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患者経験・患者報告アウトカム結果を 医療の質改善に役立てるには

オーガナイザー/座長:

嶋田 元 

 聖路加国際大学  

座長:

斎藤 恵一

 国際医療福祉大学大学院

これまで患者用パスの作成、パス適用率、平均在院日数の短縮、クリティカルインディケーターや患 者状態・診療行為の分析などによりパスを利用した多くの質改善がなされてきました。今後もこれらの 活動はパス医療の中心的役割を果たしていくものと思われます。

米国IOM(Institute of Medicine)はヘルスケアの質の6つの領域の一つとして患者中心(Patient-centered)を掲げており、「個々の患者の好み、ニーズ、価値観を尊重し、それらに対応し、患者の価値 観が全ての臨床的決断を導けるようケアを提供すること」と定義しています。患者中心性の主たる計測 方法はこれまで患者満足度調査などで評価されてきましたが、その結果の利用方法は限定的で質改善に 非常に有益とは言い難いものでした。

近年、患者経験(PX:Patient eXperience)、患者報告アウトカム(PRO:Patient-Reported Outcome)

といった患者による直接的な評価方法を用いて、これまで正確に測定することが難しかった患者中心性 を評価し改善しようとする試みが広まってきています。

米国ではHCAHPS(The Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)とい うPXを用いて、個々の医療機関の比較や診療報酬制度にまで利用されています。患者報告アウトカム にはSF36やEQ5Dなどがあり、英国ではEQ5Dと疾患特異的なPROを入院前後で計測し患者ごとの 評価を行っています。本邦でも疼痛管理や患者説明などでより詳細・実践的なPX、PROを用いて質改 善に役立てる施設も出てきました。

このように注目を集めているPXやPROはこれまでの患者満足度調査とは何が違うのか、どのように 分析し医療の質改善に役立てるのか、パスはどのような役割を果たすのかについて議論してみたいと思 います。

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PXとはなにか? 患者報告アウトカム(PRO)とは何か?

斎藤 恵一

(さいとう けいいち)1

1国際医療福祉大学大学院 診療情報アナリスト養成分野

下妻 晃二郎

(しもづま こうじろう)1

1立命館大学 生命科学部

X(Patient eXperience)とは、「患者がケアプロセスの 中で経験する事象」のことである。

20世紀後半からの医療の進展は著しく、高品質のケア を提供できるようになり、標準化(患者の非個別化)が進 んでいる。疾病構造が変化するなかでケアの個別化が再 認識され、「患者中心のケア」が注目されるようになった。

患者中心のケアの状況を評価する手段としてPX調査 が使われている。例えば、入院時ケアでは、(1)患者の価 値観、意向、ニーズの尊重、 (2)ケアの連携と統合、 (3)情報、

コミュニケーション、患者教育、 (4)身体の苦痛の解消、 (5)

心理的支援と恐怖、不安の緩和、(6)家族と友人の関与、

(7)退院・転院とケアの継続性、といった多面的な内容が 含まれている。

PX調査は患者満足度調査と異なり、経験した事象を 質問するので、具体的な課題の発見に結びつきやすく、

多施設での比較も可能なことから、広範な分野で利用さ れるようになってきている。

PX調査を重視する傾向は世界的に広がりをみせてい る。米国では、病院個別ではなく共通のPX調査(HCAHPS:

Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)を定め、メディケアの支払いの要件となって いる。英国ではPX調査が義務化され、患者が病院を選別 するための情報源となっている。その他の欧米諸国でも政 府がPX調査を推進し始めている。

日本では、プライマリ・ケア分野のPX尺度が開発さ れているが、今後、医療の質向上のために、他の多くの 分野でPX尺度の開発が望まれる。

医療に求められる2大アウトカムとして、生存アウト カムと健康アウトカムが以前から重視されてきた。この うち、健康アウトカムには、専門家などの第三者による、

いわゆる客観的健康アウトカムと、患者が感じる健康度 である、主観的健康アウトカムの2種類がある。しかし、

永年にわたり、特に我が国では患者の主観的健康アウ トカムは医療の世界で軽視され続けてきた。世界的には 1980年代頃から、QOL評価として、医療現場や臨床試 験において、主観的健康アウトカム評価と医療への応用 が盛んに行われてきていたが、我が国では文化的背景か らか、なかなか進まなかった。一方、国際的にも、QOL という言葉は一般社会でも使われる言葉であるため、そ の概念構造についての共通認識が医療の世界で得られ にくい欠点があり、より医療においてわかりやすい概念 と言葉が求められてきた。例えば、患者立脚アウトカム

(patient-based outcome)、患者由来アウトカム(patient-derived outcome)などがある。その中で近年、患者報告 アウトカム(patient-reported outcome:PRO)という概念 と言葉が提唱されるようになり、普及しつつある。本シ ンポジウムでは、上記のようなPROという概念が生まれ た背景や、PROとQOLの概念の相違、PROの一般的な 評価法や評価結果の解釈の仕方、PRO評価の課題などに ついて概説する。

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PRO を用いた患者教育による

周術期ケアの質管理 疼痛コントロールにおける

PX、PROによる質改善

森崎 真美

(もりさき まさみ)1

1社会福祉法人 恩賜財団 済生会熊本病院 6 東病棟

嶋田 元

(しまだ げん)1,2

1聖路加国際大学 情報システムセンター、

2聖路加国際病院 ヘルニアセンター / 消化器・一般外科

【はじめに】

当院はクリニカルパス(以下、パス)活動によ り、ケアの安全性や効率を検討し、治療プロセスの質改 善を行ってきた。当院消化器外科は、術後の早期回復を 目的にERASを取り入れたパスを運用し、使用率は65%

である。バリアンス分析によるパスの評価を繰り返し、

効率よくアウトカムを達成するパスをめざし、平均在院 日数は9.5日に短縮した。

 地域包括ケアの推進により、急性期病院での高度専門 の治療期間は短縮し、地域、自宅での療養に早期シフト している。そのような中で、退院後の合併症予防やその 早期発見など術後のQOLの維持につなげることを目的に 患者報告アウトカム(Patient reported outcome:PRO)

による患者教育の方法やパスの活用について、消化器外 科の実践を報告する。

【活動内容】

当科でのPROによる患者教育の目的は、患者 自らが健康状態を把握することで、治療プロセスに参画 し、アウトカムを達成することである。パスに設定され た観察項目の一部を患者自身が評価し、記入するための シート(セルフケアチェックシート)を作成し、術後から 体温や創部状態、食事摂取量、排便状態など、記載内容 の結果に合わせて患者教育を行っている。退院後もシー トの記入を継続し、退院後1ヶ月以内の外来受診時に再 評価、教育を追加している。

患者が積極的に治療プロセスに関わるほうが、よりよ いアウトカムを確実に達成することができるといわれて おり、そのためのコミュニケーションツールとしてシー トは有用であると考える。

【まとめ】

増大しつづける医療費に対し、 「バリュー(価値)

に基づくケア:VBM」の概念が拡がっている。PROによ る退院後の治療モニタリングや患者サポートで、患者の アウトカム向上につなげ、価値あるケアを提供していき たい。

【はじめに】

Fletcherが示した疾患のアウトカムは6Dで示 され、その一つに満足度があげられている。満足度は同 じ医療サービスを提供していても患者の期待値によって その結果が異なるため評価・理解が困難なことがある。

そこで我々は米国の患者経験調査(PX)であるHCAHPS

(the Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)を用いて2013年より退院患者に 対し実施してきた。

【活動内容】

この調査から得た知見は疼痛コントロールと 薬剤に関する説明と家族や知人に病院を推薦する項目が 米国平均と比較して低いことであった。そこで患者報告 アウトカム(PRO)の一つである疼痛に着目し改善活動を 実施した。

急性疼痛の改善が急務と考え、手術患者を対象とした NRSのAUC(Area Under the Curve)を元に疼痛コント ロール不良群を特定し、各診療科にフィードバックを実 施した。

さらなる分析結果からアセトアミノフェンの体重あたり の1回使用量が必要量に到達していないことも判明した。

麻酔科の協力を仰ぎ、術後鎮痛の院内ガイドラインを 策定し、疼痛コントロール結果や鎮痛薬使用実績の結果 を元に各診療科にパスの修正を依頼した。これらの取り 組みの結果、PXの疼痛コントロールは病院全体として改 善が認められ、医療の質の向上および改善に寄与した。

【考察】

PX、PROを用いることで質改善を行う領域が特 定され、改善活動を実施することが可能となった。パス ごとのアウトカム評価、バリアンス分析を通した質改善 活動はパス診療の軸ではあるものの、PX、PROを用い ることで一段上の視点からの改善活動が可能となり、PX も改善した。

【結論】

疼痛コントロールにおけるPX、PROは質改善に 役立ちます!

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