改定後)は36例中31例(86%)と増 加していた(p=0.016)。
【結語】
BOMと判断基準の標準化を目指した対策は、より 質の高い記録・分析と医療プロセス向上につながること が期待できる。
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ドキュメント内
第20回日本クリニカルパス学会学術集会抄録集
(ページ 66-70)