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酵素触媒によるジウレタンジオール (x,y) とジエチルカーボネートの重

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第 4 章 酵素触媒によるポリ(カーボネート‐ウレタン)のケミカルリサイクル 95

4.4 結果・考察

4.4.2 酵素触媒によるジウレタンジオール (x,y) とジエチルカーボネートの重

ジウレタンジオール(x,y)の重縮合によって行った。反応温度、酵素、溶媒、モノマーの仕込 み比、基質濃度、酵素濃度及び反応時間について検討を行い、最適条件を求めるとともに重合 挙動の解析を行った。これらの検討では、10種類のジウレタンジオール(x,y)のなかでジウレ タンジオール(3,6)を用いた。

(1)酵素触媒によるジウレタンジオール(x,6)のカルバメートエステル交換反応

重縮合によるポリマーの合成では、モノマー仕込み比が生成ポリマーの収率及び分子量に大 きく影響を与えることが知られている。したがって、酵素触媒によるジエチルカーボネートと ジウレタンジオール (x,y)の重縮合でも、仮にジウレタンジオール (x,y)分子中のカルバメー トエステルが酵素触媒によってエステル交換反応を起こす場合、モノマー仕込み比による重縮 合の制御が困難になると考えられる。そこで、カルバメートエステル交換反応が進行し得るか どうかを確認するために、ジウレタンジオール (2,6)及びジウレタンジオール (3,6)のカルバ メートエステル交換反応(Scheme 4.11)を行った。ここでは、ジウレタンジオール (2,6)又は ジウレタンジオール(3,6)のアニソール溶液中、リパーゼCAを添加し、110℃で1日間反応 を行った。この結果、ジウレタンジオール(2,6)及びジウレタンジオール (3,6)は未反応のま ま残存することが1H NMRにより確認され、カルバメートエステルはリパーゼCAによって エステル交換反応されないことを確認した。

Diurethanediol (x,6) (x = 2, 3)

HO(CH2)xOCNH(CH2)6NHCO(CH2)xOH

O O

+ Lipase CA

110 oC, anisole

HO(CH2)xOH

2

O(CH2)xOCNH(CH2)6NHC

O O

O(CH2)xOH H

Scheme 4.11: Enzymatic transesterification of carbamate ester.

(2)エタノール吸収剤としてのモレキュラーシーブス4Aの効果

重縮合によるポリマーの合成反応は、一般に段階的に反応が進行し、化学平衡を伴う。リパー ゼによるジエチルカーボネートとジウレタンジオール (x,y)の重縮合も可逆反応である。重縮

4.4 結果・考察 135 合で高分子量のポリマーを得るためには副生成物を反応系から除去して重合反応へ平衡を傾け る必要がある。

リパーゼCAを触媒に用いたジウレタンジオール (x,y)とジエチルカーボネートの重縮合開 始時の反応機構をScheme 4.12に示す。反応開始直後は、基質のジエチルカーボネートが酵素 により活性化され、これにジウレタンジオール(x,y)が求核攻撃することによって(カーボネー ト-ウレタン)1量体が生成する。この(カーボネート-ウレタン)1量体は末端に水酸基及び カーボネートエステルを有するので求核剤及び基質となり、分子鎖の伸長反応に消費されてオ リゴマーが生成する。さらに、オリゴマー分子間でエステル交換反応が促進されることによっ て生成ポリマーの分子量は増加する。特に、オリゴマー末端のカーボネートエステルと他のオ リゴマー末端の水酸基で縮合が起こる場合に生成ポリマーの分子量は効果的に増加する。しか し、縮合で脱離するエタノールが反応系内に残存する場合には、アルコリシスを引き起こすの で、分子鎖の伸長が阻害されて高分子量のポリマーは得られない。この逆反応を抑制するため に、副生成するエタノールを効果的に除去する条件下で反応を行う必要がある。

Diurethanediol (x,y)

HO(CH2)xOCNH(CH2)yNHCO(CH2)xOH

O O

EAM +

H5C2OCO(CH2)xOCNH(CH2)yNHCO(CH2)xOH

O O O

+ Lipase OH Carbonate-urethane 1-mer having

a hydroxy/carbonate end group H5C2OCOC2H5

O

Diethyl carbonate

H5C2OCO OH O

Lipase

Lipase C2H5OH Enzyme-activated

monomer (EAM) +

Scheme 4.12: Mechanism of lipase-catalyzed polycondensation.

そこで、第4.3.2節のFig. 4.4に示すように、エタノール吸収剤としてモレキュラーシーブ

ス4A (MS 4A)を充填した小カラムを小試験管の上部に取り付けることによって、反応系から

エタノールを除去することを試みた。ここでは、110℃で反応を行っているので気化したエタ

ノールをMS 4Aが吸着する仕組みになっている。

ジウレタンジオール(3,6)とジエチルカーボネートの重縮合でMS 4Aの効果を比較した結果 をTable 4.9 entry 1及び2に示す。MS 4Aを充填しない空の小カラムを反応容器に取り付け た場合はMw = 1,300 (Mw/Mn = 1.5)のオリゴマーが生成するのみであったのに対し、MS 4Aを充填した小カラムを反応容器に取り付けた場合はMw = 20,000 (Mw/Mn= 2.2)のポリ マーがほぼ完全な転化率で得られた。この結果から、MS 4Aを充填した小カラムを用いること によって常圧条件でエタノールは反応系外へ効果的に除去され、重縮合が促進されることが見 い出された。

Table 4.7: Enzymatic polycondensation of diurethanediol (3,6) and diethyl carbonate.

Entry Lipase CA with/without MS 4A Convevrsion Mw Mw/Mn

%

1 Lipase CA without MS 4A 69 1,300 1.5

2 Lipase CA with MS 4A 98 20,000 2.2

3 No catalyst with MS 4A 1 Not detected Not detected 4 DA-lipase CA a) with MS 4A 1 Not detected Not detected Reaction conditions: A mixture of diurethanediol (3,6) (123 mg; 0.39 mmol), diethyl carbonate (59 mg; 0.5 mmol) and lipase (17.7 mg; 30 wt%) was stirred in anisole (0.3 mL) at 110 ℃ for 3 d. a) Thermally deactivated lipase CA (DA-liapse CA) was prepared by heating the enzyme in steam using an autoclave at 120℃ for 15 min and freeze-dried.

エタノールを除去する他の方法として、MS 4Aを下部に充填した還流塔を反応容器に取り付 けて減圧条件下(150 mmHg)、溶媒とエタノールを還流させ、エタノールのみをMS 4Aに吸 着させるようにして8時間反応を行った。その結果、75%の転化率でMw = 2,200 (Mw/Mn

= 1.9)のオリゴマーが得られた。MS 4Aを充填した小カラムを用いて常圧条件下、8時間反

応を行った場合には73%の転化率でMw = 1,500 (Mw/Mn = 1.3)のオリゴマーが得られてお り、還流させて反応を行った場合と比較するとやや劣る結果が得られた。しかし、本反応で高 分子量のポリマーを得るには2 〜 3日間を要するので、より簡便な方法である常圧条件下で

MS 4Aを充填した小カラムを反応容器に取り付ける方法で以後の検討を行うことにした。

本反応は有機溶媒中、110℃で行っており、この条件下で行われた重縮合が実際にリパーゼ CAの触媒作用によるものかどうかを確認するためにブランク反応を行った。Table 4.9 entry 3に熱によるブランク反応の結果を示す。この結果、ジウレタンジオール (3,6)は未反応のま ま残存し、重縮合は全く進行しないことが確認された。また、酵素の活性部位で反応が行われ ていることを確認するために失活酵素を触媒に用いた場合の重合結果をTable 4.9 entry 4に 示す。失活酵素はオートクレーブを用いて120℃で15分間加圧条件下にさらした後に凍結乾 燥することで調製した。この結果、熱によるブランク反応と同様に、失活酵素を用いた場合は ジウレタンジオール(3,6)は未反応のまま残存し、重縮合は全く進行しないことが確認された。

アニソール中、110℃の反応条件は従来の酵素反応と比較すると酵素が失活しやすい条件で あるといえるが、これまでに、酵素触媒は水溶液中よりも水分量制限下、有機溶媒中の方が熱 安定性が向上することが報告されている170, 171)。ステアリン酸パルミチルとオクタデカノール のエステル交換反応は有機溶媒中、130℃でもリパーゼCAの触媒作用によって進行すること

がTurnerら172)により報告されている。これらの知見からも、本反応は酵素の活性部位以外

のアミノ酸残基によってではなく、活性部位の触媒作用によって進行することが確かであると いえる。

4.4 結果・考察 137 (3)反応温度

反応温度は、エタノールが除去される効率、重合生成物の溶解性及び酵素の失活に影響を及 ぼすと考えられる。そこで、本反応の至適温度を検討するために、アニソール溶液中、80 〜 130℃の範囲で3日間反応を行い、生成ポリマーの分子量及びジウレタンジオール(3,6)の転 化率を測定した。その結果をFig. 4.11に示す。

Temperature (oC)

Mw/MnMw Conversion (%)

0 5000 10000 15000 20000 25000

0 20 40 60 80 100

80 90 100 110 120 130

1 1.5 2 2.5

Fig. 4.11: Effects of temperature on Mw, Mw/Mn and monomer conversion. ●; Mw,

▲; conversion of diurethanediol (3,6). Reaction conditions: A mixture of diurethanediol (3,6), diethyl carbonate (59 mg; 0.5 mmol) and lipase CA (17.7 mg; 30 wt%) was stirred in anisole (0.3 mL) for 3 d.

ジウレタンジオール (3,6)は検討した温度範囲では92%以上の転化率を示した。生成ポリ マーの分子量については、80 〜 110 ℃の範囲では反応温度の上昇に伴って分子量が増加し、

110〜130℃の範囲では高い転化率を保っているが分子量が低下した。

80 〜 110℃の範囲で生成ポリマーの分子量が増加した原因について以下に示す。検討した 温度範囲はエタノールの沸点(78 ℃)以上であるので、脱離するエタノールは気化して反応系 から除去される条件である。反応温度が上昇するにつれてエタノールが除去される効率が上が るために反応温度の上昇に伴って重縮合反応が促進されると考えられる。また、100 ℃以下で 反応を行ったとき、反応開始2日後には重合生成物の一部が析出するのが観察された。重合生 成物の溶解性は温度の上昇とともに大きくなると考えられるので、高温になるにつれて析出し

てくる重合生成物の分子量は増加すると考えられる。

110〜130℃の範囲で高い転化率を保っているものの生成ポリマーの分子量が低下した原因 は、時間経過とともに酵素が失活するためであると考えられる。ここで、110℃でのリパーゼ CAの熱安定性を検討するために、反応開始1、2及び3日後の活性に相当すると考えられるリ パーゼCAを調製し、これらを触媒として用いて反応を行った。その結果をFig. 4.12に示す。

Lipase CA

Mw Conversion (%)

Fresh 1 d a) 2 d a) 3 d a) 0

5000 10000 15000 20000 25000

0 20 40 60 80 100

Fig. 4.12: Thermostability of lipase CA in anisole at 110 ℃. ■; Mw, □; conversion of diurethanediol (3,6). a) Lipase CA was used after being stirred in anisole at 110 ℃ for 1, 2 and 3 d. Reaction conditions: A mixture of diurethanediol (3,6) (123 mg; 0.39 mmol), diethyl carbonate (59 mg; 0.5 mmol) and lipase CA (17.7 mg; 30 wt%) was stirred in anisole (0.3 mL) at 110℃for 3 d.

反応開始1、2及び3日後の活性に相当すると考えられるリパーゼCAは、アニソール中で 110℃で1、2及び3日間攪拌し、濾過により溶媒を除いた後、凍結乾燥することによって調 製した。反応開始1日後の活性に相当すると考えられるリパーゼCAを用いたとき、生成ポリ マーの分子量及びジウレタンジオール(3,6)の転化率は未処理のリパーゼCAを用いたときに 得られる値と比較してわずかな現象がみられたが、ほぼ等しい値を示した。したがって、反応 開始1日後では、リパーゼCAは元の活性をほぼ維持していることが確認された。しかし、反 応開始2及び3日後の活性に相当すると考えられるリパーゼCAを用いたとき、生成ポリマー の分子量及びジウレタンジオール(3,6)の転化率は低下したことから、アニソール中、110℃ でリパーゼCAは徐々に失活することが確認された。また、分子量の低下度に比べて転化率の 低下度が小さいことが示された。これは、リパーゼCAはジウレタンジオール (3,6)がオリゴ マー程度の低分子量体へ転化する間は完全に失活していないが、時間経過とともに失活し、オ リゴマー分子間でのエステル交換反応を触媒することができないためであると考えられる。こ

4.4 結果・考察 139 れらの結果をふまえると、リパーゼCAは110℃より高温条件下では、より短時間で失活しや すいと考えられる。

(4)酵素及び溶媒のスクリーニング

ジウレタンジオール (3,6)とジエチルカーボネートの重縮合に用いる酵素及び溶媒のスク リーニングは、有機溶媒及び熱安定性が知られているBurkholderia cepacia171)Candida antarctica172)及びRizomucor miehei 由来の3種類の固定化リパーゼ(リパーゼBC、リパー ゼCA及びリパーゼRM)からアニソール、o-キシレン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF) 及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)の4種類の溶媒を用いて行った。まず、反応温 度が80 ℃のときに高い転化率でオリゴマーを生成する酵素と溶媒の組み合わせをスクリーニ ングし、次いで110℃のときに高分子量のポリマーを生成する酵素と溶媒の組み合わせをスク リーニングした。その結果をTable 4.8に示す。

3種類の固定化リパーゼのなかで、リパーゼBC及びリパーゼRMのいずれも重合活性を示 さなかったのに対して、リパーゼCAはアニソール及びo-キシレン中で高い重合活性を示し た。このことから、本反応条件下では、3種類の固定化リパーゼのなかでリパーゼCAが最も 有機溶媒及び熱安定性に優れることが明らかとなった。

溶媒としてo-キシレンを用いた場合よりもアニソールを用いた場合に、比較的高分子量のポ リマーが得られた。メトキシ基を有するアニソールはo-キシレンよりもポリマー分子間で形成 されるC=O · · ·H-N水素結合を緩和する性質を有しているので重合生成物の溶解力に優れる と考えられる。ポリマー分子間でのエステル交換反応が進行するためには、基質及び求核剤が 溶解している必要があるので、アニソール中の方がポリマー分子間のエステル交換による高分 子量化が進行したと考えられる。

しかし、重合生成物が高い溶解性を示すことが期待されるDMF及びDMI中では、いずれ の固定化リパーゼも全く重合活性を示さなかった。重合生成物を溶解するにはポリマー分子鎖 中のウレタン結合間及びウレタン結合-カーボネート結合間に形成される水素結合を緩和させる 必要があるので、非プロトン性極性溶媒を用いる必要がある。しかし、非プロトン性極性溶媒 中では酵素が変性して失活するために全く反応が起こらなかったと考えられる。

以後の検討では、酵素活性の維持及び重合生成物の溶解力の観点から、アニソールを溶媒に 用いて反応を行った。

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