• 検索結果がありません。

3.8 調査対象となっている関連者間取引の検討は、検証対象者の選択(必要な場 合)、事案の状況に応じた最も適切な移転価格算定手法の選択と適用、検証の基準 となる財務指標(取引単位利益法の場合)、比較対象の選択、及び関係する場合に は差異調整の決定に影響する要素を特定することが目的である。

A.3.1 納税者の個別取引と包括取引の評価

3.9 理想的には、独立企業間の条件の最も正確な近似値を得るため、取引ごとに 独立企業原則を適用すべきである。しかし、個々の取引が密接に結びついている又 は連続性がある取引であるため、取引ごとに適正な評価をすることができない場合 がしばしばある。例えば、a) 商品又は役務の長期的な提供契約、b) 無形資産の使 用に関する権利、及び c) 密接に関連した一連の製品(例えば、製品ライン)で、

製品ごと又は取引ごとに価格を設定することが現実的ではないものが含まれるかも しれない。また、関連製造者に対して製造ノウハウの使用許諾と必要不可欠な部品

の供給を行うような場合も、個々に独立企業の条件を評価するより、二つの条件を まとめて評価する方がより合理的かもしれない。このような取引は、最適な移転価 格算定手法に基づく 1 つ又は複数の方法を用いて、まとめて評価を行うべきである。

さらに、別の関連者を経由する取引の場合、個々の取引を個別に検討するよりも、

経由する取引を全体の一部として検討する方がより適切であるかもしれない。第 6 章 別添事例26参照。

3.10 納税者の取引が包括的に扱われることがある他の例としては、他に、ポート

フォリオアプローチがある。ポートフォリオアプローチとは、納税者が、必ずしも ポートフォリオのうちの単一の製品によってではなく、ポートフォリオを通じて適 切な収益を稼得する目的で、取引を束にするという事業戦略である。例えば、ある 製品が納税者によって低い利益又は損失となるように販売されうるが、その理由が、

同じ納税者の別の製品や関連するサービスについて、需要が創出され、販売がなさ れて高い利益となるからということがある(例えば、コーヒーマシンと詰め替え用 コーヒーパック、プリンタとカートリッジなどの装置と専用の消耗品)。同様のア プローチは、様々な業種にみられる。ポートフォリオアプローチは、比較可能性分 析において、比較対象の信頼性を検討する際に踏まえるべき事業戦略の一例である。

事業戦略についてはパラグラフ 1.114-1.118参照。しかし、パラグラフ 1.129-1.131で 議論されるように、これによって、長期にわたる損失の計上や業績不振が説明でき るわけではない。さらに、ポートフォリオアプローチが許容されるためには、その 対象が合理的でなければならず、様々な取引が様々な経済理論を有し、区分される べきである場合に、移転価格算定手法を納税者の全社ベースで適用するために、こ のようなアプローチが用いられてはならない。パラグラフ 2.84-2.85 参照。最後に、

上記のコメントは、多国籍企業グループのメンバーがグループ内の他のメンバーに 利益を移転するため、独立企業の場合よりも下回るような収益でも認められると誤 解されてはならない。特に、パラグラフ1.130参照。

3.11 関連者間で個々に契約されている取引について、その条件が独立企業間のも

のであるかを判断するため、包括的に評価する必要があるかもしれない一方で、関 連者間で包括的に契約されている取引を、個々に評価する必要があるかもしれない。

多国籍企業は、特許、ノウハウ及び商標の使用許諾、技術サービス及び事務サービ スの提供、並びに生産設備のリースのように、数多くの便益について取引をパッケ ージ化し、単一の価格を設定することがある。このような取決めは、しばしば、パ ッケージ取引といわれる。パッケージ取引に商品販売が含まれる可能性は低いもの の、商品販売の代金には付随的サービスを含んでいる場合があるかもしれない。場 合によっては、パッケージを全体として評価することが現実的でなく、パッケージ の要素を分解しなければならないこともある。このような場合、税務当局は、個々

の要素ごとに移転価格を算定した後、パッケージ全体の移転価格がトータルとして 独立企業間のものであるかを検討すべきである。

3.12 非関連者間取引においてでさえ、パッケージ取引は、国内法や租税条約に基

づく税務上の取扱いに従った要素について、一体化することがある。例えば、使用 料の支払いは源泉徴収されるかもしれないが、リース料の支払いはネットで所得課 税されるかもしれない。このような場合、やはりパッケージベースで移転価格算定 することが適切であるかもしれず、その後、税務当局は、その他の税務上の理由に 応じて、パッケージの個々の要素に価格を配分することが必要か否かを決定できる かもしれない。この決定に当たり、税務当局は、独立企業間の類似の取引を分析す るのと同じ方法で、関連者間のパッケージ取引を調査すべきである。納税者は、パ ッケージ取引が適切な移転価格の算定を反映していることを示すことができるよう に準備しておくべきである。

A.3.2 意図的相殺

3.13 意図的相殺とは、関連者が意図的に関連者間取引の条件に組み込む相殺のこ

とである。これは、あるグループのメンバーが他のメンバーに便益を提供する一方、

当該メンバーから受ける他の便益もあり、そのバランスがある程度取れている場合 に発生する。これらのメンバーは、それぞれが受け取った便益が、それら便益に対 する支払いの全部又は一部として提供した便益と相殺されるべきであり、租税債務 を評価する際にはこれらの取引の純利益又は純損失(それが存在する場合)のみが 考慮されるべきであると主張するかもしれない。例えば、あるメンバーが、別のメ ンバーから別の関連で提供されたノウハウの見返りに、当該メンバーに対し特許を 使用許諾し、この結果、いずれのメンバーにも利益も損失も生じていないと主張す ることがあるかもしれない。このような取決めは、独立企業間でも行われることが あるが、相殺が主張されている各便益の価値を定量化するに当たっては、これらの 取決めを独立企業原則に従って評価すべきである。

3.14 意図的相殺は、その規模及び複雑性において様々であるかもしれない。相殺

は、取引間の単純なバランス(例えば、製品製造に用いる原材料を安価で提供して もらう代わりに、製造した商品を安価で提供すること)から、一定期間内に両当事 者間に発生した全ての便益をバランスさせるよう総合的に清算するような取決めま で存在する。独立企業であれば、便益が十分正確に定量化でき、かつ、契約書が事 前に作成されない限り、後者のタイプの取決めを行うことはまず考えられない。通 常であれば、独立企業は、受取りと支払いとをそれぞれ別に行い、その結果の利益 や損失を受けることを選好するであろう。

3.15 意図的相殺の認識は、税務上、関連者間取引の移転価格は独立企業原則に従 うものでなければならないという基本的な要件を変更するものではない。納税者に とっての優れた慣行は、2 以上の関連者間取引に相殺を意図的に組み込んでいること を開示し、当該相殺を考慮した後に、それらの取引の条件が独立企業原則に従って いることを証明する(又は適切な資料を保持していること、及び示すことのできる 十分な分析を行ったことを認める)ことであろう。

3.16 個々の取引が独立企業原則を満たしているか否かを判断するためには、それ

らを個別に評価する必要があるかもしれない。取引をまとめて分析する場合、比較 対象取引の選定に注意を払うとともに、パラグラフ 3.9-3.12の議論に留意すべきであ る。各国税制における相殺についての取扱いの相違又は二国間租税条約における支 払いについての取扱いの相違のため、関連者間の国際取引における相殺の条件と、

独立企業間の純粋な国内取引における相殺の条件とは完全に一致するものではない かもしれない。例えば、売買代金と使用料との間の相殺は、源泉徴収によって、複 雑なものになるであろう。

3.17 納税者は、課税所得を意図せず過大に申告していたとして、調査の際に移転

価格の減額調整を求めることがある。税務当局は、自らの裁量において、このよう な要請を認めることも、認めないこともできる。また、税務当局は、そのような要 請を、相互協議や対応的調整(第4章参照)の文脈で検討することもできる。

A.3.3 検証対象者の選択

3.18 第 2 章で述べた原価基準法、再販売価格基準法又は取引単位営業利益法を適

用する場合、検討の基準となる財務指標(原価へのマークアップ、粗利益又は営業 利益指標)を適用する検証対象者を選択する必要がある。検証対象者の選択は、取 引の機能分析と一貫性がなければならない。原則として、移転価格算定手法を最も 信頼できる形で適用でき、かつ、最も信頼できる比較対象を見つけ出すことができ る者が検証対象者となる。すなわち、検証対象者は、より複雑性の低い機能を有す る者になることが最も多い。

3.19 これは、以下のように説明することができる。A社は、2種類の製品P1とP2

を製造し、それを他国の関連者である B社に販売しているとする。A社は、B社が所 有する価値ある無形資産を使用し、B社が定めた技術仕様に基づき、P1を製造してい る。さらに、P1 の取引において、A 社は、単純な機能を遂行しているにすぎず、当 該取引に関係する価値あるユニークな資産に寄与していない。この P1 の取引につい ての検証対象者は、A 社になることが最も多いであろう。次に、A 社は、製品 P2 も 製造しており、これについては、A 社が、価値ある特許権や商標などの価値あるユニ