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「東京の児童相談所における非行相談と児童自立支援施設の現状」

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(1)

「東京の児童相談所における非行相談と児童自立支援施設の現状」

― 子 ど もの健全育成 と立ち直 り 支 援 の取組 ― 平成 17年3月 東京都福祉保健局

「東京の児童相談所における非行相談と

児童自立支援施設の現状」

― 子どもの健全育成と立ち直り支援の取組 ―

平成 17 年3月

東 京 都 福 祉 保 健 局

(2)

は じ め に

フランスの思想家 J・J・ルソーは、その著書「エミール」の中で、

「子ども

を不幸にする一番確実な方法は、いつでも何でも手に入れられるようにして

やることだ。

」と記述しています。

戦後の社会的混乱と経済的貧困の中から、日本は「奇跡の経済復興」を成

し遂げ、豊かな社会を実現しました。大量消費社会と高度情報社会の中で、

子どもたちの周りには、様々な「もの」と「情報」が氾濫し、お金さえ出せ

ば欲しいものは何でもすぐに手に入るようになりました。しかし、こうした

世の中で子どもたちは本当に幸せになったのでしょうか。

近年、小学生や中学生による特異な事件が世間を騒がせておりますが、そ

の背景には、子どもたちの規範意識の希薄化や家庭、学校、地域社会におけ

る教育力の低下、子どもを取り巻く環境の悪化などの要因が複雑に絡み合っ

ていると考えられています。

「子どもの行動は、社会を写し出す鏡である」と言われていますが、戦後

から現在に至るまで、その時代、時代の社会経済情勢や人々の意識、生活様

式を背景とした子どもたちの問題行動が見られます。これは、子どもを取り

巻く様々な環境の変化が、子どもの育ちに影響を与え、その時代によって、

非行の質と量の変化を引き起こしているのだと考えられているのです。

児童相談所は児童福祉の専門機関として子ども全般に係る相談を行なって

おり、児童非行についても、昨年度は 1,500 件近くの相談を受理しています。

しかし、これまで、非行児童の実態と施設入所を含む援助効果について、

科学的な調査と検証が十分に行われてきたとは言い難い状況にありました。

そこで、東京都は、全国で初めて、児童相談所と児童自立支援施設が合同

で子どもの非行相談及び施設における援助の実態とその特徴を的確に把握し、

初回非行から立ち直りに至るまでの具体的な支援とその効果の検証を併せて

行う総合的な調査・分析を実施し、公表することとしました。

本書は、平成 15 年度に都内の全児童相談所で取り扱った全非行相談並びに

平成 15 年度の全児童自立支援施設在籍児童及び平成 12 年度から 14 年度まで

に同施設を退所した子どものアフターケアについて、児童票等に基づき、調

査・分析を行っており、いわば「非行相談白書」とも言うべき性格を持って

おります。

この調査結果が非行児童に対する理解を深め、今後の非行児童の支援・援

助に向けての取組みと子育ての参考に資するとともに、次代を担う子どもた

ちの健全育成のために、保護者、関係機関、地域社会の取組の一助になれば

幸いです。

平成17年3月 東京都福祉保健局長

幸 田 昭 一

(3)

寄稿文

「東京都非行相談・児童自立支援調査に寄せて」

立命館大学 産業社会学部

教 授 野 田 正 人

1 児童相談所の理解を

ひと頃に比べて、児童相談所がマスコミに登場することが増えています。

しかし、残念なことに、その多くは虐待で子どもが死亡したり、14才未満

の子どもによる大きな非行事件が発生した場合などで、児童相談所の仕事ぶ

りを批判されることの方が多いようです。

もっとも、その報道にかかわるマスコミの記者ですら児童相談所のことを

あまり知ってはいないという印象を受けます。まして一般の人にとって、そ

して特に児童相談所を活用してほしい保護者や子ども本人に、児童相談所の

役割がちゃんと伝わっているのか心配なところです。

調査結果では、保護者からの非行相談が全体の半分しかないことや、非行

が発生してから何年もたって相談する人がいることが分かりました。また相

談者の要望として、いろいろな施設への入所希望が4割もあるということで

す。

このような背景には、子どもの行動に悩んでいる保護者が、児童相談所の

役割を知らなかったり、大きな問題や、施設入所の時に相談するところだと

いう誤解があることが考えられます。そのため、子どもの問題行動がエスカ

レートして、家庭で対応できないという段階になって相談される様子を示し

ているようです。身近な相談機関としての役割をPRする工夫が求められる

ところでしょう。

2 家庭を支え、子どもを支える

家族や保護者の多様な生き方を示しているのが、家族構成の調査結果でし

ょう。実父母が主たる養育者であるのは4割に満たず、ひとり親がそれを上

回っています。このことは、家族の多様さや、子育ての難しさを物語ってい

るのかもしれません。しかし、改正された児童虐待防止法が、家庭内で配偶

者への暴力があることは子どもへの虐待にあたると定めたように、単純に両

親がいることが最善ともかぎらないという難しい問題もあります。

児童福祉法は、

「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心

身ともに健やかに育成する責任を負う」として、家庭にいろいろ事情があっ

ても、行政はその状況を踏まえて、子どもの健全育成に責任を持つという姿

勢を明らかにしています。

この責任をまっとうすることは行政にとって簡単なことではないのですが、

(4)

そこでは、保護者の子育ての困難を視野に入れた、なるべく早期からの、福

祉ならばこそのきめ細かい援助が必要になります。特に最近の研究が、児童

虐待と非行との深い関係を示しており、非行関係施設に入所する子ども達の

6割近く、施設によっては8割が虐待を受けた児童であるとの報告を聞くに

つけ、単に保護者や家庭を非難するだけでなく、保護者や家庭を支えること

を通して、子どもを支えることの大事さを考えさせられます。

3 子どもの育ちを支える

また一方で、子ども自身の発達や精神的課題も明らかにされています。約

3割の子どもは非行を認識できていないし、集団非行より単独非行が目立つ

ようになってきているなど、非行少年の病理は深まっているようです。この

ような子どもを処罰だけで対応することは、効果がないどころか逆効果とな

ることもあり、発達支援や教育の重要さが改めて示されています。

4 調査で発揮した力と知恵を現場で活かす

この報告書を都の福祉関係スタッフが協力して取りまとめられたとうかが

い、とても驚きました。

一つは、全国の児童福祉現場では、児童虐待への対応や子どもへの指導、

保護者への支援や対応の難しさから、このような調査に取り組むことが難し

くなっている状況があるからです。

二つ目は、忙しさだけでなく、児童相談所の業務は、調査結果にも見える

ように、相談者もいろいろ、関係機関もいろいろ、相談内容もいろいろ、期

待されることもいろいろ、施設や処遇もいろいろということです。これまで

福祉現場は、目標を立てて調査を行い、その課題を明らかにして取り組みを

向上させていくという動き方を大変苦手にしてきたことなどがあるからです。

今回のようなまとまった調査に取り組むのは、関係者に強い連携がないと

できないことですし、このような調査こそが、福祉行政のあるべき方向性を

示し、またその調査にあたった関係者に大きな力と知恵と気づきをもたらし

たものと思います。

今後はこの力と知恵を生かして、すばらしい非行対応への実践を、東京か

ら発信していただきたいと願います。

(5)

寄稿文

「子どもの危機にいかに立ち向かうことができるか」

福島大学大学院教育学研究科

教 授 生 島 浩

少年非行の低年齢化や凶悪化が喧伝されるのは今に始まったことではないが、

少子高齢化社会にあって、子どもの危機が叫ばれることにより、その社会的援

助ニーズが高まることは決して悪いことではない。

そこで、子どもの危機に立ち向かうべき臨床機関のあり方が問われることに

なるが、その働きかけの対象と手法によって、①非行少年に対する個人療法的

アプローチ ②非行少年の家族に対する家族療法的アプローチ ③少年非行の

被害者(遺族)に対するその家族を含めたトラウマに関わる心理的援助 ④非

行少年やその家族が住む地域社会に対するコミュニティ心理学的アプローチの

4つに大別することができる。

小学生など

14 歳未満の触法少年による殺人事件が連続して起こり社会の耳目

を集めている児童相談所及び児童自立支援施設での処遇に関する本調査研究の

意義は高いが、特に注目される結果について、上記の観点からいくつか紹介し

たい。

1 非行相談があった子どもの特徴として「自己中心的・未熟・意志が弱い」が

挙げられ、その約3割は非行についての自己認識ができておらず、親をはじめ

とする他人の非難を繰り返すことも少なくない。

2 「家出外泊」などに苦慮した保護者が非行相談に訪れるが、その

40%以上に

無責任・消極的などの問題が認められる。たとえ施設に入所しても大多数の子

どもは家庭に戻ることになるため、施設職員の保護者に対する助言は有効であ

り、退所児童からの相談も「親子関係」に関するものが最も多い。

3 施設退所後の進路は、約半数が高校進学、約

20%が就職だが、半年未満で退

学、退職してしまう子どもが約4割にのぼっている。自立援助ホームへの入所

は有効であるが、施設職員のアフターケアは勤務条件から電話連絡が中心で、

児童相談所など地域機関がすぐに応じられる体制が未整備である。

4 地域での立ち直り支援策として「福祉版の保護司制度」の創設や「児童自立

支援提携型グループホーム」の新設の提言は、

20 年以上保護観察官として勤務

した筆者の非行臨床経験からも極めて有用であると思われる。

(6)

今後の課題として指摘しておきたい。

このような結果を踏まえて、非行臨床機関に止まらず、子どもに関わる親や

教師の役割として私見を列記したい。

○ カウンセリング的対応の前提として、子ども自身が「悩みを抱えられる」こ

とが重要であり、親や教師には子どもにそこまでの成長を促す働き掛けを行う

ことが求められている。その手法として、葛藤の内面化が不可欠であり、家庭

生活や学校生活において「致し方ない・どうしようもない」といったささやか

な理不尽を体験的に教えていきたい。

○ 自分と他人の境界、すなわち「自分は自分、ひとはひと」

「うちはウチ、よそ

はヨソ」なのであり、子どもも親も身の程を知り、不法な手段ではない回避(や

りすごす)や折り合いを付ける方策を体験的に学ばせたい。

○ 自分のこころの痛みを体感させ、他者の痛みに思い至らせる。例えば、いじ

めを受ける〈嫌な思い〉は、いじめている子ども自身が〈嫌な思い〉を経験し

て初めて分かることであり、それはいじめを認めようとしない子どもに対して

疑いの目を持って問い詰めるといった〈嫌な思い〉を親自身が身をもって子ど

もに教えるしかないであろう。

○ 自分の思い通りにはならないが、どうにもならないわけではなく、成長とい

う時の経過を味方にすればどうにかなるものであることを親子、そして教師に

も理解してもらわなければならない。

被害者はもとより社会感情への配慮なくしては、地域社会に戻っていく子ど

もの立ち直りは不可能であり、どのような処遇によって更生が図られているの

かの情報の公開は、行政の透明化の観点からも看過できない。臨床経験を基礎

にした本調査のような「非行相談白書」の刊行を手始めに、各臨床機関の処遇

効果を示す基礎的なデータに基づく、援助が強く求められているのである。

(7)

目 次

本書を読むに当たって

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

第1編 非行相談 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 第1章 非行相談の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 第1節 相談があった非行の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 1 非行の大分類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 2 非行の小分類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 3 子どもの学年 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 4 非行グループの規模 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 第2節 相談者の実態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 1 非行相談の経路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 2 相談者別の非行相談内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 3 保護者が非行相談を行ったきっかけ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 4 非行相談までにかかった期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 5 相談者からの要望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 第2章 非行があった子どもの特徴と取り巻く環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 第1節 非行相談があった子どもの特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 1 性格特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 2 非行の自覚 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 第2節 家族の実態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 1 子どもの生活場所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 2 家族構成(主な養育者) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 3 保護者の養育態度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 4 保護者の非行相談に対する協力態度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 第3節 地域の環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 1 たまり場となっている場所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 2 非行が起きた場所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 3 地域で非行を防げない要因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 第3章 非行に至った要因と背景の分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 第1節 非行化の要因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 1 非行が始まった要因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 2 非行の改善を阻む問題点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41

(8)

第2節 子どもの被虐待経験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 1 子どもが虐待を受けた内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 2 虐待をしていた大人 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 3 虐待を受けた年齢 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 4 虐待を受けていた期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 第4章 非行の実態分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 第1節 非行の始まり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 1 初めて行った非行 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 2 初めて非行を行った年齢 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 3 初めて行った非行の継続性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 第2節 調査によって詳しく分かった非行の実態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 1 家庭内暴力 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 2 学校内の暴力行為 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 第5章 非行相談効果の検証 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56 第1節 関係機関との連携 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 第2節 効果的な非行相談の実施 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 1 相談上有効な職員の姿勢・援助技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 2 職員の効果的な指導内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60 3 非行が改善した要因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62 4 非行相談後の子どもの成長点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63 非行防止のポイント 1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65 第2編 児童自立支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 第1章 自立支援の分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69 第1節 子どもの特徴と進路決定の分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70 1 子どもの入所と退所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70 2 入所期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 3 非行の自覚 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72 4 援助の困難度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73 5 退所後の進路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74 6 退所後の生活場所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75 第 2 節 援助内容の分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 1 子どもに有効な施設職員の姿勢・援助技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 2 保護者に有効な施設職員の姿勢・援助技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 78

(9)

3 効果があった施設職員の指導内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79 第3節 自立支援の効果の検証 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80 1 子どもが立ち直り、成長するきっかけ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80 2 保護者からの支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81 3 関係機関による支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82 4 自立に向けた子どもの成長 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 83 第2章 アフターケアの分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84 第1節 退所後の生活実態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85 1 退所後の進路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85 2 退所後の生活場所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86 3 進路の継続期間 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 87 第2節 アフターケアの実態と効果の検証 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 1 子どもからの相談内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 2 アフターケアの内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90 3 自立に向けたアフターケアの効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91 第3節 非行改善と立ち直り支援効果の検証 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 93 1 退所後の子どもの主な非行内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 93 2 非行の改善に効果があった支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94 3 関係機関との連携と支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95

非行防止のポイント 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96 第 3 編 今後の方向性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 1 子どもに対する親の支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 99 2 地域の協力 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100 3 児童相談所の体制の強化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100 4 子どもと家庭への一体的な支援ために -子ども家庭総合センター(仮称)の設置- ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・101 5 区市町村への支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・102 6 児童自立支援施設退所児童の地域での立ち直り支援 ・・・・・・・・・・・102 7 児童自立支援施設提携型グループホームの新設 ・・・・・・・・・・・・・・・103 8 アフターケアの充実 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・103 資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・107

(10)

事例 1 不良交友・薬物 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 2 性非行 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 3 家出外泊 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 4 性非行 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 5 虐待を受けて非行化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 6 粗暴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 7 虐待が原因による家出外泊・盗み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 8 高年齢児寮での立ち直り ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76 9 親子関係の改善 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88 10 アフターケア(自立援助ホームの利用) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92

(11)
(12)

本書を読むに当たって

1 非行の捉え方

○ 非行の捉え方は、子どもの問題行動のうち、どの範囲までを非行とするかによ って、例えば、刑法等に触れる行為のみとするのか、それともこれに警察の定め る不良行為や学校や地域社会の社会規範を逸脱するような行為を含むとするのか によって、変化します。 ○ 警察では、少年法に規定する「犯罪少年」(注)1「触法少年」(注)2「ぐ犯少年」 (注)3を非行少年とし、また、少年警察活動要綱では、非行少年等として「非行少 年、要保護少年(注)4、不良行為少年(注)5をいう」と規定しています。 (注)1 犯罪少年 刑法や特別法(軽犯罪法、鉄砲刀剣等取締法、毒物及び劇物取締法等)に定めた罪 を犯した少年で、14歳以上20歳未満の少年をいう。 2 触法少年 14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年をいう。 3 ぐ犯少年 保護者の正当な監督に服しない性癖があるなど、一定の事由があって、その性格又 は環境に照らして、将来罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある 少年をいう。 4 要保護少年 少年法に規定する非行少年には該当しないが、児童福祉法による福祉の措置等が必 要と認められる少年をいう。 5 不良行為少年 非行少年には該当しないが飲酒、喫煙、けんか、その他自己又は他人の徳性を害す る行為をしている少年をいう。

(13)

2 少年非行についての統計

○ 警視庁がまとめた「平成15年 少年育成活動の概況」によれば、非行少年と して検挙・補導した少年は15,998人(図1)で、前年から943人(6.3%) 増加し、触法少年、ぐ犯少年ともに増加しました。(図2) また、不良行為で補導した少年は74,608人で、前年から6,453人 (9.5%)増加し、平成元年(78,301人)以来14年ぶりに7万人を超え ました。(図1) 図 1 東京都 非行少年と不良行為少年の推移 43,639 50,530 17,419 16,765 15,569 15,055 15,998 17,148 15,267 15,728 20,077 17,431 42,307 40,228 41,025 40,821 51,843 63,926 74,608 68,155 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 件 非行少年 不良行為少年 (平成15年 警視庁統計) 図2 東京都 触法少年とぐ犯少年の推移 1,301 956 912 993 1,038 1,180 785 958 1,533 1,072 295 245 179 160 192 388 387 418 328 192 0 500 1,000 1,500 2,000 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 件 触法少年 ぐ犯少年 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 年 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 年

(14)

3 児童福祉法からみた非行

○ 我が国の刑法体系では、14歳に満たない子どもの刑事責任は問われないこと から、「触法少年」と14歳に満たない「ぐ犯少年」は、児童福祉法が第一義的に 扱うこととなっています。 ○ しかし、これらの子どもたちのすべてが児童相談所に通告されてくる訳ではな く、子どもを補導した警察が、非行内容もさることながら、保護者の監護能力や 家庭環境等の理由により、要保護児童と認められる場合に通告(注)1してくるので す。 こうした実態から、児童相談所が受理する非行相談は、非行児童と家族の養育 環境や生育歴に深く関わっているケースが多いことが特徴です。 ○ 次に、相談内容については、すべての非行相談が刑罰法令に抵触するものでは なく、保護者からは、幼少期のいたずら的なものから、素行の良くない友人との 交友関係の相談、あるいは、何か悪いことをしているようだが、警察には相談し にくいといった、我が子の行く末を心配しての相談も多く寄せられています。 (注)1 警察からの通告(書類通告・身柄通告等) 児童福祉法第25条の「要保護児童発見者の通告義務」に基づいた通告をいう。通 告には文書により専門的な児童福祉司による指導依頼の「書類通告」と子どもの身柄 を伴う「身柄通告」とがある。他に所持者不明の物品(証拠品)の引継ぎである「擬 制通告」がある。

4 児童相談所

○ 児童相談所は児童福祉の理念を実現し、子どもの基本的な権利を具体的に保障 することを目的として、児童福祉法に基づき、都道府県及び政令指定都市にその 設置が義務づけられています。 東京都では11か所の児童相談所を設置しています。(平成17年3月現在) なお、平成16年11月に成立した改正児童福祉法(平成16年法律第153 号)で、政令で個別に指定する市も設置できることになりました。 ○ 児童相談所では、原則18歳未満の子どもを対象に、成長する過程で生ずる様々 な問題について、子どもや家族からの相談に応じています。その他にも、学校や 地域からの相談、警察からの通告、家庭裁判所からの送致などに対応しています。 生活環境の改善のために必要があれば、一時保護や施設入所などを活用した総 合的な援助なども行っています。 ○ 児童相談所が行う主な援助 児童相談所の相談援助機能は、非行相談などを行う相談機能と子どもを保護し て生活環境の改善を図る一時保護機能、指導や施設入所などを行う措置機能など に分類することができます。

(15)

○ 児童相談所が児童福祉法に基づき実施している子どもに対する援助のうち、主 なものは次のとおりです。 「児童福祉司指導」 複雑困難な家庭環境に起因する問題を有する子ども等、援助に専門的な知識、 技術を要する事例に対して行う指導をいう。 「施設入所等」 児童自立支援施設、児童養護施設等の児童福祉施設への入所措置をすること。 又は、里親に養育を委託することをいう。 「一時保護」 一時保護には緊急保護及び行動観察並びに短期入所指導による場合がある。児 童相談所長は必要と認める場合に子どもを一時保護し、又は警察署、児童福祉施 設、その他児童福祉に深い理解と経験を有する適当な者に一時保護を委託するこ とができる。 「継続指導」 複雑困難な問題を抱える子どもや保護者等を児童相談所に通所させ、あるいは 必要に応じて訪問する等の方法により、継続的にソーシャルワーク、心理療法や カウンセリング等を行うものをいう。その際に、ボランティアであるメンタルフ レンド(注)1などの活用も行う場合がある。 「助言指導」 1ないし数回の助言、指示、説得、承認、情報提供等の適切な方法により、 問題が解決すると考えられる子どもや保護者等に対する指導をいう。 (注)1 メンタルフレンド 不登校など様々な社会的不適応を示し、家に閉じこもりがちな児童に、ボラ ンティアの青年(18歳以上30歳未満)を派遣し、子どもとの話し相手や遊 び、スポーツなどを通して子どもの自主性や社会性を高めるための援助を行う。

5 非行相談

○ 児童相談所が行う非行相談は、厚生労働省の児童相談所運営指針によれば、ぐ 犯等相談と触法行為等相談に区分できます。 「ぐ犯等相談」 虚言癖、金品持出、浪費癖、家出、浮浪、暴力、性的逸脱等のぐ犯行為、問題 行動のある子ども等に関する相談、警察署からぐ犯少年として通告のあった子ど も等に関する相談のこと。また、触法行為があったと思料されても、警察署から 児童福祉法による通告のない子どもに関する相談も含める。 「触法行為等相談」 触法行為があったとして警察から児童福祉法による通告のあった子ども、犯罪 少年に関して家庭裁判所から送致のあった子ども等に関する相談。受理した時点 で通告がなくても、調査の結果、通告が予定されている子どもに関する相談もこ

(16)

6 児童相談所に寄せられた非行相談の統計

○ 平成15年度の都内全11箇所の児童相談所で受理した相談件数(「4152 よ い こ に 電 話相談」(注)1の相談件数を含む)は、29,908件(図3)です。 このうち、非行相談受理件数は1,495件(電話相談全296件を含む)であ り、全体の約5%を占めています。(図4) 過去10年間の全相談受理件数の推移を見ると、平成6年以降右肩上がりで増加 してきました。この大きな要因は児童虐待通告を含む養護相談や育成相談の増加に 起因するものです。近年では平成12年度の31,807件をピークに減少を始め、 3年連続の減となっていますが、10年前に比べ、約1.42倍の水準にあります。 また、非行相談は平成9年度以降1,250件前後で推移し、平成14年度は一 時的に減少しましたが、一転15年度は件数390件増え、前年度比較で1.35 倍の増加となっています。 (注)1 4152よ い こ に電話相談 平成7年から児童相談センターに電話相談室を設置し、児童に関する相談に電 話で応じている。 電話番号 03(3202)4152 受付時間 平日9:00~20:30 土日祝日9:00~17:00 図3 東京都 児童相談所 全相談受理件数の推移 21,131 28,722 30,259 27,403 31,807 24,403 28,291 30,497 31,584 29,908 20,000 22,000 24,000 26,000 28,000 30,000 32,000 34,000 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 件 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 年度

(17)

図4 東京都 児童相談所 非行相談受理件数の推移 1,241 1,252 1,316 1,495 1,275 1,105 1,234 1,285 1,253 1,404 1,000 1,100 1,200 1,300 1,400 1,500 1,600 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 件

7 児童自立支援施設における子どもへの援助

○ 児童自立支援施設は、不良行為をした子ども又は将来不良行為を行うおそれのあ る子ども、家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する子どもを入所 等をさせて、指導を行うことによりその自立を支援する施設です。 ○ 沿革は、明治33年の感化法の制定により「感化院」として設立されて以来の、 長い歴史と伝統を有しています。その後の少年教護法の制定、さらに、児童福祉法 の制定によって児童福祉施設としての「教護院」が全国に設置されました。 平成9年の児童福祉法改正により、名称と機能の見直しが行われ、現在の「児童 自立支援施設」となりました。東京都には都立の児童自立支援施設が2か所ありま す。 ○ 児童自立支援施設では、子どもに高圧的な指導をしたり、社会防衛的に子どもを 隔離するのではなく、子どもが生まれながらに持っている、人間としての心身の健 全な生育を遂げるべき権利を尊重し、子どもに応じた援助を行っています。援助に 当たっては、子どもの行動の背景にある生育歴や、家庭や生活環境の中でつらい経 験があったこと等を重視しています。 ○ 温かい家庭的な雰囲気のもと、生活面でのきめ細かい指導と家庭環境の調整等に よって、子どもたちがその適性と能力などに応じて、自立した社会人として健全な 社会生活を営んでいけるように支援が行われています。この点は、旧教護院の設置 目的が、子どもの不良性の除去を主眼に置いていたことに比べ、大きく変ったとこ ろです。 ○ また、これまで、入所児童の就学義務は、猶予又は免除され、これに代わり学校 教育に準ずる教育が行われてきましたが、平成9年の児童福祉法改正に伴い、公教 育が導入されることとなりました。 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 年度

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8 調査対象

(1) 第1編 非行相談 平成15年度に都内11か所の全児童相談所で非行相談として受理した 1,495件中、「4152電話相談」209件と各児童相談所が受け付けた電 話相談87件を除く1,199件の全相談事例を調査対象にしました。 (2) 第2編 児童自立支援 ① 第1章 自立支援の分析 平成15年度に都内2か所の児童自立支援施設に在籍した子ども259名 全員を調査対象にしました。 ② 第2章 アフターケアの分析 平成12年度から14年度までに2か所の児童自立支援施設を退所した子 ども334名全員を調査対象にしました。

9 調査手法

児童相談所については、児童相談所で実務に携わっている所長、児童福祉司、児童 心理司等が、児童票、面接記録等を基に調査を実施し、調査票に記入しました。 児童自立支援施設については、児童自立支援施設で実務に携わっている自立支援課 長、生活係長、生活寮担当職員、心理療法担当職員が自立支援計画票、育成記録等を 基に調査を行い、調査票に記入しました。アフターケアについても同様に、子どもや 保護者との電話連絡や訪問などの結果を基に追跡調査と調査票の記入を行いました。 なお、調査票は、児童相談所及び児童自立支援施設の職員が調査内容と調査項目の 検討を行い、作成しました。回答方法は、回答が複数の事項に該当するもの(非行内 容など)については、複数回答とし、より詳しく実態を調査しました。 本書には、非行相談と児童自立支援に典型的に見受けられるケースについて、過去 にあった実際の事例を基に例示しています。ただし、内容についてはプライバシー保 護等のために加工し、事例が特定されないように配慮しています。

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用語解説 【福祉の関係機関】

児童委員・主任児童委員 児童委員は児童福祉法に基づき、区市町村の区域に厚生労働大臣の委嘱により置かれ る民間奉仕者であり、民生委員を兼務している。担当区域の子ども・家庭等の実情把握、 相談援護、関係機関への要保護児童の連絡等の児童健全育成活動を行っている。 また、児童福祉に関する事項を専門的に担当し、児童福祉関係機関と区域を担当する 児童委員との連絡調整とともに、児童委員に援助・協力等を行う主任児童委員も平成6 年に創設されている。 福祉事務所 社会福祉法に定められた、地域の住民福祉の向上を図る行政機関で、主に児童福祉を始 めとするいわゆる福祉六法(生活保護法、児童福祉法、母子及び寡婦福祉法、老人福祉法、 身体障害者福祉法、知的障害者福祉法)に基づく援護、育成、更生の措置に関する事務を 行っている。 子ども家庭支援センター 地域における子どもと家庭に関する総合相談、子ども家庭在宅サービス等の提供、サー ビス調整、地域組織化等の事業を行い、地域での中核的役割を担う機関。この度の児童福 祉法の改正で、区市町村が身近な相談機関として、法律上役割が明確化されたが、それに 先行し、平成7年度より都独自の補助事業として区市町村が整備を開始している。 平成15年度より、児童相談所と連携をして児童虐待の予防的取組や地域の見守り機能 を新たに加えた、先駆型子ども家庭支援センターの整備を進めている。 今後、ますます、非行相談を含めたあらゆる子どもと家庭に関する一義的な相談窓口と して期待が高まっている。

用語解説 【子どもの施設・里親】

児童養護施設 保護者のいない子ども、虐待されている子ども、その他環境上養護を要する子どもを 入所させて、これを養護し、併せて退所した子どもの自立を援助することを目的とする 施設 自立援助ホーム(児童自立生活援助事業) 児童養護施設や児童自立支援施設を退所し、就職した子ども等に対して、共同生活を営 むべき住居において相談その他の日常生活上の援助や生活指導を行い、就労や学業を修め つつ社会的自立を目指す施設 養育家庭 様々な事情で親と一緒に暮らすことのできない養護に欠ける子どもに対し、養子縁組を 目的とせず、期間を定めて家庭的な環境の下で養育をする制度(東京都独自の里親制度)

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用語解説 【司法の関係機関】

家庭裁判所 家庭や親族に関する問題(家事事件)と少年事件を専門に扱う裁判所。20歳未満の罪 を犯した少年や罪を犯すおそれのある少年の健全な育成を期待して、保護処分その他の方 法により措置を講じている。児童虐待などについての児童福祉法28条に基づく措置の承 認も行う。 少年審判 少年の非行事実と少年に対する要保護性があるかないかを明らかにすることを目的と して、非行行為のあった少年に対し福祉的、教育的配慮を伴う処遇を決定するために開か れる、成人でいうところの裁判 少年鑑別所 家庭裁判所の決定(観護措置決定)を受けて審判やその後の保護処分執行の参考とする ため、少年を収容して「資質鑑別」を行う施設。観護措置期間は原則2週間から最高8週 間である。 保護観察 非行行為のある少年に対して審判決定で行われる処分。保護観察所の保護監察官と保護 司が担当する。少年に対して生活の目標や指針など遵守事項を定めて、守るように指導監 督するとともに、就労の援助や宿泊所の提供などの補導援助を通じて、更生を促す制度。 家庭裁判所の決定により保護観察に付する保護処分を受けた場合の期間は、原則は満20 歳に達するまでである。 少年院 家庭裁判所が保護処分のひとつとして行う「少年院送致」の決定を受けたものを収容し て、その改善更生のための矯正教育を施す国立施設。初等、中等、特別、医療少年院の4 種類がある。

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非行相談の流れ

相談

相談・通告 発見・相談・通告 ・送致・連携

(諮問→←答申)

(注)1 子ども又は保護者の意向と児童相談所の措置が一致しない時など、児童相談所からの諮問 に対して答申を行う。 相談者 保護者・児童本人・ 親族・その他 関係機関 警察・家庭裁判所・学校・児童委員・主任児童 委員・子ども家庭支援センター・福祉事務所・ その他

児 童 相 談 所

受理会議(各種診断・調査等の協議) 社 会 診 断 : 相談・調査 (家庭調査・面接相談 他) 心理・医学診断 : 面接・診断・検査 (医学的診断・心理検査・心理面接 他) 行 動 診 断 : 一 時 保 護 (緊急保護・観察・治療指導 他) 総合診断 → 援助方針会議(援助指針の検討) 援 助 の 決 定 児童福祉審議会(注1)(権利擁護部会) 主な援助内容 1 在宅指導等 : ①措置によらない指導(助言指導・継続指導 等) ②措置による指導(児童福祉司指導・児童委員指導 等) 2 児童福祉施設 (児童自立支援施設・児童養護施設 他)入所 3 そ の 他 : 養育家庭委託 ・ 家庭裁判所送致 他

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第 1 章 非 行 相 談 の 概 要

こ の 章 の 概 要 1 相談があった非行の内容 ○ 非行相談内容を大きく分類すると「家出外泊」と「盗み」が多く、相談の大部 分を占めています。 ○ 男女別の小分類では、男子は「万引」、女子は「家出外泊」が最も多い相談内 容となっています。 ○ 非行相談があった子どもの学年は、中学生が約7割です。中学2年生までは学 年と共に相談数も増加する傾向にあります。 ○ 非行グループの規模で最も多いのは、「2~4人」の約39%で、次に「単独」 が約37%となっています。 2 相談者の実態 ○ 相談者のうち「書類通告」と「身柄通告」を合わせた警察からの通告が最も多 く、約49%となっています。保護者や学校などからの「一般相談」は約45% です。 ○ 保護者からの相談内容は、子どもの「家出外泊」が最も多く、次に「盗み」、 「金品持出」の順になっています。 ○ 保護者が児童相談所に自ら相談したのは約37%です。一方で、警察からの通 告等があっても、保護者が相談を必要とせず放置したものは約15%あります。 ○ 相談者からの要望は、児童相談所が子どもに対して直接の関わりや指導を行う ことを望む「子どもの呼出・面接・指導等の依頼」が最も多くなっています。

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3.5 1.3 1.5 4.7 9.7 11.2 11.2 16.0 22.5 40.4 43.3 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 その他 薬物 暴走行為 放火 怠学 等 金品持出 性的非行 不良交友 粗暴 盗み 家出外泊 合計=1981 (複数回答) %

第1節 相談があった非行の内容

1 非行の大分類

「非行相談で件数が多いものは、家出外泊と盗みである」 ○ 非行相談内容を大きく分類すると「家出外泊」と「盗み」が多く、相談の大部分 を占めています。 ○ 男女別に非行内容の主な特徴を見ますと、男子は女子に比べて「盗み」と「粗暴」 などの割合が多く、女子の場合では「家出外泊」などが多くなっています。 図1-1 非行の大分類 表1-1 男女別 非行の大分類 (件・%) 男 女 合 計 盗み 338 146 484 69.8 30.2 100.0 粗暴 223 47 270 82.6 17.4 100.0 家出外泊 233 286 519 44.9 55.1 100.0 不良交友 85 107 192 44.3 55.7 100.0 薬物 0 16 16 0.0 100.0 100.0 放火 48 8 56 85.7 14.3 100.0 性的非行 52 82 134 38.8 61.2 100.0 金品持出 96 38 134 71.6 28.4 100.0 暴走行為 15 3 18 83.3 16.7 100.0 怠学 等 54 62 116 46.6 53.4 100.0 その他 26 16 42 61.9 38.1 100.0 合計 1170 811 1981 59.1 40.9 100.0 ※ 対象:男子748人 女子451人

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3.3 9.2 1.2 1.0 0.4 10.6 7.8 2.0 1.7 2.8 2.3 0.4 0.1 0.8 16.0 19.5 31.2 0.1 0.1 0.1 6.1 3.8 4.6 9.5 11.8 11.4 2.0 20.0 0 5 10 15 20 25 30 35 その他 怠学 いじめ 無免許運転 暴走行為 金品持出 性的非行 強制わいせつ 売春 火遊び 放火 シンナー 覚醒剤・大麻 薬物・脱法ドラッグ 不良交友 深夜徘徊 家出外泊 殺人 殺人未遂 強姦 強盗 家庭内暴力 学校内の暴力行為 恐喝 暴行・傷害 自転車・バイク盗み 窃盗 ひったくり 万引 %

2 非行の小分類

「家出外泊と併せて深夜徘徊が多く、盗みでは万引が多い」 ○ 男子で最も多い非行相談内容は「万引」で、次に「家出外泊」、「深夜徘徊」の順 となっています。特に非行の入り口とも言われるいわゆる「初発型非行」(注)1が多 くなっています。 ○ 女子は「家出外泊」が最も多く、「深夜徘徊」、「不良交友」の順となっています。 (注)1 初発型非行 占有離脱物横領と窃盗犯のうち、万引、自転車盗、オートバイ盗をいう。 解説 ○ 男子は女子に比べて、「暴行・傷害」や「恐喝」、「学校内の暴力行為」といった 「粗暴」に関する非行の割合が高いことが特徴です。 ○ 女子は「家出外泊」、「性的非行」、「不良交友」に関する非行の割合が男子より高 いことが特徴です。 図1-2 非行の小分類 0.0

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表1-2 男女別 非行の小分類 (%) 非行大分類 小分類 男 女 合 計 盗み 万引 20.6 19.1 20 ひったくり 2.7 0.9 2.0 窃盗 13.2 8.4 11.4 自転車・オートバイ盗 14.8 6.9 11.8 粗暴 暴行・傷害 13.5 2.9 9.5 恐喝 5.7 2.7 4.6 学校内の暴力行為 5.6 0.9 3.8 家庭内暴力 7.6 3.5 6.1 強盗 0.1 0.0 0.1 強姦 0.1 - 0.1 殺人未遂 0.1 0.0 0.1 殺人 0.0 0.0 0.0 家出外泊 家出外泊 18.6 52.1 31.2 深夜徘徊 15.9 25.5 19.5 不良交友 不良交友 11.1 24.2 16.0 薬物 薬物・脱法ドラッグ(注)1 0.0 2.0 0.8 覚醒剤・大麻 0.0 0.2 0.1 シンナー 0.1 0.9 0.4 放火 放火 3.2 0.7 2.3 火遊び 3.6 1.3 2.8 性的非行 売春 0.0 4.4 1.7 強制わいせつ 3.2 - 2.0 性的非行 3.6 14.6 7.8 金品持出 金品持出 12.2 8.0 10.6 暴走行為 暴走行為 0.4 0.4 0.4 無免許運転 1.5 0.2 1.0 怠学 等 いじめ 1.6 0.4 1.2 怠学 6.4 13.7 9.2 その他 その他 3.5 3.1 3.3 ※ 男子748人 女子451人 合計=1981(複数回答) (注)1 脱法ドラッグ 麻薬に構造が類似している成分が含有されているなど、摂取することによって健 康被害が懸念される薬物等の総称

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4.8 0.8 2.2 4.9 20.4 32.3 18.8 5.5 3.3 3.5 1.4 1.3 0.8 0 5 10 15 20 25 30 35 中卒他 高校3年生 高校2年生 高校1年生 中学3年生 中学2年生 中学1年生 小学6年生 小学5年生 小学4年生 小学3年生 小学2年生 小学1年生 合計=1199 %

3 子どもの学年

「中学2年生が最も多く約32%である」 ○ 非行相談があった子どもの学年は、合計すると中学生が約72%を占めています。 中学2年生までは学年と共に相談数も増加する傾向にあります。 解説 ○ 非行相談は小学 4 年頃から増加の兆しが見え始めます。小学校高学年にさしかか る時期は子どもにとって交友関係の広がりを見せる時期にあたります。家庭基盤が 不安定な子どもたちの中には、非行仲間との交友関係が学年の枠を超え広がってい ることも考えられます。 ○ 非行相談の大部分は中学生の時にピークを迎えます。子どもたちが思春期に入り、 不安定な状態の中で非行に逸脱していくことが数値からうかがえます。 図1-3 子どもの学年

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2~4人 39.1% 15~19人 0.5% 5~14人 12.8% 36.5%単独 不明 10.4% 20人以上 0.7% 合計=1199

4 非行グループの規模

「単独又は少人数での非行が多い」 ○ 非行グループの規模で最も多いのは、「2~4人」の約39%で、次に「単独」 の約37%となっています。「5~14人」のグループは約13%しかありません でした。 ○ 在学状況別に見ると小学生と高校生は「単独」が多く、中学生になると「2~4 人」の小グループでの非行が増えます。 解説 ○ かつては非行といえば、どちらかというと暴走族に象徴されるように、集団化し て徒党を組むようなイメージがありました。服装など外見も独自のスタイルで統一 していることが多かったように思われます。 ○ しかし、非行相談で児童相談所が対応する子どもの多くは、単独又は少人数のグ ループで活動していることがわかります。また、子どもに会ってみると、必ずしも 特徴のある外見をしているとは限りません。外見に特徴がなくグループ化していな い場合は、目立たない分だけ対応が遅れてしまい、気がついたときは急激に非行が 悪化していることもあります。 図1-4 非行グループの規模 表1-3 在学状況別 非行グループの規模 (%) 単 独 2~4人 5~14 人 15~19 人 20 人以上 不 明 小学校 55.9 37.2 2.7 0 0 4.2 中学校 29.3 42.5 16.5 0.7 0.8 10.2 高 校 56.4 20.2 4.3 0 0 19.1 中卒他 48.3 26.7 6.7 0 0 18.3 合計=1199

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事例 1

不良交友と薬物が常習化したAさん(女子:中学卒業)が児童相談所の援助で立ち直 った事例 事例の概要 ○ Aさんは、小学校5年生で両親が離婚したため児童養護施設に入所しました。 親権者は母親であり、中学2年生のときに母が再婚した家庭に引き取られました。 Aさんは昼夜にわたって働く母に代わり、異父弟の世話をしていましたが、飲 酒しては暴れる継父の体罰を避けるように、不良交友と家出外泊が始まりました。 ○ Aさんの養育に困り果てた母親は、Aさんが中学3年生になった秋に、母方の 祖父のもとにAさんを託しました。Aさんはやがて、厳格な祖父とも衝突するよ うになり、再び不良交友と家出外泊が始まりました。 そして、家出している時に知り合った男子高校生の家に泊り込み、脱法ドラッ グに手を出すようになりました。万引した品物を売りさばいては脱法ドラッグを 買うようになり、ついに祖父宅から締め出されてしまいました。中学卒業後も進 路が決まらず、相変わらずの行動をとるAさんの将来を心配する母親は警察に相 談し、Aさんは警察署からの身柄通告で児童相談所に一時保護されました。 援助の展開 ○ 児童福祉司はAさんとの関わりの中で、2つの課題を中心にケースワークを進 めていきました。一つは家出外泊と脱法ドラッグについてであり、もう一つは母 親との関係改善についてです。そのうち家出外泊については、児童福祉司が相手 の男子高校生とその親との連絡・調整に当たりました。男子高校生はAさんとの 交際の継続を望んでおらず、脱法ドラッグの常習化はあくまでもAさんの責任で あると言い張りました。Aさんはこのことを知ると、家出外泊と脱法ドラッグを 止めることを児童福祉司に約束しました。 ○ 一時保護所に入所して10日ほど経ってから、児童福祉司はAさんと母親の面 会を設定しました。Aさんは戸惑いましたが、母親がAさんを大変心配していた ということを聞き、Aさんは嬉しかったと同時に今まで心に押さえ込んでいた思 いを母親に伝えました。 ○ Aさんは母親と話し合った結果、住込み就職で美容師を目指す目標を立てまし た。母親との関係改善についても児童福祉司と相談を重ねながら、時間をかけて 焦らずに行っていく決心を固めました。 援助のポイント ○ 児童福祉司が、Aさんの家出外泊や脱法ドラッグを止めさせることと親子関係 の改善に焦点を絞り、ケースワークを進めたことが効果的でした。 ○ 働くという自立の目標ができ、それを支える母子関係の修復を始めていくとい う具体的なプロセスを描くことにより、Aさんの非行からの立ち直りを進めてい

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その他 1.3% 家庭裁判所から 送致 4.8% 警察(書類通告) 29.8% 一般相談 44.7% 警察(身柄通告) 19.4% 合計=1199

第2節 相談者の実態

1 非行相談の経路

「警察からの通告が非行相談の約半数に上る」 ○ 「書類通告」や「身柄通告」など警察からの通告は併せて約49%と最も多く なっています。 ○ 保護者や学校などからの「一般相談」は約45%です。 解説 ○ 非行相談は刑罰法令に触れる行為や不良行為に関することが多いことから、警 察からの通告の割合が高くなっています。 ○ 男女別に見ると、女子では「一般相談」の占める割合が約55%と高くなって います。女子の場合は性的非行などの被害者になる危険が多いため、家出外泊や 深夜徘徊で家に帰らない子どもを心配する保護者や学校の姿がうかがえます。 児童相談所の取組 ○ 警察は子どもを補導した場合、要保護性が認められれば児童相談所に通告しま す。警察では事情聴取等を行いますが、通告後の相談援助活動は児童相談所に委 ねられています。 図1-5 非行相談の経路 表1-4 男女別 非行相談の経路 (%) 一般相談 警察 書類通告 警察 身柄通告 家庭裁判所 から送致 その他 合計 男 38.4 37.7 17.8 4.7 1.4 100.0 女 55.2 16.6 22.2 5.1 0.9 100.0 合計 44.7 29.8 19.4 4.8 1.3 100.0 ※ 対象:男子748人 女子451人

合計=1199

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2 相談者別の非行相談内容

「保護者から最も相談がある非行内容は家出外泊である」 ○ 保護者からの相談は、「家出外泊」についてが最も多く、次に「盗み」、「金品持 出」の順になっています。 ○ 警察からの通告・相談は、「盗み」に関するものが最も多くなっています。 ○ 学校や児童委員など大部分の相談者は、保護者と同様に「家出外泊」に関する相 談が最も多くなっています。 解説 ○ 保護者が子どもの非行で最も心配しているものは、「家出外泊」であることが推 測できます。子どもの「家出外泊」に「盗み」や「金品持出」などが重なって、よ うやく非行の重度化に親が気づき、相談に訪れている実態があると思われます。 ○ また、学校についても学校内の暴力行為を含んだ「粗暴」を始めとして、「家出 外泊」や「盗み」などを中心に広く子どもの非行に対応し、児童相談所に相談して いる現状がうかがえます。 表1-5 相談者別の非行相談内容 (%) 盗み 粗暴 家出外泊 不良交友 薬物 放火 性的非行 金品持出 暴走行為 怠学 等 その他 保護者 33.3 14.5 51.6 19.1 2.3 2.6 10.4 25.2 0.9 8.4 2.3 警察 45.2 24.8 37.3 13.3 0.4 6.4 9.8 3.6 0.9 9.4 4.3 学校 35.2 29.7 52.7 18.7 1.1 3.3 13.2 14.3 2.2 20.9 2.2 家庭裁判所 35.7 28.6 58.9 33.9 1.8 1.8 25.0 7.1 10.7 10.7 8.9 児童福祉施設 46.5 23.3 18.6 9.3 0.0 7.0 23.3 0.0 2.3 9.3 4.7 保護者以外の 親戚 33.3 33.3 42.9 9.5 0.0 0.0 4.8 19.0 0.0 4.8 0.0 近所の人 20.0 13.3 46.7 20.0 0.0 20.0 0.0 0.0 0.0 13.3 13.3 児童委員 27.3 18.2 72.7 9.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 9.1 0.0 その他 51.2 28.6 34.5 10.7 4.8 3.6 10.7 8.3 1.2 4.8 0.0 合計=1981(複数回答)

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警察等の機関で 指導を受けて 来所 35.3% その他 4.8% 相談せず放置 15.0% 自ら児童相談所 に相談 36.7% 不明 8.2% 合計=1199

3 保護者が非行相談を行ったきっかけ

「大多数の保護者は自らの意思又は警察等の指導を受けて相談に来る」 ○ 保護者が児童相談所に自ら相談したものは約37%です。 ○ 警察の通告や児童相談所からの呼び出し等をきっかけにして保護者が相談した のは約35%です。 ○ 警察からの通告などがあっても、保護者が相談の必要性を認めず放置したもの は15%となっています。 解説 ○ 保護者の約4割は、子どもの非行を心配して自らの意思や判断で児童相談所を訪 れ、相談を行っています。 児童相談所の取組 ○ 警察は事件を児童相談所に書類通告する場合は、保護者と子どもに対し、後日、 児童相談所からの呼出しがあるので応ずるように指導しています。 ○ しかし、児童相談所が警察からの通告を受けて保護者に連絡しても連絡が取れな かったり、子どもの非行を認めない保護者もいます。また、警察で指導を受けたの で、児童相談所に行く必要はないと抗議する保護者もいます。 ○ その原因として、児童相談所が子どもの非行相談の窓口として十分に理解されて いないことや、処罰を行う機関であると誤解されていることが考えられます。 児童相談所は相談を必要としない姿勢をとる保護者にも、家庭訪問の実施など相談 を始める働きかけを行っています。 図1-6 保護者が非行相談を行ったきっかけ

(33)

不明 13.8% 3ヶ月未満 29.1% 1年以上3年 未満 20.7% 3年以上 12.1% 3ヶ月以上 1年未満 24.3% 合計=1199

4 非行相談までにかかった期間

「相談までに1年以上かかっているケースが約33%ある」 ○ 保護者や警察などの相談者が非行発生から相談するまでにかかった期間は、「3 ヶ月未満」が約3割です。 ○ しかし、「1年以上3年未満」のケースが約21%もあり、「3年以上」相談しな かったケースも約12%に上りました。 解説 ○ 相談者が児童相談所に相談する以前に、他の専門機関へ相談している可能性もあ りますが、非行発生後から相談するまでの時期が遅いと思われるケースは少なくあ りません。相談の遅れが非行を深刻化させ、非行の改善を困難にしているおそれが あります。 児童相談所の取組 ○ 子どもは児童相談所が関わることによって、自分の考え方や取り巻く人間関係を 整理していきます。こうしたことから、早期の非行相談は子どもに効果的な関わり が期待できることと併せて、子どもの非行の重度化防止にも大きく貢献していると 考えられます。 図1-7 相談までにかかった期間

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2.2 1.1 2.0 3.7 5.8 13.3 18.1 19.7 20.6 35.7 0 5 10 15 20 25 30 35 40 その他 家庭裁判所送致 警察との連携 学校との連携 児童養護施設入所 一時保護 関係機関からの保護者呼出・面接・指導等の依頼 児童福祉司等から相談者への助言 児童自立支援施設入所 子ども呼出・面接・指導等の依頼 合計=1528(複数回答) %

5 相談者からの要望

「子どもへの面接・指導の要望が最も多く、次に施設入所の要望が多い」 ○ 子どもに対して直接の関わりや指導を望む「子ども呼出・面接・指導等の依頼」 が約36%で最も多くなっています。 ○ 次に家庭から生活場所を一時的に移して、専門的な援助体制のもとで成長と問題 解決を図る「児童自立支援施設入所」の要望が約21%あります。 ○ 相談した本人自身が児童福祉司に対して助言を求めている「児童福祉司等からの 相談者への助言」が約20%となっています。 解説 ○ 相談者の多くは児童相談所の持つケースワーク機能に期待をしています。例えば 保護者からの相談の場合、家族が初めて直面するような大きな問題であっても、児 童相談所では過去の事例を基に、よりよい方向に導く相談や援助が可能であり、面 接・指導・助言や関係機関との連携によって、子どもや家庭が抱えている問題の解 決に向けた援助を行なっています。 ○ 相談者からの要望が多いものに、「児童自立支援施設入所」があります。これは、 家庭では、これ以上養育が難しいと考えた上での相談です。 児童相談所の取組 ○ 児童相談所は、非行相談の内容を家庭環境や学校生活などの様々な面から慎重に 調査を重ね、援助の方針などについて総合的に判断した上で援助を行います。例え ば、施設入所を子どもに十分に説明せずに大人側が一方的に決めてしまうと、子ど もは家庭や地域から見捨てられたと思い込み、抱えていた問題が深刻化する場合が あります。そこで、児童相談所は保護者、子ども本人と十分な話合いを行い、施設 入所を決定しています。 図1-8 相談者からの要望

参照

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