3.47 比較対象を調整する必要性、及び正確性と信頼性についての要件については、
本ガイドラインのいくつかの箇所で、独立企業原則の一般的適用との関連、また、
より具体的に各算定手法との関連で指摘されている。比較可能であるということは、
比較される複数の状況間の差異(仮にある場合)が、検証対象の条件に重要な影響 を与えないこと、又は、そのような差異の影響を取り除くために相当程度正確な調 整が可能であるということを意味している。特定の事案において差異調整を行うべ きか否か(また行う場合にはどのような調整を行うべきか)は、判断の問題であっ て、C における費用とコンプライアンス上の負担に関する議論に照らして評価され るべきである。
A.6.1 様々な種類の差異調整
3.48 差異調整の例としては、関連者間取引と非関連者間取引の間で異なる会計慣 行から生ずる差異を取り除くための会計上の一貫性の調整、比較可能でない重要な 取引を取り除くための財務データの区分、資本、機能、資産又はリスクの差異の調 整がある。
3.49 売掛金、買掛金及び棚卸資産の水準の差異を反映させるための運転資本調整
の例は、第 3 章の別添に示されている。このような調整が実務上行われているとい う事実は、これを日常的に又は義務的に行わなければならないことを意味するもの ではない。むしろ、このような調整を提案する場合(いかなる種類の調整でも)、
それにより比較可能性が向上することを示す必要がある。また、関連者と非関連者 の間で相対的な運転資本の水準に重要な差異がある場合には、比較対象候補の比較 可能性の特徴について更なる調査を行うことになるであろう。
A.6.2 差異調整の目的
3.50 差異調整は、それにより結果の信頼性が向上すると考えられる場合に(そし
てその場合にのみ)検討すべきである。これに関して考慮すべき点としては、調整 を検討している差異の重要性、調整の対象となるデータの質、調整の目的、及び調 整の実施に用いられるアプローチの信頼性が挙げられる。
3.51 強調すべき点は、比較に重要な影響を与える差異の調整のみが適切であると
いうことである。納税者の関連者間取引と、第三者の比較対象取引との間には、常 にいくらかの差異が存在するだろう。差異が比較の信頼性に大きな影響を与えない 場合には、未調整の差異があっても比較は適切であるかもしれない。しかし、主要 な比較可能性の要素について多くの調整又は重大な調整が必要であれば、当該第三 者間取引が実際のところ十分に比較可能ではないことを示唆している可能性がある。
3.52 調整は常に正当化されるとは限らない。例えば、売掛金の差異の調整は、会
計基準に大きな差異があり、これが解消されない場合には、特に有効という訳では ないかもしれない。同様に、洗練された調整は、比較対象の検索結果が「科学的」
で信頼性と正確性があるものだという誤った印象を与えるために適用されることが ある。
A.6.3 差異調整の信頼性
3.53 運転資本の水準の差異のような差異の調整を「日常的」で当然であるとみな
すことや、カントリーリスクの調整を、より主観的で追加的な証拠と信頼性が必要 であるとみなすことは、適切ではない。比較可能性の向上が期待できる差異調整の みを行うべきである。
A.6.4 差異調整の文書化及び検証
3.54 求められる水準での差異調整の透明性が確保できるか否かは、差異調整に関
する説明の有無、調整が適切と考えられる理由、調整がどのように計算されたか、
調整が各比較対象の結果をどのように変化させたか、及び調整が比較可能性をどの ように向上させたかによる。差異調整の文書化に関する論点については、第 5 章で 取り上げる。
A.7 独立企業間価格幅 A.7.1 総論
3.55 取引条件が独立企業のものに一致するか否かを判断する上で最も信頼できる
単一の数値(例えば、価格又は利幅)を得ることによって、独立企業原則を適用で きる場合がある。しかし、移転価格の算定は厳密な科学ではないため、相対的に同 等の信頼性があるような、複数の適切な算定手法や、それに基づく数値の幅が生み 出される場合も多くある。このような場合、この幅を構成している数値の間にみら れる差異は、一般に、独立企業原則の適用は独立企業間であれば成立したであろう 条件の近似しか生み出さないという事実によりもたらされたものといえよう。幅の 中の様々な数値は、比較可能な状況の下で比較可能な取引を行う独立企業が当該取 引につき全く同じ価格を設定しない場合もあるという事実を表しているといえよう。
3.56 検討している比較対象取引の全てについて同じ程度の比較可能性が認められ
るわけではない場合もある。ある非関連者間取引の比較可能性の程度が他よりも劣 ると判断することが可能である場合、この取引を除外すべきである。
3.57 また、比較可能性の程度が劣るポイントを除外するためにあらゆる努力を行
ったとしても、それによって得られるものは、比較対象の選定に使用されたプロセス 及び比較対象につき利用可能な情報の制約の下で、特定又は定量化できずそれゆえ調 整することもできない一定の比較可能性の欠陥が残っていると考えられる数値の幅と いう場合もあるかもしれない。そのような場合、数値の幅の内にかなりの数値が含ま れているであれば、統計的手法を用いて、中心傾向に沿って幅を狭めると(例えば、
四分位幅やその他の百分位値)、分析の信頼性に向上に役立つかもしれない。
3.58 1つの関連者間取引を 評価するために複数の方法が適用される場合にも、
複数の数値からなる 1 つの幅がもたらされるかもしれない。例えば、関連者間取引 の独立企業的性質を評価するため、同程度の比較可能性が得られる 2 つの方法が使 用できることがある。適用する手法の性質やデータが異なることから、手法ごとに 異なる結果又は結果の幅が生じるかもしれない。それでも、それぞれの幅を、独立
企業の複数の数値からなる 1 つの容認可能な幅を設定するために用いることができ るかもしれない。この幅から得られたデータは、例えば複数の幅が重複する場合に は独立企業間価格幅をより正確に定めるために有用であり、また、複数の幅が重複 しない場合には、用いた複数の手法の正確性を再検討するために有用である。複数 の手法の適用による複数の幅の使用に当たり、それぞれの手法の相対的な信頼性と、
各手法に用いる情報の質によって結論が異なるため、これに関する一般的な原則は 述べることはできないだろう。
3.59 最適な手法(又は、適切な状況においては複数の手法、パラグラフ 2.12 参
照)の適用により、数値の幅ができる場合、当該幅のそれぞれのポイントの実質的 な偏差は、あるポイントを設定するのに用いたデータが、他のポイントを設定する のに用いたデータほど信頼できるものではなかったこと、又は比較対象データの特 徴に調整が必要なため、そのような偏差が生じている可能性があることを示してい るかもしれない。このような場合、さらにそれらのポイントの分析を行って、独立 企業間価格の幅に含めることが適当であるか否かを判断する必要がある。
A.7.2 幅の中の最適なポイントの選択
3.60 関連者間取引における関連条件(例えば、価格や利益)が独立企業間価格幅
に入っている場合、調整は行われるべきでない。
3.61 関連者間取引における関連条件(例えば、価格や利益)が税務当局の主張す
る独立企業間価格幅に入っていない場合、納税者には、関連者間取引の条件が独立 企業原則に沿うものであり、実績が独立企業間価格幅に収まっていること(つまり、
独立企業間価格幅は税務当局によって主張されているものとは異なること)を主張 する機会が与えられるべきである。納税者がその事実を証明することができない場 合、税務当局は、関連者間取引の条件を調整することになる、独立企業間価格幅の 中のポイントを決定しなければならない。
3.62 そのようなポイントの決定に当たり、比較的同等で高い信頼性を有する複数
の結果によって、当該幅が構成されている場合、当該幅の中のいずれのポイントも 独立企業原則を満たしているという議論の余地があろう。パラグラフ 3.57 で議論し たように比較可能性の欠陥が残っている場合、未知の又は定量化できない比較可能 性の欠陥が残っていることによる誤りが生じるリスクを最小化するために、そのよ うなポイントを決定するため中心傾向の値(例えば、データセットの具体的な特徴 に応じ、中央値、平均値又は加重平均等)を使用することが適切かもしれない。
A.7.3 極端な実績:比較可能性の検討事項