1) 試料の調製(粗精製試料溶液の作成)
本方法においては、絶縁油試料重量に対し、ヘキサンにて重量体積比で 10 から 20 倍になるように調製した物を用いる。
a. 試料の秤量及び内標準物質の添加
清浄な試験管に、絶縁油試料約 0.1g を正確に秤量する。
量り取った量を有効数字 3 桁以上で記録する。
試料にクリーンアップスパイク溶液を 40ng(20μL)添加する
※10)
。 b. 粗精製試料溶液の作成i. 濃硫酸処理による粗精製
a.の試験管に 1wt.%SO
3
添加硫酸 5mL 程度を入れ、十分に振り混ぜる。その後、10 分から 15 分程度静置する
※11)
。ⅱ. 溶媒による抽出操作
i.の試験管に 5vol.%ジクロロメタン含有ヘキサン 2mL を加え
※12)
、十分に振り 混ぜる。i.の作業での静置時間終了後直ちに行う。その後硫酸層とヘキサン層が 分離するまで静置し、ヘキサンをパスツールピペットなどを用いて別の試験管に 取り出す。同様の操作を 3 回以上繰返し、得られたヘキサン層 6mL を窒素吹き付 け濃縮し※13)
、ヘキサンで 2mL に定容し、粗精製試料溶液とする。尚、抽出の際 に加える溶媒量は多いほうが抽出溶媒をほかの試験管に移し変えやすく、又、抽 出回数が多いほうがより回収率の低下を抑えられる。しかし、抽出溶媒量が増え ることにより、濃縮工程でより多くの時間を要する。2) 機器(油種)ごとによる精製工程 a. 油種の判定方法
油種の判定は、(4).1).b.i.の操作過程において着色などの視覚的特徴により行 うことが新油においては可能である
※14)
。長期使用された絶縁油においては明確 に判断できないこともあり、油の由来(変圧器に用いられたものか、コンデンサ ーに用いられたものか等)の情報も含めて判断するが、判定方法を(6)留意事項※1に示す。油種ごとでの処理方法は、基本は硫酸処理及びシリカゲルカラム処理 であるが、詳細には3グループに分かれる。それぞれのグループに含まれる絶縁 油を下記に示す。
・A グループ(変圧器):1 種、6 種、7 種(変圧器用絶縁油)及び DOP
・B グループ(コンデンサ):2 種、4 種、5 種(芳香族炭化水素類)
・C グループ:3 種(ポリマー分子)
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3) 油種グループごとでの必要となる追加粗精製操作方法
油種により、(4).1)における工程に加え、シリカゲルクロマトグラフ等の異なる前 処理が必要である。各油種グループでの前処理方法を示す。
a. A グループでの精製操作
試料がトランス由来であることが判明していて、かつ鉱油由来であることが事前に 判明している場合には、試料をヘキサンで重量体積比 10 から 20 倍程度に希釈(例と して、試料1g をヘキサンで 10 から 20mL に定容)し、試験管にその一部(1mL 程度)
を 1wt.%SO
3
添加濃硫酸 5mL 程度と共に入れ、よく振とうすることにより処理を行う ことができる。この場合、次工程ではヘキサン層より 0.5mL を正確に分取することに なる。i.硝酸銀シリカゲル/シリカゲルによる精製操作
① ヘキサンをクロマト管上部に注ぎ、自然流下で充填したシリカゲル全体にヘキ サンを展開させ洗浄する。その後、注尃筒などを用いてヘキサンを加圧注入する 等してシリカゲルの気泡を除き(気泡の除かれたシリカゲルは半透明になる)、
コンディショニングを行う。(4).1)で硫酸により粗精製した試料溶液(ヘキサン 層)2mL よりホールピペット等で 0.5mL 正確に分取し、コンディショニングを行っ た硝酸銀シリカゲル/シリカゲル積層カラムの上端に添加する。試料溶液がカラム 内へ展開した後、鉱油溶出範囲分(当分析例では添加した試料溶液との合計で 6.5mL)のヘキサンを数 mL ずつ数回に分けてカラム上端に添加して、試料溶液を 展開する。
② 鉱油画分のヘキサンが全て流下した後、回収用の試験管をカラム下端に置き、
展開溶媒を回収できるようにする(PCB の画分)。PCB 溶出範囲分のヘキサン(当 分析例では 16mL)をカラム上端に添加し、溶出液を回収する。
ii.精製試料の濃縮操作
窒素吹き付けにより、試料溶液を 0.5mL 程度まで濃縮する。その際、試料溶液が 乾固しないように注意する。濃縮後の試料は、500ng/mL のシリンジスパイク溶液 20μL を添加し、ヘキサンで正確に 1mL に定容する。又、GC 測定の際に、フタル酸 エステル類等により測定が妨害される場合は、硫酸を尐量添加し振とうすることに より除かれることがある
※15)
。b. B グループでの精製操作 i.1wt.%SO
3
添加濃硫酸での追加処理B グループに該当する油種については、粗精製試料溶液より 0.5mL を試験管に分 取し、窒素吹き付け濃縮によりヘキサンを留去する。ヘキサンを留去した試験管
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に 1wt.%SO
3
添加濃硫酸 5mL 程度を入れ、(4).1).b.i.及び ii.の操作を行う。抽出 した試料溶液は窒素吹き付け濃縮の後、1mL に定容し粗精製試料溶液とする。ii.硝酸銀シリカゲル/シリカゲルによる精製操作
① ヘキサンをクロマト管上部に注ぎ、自然流下で充填したシリカゲル全体にヘキ サンを展開させ洗浄する。その後、注尃筒などを用いてヘキサンを加圧注入する 等してシリカゲルの気泡を除き(気泡の除かれたシリカゲルは半透明になる)、
コンディショニングを行う。(4).2)での溶液 1mL をカラム上端に添加した後、試 験管内をヘキサン 1mL で洗い込み、さらにカラム上端に添加する。このとき、先 に添加した試料溶液がカラム内へ展開した後に添加することにより、カラム内で の試料の広がりを抑えられる。同様に数回洗い込みを行った後、残りの鉱油画分 のヘキサン(添加した試料溶液および洗い込みヘキサンとの合計で 6.5mL)をカラ ム上端に添加する。
② 鉱油画分のヘキサンが全て流下した後、回収用の試験管をカラム下端に置き、展 開溶媒を回収できるようにする。(PCB の画分)PCB 溶出範囲分のヘキサン(当分 析例では 16mL)をカラム上端に添加し、溶出液を回収する
※16)
。iii.硫酸シリカゲルによる精製操作
B グループ試料は、その大部分が芳香族化合物であり、ここまでの精製操作では 特に基準値近傍の低濃度試料での定量が困難な場合がある。
ここでは、シリカゲルおよび硫酸シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィ ーでの方法を以下に示す。尚、PCB の分画に関しては、使用する試薬やロットなど により確認する必要がある。使用するシリカゲルでの分画(PCB の溶出範囲)の確 認を事前に行うこと。
① 硫酸シリカゲル(タンデム式)カラムの作成
硝酸銀シリカゲル/シリカゲル積層カラムと同様に内径 8mm のガラス管を用いた 場合の例を示す。
まず、清浄なガラス管(内径 8mm)の下端に脱脂綿をつめシリカゲルが流れ落ち ないようにする。次に、シリカゲル 0.5g、44%硫酸シリカゲル 1.0g を正確に量り とり、順にクロマト管に乾式充填する。充填材の内容と順序は、シリカゲル 0.5g、
硫酸シリカゲル 1.0g、シリカゲル 0.5g、硫酸シリカゲル 1.0g、シリカゲル 0.5g、
硫酸シリカゲル 1.0g、シリカゲル 0.5g の計 7 層である。各々のシリカゲルを充填 する際には、クロマト管を軽く叩くことにより密に充填するようにする。
② 試料の精製操作
ヘキサンをクロマト管上部に注ぎ、自然流下で充填したシリカゲル全体にヘキ サンを展開させ洗浄する。その後、加圧等してシリカゲルの気泡を除く(気泡の 除かれたシリカゲルは半透明になる)。(4).3).b.ⅱで濃縮・定容した試料溶液 1mL をカラム上端に添加する。添加した試料溶液がカラム内へ展開した後、試験管内
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をヘキサン 1mL で洗い込み、洗液をカラム上端に添加する。同様の操作を数回行 う。その後、PCB 溶出範囲分のヘキサンをカラム上端に添加し、溶出液を回収する。
(当測定例では試料溶液、洗液を合わせ、ヘキサン 5mL から 15mL の範囲で PCB が 溶出する)
iv. 精製試料の濃縮操作
窒素吹き付けにより、試料溶液を 0.5mL 程度まで濃縮する。その際、試料溶液 が乾固しないように注意する。濃縮後の試料は、500ng/mL のシリンジスパイク溶 液 20μL を添加しヘキサンで正確に 1mL に定容する。又、GC 測定の際に、フタル 酸エステル類等により測定が妨害される場合は、硫酸を尐量添加し振とうするこ とにより除かれることがある。
※15)
c. C グループでの精製操作
他の油種グループと異なり、C グループ試料では(4).1).b.ii.工程での抽出操作 は行えない。試料重量に対して、10 から 20 倍容のヘキサンで希釈調製(試料 1g を量り取り、ヘキサンで 20mL に定容)し、粗精製試料溶液とする
※17)
。 i.硝酸銀シリカゲル/シリカゲルによる精製操作① ヘキサンをクロマト管上部に注ぎ、自然流下で充填したシリカゲル全体にヘキサ ンを展開させ洗浄する。その後、注尃筒などを用いてヘキサンを加圧注入する等 してシリカゲルの気泡を除き(気泡の除かれたシリカゲルは半透明になる)、コ ンディショニングを行う。(4).3).c.で希釈調製した試料溶液よりホールピペット 等で 0.5mL 正確に分取し、(3).1).f.で作成したカラムの上端に添加する。試料溶 液がカラム内へ展開した後、鉱油溶出範囲分(添加した試料溶液との合計で 6.5mL)
のヘキサンを数 mL ずつ数回に分けてカラム上端に添加して、試料溶液を展開する。
鉱油画分のヘキサンが全て流下した後、回収用の試験管をカラム下端に置き、展 開溶媒を回収できるようにする。
② PCB 溶出範囲分の 5vol.%ジクロロメタン含有ヘキサン(当分析例では 16mL)を カラム上端に添加し、溶出液を回収する。
※18)
ii.精製試料の濃縮操作
窒素吹き付けにより、試料溶液を 0.5mL 程度まで濃縮する。その際、試料溶液 が乾固しないように注意する。濃縮後の試料は、500ng/mL のシリンジスパイク溶 液 20μL を添加しヘキサンで正確に 1mL に定容する。又、GC 測定の際に、フタル 酸エステル類等により測定が妨害される場合は、硫酸を尐量添加し振とうするこ とにより除かれることがある。