1.157 多国籍企業グループのシナジーにより、比較可能性の問題及び比較可能性
の差異調整の必要性が発生する可能性がある。多国籍企業グループ及び関連者は、
同様の状況にある非関連者には通常利用できないグループのメンバー間の相互作用 又はシナジーから便益を受けることがある。グループシナジーは、例えば、総合的 な経済規模や購買力、総合的な統合型のコンピューター・通信システム、統合的な マネジメント、重複の排除、借入能力の拡大など膨大な同様の要因として出現する 可能性がある。多くの場合、このようなグループシナジーはグループ全体としては 好ましいため、望ましいコスト削減の実現や競合条件に応じて、グループのメンバ ーの稼得する合計利益が増加する。また、シナジーは負の影響を持つこともある。
例えば、機動力のある小規模な企業には見られない官僚的障壁ができるほどビジネ
ス規模及び範囲が大きくなった場合、あるいはグループ内で設定したグループ全体 のコンピューター・通信システム基準を、場合によっては最も効率がいいとは言え ないにもかかわらず使用せざるを得ない場合である。
1.158 本ガイドラインのパラグラフ 7.13 では、関連者が大規模な多国籍企業グル
ープに属するというだけで偶発的な便益を得た場合、グループ間でサービスを受け たと見なされるべきではなく、対価の支払いも必要ないことが示されている。この 文脈において、偶発的という用語は、この便益につながるような計画的な協調活動 又は取引がない状況で、単にグループ関係のみから発生した便益に対して用いられ る。偶発的という用語は、このような便益の量について説明しているのではなく、
このような便益が小規模又は相対的にわずかでなければならないということを示唆 するものではない。グループのメンバーシップに付随する便益についてのこのよう な一般的な見解に沿って、グループのメンバーシップのシナジーによる便益又は負 担は純粋に多国籍企業グループのメンバーシップの結果として生まれるものであり、
グループのメンバーの計画的な協調活動やグループのメンバーによる何らかの役務 提供など機能の遂行を伴わない場合、グループのメンバーシップから生ずるこのよ うなシナジーによる便益には、別途対価を支払う必要はないし、又は多国籍企業グ ループのメンバー間で具体的に配分する必要はない。
1.159 しかし、場合によっては、グループのメンバーシップのシナジーによる便
益又は負担はそのグループの計画的な協調活動から生じることがあり、かつ、多国 籍企業グループに対し市場における重大で明らかに特定可能な組織的なメリット・
デメリットを与えるかもしれないが、多国籍企業グループの一員ではない比較対象 取引に関係する市場参加者には与えられない。このような組織的なメリット・デメ リットが存在するかどうか、シナジーによる便益又は負担の性質及び源泉は何か、
シナジーによる便益又は負担はグループの協調活動を通じて生じるのかは、徹底的 な機能分析及び比較可能性分析4を行うことによってのみ判断することができる。
1.160 例えば、グループがボリュームディスカウントをうまく活用するためにグ
ループ内の 1 社に購買業務を集約し、このメンバーが購入した商品をグループ内メ ンバーに再販売する場合、グループの購買力を活かすグループの計画的な協調活動 が起きている。同様に、親会社又はリージョナルマネジメントセンターで一元的に 購買を担当するマネージャーが、サプライヤーと、グループ全体の最低購入量とそ
4 国内法制の違いにより、計画的な協調活動は常に取引を構成するとみなす国もあれば、そう しない国もある。しかしいずれの場合でも、意図的な協調活動とは、一の関連者が機能を果た し、資産を使用し、リスクを引き受けることで、他の一以上の関連者に対して独立企業間対価 が必要となるような便益を与えることであるという見解が合意された。例えば、パラグラフ 1.170-1.173の事例5参照。
れに見合う割引の交渉を行い、それを受けて、グループのメンバーが当該サプライ ヤーから商品を購入し割引を受ける場合、グループのメンバー間で具体的な購買取 引や販売取引がないにもかかわらず、グループの計画的な協調活動が起きている。
ただし、サプライヤーがグループと取引を行うためメンバーに対して有利な価格を 一方的に提示しても、計画的なグループの協調活動が生じているとは言えない。
1.161 グループの計画的な協調活動から生じる企業のシナジーがグループのメン
バーに対し、比較可能な非関連者にとっては一般的ではない重大なメリット・デメ リットを実際に与える場合、(i)このメリット・デメリットの性質、(ii)提供さ れた便益額又は損失額、及び(iii)この便益又は損失は多国籍企業グループのメン バー間でどのように配分されるべきか、を決定する必要がある。
1.162 グループの計画的な協調活動に起因する可能性のある重要なグループシナ
ジーが存在する場合、一般に、シナジーの便益は、シナジー創出に対する貢献度合 に応じてグループのメンバー間で配分されるべきである。例えば、グループのメン バーが購買活動を集約するため計画的な協調活動を行い、大量購入による規模の経 済を活用する場合、この大規模購買によるシナジーの便益は、購買活動の調整を行 うメンバーに適切な対価を支払った後で、それぞれの購買量に応じてメンバー間で 通常は配分されるべきである。
1.163 グループシナジーには、差異調整が求められるかもしれない。
事例1
1.164 P は金融サービス事業を行う多国籍企業グループの親会社である。グルー
プの連結財務状況が良いため、P は継続的に AAA の信用格付けを得ている。S はこ のグループのメンバーで、グループの他メンバーと同種の金融サービスを提供する 事業を行い、重要な市場で大規模な活動を行っている。しかし、S単独の財務状況で は、Baaの信用格付けとなる。それにもかかわらず、Sは Pグループのメンバーであ ることから、非関連の大手資金提供者は S に対し、格付け A の非関連者の借手に適 用される利率(つまり、Sが同一の財務状況の独立企業であれば適用されたであろう 利率よりも低いが、当該多国籍企業グループ親会社に適用される利率よりは高い利 率)で貸付を行う。
1.165 S が非関連の資金提供者から、格付け A の借手に適用される市場利率で
5,000 万 EURを借り入れるとする。同時に、Sは、Pの別の子会社であり、非関連の
資金提供者と同業の T からも、非関連の資金提供者と同一の条件及び同一の利率
(つまり、信用格付け A の利率)で、5,000万 EUR を借り入れるとする。この非関
連の資金提供者は、条件設定に当たり、S が T からも同時に融資を受ける事実を含 め、Sの他の借入金のことを認識していた。
1.166 この場合、T の S に対する貸付利率は独立企業間の利率である。理由は、
(i)比較対象取引において、非関連の資金提供者が S に適用した利率と同じである からである。また、(ii) Sがグループのメンバーでなければ利用できない低い利率 で非関連者から借入できるというグループシナジー便益に対する、対価支払や比較 可能性の差異調整は不要である。なぜならば、借入に係るシナジー便益は、Sがグル ープのメンバーであることのみから生じ、多国籍企業グループのメンバーの計画的 な協調活動によるものではないからである。
事例25
1.167 Sの信用状態及び借入力に関する事実関係は、先の事例と同じとする。Sは
A 銀行から 5,000 万 EURを借り入れる。機能分析では、A 銀行は正式な保証を付け
ずに格付け A の借手に適用される利率で、S に対して融資をするであろうことが分 かった。しかし、親会社は格付けAAAの借手の利率でA銀行から借入を行わせるた め、当該借入に保証を付けることに合意している。この場合、Sは当該保証に対して 親会社に保証料を支払わなければならない。独立企業間の保証の算定に当たっては、
Sの信用状態を Baaから Aではなく、Aから AAAに格上げするための保証料とすべ きである。S の信用状態が Baa から A に格上げされているのは、グループ内の受動 的な関係のみから得られたグループシナジーに起因するものであり、本節の規定に 基づき対価を支払う必要はない。Sの信用状態の Aから AAAへの格上げは、計画的 な協調活動、つまり親会社の保証によるため、対価が支払われるべきである。
事例3
1.168 A 社はグループ全体を代表して、一元的に購入を担当するとする。A 社は
非関連サプライヤーから購入し、関連者に再販売する。A 社は、グループ全体の購 買力を背景とした交渉力に基づき、サプライヤーと交渉し、製品価格を 200USD か
ら 110USD に下げることができる。この場合、A 社がグループの他のメンバーに対
して製品を再販売する際の独立企業間価格は 200USD 前後にはならない。代わりに、
A 社の購入調整業務に対し、独立企業間の対価を支払うことになる。この事例で、
比較可能性分析及び機能分析によって、比較可能な規模の購入を行う比較可能な非 関連者間取引において、比較可能な調整業務を行った場合、製品当たりの役務提供 料は、A 社実費にマークアップを上乗せし、合計 6USD と示唆されたとすると、A
5 事例2は、金融取引に関する保証料に係る包括的な移転価格指針を提供しているとみなすべ きではない。金融取引に関しては、独立企業間条件の決定に係る経済的な特徴の特定を含む、
移転価格に対する更なる指針が提供される予定である。当該作業は、2016年及び2017年に行 われる。