2.14 CUP 法は、関連者間で取引された資産又は役務の価格を、比較可能な状況
の下で比較可能な独立企業間で取引された資産又は役務の価格と比較する手法であ る。双方の価格に差がある場合には、それは、関連者間の商業上又は財務上の関係 における条件が独立企業間のそれではないこと、さらに、関連者間取引価格を非関 連者間取引価格に引き直す必要があるかもしれないことを示しているといえよう。
2.15 第 1 章で述べた原則に従えば、次の二条件のいずれかに該当する場合、非
関連者間取引(比較対象取引)と関連者間取引との比較に CUP 法を用いることがで きる。二つの条件とは、a) 比較される取引間又はそれらの取引を行う企業間のいか なる差異(仮にあっても)も、自由市場における価格に重大な影響を与えない、あ るいは、b) そのような差異の重大な影響を排除するために、相当程度正確な調整を 行うことができる、である。比較可能な非関連者間取引を見いだすことができる場 合、CUP 法は独立企業原則を適用するための最も直接的かつ信頼のおける手法であ り、他のいかなる手法よりも望ましい手法である。
2.16 関連者間取引に十分類似し、価格に重大な影響を及ぼす差異のない独立企
業間の取引を見いだすのは難しいであろう。例えば、全体として同じ利益率を得る ほど事業活動の内容が十分に類似していたとしても、関連者間の取引において移転 された資産と非関連者間の取引において移転された資産の僅かな差異が、価格に重 大な影響を及ぼすことがある。この場合、何らかの調整を行うことが適切であろう。
パラグラフ 2.17 のとおり、そのような調整の程度と信頼性が、CUP 法の下での分析 の相対的な信頼性に影響を与える。
2.17 関連者間取引と非関連者間取引とが比較可能であるか否かの検討に当って は、単に製品の比較可能性だけでなく、より広くビジネス上の機能が価格に与える 影響に注意を払わなければならない(すなわち、第 1 章の比較可能性を決定する諸 要素)。関連者間取引と非関連者間取引の間又はそれらの取引を行う企業間におい て差異がある場合には、価格に与える影響を排除するために相当程度正確な調整を 行うことは困難であろう。相当程度正確な調整を行うという課題があるからといっ て、CUP 法の適用可能性を形にはめたように除外すべきではない。実際的な考えを 採ることで、CUP 法の適用を可能とし、かつ、必要に応じて他の適切な手法による 補強が可能となるような柔軟なアプローチにつながる。他の適切な手法はいずれも その相対的な正確さに応じて評価されるべきである。CUP 法においてデータが適切 に使用されるよう、データ調整のためにあらゆる努力を払うべきである。いずれの 手法についてもそうであるが、CUP 法の相対的な信頼性は、比較可能性を達成する ために行なう調整の正確さの程度により影響を受ける。
2.18 特定の事案の状況において最適な移転価格算定手法を選択するためのパラグ ラフ 2.2の指針に従えば、関連者間でのコモディティ(商品)の譲渡に係る独立企業 間価格を設定するための適切な移転価格算定手法は、通常、独立価格比準法(CUP 法)であろう。「コモディティ」には、各業界の非関連者間取引における価格設定 に当たって、独立第三者に参考値として用いられる相場価格があるような物理的
「製品」も含むものとして理解しなければならない。「相場価格」とは、国際又は 国内商品取引所における、関連期間のコモディティ価格をいう。この文脈において、
相場価格には、非関連者間の価格設定の参考指標となる、公認かつ周知の価格報告 機関若しくは統計機関の価格、又は政府の価格設定機関の価格も含まれる。
2.19 CUP 法において、コモディティ取引のための独立企業間価格は、比較可能な
非関連者間取引を参照し、かつ、相場価格で比較可能な非関連者間取決めを参照す ることにより決定される場合がある。コモディティの相場価格は、通常、特定の時 点で特定の条件において取引される特定の種類及び数量のコモディティのための価 格に関する、市場における独立した買主と売主との間の合意を反映する。特定のコ モディティに相場価格を利用することが適切か否かを判断するに当たり、相場価格 が、関連者間取引と比較可能な非関連者間取引のための価格交渉のために、その業 界における通常のビジネスプロセスの中で、広く日常的にどの程度利用されている かということが、関係してくる。そのため、相場価格は、各事案の事実及び状況に 応じて、関連者間のコモディティ取引の価格設定のための参考値とみなせる場合が あるかもしれない。適切に選択された相場価格を適用する場合、納税者と税務当局 との間には整合性がなければならない。
2.20 CUP 法がコモディティ取引に確実に適用されるようにするためには、関連者 間取引及び非関連者間取引又は相場価格で表される非関連者間取決めの経済的な特 徴が比較可能である必要がある。コモディティに関し、経済的な特徴には、とりわ け、コモディティの物理的な特性及び品質のほか、関連者間取引の契約条件(取引 される数量、契約期間、引渡しの時期及び条件、輸送、保険及び外貨の条件等)が 含まれる。一部のコモディティに関しては、特定の経済的な特徴(例えば、迅速な 引渡し)がプレミアム又は値引きにつながるかもしれない。相場価格が独立企業間 価格又は独立企業間価格幅を算定するための参照値として利用される場合、取引所 と相場価格に関する基準仕様を定める標準契約が、関係してくることがある。調査 中のコモディティ取引の価格に重大な影響を及ぼす、関連者間取引の条件と、非関 連者間取引の条件又はコモディティの相場価格を算定する条件との間に差異がある 場合には、合理的に正確な調整を行い、取引の経済的な特徴が比較可能になるよう にすべきである。サプライチェーンにおいて他の企業が果たす機能、使用する資産 及び引受けるリスクの形式において行った貢献については、本ガイドラインに定め る指針に従い、対価が支払われるべきである。
2.21 税務当局による移転価格調査の実施を補助するために、納税者は、信頼性の
高い証拠及び資料(自己の移転価格文書化の一部として)、コモディティ取引のた めの価格設定方針、比較可能な非関連者間取引又は相場価格で表される比較可能な 非関連者間取決めに基づく価格調整を正当化するのに必要な情報、その他関連情報
(使用した価格設定方法、第三者最終顧客契約、適用されたプレミアム又は値引き、
価格設定日、サプライチェーンの情報、税務目的以外で作成した情報等)を提供す べきである。
2.22 相場価格を参照することにより決定されるコモディティ取引に特に関連する
要素は、価格設定日である。
価格設定日は、コモディティ取引のための価格を算定するために当事者が選択した 特定の時間、日付又は期間(例えば、平均価格が算定される対象となる特定の日 数)に言及するものである。納税者が、関連者間のコモディティ取引開始時点にお いて、関連者間で合意した価格設定日の信頼性のある証拠(例えば、提案事項及び 承諾事項、契約書又は登録された契約書、信頼性のある証拠を構成し得る取決めの 条件を定めるその他の文書)を提供でき、かつ、当該証拠が当事者の実際の行動又 は事案のその他の事実と一致する場合、実際の取引の正確な説明に関する第 1 章 D における指針に従い、税務当局は、関連者間の合意した価格設定日を参照してコモ ディティ取引のための価格を算定すべきである。関連者間の書面合意において定め られた価格設定日が、両当事者の実際の行動又は事案のその他の事実と一致しない 場合、税務当局は、(業界慣行を考慮に入れた上で)事案の事実関係に沿い、かつ、
独立企業が比較可能な状況において合意したであろう、異なる価格設定日を決定す ることができる。納税者が、関連者間で合意し価格設定日の信頼性のある証拠を提 供せず、税務当局が第 1 章 D における指針に基づき異なる価格設定日を別途決定す ることができない場合、税務当局は、入手可能な証拠に基づき、コモディティ取引 のための価格設定日を決定することができる。当該価格設定日は、船荷証券又は輸 送の手段に応じたこれと同等の文書を証拠とする発送日である可能性がある。これ は、発送日における平均相場価格に、税務当局が入手できる情報に基づいた適切な 差異調整を行った価格を参考として、取引されたコモディティ価格が算定されるで あろうことを意味する。決定された価格設定日に起因する二重課税は、適用される 租税条約に基づく相互協議を通じて解決が図られることが重要であろう。