~地域連携クリニカルパスを活用し、地域でアウトカムを共有するために~
オーガナイザー/座長:
宮下 恵里
済生会熊本病院座長:
寺崎 修司
熊本赤十字病院地域包括ケア時代を迎え、早期からの入退院支援、それに伴うチーム医療、多職種連携の重要性が高 まっています。そのためには地域全体の急性期、回復期、療養の病院では地域連携クリニカルパス等を 運用し、地域全体で質の高いケアを切れ目なく提供することが有用だと考えます。
「地域連携クリニカルパス」 (以下、連携パス)は、急性期病院から回復期病院を経て早期に自宅へ帰れ るよう、施設ごとに診療内容などの診療計画を明示したもので、医療機能分化や地域完結型医療を推進 するツールとなっています。連携パスの現状は、施設ごとに使用される医療用語、医療記録形式、患者 状態やリスクの評価方法が標準化されにくく、アウトカムの共有・評価が困難で、転院後の合併症や退 院状況など患者の転帰を把握することが不十分です。さらなる地域包括ケアシステムの構築の推進が求 められる中、地域全体で質の高いケアを、急性期病院から回復期、在宅への切れ目のない医療を提供し、
地域で共有できるアウトカムや共通の評価指標が必要であると考えます。
急性期病院の患者も高齢者、障害者が多く、入院前より低栄養、フレイルやサルコペニアを呈する患 者も少なくありません。このような患者は短期間の入院でも不適切な栄養管理、安静、侵襲によりフレ イル、サルコペニアを悪化させ、ADLの低下をまねく危険性があります。ADL低下を予防するために も集中治療を含む急性期治療だけでなく、入院時よりリハビリテーション・栄養の考え方に則り栄養と リハビリテーションの介入を開始していくことが必須と考えます。また、患者、患者家族を支えるため に、入院中は積極的に多職種連携を推進し、情報共有し、退院、再入院防止に向け、医療保険、介護保 険を駆使し、地域の介護、医療、福祉とも連携していくシステムが求められます。
本セッションでは、急性期病院と回復期病院協働で連携パスを作成し、具体的アウトカムや評価、記 録に関する課題、また回復期病棟での連携パスの活用の実際、さらにはサルコペニア・フレイルという 視点から、地域で取り組むケアの継続として、連携パスの中にどのように、共通のアウトカム・評価指 標を組み込んでいくか学ぶ機会にしたいと考えています。
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地域連携パス
熊本脳卒中地域連携(K-STREAM)の取り組み サルコペニアとフレイルを軸とした 高齢者モデルの地域連携パス
橋本 洋一郎
(はしもと よういちろう)1、寺崎 修司
2、 徳永 誠
3、渡邊 進
3、山鹿 眞紀夫
4、平田 好文
51熊本市民病院 神経内科、2熊本赤十字病院 神経内科、
3熊本機能病院 神経内科・リハビリテーション科、
4熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション科、
5熊本託麻台リハビリテーション病院 リハビリテーション科
吉村 芳弘
(よしむら よしひろ)11熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション科
熊本における組織的な脳卒中の連携(脳卒中診療ネッ トワーク)構築の取り組みは、1995年に急性期病院(神経 内科・脳神経外科)とリハビリテーション専門病院の連 携の会「脳血管疾患の障害を考える会」 (年2回開催、コメ ディカルを含め200名規模の会)から始まった。患者家族 とともに医療従事者の両者の満足度向上、救急病院が救 急車を断らなくてすむような連携構築を目標とした。
回復期リハビリテーション病棟の認可や介護保険が開 始された2000年には、急性期と回復期の連携は比較的 スムーズにいくようになっていた。回復期と維持期の連 携が問題となり、2003年に脳卒中のみならず整形外科疾 患も含めた「回復・維持期リハを考える会」が開始された。
地域連携パスの登場にあわせて2006年に脳卒中地域 連携パスの開発を1年かけて行い、2007年に「熊本脳卒 中地域ネットワーク研究会(K-STREAM)」 (年3回)を立 ち上げて、脳卒中地域連携パスの運用を開始した。脳卒 中地域連携パスは「リハビリテーションの継続」と「治療の 継続」を中心に策定され、回復期は3のコース、維持期は 2つのコースで運用されている。
現在は、10急性期病院、41回復期リハ病院、40療養 型病院、19介護老人保健施設、41クリニックが参加し、
電子化パスを運用し、データ収集・解析を行っている。
25,000例以上のデータが蓄積され、年3回の研究会では、
データ部会がテーマを決めて、収集したデータを解析し て、熊本の脳卒中の連携の実態、アウトカムなどを共有し、
よりよい連携構築を行っている。
高齢者医療のパラダイムシフトが進行している。本邦 の平均寿命は男性が81.1歳、女性が87.3歳となった。
65歳以上の高齢者の割合が4人に1人。少子化と相まっ てなお高齢化率が上昇している。さらに、今後は75歳以 上の人口しか増加しないことが予想されており、文字通 り超高齢社会時代が到来した。
要介護状態に至る原因として、脳卒中や大腿骨頚部骨 折などの疾患以外に「加齢による虚弱」や「骨格筋量の減 少」、「転倒・骨折」、「認知症」などの要因が増加する。後 期高齢者数の増加という人口構造の変化に伴い、医療対 象者や予防医療に関してのパラダイムシフトが起こって いる。高齢者医療における医療提供の難しさが指摘され ている。疾患ごとのガイドラインに盲目的に従うと、高 齢者に断片的で不完全な治療が多数提供されてしまい、
高齢患者の転帰は必ずしも好ましいものにならないこと が多く報告されている。
その背景要因の1つは加齢によるフレイルである。特 に後期高齢患者は多病であることが知られており、多病 を専門領域ごとに管理していると加齢による虚弱が見逃 されやすく、時には相反する治療が提供されている場合 もある。高齢者医療ではフレイルと、その主因であるサ ルコペニアや低栄養を中心に見据えた臓器横断的、職種 横断的な管理が求められる。この点で、サルコペニアや フレイルは本邦における未来の地域医療連携の中心軸に なりうる。
本講演では従来の疾患モデルから高齢者モデルの地域 連携パスへかじを切るべき理由と、具体的な対策につい て提言する。
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地域連携クリニカルパスにおける
アウトカムとゴール設定の共有 回復期病院における
大腿部近位部骨折連携パスの活用の実際と課題
西岡 智美
(にしおか ともみ)1、坂口 清美
2、一門 和哉
3、 町田 二郎
11済生会熊本病院 医療情報部、2済生会熊本病院 5 西病棟、
3済生会熊本病院 呼吸器内科
西川 伸太郎
(にしかわ しんたろう)1、荒木 佑太
1、 益田 ひろみ
1、依光 茂太
11医療法人清和会平成とうや病院 リハビリテーション部
【はじめに】
当院が取り組んでいる地域連携クリニカルパ ス(以下、連携パス)の目的は、継続すべきアウトカムの 共有と急性期と回復期におけるゴール設定の共通理解を 図り、連携を強化し継続したケアを提供することである。
今回、フレイルやサルコペニアを有する高齢者の場合、
入院が長期化する要因となることが多い誤嚥性肺炎の連 携パス作成に回復期病院と取り組み、2019年1月より運 用を開始した実践を報告する。
【活動内容】
回復期病院との合同ワークショップを3回開 催し、互いの医療内容を確認し回復期病院で使用する 誤嚥性肺炎パスの作成と当院パスの修正に取り組んだ。
ゴール設定は発熱や自覚症状の軽減を共通項目とし、回 復期病院では「酸素投与が不要である」や「患者と介助者 への疾患教育」など在宅へ戻ることを目標としたゴール設 定を検討した。共通アウトカムは「呼吸状態が安定してい る」や「脱水症の症状・所見がない」とした。共通タスクで は「口腔ケア」と「頭位挙上30度以上」を急性期から回復期 までの全日程に設定した。
【考察】
連携パス作成において、両施設間でワークショッ プを開催し、患者の経過を理解しゴール設定や患者状態 アウトカムを共有することで、重要な患者評価項目が明 らかになる。また、回復期のゴール設定を理解することは、
患者の在宅復帰を見据えた家族の支援状況の確認、口腔 ケアの実施とケア継続のための患者教育の強化など、急 性期ケアの充実を図ることにつながる。
【結論】
地域連携パスを活用し急性期と回復期で継続する 重要なアウトカムやタスクをモニタリングすることは、
地域における質改善を図る指標になる。
【はじめに】
急性期から回復期、在宅への切れ目のない医 療を提供できるよう大腿骨近位部骨折(骨接合術パス・人 工骨頭置換術パス)の連携パスの作成に取り組んだので 活用の実際について報告する。
【活動内容】
当院はA急性期病院と連携強化を図る目的 で、急性期病院の術前・術後カンファレンスに参加し、
転院予定者のADL確認やスタッフ間での情報交換を行 い、スムーズな転院につなげる取り組みを行ってきた。
その中で共通の評価指標で看護・リハビリを継続してい く必要性を認識し共同での連携パス作成につなげた。連 携パス作成の連携会議は計10回開催しBOMの共通化を ベースに疼痛評価、転倒評価、嚥下評価、ADL評価(FIM 項目の適正値導入)の統一化した連携パス(オーバー ビュー・週めくり)が完成した。連携パスを運用すること で看護・リハビリの方向性を早期より判断・検討できる ようになった。さらには個別の対応がスムーズとなった。
【考察】
導入効果の検証では手術-転院の日数のばらつき は有意に減少し、手術-転院・転院-退院の各日数は短 縮傾向でFIM利得も上昇傾向を示した。
【結語】
連携パスを作成し、評価指標の共有化ができシー ムレスな対応が可能となり、在院日数やADL利得に有効 な結果をもたらした。しかしながら、現状の連携パスで は在宅生活に向けた回復期視点のアウトカムや観察項目 が少ない。なお、当院は2月に電カル導入しており、パ スの電子化運用が課題である。
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ドキュメント内
第20回日本クリニカルパス学会学術集会抄録集
(ページ 55-59)