オーガナイザー/座長:
小林 美亜
静岡大学創造科学技術大学院 座長:久保田 聰美
高知県立大学看護記録の目的は、①看護実践を証明する、②看護実践の継続性と一貫性を担保する、③看護実践の 評価および質の向上を図ることが掲げられている(看護記録に関する指針:日本看護協会、2018)。また、
当該指針において、クリニカルパス(以下、パス)には、その目的を達成するための「標準看護計画」と「経 過記録」としての看護記録が含まれることが明示されている。
パスは、多職種から構成される医療チームで活用される診療・ケア計画であり、パスが記録と連動し ている場合には、タスクの実施状況やその結果(例:バイタルサイン、合併症などの有害事象の発生など)
は、主に看護師が記載する「経過記録」に残されることになる。したがって、「経過記録」の活用は、看護 記録の目的を達成するためだけでなく、医療そのものの実践を評価し、医療の質向上にも貢献するもの である。
このため、診療・ケア計画のPDCAサイクルを回すことに役立てられるよう「経過記録」そのものの あり方やそのデータを利活用できる仕組みについても併せて考えることが求められる。また、この仕組 みを整備するに際して、看護記録に使用する用語の検討や記録の記載箇所・記載方法に関わる構造化な どは、現場だけでなく、電子カルテのベンダー等も含めて検討することが必須となる。本セッションで は、これらの視点から、クリニカルパスに求められる看護記録について考える場としたい。
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看護記録に関する指針
パスの記録 クリニカルパスを活用した看護記録の
効果と課題
横田 慎一郎
(よこた しんいちろう)11東京大学医学部附属病院 企画情報運営部
金澤 昭代
(かなざわ あきよ)11徳島大学病院 看護部
我が国における看護記録は医療法や医療法施行規則等 の法令等によって整備を規定された文書であるが、法令 等が定める遥か以前より医療の中に存在したといわれて いる。職能団体である日本看護協会が2018年5月に発 行した「看護記録に関する指針」では、看護記録の目的を 3つ提示している。曰く、看護実践の証明、看護実践の 継続性と一貫性の担保、実践の評価と質の向上、である が、具体的にどのようにして目的を達成するかは各医療 機関に委ねられている。発表者の経験上も、患者の生活 状況や看護ケアの内容について叙述的に記載しがちであ るが、叙述的な記載の中で他者によるサービス提供活動 に必要な情報を簡潔明瞭に伝えるには、書き手の表現力 が必要であり同時に読み手の読解力が必要である。この 表現力と読解力は幼少期からの教育課程において養われ るものであるが個人差が非常に大きい。他方、クリニカ ルパスは構造化という考え方が根本に存在するため、記 録用途においても個人差を埋めることが可能であり、看 護実践の証明、継続性・一貫性の担保という目的のた めの手段に適すると考える。また、電子カルテ上でアウ トカム志向のクリニカルパスという道具を用いることで 実践の評価と質の向上に必要な看護記録データの蓄積 という手段を得ることができる。本発表では、昨今の医 療・看護を取り巻く状況の変化や情報技術の進歩も踏ま えた、クリニカルパスというツールを用いた看護記録の 目的達成に関する考え方を提示したい。なお本発表者は 2017年度に「看護記録に関する指針」検討の委員会構成 員であったが、本パネルディスカッションにおける発言 は、全て個人としての意見であることを付記する。
【はじめに】
当院は、2017年にアウトカム志向型パス(以 下、パス)を電子カルテに導入し、2018年度パス適用率 は、32.2%となった。パス評価は、アウトカム達成評価 と計画した内容が妥当であるかを毎日確認することが重 要となるため、パス監査の実施や院内教育など啓発活動 を行っている。看護記録において、パスのアウトカム達 成困難な場合やパス中止になった場合、看護診断で個別 計画を立案している。パス(アウトカム志向)から看護診 断(問題志向)へと思考の構造を切り替えて展開している 現状があり、標準看護計画も常にアウトカムを意識した 看護ケア実践のための記録を検討している。
【活動内容】
2017年度アウトカム未評価率は、全病棟平均 11.2%であった。委員会活動やクリニカルパス大会など を通じて積極的な院内教育を行い2019年4月には、アウ トカム未評価率が全病棟平均6.8%になり、改善効果がみ られた。看護記録の質担保のためパス監査を実施した結 果(2019年7月)、形式・プロセス監査の平均73.6%であっ た。記録内容では、「パス(バリアンス)の記録と看護経過 記録の重複がある」や「タスクが現在の治療経過と合わず 追加で看護計画を立案していた」など課題も散見された。
アウトカムを意識した看護計画では、電子カルテ上で試 験的導入を行い記録の改善につないでいる。
【考察および結論】
パスの見直しや記録の重複は、記録の 質改善や効率化のために早期に改善が必要となる。そし て看護診断からの脱却と目標達成型の患者参画型看護計 画へ改善するための改革が重要となる。対象者のニーズ に合わせたゴールを設定し、シームレスなケアを提供す ることが課題である。
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PD4-3 PD4-4
看護記録の効率化
−システム連動でデータの利活用を実践− 医療の質保証に向けた看護記録の二次利用
吉本 千鶴
(よしもと ちづる)11公立大学法人大阪 大阪市立大学医学部附属病院 看護部
堀田 春美
(ほりた はるみ)11済生会熊本病院 看護管理室
クリニカルパスを使用する最大の目的は医療の質向 上である。そのためには、アウトカム志向パスを活用 し、効果的にPDCAサイクルを回す必要がある。中でも、
Checkにあたるアウトカム評価を経てバリアンス分析を 行い質の評価を行う過程が最も重要である。アウトカム 評価にあたっては指標を用いて客観的に行う必要があ る。例えば、 「疼痛がない」というアウトカムの指標を「フェ イススケール2以下である」とすれば評価者によって評価 結果が異なることはない。そして、指標にあたる詳細な 患者状態の情報は、看護師により経過記録として日々記 録されているデータの中にあり、アウトカムを評価する 上での客観的データとして活用できる。
このデータの利活用は電子カルテ上で実現可能であ る。当院では電子カルテ導入時、経過記録の観察項目マ スターをMEDIS-DCの看護実践用語標準マスター看護観 察編を使用し標準化を図った上で、アウトカムに紐付く 観察項目と経過記録の観察項目が連動するようシステム 化を図ってきた。これにより、「疼痛がない」というアウ トカムに対し、患者状態が「フェイススケール3」と記録さ れた場合、アウトカム評価において自動的にバリアンス として判定できるようになった。このシステム化により 日々時間をかけて看護師が記録している経過記録データ をアウトカム評価に活用することが可能となり、アウト カム評価のたびに経過記録を確認する大変な手間も省く ことができた。また、アウトカムが達成できなかったと きの患者状態を容易に収集することもでき、パス改訂に 必要なデータとして活用でき、質改善につなげることが できている。今回、この当院のシステムについて報告し たい。
当院では、クリニカルパス(以下、パス)による医療の 標準化とバリアンス記録を活用し医療の質改善活動に取 り組んでいる。その中で看護実践の一連の過程を示す看 護記録は、患者の治療プロセスにおけるアウトカム達成 評価とバリアンスを抽出する記録「日めくり記録」として、
医療の質管理を証明する記録として位置づけられてきた。
この日めくり記録は、経過日ごとに達成すべきアウトカ ムとその観察項目を設定することで、看護記録の「標準看 護計画」と「経過記録」を包含する。
また、パスで設定した観察項目は看護システムで使用 するケアマスターと連動させることにより、経過記録の 記載がパスのアウトカム評価となり、標準から外れた「バ リアンス」を患者の個別の問題として捉え、詳細にSOAP 記録する看護過程の思考の流れに沿った仕組みとしてい る。この日めくり記録からデータを抽出し、医療の質の 可視化につながる記録にするためには、1.記録を構造化 する、2.設定するアウトカム用語は共通用語で統一し、
マスター管理する、3.看護記録との連動、効率化を図る ことが重要である。
これらの要素を満たすために、日めくり記録とバリア ンス記録を構造化し、パス学会よりリリースされている Basic Outcome Master(BOM Ver2.0)でマスター管理 されたアウトカムと観察項目を活用、観察項目と看護記 録のケアマスター(MEDIS-DCの看護実践用語標準マス ターに準拠)の紐付けを行っている。
この記録の構造化を応用し、パス非適応患者の記録「ア ウトカム志向看護記録」のシステム化を検討している。
ICT化時代の医療記録において、看護記録が医療の質 管理指標の根拠となることが期待されている。
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ドキュメント内
第20回日本クリニカルパス学会学術集会抄録集
(ページ 97-103)