第 2 章 感度解析に基づく託送経路特定手法
2.3. 電力系統における感度解析
2.3.1. 電力潮流方程式と変数の分類
N個のノードを持つ一般の電力系統の電力潮流は一般にN元の複素数連立方程式で表されるが、
有効電力、無効電力を発電と消費に分けて書き直すと式(2.3-1)のように書くことができる。
∑
+ +
=
+ ks k k k N k
ks jQ C jD E Y E
P
α &α &α k=1,2,…,N (2.3-1) 式(2.3-1)において
Pk:ノードkにおける発電有効電力 Qk:ノードkにおける発電無効電力 Ck:ノードkにおける消費有効電力 Dk:ノードkにおける消費無効電力
α:ノードk自身も含めたノードkに隣接するノード
E&k:ノードkの電圧ベクトル
α
Y&k :ノードkとノードα間の伝達アドミタンス
Y&kk:ノードkの駆動点アドミタンス
ここで、ノードkの電圧ベクトルE&kを極形式で表すと式(2.3-2)のようになる。
j k
k
k E e
E& = ϑ (2.3-2)
Ek:電圧の大きさ θk:位相角
また、アドミタンスY&kαを直角座標形式で表すと式(2.3-3)のようになる。
α α
α k k
k G jB
Y& = + (2.3-3)
α
Gk :コンダクタンス α
Bk :サセプタンス
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これを式(2.3-1)に代入して実部と虚部(有効電力と無効電力)に分けると2N個の方程式g2k-1=0、
g2k=0(k=1,2,…,N)が得られる。すなわち、式(2.3-4)、式(2.3-5)のようになる。
( ) ( )
{ }
∑
− + −+
−
− =
α α kα
θ
kθ
α kαθ
kθ
α kk k
k C P E E G B
g2 1 cos sin (2.3-4)
( ) ( )
{ }
∑
− − −+
−
=
α α kα
θ
kθ
α kαθ
kθ
αk k k
k D Q E E G B
g2 sin cos (2.3-5)
式(2.3-4)、式(2.3-5)の両式は、各ノードにおける発電及び消費有効電力、無効電力、電圧、位相 角、コンダクタンス、サセプタンスを変数とする2N元の実数連立方程式である。
ここで、式(2.3-4)、式(2.3-5)に含まれる変数について考えてみる。
電力系統内のいろいろな電気量を一括整理すれば、潮流計算における既知量と未知量、調整設 備に対応する操作量、および一定な不変量に大別される。
まず、電力潮流計算においては、発電機母線、負荷母線、スラック母線の指定値の違いから既 知量と未知量は表 2.3-1 のようになる。表 2.3-1 のほとんどの量は電力潮流方程式式(2.3-4)、式 (2.3-5)に含まれている。
これらの緒量を次の3種の変数に分類する。
(1) 従属変数ベクトルX(2N次元列ベクトル)
前述の潮流計算における未知量の中で、母線の有する未知量とする。すなわち、従属変 数Xとしては、母線の種類別に
発電機母線:Qk、θk 負荷母線:Ek、θk スラック母線:Pk、Qk が選ばれることになる。
式(2.3-4)、式(2.3-5)に含まれるものの総数は、各母線から2 つずつ選んで、2N である。
これは電力潮流が一義的に定まるための条件でもある。
(2) パラメータベクトルP(列ベクトル)
電力潮流計算における既知量の中で、通常の運用では不変な量であるもの。すなわち、
送電線路および機器の定数がこれに相当する。
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表 2.3-1 潮流計算における既知量と未知量
(3) 操作変数ベクトルU(M次元列ベクトル)
系統運用における調整設備の操作量に対応するものであり、調整設備の種類によって、
式(2.3-4)、式(2.3-5)中のいずれを操作変数に選ぶかが決まる。操作変数の要素としては次 のものを選ぶことができる。
① 電力潮流計算における母線での既知量
すなわち、以下のものを選ぶことができる。
発電機母線:Pk、Ek 負荷母線:Pk、Qk スラック母線:Ek、θk
例えば操作量として、発電機有効出力、発電機端子電圧を考えるときは、それぞれPk、 Ekを操作変数Uとすればよい。
② 電圧無効電力制御における調相設備 並列キャパシタ:Dk
リアクター:Dk
③ 式(2.3-4)、式(2.3-5)に含まれない各種変圧器の操作量 負荷時電圧調整器(LRC)のタップ:n
既知量 未知量
発電機母線
有効電力Pk
母線電圧の大きさEk
無効電力Qk
母線電圧の位相角θk
負荷母線
有効電力Pk 無効電力Qk
母線電圧の大きさEk 母線電圧の位相角θk
スラック母線
母線電圧の大きさEk 母線電圧の位相角θk
有効電力Pk 無効電力Qk
送電系統 送電線路と機器の 接続状態と定数
送電系統内の母線電圧の 大きさと位相角Ek、θk 線路・機器を流れる有効・
無効電力潮流Pkm、Qkm
28 移相変圧器:nejθ
④ 負荷母線における負荷(遮断負荷)
遮断負荷:Ck + jDk
⑤ 発電機母線における脱落発電機
脱落発電機の有効・無効出力:Pk + jQk
ここで④、⑤を制御変数と考える場合は、それぞれCkとDkおよびPkとQkの複合された ものであり、①~③の場合とは異なっているが、感度行列の計算時には、まったく同様に 扱うことができる。