「約半数が高校進学、約23%が就職。約17%が小・中学校を卒業前に退所・転校」
○ 退所総数334件の内、全日制都立・私立高校約3割(107人)、定時制高校、
専門学校と合わせると約46%(153人)と5割近くが、進学しています。就職 は約23%(75人)でした。
○ 小学校・中学校卒業前に家庭復帰し、地域の学校に通学した件数は小学校と中学 校を合わせて約17%(55人)です。
解説
○ 1年間で在籍児童の5割近くが高校進学を契機に退所します。ちなみに、平成15 年度の中学校卒業生の進学率は約76%です。(平成16年度 誠明学園・萩山実務学 校「事業概要」による)
○ また、進路相談を通じて親子関係の改善が図られました。
児童自立支援施設の取組
○ 児童自立支援施設の安定した生活環境の中で、適切な学習の場が与えられたこと が、高校に進学できた大きな要因です。
○ 就職については、子どもが希望する職種を慎重に考え、施設職員と共に検討し、
より現実的に生きる道を選択した結果と言えます。高年齢児寮での生活、職場実習 やアルバイトも大いに進路選択の学習になっていると考えられます。
図2-15 退所後の進路
2 退所後の生活場所
「家庭に戻る子どもが大多数。児童養護施設を利用したケースは 1 割以下」
○ 家庭引取りが74%であり、約4人のうち3人の子どもが家庭へ戻っています。
○ 退所後すぐに自立援助ホームと児童養護施設に移って自立を図るケースは9%
程度です。
解説
○ 子どもの約4人に3人は家庭に戻ります。これは、一度は家庭でうまくいかなく なって入所した子どもが施設での指導を経て、再度、家庭でやり直す意欲がでてき た成果だと考えられます。
○ 一方では、子どもの数に対して自立援助ホームの施設数の少なさや、児童養護施 設への施設の種別変更の難しさなどから、再非行のおそれがないとは言えないまま、
家庭復帰せざるを得なかった子どももいます。
○ 退所後に少年院等に入所することになった子どもも約2%おり、自立に時間がか かる場合もあります。
図2-16 退所後の生活場所
74.0 8.1
0.9 6.9 0.9 1.2 2.7 2.4 2.4 0.5
0 10 20 30 40 50 60 70 80
家庭 児童養護施設 自立援助ホーム 住み込み就職先 アパート入居(一人暮らし)
親戚宅 他の児童自立支援施設 少年院 その他 不明
%
合計=334
3 進路の継続期間
「半年未満で退学・退職する子どもが約4割に上る」
○ 半年未満で退学・退職してしまう子どもが約4割になっています。
○ 1年未満では、退学・退職する子どもは過半数を超えます。
○ 高校卒業まで通学が継続あるいは18歳まで退職せずに働いている子どもは約 17%います。
解説
○ 退所後半年未満での退学・退職率が高いものの、その半年を越えると、徐々にそ の割合は減少しています。
○ 退所後半年間をどのように過ごすことができるかが、その後の進路先を継続する ための大きな鍵となっています。
○ この結果は、施設退所後の地域における子どもの立ち直り支援が必要なことを示 唆しています。
児童自立支援施設の取組
○ 施設ではアフターケアの充実を目標として掲げ、進路先の訪問及び電話連絡、来 所指導などでその充実を図っています。しかし、一義的には現在入所している子ど もの援助に重点が置かれるため、交替制勤務の施設現場では、緊急なアフターケア の実施に即応性を欠くことは否めません。
表2-1 進路の継続期間 (人・%)
現在(高校 等卒業)ま で継続
半年未満 半年~
1年未満
1年~
1年半未満
1 年半~
2年未満
2年~
3年未満
その他 不明 合 計
平成 12 年度 14 37 11 6 1 0 18 4 91
15.4 40.7 12.1 6.6 1.1 0.0 19.8 4.3 100.0
平成 13 年度 14 52 16 5 3 1 33 2 126
11.1 41.3 12.7 4.0 2.4 0.8 26.2 1.5 100.0
平成 14 年度 30 41 23 1 0 0 21 1 117
25.6 35.0 19.7 0.9 0.0 0.0 17.9 0.9 100.0
合 計 58 130 50 12 4 1 72 7 334
17.4 38.9 15.0 3.6 1.2 0.3 21.6 2.0 100.0
事例 9
幼少時に母親から身体的虐待を受け、非行が続くようになったI君(男子:中学3年 生)が施設入所で関係改善を図った事例
事例の概要
○ I君は両親と弟の4人暮らしでしたが、幼少時に母親からたびたび暴力による 身体的虐待を受けていました。父親は会社員で仕事が忙しく、I君に関わりを持 とうとしませんでした。中学校に入る頃から母親とK君の力関係が逆転し、家庭 内暴力と金品持出がエスカレートしたため、母親は児童相談所に相談しました。
○ その結果、I君は中学2年生の夏に児童養護施設に入所しました。施設入所当 初は穏やかに生活していましたが、やがて一緒に生活している子どもからいじめ の訴えが多発するようになり、施設職員に対する暴力と怠学なども始まったこと から、児童相談所に一時保護されました。
○ I君は中学 2 年生の冬に児童自立支援施設に施設変更になりました。入所後も 落ち着くことができず、自己中心的であるために、些細なことから他の子どもと 喧嘩になり、人間関係のトラブルが頻発しました。
援助の展開
○ 児童自立支援施設では、I君が母親から身体的虐待を受けていたことに配慮し て、大人への不信感を取り除くような関わりをしました。また、いらいらした時 に我慢することや、感情のコントロールを心がけることをK君の生活上の目標に して指導を行いました。
○ また、施設職員はK君がトラブルを起こすたびにI君の話をじっくりと聞き、
どうしてトラブルになってしまったのか、どうすればよかったのかを一緒に考え ました。そのうちI君は、相手にも言い分があり、自分にも問題があったことを 少しずつ理解できるようになりました。相手を思いやるような言葉遣いもできる ようになり、人間関係のトラブルは減っていきました。
○ I君は入所して半年経った頃から、面会に訪れる両親に対しても、自分を変え ようとする姿勢が見えるようになりました。施設職員は面会の他にも夏期帰省や 親子行事などの機会を利用して、親子関係の修復に向けた取組を進めました。母 親は悩みながらも子どもの成長を受け止めるようになり、高校合格と中学卒業を 契機に児童を家庭に引取りました。施設職員はI君が退所した後も母親と連絡を 取り、アフターケアとして家庭訪問を行って、I君の通学継続を援助しています。
援助のポイント
○ I君の大人に対する不信感をなくし、安定した人間関係と落ち着いた生活を実 現させるため、I君がトラブルを起こした後は施設職員と話し合う時間を十分に 取り、原因などを共に考える援助を行いました。
○ I君が退所した後も親子関係の改善と高校通学の継続のため、施設職員は母親