• 検索結果がありません。

酵素触媒によるポリ ( L - アスパラギン酸エチル ) の合成

ドキュメント内 目次 (ページ 61-68)

第 3 章 酵素触媒によるポリアスパラギン酸の合成と生分解性評価 43

3.3 実験方法

3.3.2 酵素触媒によるポリ ( L - アスパラギン酸エチル ) の合成

(1)プロテアーゼBSの透析とタンパク質濃度の測定

市販のプロテアーゼBS中に含まれる無機塩などの水溶性低分子化合物を除去するために透 析を行い、簡易精製を行った後に重合触媒として用いた。

磁気撹拌子を付した20 mLナスフラスコに4℃に冷却した蒸留水10 mLをはかり取り、攪 拌している蒸留水中へリパーゼBS原末(77×104 u/g) 500 mgを少量ずつ加えて溶解した。

60 ℃の温水で洗浄した透析膜(Spectra/Por Cellusose Ester MembraneMWCO: 500)を用 いて、プロテアーゼBS原末水溶液を4 ℃蒸留水中で24時間透析を行った。透析開始8時間 は2時間ごとに4℃蒸留水を交換した。透析膜内のプロテアーゼBS水溶液を4個の100 mL ナスフラスコに移し、凍結乾燥により簡易精製を施したプロテアーゼBS (276 mg)を54%の 回収率で得た。

透析前のプロテアーゼBS原末及び透析によって簡易精製を施したプロテアーゼBSのタン パク質濃度をLowry法により測定した。Lowry法で用いた各水溶液の組成を以下に示す。

A液 : 2%炭酸ナトリウム0.1 M水酸化ナトリウム水溶液

B液 : 1 wt%酒石酸ナトリウム水溶液

C液 : 1 wt%硫酸銅五水和物水溶液

D液 : フォリン・シオカルト–フェノール試薬を蒸留水で2倍に希釈した水溶液 E液 : A液50 mL、B液0.5 mL及びC液0.5 mLを混合した調製液

試料溶液(適用範囲: 25〜 500µg protein/mL)0.2 mLをマイクロテストチューブにはか り取り、これにE液1 mLを加え、テストチューブミキサーを用いて撹拌し、室温で10分間 静置した。これにD液0.1 mLを素早く加え、テストチューブミキサーを用いて撹拌し、室温 で30分間静置した後、吸光度を測定した。低濃度の場合には吸収波長750 nmで、高濃度の場 合には吸収波長500 nmで測定した。

高濃度(125〜500µg protein/mL)用検量線として、100、200、300、400、500µg protein/mL のBSA (Albumin bovine Fraction V)水溶液を調製した。それぞれに対して上記の方法にし たがって500 nmの吸光度を測定した。同様に、低濃度 (25〜125µg protein/mL)用検量線 として、25、50、75、100、125µg protein/mLのBSA水溶液を調製し、750 nmの吸光度を 測定した。

透析前のプロテアーゼBS原末及び透析によって簡易精製を施したプロテアーゼBSはいず

れも500 nmの測定波長で吸光度が得られた。得られた吸光度からタンパク質濃度を換算した

結果、透析前及び透析後のプロテアーゼBSのタンパク質濃度はそれぞれ74及び95%であっ た(Table 3.3)。この結果から、透析を行うことによって、タンパク質濃度は約20%増加し、水 溶性低分子化合物が除去されたことが示された。

Table 3.3: Content of protease BS measured by Lowry method.

Enzyme Absorbance of 500 nm Content of protein/%

Protease BS before dialysis 0.174 74

Protease BS after dialysis 0.233 95

(2)プロテアーゼBSによるL-アスパラギン酸ジエチルの重合

H2N COOEt

COOEt

H NH

OR COOEt

O n Protease BS

acetonitrile, 40 oC

(R = H or Et) Diethyl L-aspartate α-Poly(ethyl L-aspartate)

Scheme 3.3: Enzymatic polymerization of diethylL-aspartate.

プロテアーゼBSを触媒に用いたL-アスパラギン酸ジエチルの重合は含水有機溶媒中で行っ た。溶媒スクリーニング、水分量、反応温度、酵素濃度、モノマー濃度及び反応時間について 検討を行い、重合条件の検討及び重合挙動の解析を行った。一例として、ポリ(L-アスパラギ ン酸エチル)(Mw = 3,400、Mw/Mn = 1.3)の合成法を記す。

ネジ付き小試験管にプロテアーゼBS 49.0 mg(30 wt% relative to monomer)をはかり取 り、アセトニトリル1 mL、蒸留水 45 µL (4.5 vol%) 及び6 mm撹拌子を入れて撹拌後、L -アスパラギン酸ジエチル150µL (163.5 mg; 0.86 mmol)をマイクロシリンジを用いて添加し、

アルゴン雰囲気下、40 ℃の油浴場で2日間撹拌した。反応系内の水を除去するために無水硫 酸ナトリウム1.5 gを加えて振とうした後、次いで反応生成物を溶解させるためにクロロホル ム/トリフルオロ酢酸(TFA)= 100/3 (v/v)溶液5 mLを加えて振とうした。不溶の酵素及び 硫酸ナトリウムをろ紙を敷いた桐山漏斗を用いて吸引濾別した。濾液をロータリーエバポレー ターを用いて濃縮し、さらに昇温デシケーターを用いて40℃で2日間減圧乾燥することによっ てポリ(L-アスパラギン酸エチル)、L-アスパラギン酸モノβ-エチル、及び未反応L-アスパラギ ン酸ジエチルの混合物130.2 mgを得た。この粗ポリマーの1H NMRをFig. 3.6に示す。

3.3 実験方法 57

2 0

8 6 4 ppm

TMS DMSO

HOD

H2N

COOEt

COOEt

Diethyl L-aspartate H

NH

OEt COOEt

O n

Poly(ethyl L-aspartate)

H2N

COOEt

COOH

β-Ethyl L-aspartate

Fig. 3.6: 300 MHz 1H NMR spectrum of a mixture of poly(ethyl L-aspartate), β-ethyl

L-aspartate and diethyl L-aspartate in DMSO-d6.

Poly(ethylL-aspartate): δ(ppm) = 1.10-1.22 (m, 3H, -COOCH2CH3), 2.40-2.78 (m, 2H, -CH2COO-), 3.96-4.14 (m, 2H, -COOCH2CH3), 4.49 (m, 1H,α-linkage -CH-), 8.0-8.3 (br,1H, -NHCO-). β-Ethyl L-aspartate: δ (ppm) = 1.10-1.22 (m, 3H, -COOCH2CH3), 2.78-2.97 (m, 2H, -CH2COO-), 3.96-4.14 (m, 2H, -COOCH2CH3), 4.25 (t, 1H, -CH-,J = 2.4 Hz). Diethyl L-aspartate: δ (ppm) = 1.10-1.22 (m, 3H, -COOCH2CH3), 2.78-2.97 (m, 2H, -CH2COO-), 3.96-4.14 (m, 2H, -COOCH2CH3), 4.29 (t, 1H, -CH-,J = 2.4 Hz).

得られた混合物中の未反応モノマー、生成ポリマー及び副生成物のL-アスパラギン酸モノ β-エチルの組成比は1H NMRで未反応モノマーのメチン基 (4.29 ppm)、ポリマーのメチン基 (4.49 ppm)及び副生成物のメチン基(4.25 ppm)の積分値を用いて算出した。粗ポリマーの分 子量測定はSECを用いて行った。また、粗ポリマーの主鎖及び末端構造の解析は1H NMRに 加えてMALDI-TOF MSを用いて行った。

粗ポリマーの精製は再沈殿により行った。粗ポリマー 130.2 mgをDMSO 0.5 mLに溶解 し、これを磁気撹拌子を付した蒸留水120 mL中に攪拌しながら徐々に滴下し、ポリマーを析 出させた。ポリマー懸濁液を遠心分離機を用いて20分間遠心分離(4000 rpm)を行い、副生 成物、未反応モノマー及び酵素残渣が含まれる上澄み液をデカンテーションにより除去し、沈 殿物を得た。ポリマーを水で洗浄するために、沈殿物に蒸留水 120 mLを加えて撹拌した後、

再び遠心分離操作を行い、上澄み液を除去した。この洗浄操作を再度繰り返すことによって精 製ポリマー123 mgを74%の収率で得た。精製ポリマーの1H NMR及び13C NMRチャート をそれぞれFig. 3.7及びFig. 3.8に示す。

3.3 実験方法 59

2 0

8 6 4 ppm

TMS DMSO

HOD

NH

COOEt

O n

α-Poly(ethyl L-aspartate)

Fig. 3.7: 300 MHz1H NMR spectrum of poly(ethyl L-aspartate) in DMSO-d6.

50 0

200 150 100 ppm

DMSO

Fig. 3.8: 75 MHz 13C NMR spectrum of poly(ethyl L-aspartate) in DMSO-d6. Poly(ethyl L-aspartate): 1H NMR (300 MHz, DMSO-d6); δ (ppm) = 1.18 (m, 3H, -COOCH2CH3), 2.5-2.8 (m, 2H, -CH2COO-), 4.06 (m,2H, -COOCH2CH3), 4.56 (m, 1H, α-linkage -CH-), 8.0-8.3 (br,1H, -NHCO-).

13C NMR (75 MHz, DMSO-d6); δ (ppm) = 13.4 (-COOCH2CH3), 35.6 (-CH2COO-), 49.4 (-COOCH2CH3), 59.7 (α-linkage -CH-), 169.6 (α-α -NHCO-).

(3) MALDI-TOF MS測定用試料溶液の調製

(ポリマー試料) 

ポリマー溶液10µL、マトリックス溶液90 µL及びイオン化助剤溶液10µL を0.5 mLマイ クロテストチューブにはかり取り、テストチューブミキサーを用いて攪拌してポリマー試料溶 液を調製し、この1µLをMALDI-TOF MS測定用ターゲットに塗布して測定した。ポリマー 溶液、マトリックス溶液及びイオン化助剤溶液の調製法を以下に記す。

ポリマー溶液  

乾燥後のポリマー 1 mgを1.5 mLマイクロテストチューブにはかり取り、クロロホル ム/トリフルオロ酢酸= 100/3 (v/v) 200 µL又はDMF 200µLを加えて溶解し、ポリ

マー溶液(5 mg/mL)を調製した。ポリマーが溶解しづらい場合は、ウォーターバスを

用いて約50 ℃に加温して溶解した。

マトリックス溶液  

2,5-Dihydroxybenzoic acid (genstic acid) 10 mgを1.5 mLマイクロテストチューブに はかり取り、クロロホルム/メタノール = 9/1 (v/v)混合溶媒 1 mLを加えて溶解し、

マトリックス溶液(10 mg/mL)を調製した。

イオン化助剤溶液  

トリフルオロメタンスルホン酸リチウム 10 mgを1.5 mLマイクロテストチューブには かり取り、クロロホルム/メタノール = 9/1 (v/v)混合溶媒1 mLを加えて溶解し、イ オン化助剤溶液(10 mg/mL)を調製した。

(検量線用試料)

検量線用標準試料にはPeptide calibration standard (1000-4000 Da) (Bruker Daltonics Inc.)を用いた。ペプチド溶液 2 µL及びマトリックス溶液 6 µLを0.5 mLマイクロテスト チューブにはかり取り、テストチューブミキサーを用いて攪拌してペプチド試料溶液を調製し、

この1 µLをMALDI-TOF MS測定用ターゲットに塗布して測定した。Peptide Calibration Standardに含まれるペプチドをTable 4.4に示す。また、ポリマー溶液及びマトリックス溶液 の調製法を以下に記す。

ペプチド溶液  

Peptide caribration standard (1000-4000 Da)の入った容器に0.1%トリフルオロ酢酸 水溶液125µLを加えて溶解し、各ペプチドの濃度が4 pmol/µLになるようにペプチド 溶液を調製した。

マトリックス溶液  

α-Cyano-4-hydroxy-cinnamic acid 5 mgを1.5 mLマイクロテストチューブにはか り取り、アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸水溶液 = 1/2 (v/v)混合溶媒 1 mL

3.3 実験方法 61 を加え、テストチューブミキサー及び超音波をあててα-cyano-4-hydroxy-cinnamic acid を懸濁させた。その後、小型微量遠心機を用いて懸濁物を沈殿させることで α-cyano-4-hydroxy-cinnamic acid 飽和溶液を得、これをマトリックス溶液として調製 した。

Table 3.4: Peptide calibration standard (1000-4000 Da).

Substance Mono isotopic Average [M+H]+ [M+H]+ Angiotensin 1046.54 1047.20 Angiotensin 1296.69 1297.51 Substance P 1347.74 1348.66

Bombesin 1619.82 1620.88

ACTH clip 1-17 2093.09 2094.46 ACTH clip 18-39 2465.20 2466.73 Somatostatin 28 3147.47 3149.61

ドキュメント内 目次 (ページ 61-68)