B.3.1 取引単位営業利益法に適用される比較可能性の基準
2.74 最適な移転価格算定手法の適用のためには、あらゆる事案において比較可能性
分析が実施されなければならず、取引単位営業利益法の選択及び適用のプロセスが、
他の手法より信頼性の低いものであってはならない。グッドプラクティスとしては、
取引単位営業利益法の適用する場合、他の手法の場合と同様に、比較可能な取引を 特定し、それによって得られたデータを使用する一般的なプロセス(パラグラフ 3.4 で述べているとおり)、又は確実な分析を行うための同等のプロセスに従うべきで ある。しかし、実務上、外部の比較対象取引に影響を与える要因に関する情報の水 準は、たいてい限定的であることが認識されている。独立企業間の結果について信 頼できる推定を行うには、柔軟に優れた判断を行うことが必要になる。パラグラフ 1.13参照。
2.75 価格は、製品差異に影響を受ける傾向があり、粗利益は、機能差異に影響を
受ける傾向がある。しかし、営業利益指標は、そのような差異によってそれほど大 きな影響を受けない。ただし、取引単位営業利益法は、再販売価格基準法や原価基 準法と同様、二つの企業間の機能が類似していれば常に信頼性のある比較ができる ということを意味するものではない。適用上、企業が果たす可能性のある広範囲の 機能の中から類似の機能を抜き出せたとしても、そのような機能に関連する営業利 益指標は、例えば、当該企業が、異なる収益水準を有する異なる経済セクターや市 場において当該機能を果たす場合には、やはり直ちに比較可能なものにはならない かもしれない。比較対象取引が非関連者間取引である場合、比較可能であるために は、当該関連者と非関連者の間で高い類似性が多く求められる。製品及び機能以外 にも様々な要因が営業利益指標に重大な影響を及ぼしうる。
2.76 営業利益指標の使用は、二つの理由から、移転価格の算定に、より大きな不
安定さをもたらす可能性がある。第一の理由は、営業費用が企業によって様々であ る可能性があるため、営業利益指標は、粗利益や価格に影響しない(又は実質的若 しくは直接的影響の少ない)要因から影響を受ける場合があるという点である。第 二の理由は、営業利益指標は、競争上の地位のように粗利益や価格に影響する要因 から影響を受ける場合があるが、これらの要因の影響を容易に取り除くことができ ないという点である。伝統的取引基準法の場合であれば、製品と機能について、よ り高い類似性を求める結果、これらの要因の影響を取り除くことができるかもしれ
ない。事案の事実と状況、特に、比較対象候補の費用構造及び収入に影響を与える機 能差異に応じ、営業利益指標は、粗利益に比べて、機能の範囲、複雑性の差異、リ スク水準の差異(契約上のリスク配分は第 1章 D.1.2.1 に沿って独立企業間のものと 仮定)から影響を受けにくいかもしれない。他方、事案の事実と状況、特に、固定 費と変動費の比率に応じて、取引単位営業利益法は、原価基準法又は再販売価格基 準法に比べて、稼働率の差異から影響を受けやすいかもしれない。これは、間接固 定費(例えば、製造固定費又は販売固定費)の吸収水準の差異は、営業利益指標に 影響を与えるであろうが、価格差異に反映されていなければ粗利益又は対コスト粗 利マークアップに影響を与えない可能性があるからである。粗利益及び営業利益指 標が受ける影響に関する説明について、本ガイドライン第 2章別添 I「粗利益と営業 利益指標が受ける影響」参照。
2.77 営業利益指標は、業界内の次のようなものから、直接的に影響を受けるかも
しれない。すなわち、新規参入企業の脅威、競争上の地位及び事業戦略、経営の効 率性、代替商品の脅威、コスト構造の変化(例えば、工場や設備の経過年数に反映 される)、資本コストの差異(例えば、自己資本か、借入金か)、事業に関する経 験の程度(例えば、当該事業は、スタートアップ段階にあるか、成熟しているか)
である。これらの各要因が、その他の多くの要因から、次々に影響を受けることが ある。例えば、新規参入企業の脅威の程度は、製品の差別化の程度、必要な資本額、
政府の補助金や規制などの要素によって決定されるであろう。これらの要素のいく つかは、伝統的取引基準法の適用にも影響を与えるかもしれない。
2.78 納税者が最高品質のオーディオプレーヤーを関連者に販売しており、比較可
能な事業活動に係る唯一利用可能な利益に係る情報は、一般的な中品質のオーディ オプレーヤーの販売に係る利益であるとする。最高品質のオーディオプレーヤーの 市場は売上が伸びており、参入障壁は高く、競争企業の数は少なく、製品の差別化 の可能性は大きいとする。これらの差異の全てが、調査対象の事業活動の収益性と 比較対象の事業活動の収益性に重要な影響を及ぼすと思われる。したがって、この ような事例では調整が必要となるだろう。他の手法を採用する場合と同様、必要な 調整に係る信頼性は、分析の信頼性に影響を与える。留意しなければならないのは、
二つの企業が全く同一の業界に属していたとしても、それぞれの市場シェアや競争 上の地位等により、その収益性は異なる場合があるということである。
2.79 上述のような要因による不確さの可能性を、独立企業間価格幅の大きさに反
映させることができるかという議論があるかもしれない。幅を採用することによっ て、ある程度は不確さの程度を軽減することは可能かもしれないが、ある納税者の 利益が当該納税者に特有の要因によって増加又は減少する状況を説明することはで きないかもしれない。そのような場合、幅は、固有の要因によって類似の影響を受
ける独立企業の利益を表すポイントを含んでいないかもしれない。したがって、幅 の使用は、上記の問題点を必ずしも解決することにはならないかもしれない。パラグ
ラフ3.55-3.66の独立企業間価格幅に関する議論参照。
2.80 取引単位営業利益法は、丁寧に、かつ、上述した差異を適切に調整して用い
られた場合、他では解決できない移転価格上の問題に、実務的な解決をもたらすか もしれない。営業利益指標が、比較可能な状況において同じ納税者が行った非関連 者との間の取引によって決定されない場合や、比較可能な非関連者間取引が独立企 業間の取引であるときに、営業利益指標に重大な影響を与えるような関連者と独立 企業との間の差異が適切に考慮されない場合には、取引単位営業利益法は使用され るべきではない。多くの国は、伝統的取引基準法について設けられたセーフガード が取引単位営業利益法の適用の際に見過ごされるかもしれないことを懸念している。
したがって、比較対象とされる企業の特徴についての差異が、利用される営業利益 指標に重大な影響を与える場合に、そのような差異を調整せずに取引単位営業利益 法を適用することは適切でないであろう。それらの調整の程度及び信頼性は、取引 単位営業利益法の下での分析の信頼性に影響を与えるであろう。パラグラフ 3.47-3.54の差異調整の議論参照。
2.81 比較可能性について、算定に係る一貫性もまた重要である。関連者と独立企
業の営業利益指標は、一貫性をもって算定されなければならない。さらに、減価償 却及び引当金のように、営業利益に影響を与える、営業費用と営業外費用の取扱い について、企業間で差異があるかもしれず、比較可能性を信頼できるものとするた めには、これらも考慮されなければならないであろう。
B.3.2 営業利益指標の選択と決定
2.82 取引単位営業利益法の適用に当たり、最適な営業利益指標は、事案の状況に
応じた最適手法の選択に関するパラグラフ 2.2及び 2.8の指針に従って選択すべきで ある。様々な指標の長所と短所を考慮すべきである。すなわち、関連者間取引の性 質の観点から考えた指標の妥当性(特に機能分析によって決定される)、当該指標 に基づいて取引単位営業利益法を適用するのに必要な信頼できる情報(特に非関連 の比較対象に関するもの)についての利用可能性、当該指標に基づいて取引単位営 業利益法を適用する際の関連者間取引と非関連者間取引の間の比較可能性の程度
(それらの間の差異を排除するために必要となるかもしれない差異調整についての 信頼性を含む)である。これらの要因について、営業利益の決定とそのウェイト付 けの双方に関して、以下で議論する。
B.3.3 営業利益の算定