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2.59 A社は、一般大衆向け置時計用計時装置の国内製造業者である。A 社は、こ の製品を外国子会社 B社に販売する。A社はその製造事業から 5%粗利益マークアッ プを得ている。X社、Y社、Z社は、一般向け腕時計用計時装置の非関連の国内製造 業者である。X社、Y 社、Z社は非関連の海外業者に販売する。X社、Y社、Z社は、

その製造事業から 3-5%粗利益マークアップを得ている。A 社は、一般管理費を営業 費用として計上しており、売上原価に計上していない。しかし、X社、Y社、Z社は 一般管理費を売上原価の一部に計上しているため、一般管理費が粗利益マークアッ プに反映されている。したがって、会計処理の一貫性を与えるために、X 社、Y 社、

Z社の粗利益マークアップを調整する必要がある。

2.60 C社(D国所在)は、E社(F国所在)の 100%出資の子会社である。D国の 労働賃金は F 国より非常に低い。C 社はテレビを組み立てているが、コスト・リス クは E 社が引き受ける。組立に必要な部品及びノウハウ等は全て、E 社が供給して いる。品質基準を満たさないテレビであっても、E 社が買上げることになっている。

品質検査完了後、E 社がコスト・リスクを引受けて、数か国の自社流通センターに 発送する。C社が果たす機能は、純粋に受託製造機能と言える。C社が負担する可能 性のあるリスクは、結果的に発生するかもしれない契約上の品質及び数量における 差異である。原価基準法の適用に当たり、そのコストは、組立作業に関係する全て のコストから成るだろう。

2.61 多国籍企業グループのメンバーであるA社は、同グループのメンバーB社と B 社からの受託研究を行うことに合意する。研究に関する全リスクは B 社が引き受 ける。また、B 社は、その研究開発に基づく無形資産を全て所有するため、その研 究から収益を稼得するチャンスも有する。これは原価基準法が適用される典型的な 事例である。当事者が合意しているように、その研究のための全費用は補償されな ければならない。追加費用は、行われた研究がいかに革新的で複雑なものであるか を反映することとなろう。

第Ⅲ部:取引単位利益法

A 序

2.62 第Ⅲ部では、事案の状況により、最適な場合(パラグラフ 2.1-2.12 参照)に、

独立企業原則に沿うように利用できる取引単位利益法の検討を行う。取引単位利益 法は、関連者間の特定の取引から生ずる利益を検討する手法である。独立企業原則 に該当する利益法は、OECD モデル租税条約第 9 条に沿うものであり、かつ本ガイ ドラインで述べられる比較可能性分析の要件に従う手法のみである。特に、いわゆ る「利益比準法(CPM)」又は「修正原価基準法/修正再販売価格基準法」は、それが 本ガイドラインに沿う限りにおいてのみ認められる。

2.63 取引単位利益法は、関連者間取引から生ずる利益を検討するものである。本

ガイドラインにおいて、取引単位利益法とは、取引単位利益分割法及び取引単位営 業利益法を指す。関連者間取引の利益は、独立企業が比較可能な状況において設け たであろう条件から影響を受けたか否かの適切な指標となりうる。

B 取引単位営業利益法(TNMM)

B.1 総論

2.64 取引単位営業利益法は、一の関連者間取引(又は、パラグラフ 3.9-3.12 の原

則に基づき包括することが適切な複数の関連者間取引)から稼得した営業利益につ き、適切なベース(例えば、コスト、売上高、資産)に対する営業利益を検討する ものである。そのため、取引単位営業利益法は、原価基準法及び再販売価格基準法 と類似の形で機能する。この類似性は、取引単位営業利益法が信頼性をもって適用 されるためには、再販売価格基準法又は原価基準法の適用と一貫性を持って適用さ れなければならないということを意味している。これは特に、納税者が一の関連者 間取引(又は、パラグラフ3.9-3.12の原則に基づき包括することが適切な複数の関連 者間取引)から得る営業利益指標は、理想的には、同じ納税者が比較可能な非関連 者間取引から得る営業利益指標、すなわち「内部比較対象」を参考に決定されるべ きである(パラグラフ 3.27-3.28 参照)。これが不可能な場合、ある独立企業が比較 可能な取引(「外部比較対象」)において得たであろう営業利益が指針となるかも しれない(パラグラフ 3.29-3.35 参照)。関連者間及び非関連者間の取引の機能分析 は、取引が比較可能か否か、信頼できる結果を得るためにどのような調整が必要か を判断するために必要である。さらに、比較可能性のためのその他の要件、とりわ けパラグラフ2.74-2.81における要件が適用されなければならない。

2.65 取引当事者がユニークで価値のある無形資産に貢献している場合、取引単位 営業利益法は信頼性があるとは考えにくい。パラグラフ 2.4参照。この場合、一般的 に取引単位利益分割法が最適な手法であろう。パラグラフ 2.115参照。ただし、一方 の当事者が関連者間取引に関係する全てのユニークで価値のある貢献をしており、

他方の当事者がユニークで価値のある貢献を一切していない場合、片側検証手法

(伝統的取引基準法又は取引単位営業利益法)が適用できることもあるだろう。こ のような場合、検証対象者は複雑性の低い方とすべきである。検証対象者の概念に 関する議論については、パラグラフ3.18-3.19参照。

2.66 取引の一方当事者が、ユニークでない貢献をしている、例えば、ユニークで

ないビジネス工程やユニークでない市場知識等のユニークでない無形資産を使用し ているという場合も多くある。このような場合、伝統的取引基準法や取引単位営業 利益法を適用するに当たって求められる比較可能性を満たすであろう。なぜなら、

ユニークでない貢献を行う比較対象取引の利用が見込まれるからである。

2.67 なお、取引にユニークで価値ある無形資産が関係していないからといって、

直ちに、取引単位営業利益法が最適な手法になるわけではない。

B.2 長所及び短所1

2.68 取引単位営業利益法の一つの長所は、営業利益指標(例えば、資産に対する

収益、売上に対する営業利益、その他の適切な営業利益の算定法)は、CUP 法で用 いられるような価格の場合よりは取引上の差異によって受ける影響が少ないという 点である。また、営業利益指標は、粗利益に比べて、関連者間と非関連者間の取引 の機能の差異に対して寛大かもしれない。各企業が果たす機能の差異は、しばしば 営業費用の差異に反映される。したがって、粗利益に大きな幅があったとしても、

営業利益指標では概ね類似の水準となるかもしれない。さらに、一部の国では、粗 利益又は営業利益における費用の分類についての公表データに明確性を欠くため、

粗利益の比較可能性の評価が困難になることがあるが、営業利益指標を使用すれば この問題を回避できるかもしれない。

2.69 取引単位営業利益法のもう一つの実務上の長所は、あらゆる片側検証手法と

同様、調べるべき財務指標が、片側関連者(「検証対象」当事者)の財務指標のみ であるということである。同様に、取引単位利益分割法の場合のように、事業活動 に関わる全参加者の帳簿及び記録を共通の基準で記載したり、費用を全参加者に配 分したりすることは、しばしば必要とされない。このことは、取引の一方当事者が 複雑で相互に関連する活動を数多く行っている場合や、一方当事者に関する信頼で

1 粗利益及び営業利益の指標の感度について説明した例は、第2章の別添Iに見られる。

きる情報の入手が困難な場合、実務上のメリットとなりうる。ただし、関連者間取引 を適切に性格付けし、最適な移転価格算定手法を選択するためには、常に比較可能 性分析(機能分析を含む)を行う必要があり、基本的に、比較可能性分析を行うに 当たっては、検証対象者及び非検証対象者の双方について、関連者間取引に関係す る 5 つの比較可能性要素に関する情報の収集が必要である。パラグラフ 3.20-3.23 参 照。

2.70 取引単位営業利益法には多くの欠点も存在する。営業利益指標の場合、非関

連者間の価格又は粗利益に対しては影響を及ぼさない又は実質的若しくは直接的な 影響がより少ない要因から影響を受けることがあり、この要因によって、独立企業 間の営業利益指標を、正確に信頼できるよう決定することが難しくなるかもしれな い。したがって、以下のパラグラフ 2.74-2.81 で述べるとおり、取引単位営業利益法 の比較可能性を確立するための詳細な指針が重要となる。

2.71 どの移転価格算定手法を適用する場合でも、非関連者間の取引情報が必要で

あるが、それは関連者間の取引時点では入手できないだろう。そのため、特に、関 連者間の取引時点において取引単位営業利益法を適用することは、納税者にとって 難しいかもしれない(ただし、パラグラフ 3.75-3.79 で議論されているとおり、複数 年度データがこの懸念を軽減するかもしれない)。さらに、当該手法を適切に適用 するために必要な、比較可能な非関連者間取引に帰せられる利益についての十分に 具体的な情報が入手できないかもしれない。また、関連者間取引の利益算定に使用 される営業利益指標を決定するための、当該取引に関係する収入及び営業費用を確 定することも課題かもしれない。税務当局は、他の納税者の調査から、より多くの 利用可能な情報を得るかもしれない。税務当局は利用できるが納税者には開示され ない情報に関する議論はパラグラフ 3.36 を、タイミングに関する議論はパラグラフ 3.67-3.79を参照。

2.72 再販売価格基準法や原価基準法と同様に、取引単位営業利益法は、片方の関

連者にのみ適用される。比較可能性についての不十分な基準が適用される場合、移 転価格とは無関係の多くの要因が営業利益に影響するかもしれないという事実は、

当該手法に基づく分析の片側検証の性質と併せて、取引単位営業利益法の全体的な 信頼性に影響を与えるかもしれない。取引単位営業利益法の比較可能性を決定する ための詳細な指針は、以下のB.3.1で述べる。

2.73 取引単位営業利益法を適用する場合、特に、取引価格にまでさかのぼって計

算することが不可能な場合、適切な対応的調整の決定が課題になるであろう。例え ば、納税者が売上側と仕入側の双方について関連者と取引を行うような場合である。