オーガナイザー/座長:
松波 和寿
松波総合病院座長:
田﨑 年晃
済生会熊本病院DPC対象病院においては診療報酬が包括支払いであるため、コスト管理を行いつつ費用対効果を考 えながらコスト削減と質向上の両面をバランスよく達成することが求められ「経済アウトカム」の重要性 が増してくる中、現在、高度な医療情報システムが実現し、データの利活用が求められており、医療情 報に対するニーズも大きく変化しています。すなわち、蓄積された医療情報の活用がパスと同様に今後 の病院経営の改善に非常に重要となっています。
いかに無駄なく効率的な入院治療を行うかが大切であり、クリニカルパスは標準治療を行うことに よってばらつきを減らす効果があります。
そこで、パスを経営にどう活かすかは経営思想の違いに大きく影響しますが、「現実的に」DPC入院 期間に合わせたパスの設定にする病院もあれば、「将来を展望し」在院日数を短縮した高度急性期機能を 目指す病院もあります。
このセッションでは、様々なパスに対する思想に基づき、先に述べた医療情報(コスト分析など)が病 院経営にもたらしたものを議論したいと考えています。
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当院におけるクリニカルパスを活用した
経営改善の現状 ERASと急性期期間の短縮
−DPCデータによる急性期期間の分析−
山本 貴道
(やまもと たかみち)1、望月 卓馬
3、黒田 ゆみ
3、 山田 芳弘
2,3、秋田 武宏
4、川端 晃一郎
2、山本 佳代
5、 鈴木 千佳代
5、中村 典子
5、服部 東洋男
21聖隷浜松病院 診療部、2同 事務長室、3同 経営企画室、
4同 診療情報管理室、5同 看護部
川村 研二
(かわむら けんじ)1、田中 瑞栄
2、三浦 有紀
2、 三浦 基嗣
3、森下 毅
41恵寿総合病院 泌尿器科、2恵寿総合病院 医療秘書課、
3恵寿総合病院 医事課、4恵寿総合病院 事務部
DPCが普及した現在において、より効率的な医療を実 践していくにはクリニカルパスの利用が欠かせない。当 院では従来からクリニカルパス委員会を設け、院内で のパスを普及させ医療の標準化を図ってきた。2014年 の段階ではパス適用率は38.6%と低めであった。Joint Commission International(JCI)受審以後、医療の標準化 をさらに推し進めることとなり、2019年に入り51.8%ま で上昇している。
医療の標準化という視点以外でも、パスによってDPC II期間越えを減少させることは、経営戦略上極めて重要 となってきている。診療報酬の改定のたびに、これらの 期間の日数も変わるため、それに合わせパスも積極的に 変更してきた。当院ではパスに関わってきたコアメンバー でパス推進プロジェクトを立ち上げ、方向性を議論し、
最終的にクリニカルパス委員会に諮り、パスの新規作成 や普及を行っている。2016年に11.1日であった当院の 平均在院日数は、2018年には10.7日に減少した。病院 全体の単価はその影響で上昇している。このようにクリ ニカルパス委員会を巻き込んだ施策は、当院の診療密度 の改善にも大きく寄与したと考えられる。
人口の高齢化と共に疾病構造も変わりつつある。心不 全や誤嚥性肺炎、圧迫骨折などの患者が増え、退院して 自宅に帰ることも困難なケースが多い。地域全体で患者 をみていくため地域連携パスにも力を入れている。脳卒 中、大腿骨頚部骨折から始まったが、最近では肺炎の地 域連携パスを普及させるように取り組んでいる。経済効 果に関しては今後検討していくが、患者のケアおよび経 営戦略の面でもパスによる改善効果に期待が持たれる。
【目的】
当院は能登半島に位置しており、現時点では多死 社会であるが、今後は高齢層の死亡数は減少し少死社会 へと移行する。当院泌尿器科では2012年から900例の ERASを実施してきたが、重篤な合併症などは発生せず 入院期間は短縮した。泌尿器科患者年齢とERAS急性期 期間について検討した。
【方法】
患者背景として年齢と手術件数の年次変化を検討 した。DPCデータによる急性期期間の分析はE・Fファ イルをもとに、入院から退院までの1日ごとの検査、注射、
緊急手術等の金額を投入医療資源として算出し、その平 均値を基準値と定め、急性期期間は基準値を超える術後 期間と定義した。
【結果】
泌尿器科外来患者の平均年齢2006年67.1歳で あったが2018年72.5歳と高齢化し、10年前に外来通院 していた患者の約3分1が死亡していた。2008年以降の 入院患者の年齢の変化は認めず、手術件数も約150件 と一定であった。経尿道的膀胱腫瘍切除術43例では、
DPCデータから推定した術後急性期期間は中央値10.5時 間(範囲:1.0〜 15.0時間)、小切開腎手術26例では中央 値8.9時間(範囲:5.0〜 55.0時間)であった。
【考察】
人口減少の高齢化地域においてERASを施行し医 療の質の向上を目指し医療を行ってきた。ERASにおい ても、コスト削減と質向上の両面をバランスよく達成す る「経済アウトカム」の重要性を考えるべきであり、DPC データを利用した解析も有効である。今後は、医療圏の 人口動態を把握した診療計画が必要になり、高齢者が可 能な限り住み慣れた地域で生活できる、良好で質の高い 医療を適切な入院期間で行うことが重要である。
【結論】DPCデータを用いた医療資源分析で、急性期と回
復期の判別が可能であった。
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人口減少下における病院経営と
標準化治療の役割について 原価計算を用いた
クリニカルパスの経済性分析
寺田 文彦
(てらだ ふみひこ)11社会医療法人近森会 近森病院 管理部
野田 章弘
(のだ あきひろ)1、松本 晃太郎
1、岩下 明日香
1、 内田 元
21済生会熊本病院 医事企画室、2済生会熊本病院 経理室
【はじめに】
高知県では先行した人口減少と高齢化・治療 の高度化によって、全県単位での医療体制の再構築が求 められている。2025年に10年先の高齢化率・医療需給 体制を迎える地域において、現場レベルでの実情把握と
「地域医療計画の具体的実行」を行うにあたり、国の医療 費削減に則った施策の中で機能別に医療機関が果たす役 割を明確化して、個別・具体的な連携が必要となってい る。そのためにはDPCとクリニカルパスの運用は欠かせ ない。本発表では、同一病院内での病棟間連携およびグ ループ病院間での垂直統合は病院収益と業務効率化に寄 与するかを検証した。
【活動内容】
病棟間連携および病院間での垂直統合のメ リットは、理念および運営方針の共有が図りやすく、職 員間の情報交換や意思疎通が容易にとりやすいため、業 務標準化のツールとしてクリニカルパスを利用している。
パスは79種類(うち53種類はDPCコードあり)、そのう ち50種類はパスの設定日数が入院期間Ⅱ以内に設定され ている。チーム医療で多職種が病棟常駐して治療にあた る場合は、パスによる業務標準化のメリットは大きい。
【考察】
機能分化した際に必要な連携体制は、「病棟間連 携」、「地域医療連携」、「職種間連携」であり、業務効率 化と働き方改革の改善に影響を与える。個々のスタッフ が専門性を発揮でき、主役になれる職場環境の整備が最 重要である。
【結論】
高度急性期病院として地域で存在し続けるために は、在院日数の短縮化と実患者数の増患は欠かせない。
各地域における人口や疾病動向、医療機関数や立地条件 などを総合的に考慮して、「地域での自院の役割と立ち位 置」の最終決断をする時期にきているのではないか。
【はじめに】
クリニカルパス(以下、パス)は患者のアウト カムをチームで共有、評価しケアプロセスの改善につな げることを目的としている。当院では入院患者の約63%
にパスを適応しているが、パスが当院の収支にどのよう な影響を与えているか、2018年度の入院患者について患 者別原価計算を用いて分析を行った。
【活動内容】
原価計算はDPCデータであるEFDファイル から収集した診療行為を活動単位とした活動基準原価計 算を行った。薬剤や材料などの患者ごとに直課できる費 用は直接費として直課し、間接費は損益計算書の勘定科 目ごとに診療行為を収集することで、診療行為ごとの間 接費を算出した。本手法を採用した理由としてDPCデー タを用いることで、入院だけでなく、外来や手術手技、
部門別の分析など、汎用性が期待できるためである。
【考察】
原価計算の結果、手術などのドクターフィーが高 い診療行為の実施により差益が見込まれる一方、それら 要素が少ない診療行為が中心となる疾患については差益 が低い結果となった。また、入院収益はDPC/PDPSによ るため、在院日数が延長しDPC期間が進むに従い、1日 あたりの差益が低下した。収支の要因として、スタッフ 数や設備等の充実を図ってきたことにより、病床1床あ たりにかかる間接費が高いことが挙げられた。
【結論】
当院の経営は高診療密度、高回転によって成立し ている。パスを活用し、在院日数を可視化、標準化する ことで、限りある病床を最大限活用することが経済性を 高めることにつながる。今後もパスの改訂を重ね、医療 の質を確保しながら、在院日数を短縮することは、高度 急性期病院としての使命であると共に、当院においても 大きなメリットとなる。
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ドキュメント内
第20回日本クリニカルパス学会学術集会抄録集
(ページ 59-63)