第2節 相談者の実態 1 非行相談の経路
5 相談者からの要望
「子どもへの面接・指導の要望が最も多く、次に施設入所の要望が多い」
○ 子どもに対して直接の関わりや指導を望む「子ども呼出・面接・指導等の依頼」
が約36%で最も多くなっています。
○ 次に家庭から生活場所を一時的に移して、専門的な援助体制のもとで成長と問題 解決を図る「児童自立支援施設入所」の要望が約21%あります。
○ 相談した本人自身が児童福祉司に対して助言を求めている「児童福祉司等からの 相談者への助言」が約20%となっています。
解説
○ 相談者の多くは児童相談所の持つケースワーク機能に期待をしています。例えば 保護者からの相談の場合、家族が初めて直面するような大きな問題であっても、児 童相談所では過去の事例を基に、よりよい方向に導く相談や援助が可能であり、面 接・指導・助言や関係機関との連携によって、子どもや家庭が抱えている問題の解 決に向けた援助を行なっています。
○ 相談者からの要望が多いものに、「児童自立支援施設入所」があります。これは、
家庭では、これ以上養育が難しいと考えた上での相談です。
児童相談所の取組
○ 児童相談所は、非行相談の内容を家庭環境や学校生活などの様々な面から慎重に 調査を重ね、援助の方針などについて総合的に判断した上で援助を行います。例え ば、施設入所を子どもに十分に説明せずに大人側が一方的に決めてしまうと、子ど もは家庭や地域から見捨てられたと思い込み、抱えていた問題が深刻化する場合が あります。そこで、児童相談所は保護者、子ども本人と十分な話合いを行い、施設 入所を決定しています。
図1-8 相談者からの要望
事例 2
母親の家出がきっかけで性非行が始まったBさん(女子:中学3年生)の事例
事例の概要
○ Bさんは幼少の頃に両親が離婚したため、母親と2人で暮らしていました。B さんが中学生になった春に母親は交際していた男性と家出したため、Bさんは母 方の祖母宅に預けられました。
○ 母親の家出によってBさんは心がすさみ、淋しさを背景とした売春や万引など の非行が始まりました。Bさんが中学3年になった頃、母親は男性と別れ、自分 の行為を反省してBさんの元に戻ってきました。しかし、Bさんは母親への不信 感を増大させ、親子の溝は深まるばかりでした。そのため、悩んだ母親は児童相 談所を訪れました。
援助の展開
○ 児童福祉司は母子関係の改善とBさんの生活を立て直すために面接を行いま したが、Bさんの家出外泊は改まらず、児童相談所の一時保護所に入所すること になりました。Bさんは児童福祉司や一時保護所の職員には自分の心情を打ち明 けましたが、母親には心を閉ざしたままでした。Bさんは自ら児童養護施設に入 所することを選び、児童福祉司と母親も同じ結論に至りました。
○ 施設に入所して間もなく、Bさんは再び売春や万引を始めました。Bさんは施 設に入所しても母親のことを許せず、自分の問題も見つめ直すことができなくな っていました。Bさんは施設を無断外出し、その後、警察に保護されました。児 童福祉司が駆けつけ、Bさんから事情を聞いたところ、売春をして生活費をやり 繰りしていたことがわかりました。
○ Bさんは警察から家庭裁判所に送致され、審判の結果、児童自立支援施設に入 所することが決まりました。しかし、審判の時に裁判官が母親の養育放棄を厳し く指摘したことで、Bさんは今までの苦しみから少し救われたように思いました。
○ 母親は、Bさんが退所後に2人で新しい生活を始められるように、Bさんの立 ち直りに全力を尽くす決心をしました。児童福祉司から助言を受け、Bさんの心 を開くため母親は児童自立支援施設でBさんと話合いを重ね、現在、親子関係の 再構築を図っています。
援助のポイント
○ Bさんと母親の関係改善が思うように進まず、Bさんの非行が重度化しました が、児童福祉司はBさんとの信頼関係を築き、親子関係の修復に努めました。
○ 児童自立支援施設入所中に、親子の話合いを深め、退所後の安定した親子関係 を実現する援助が重要です。児童福祉司は施設職員と連携し、親子関係の再構築 に向けた援助を行いました。
第 2 章 非行があった子どもの特徴と取り巻く環境
こ の 章 の 概 要
1 非行相談があった子どもの特徴
○ 子どもの性格特徴を上位から3つ挙げると、「自己中心的」、「未熟」、「意志が 弱い」の順になります。
○ 非行について自覚できている子どもは約44%で、うち約25%は改善意欲が あります。しかし、約30%の子どもが自らの非行を自覚できていません。
2 家族の実態
○ 非行相談があった子どもの生活場所は、「自宅」が86%と大多数を占めてい ます。
○ 家族形態は、「実父母」がいる家庭が約37%でした。「実父・継養母」と「実 母・継養父」の世帯を合わせると、父親と母親がいる家庭が約49%を占めてい ます。
○ 保護者の養育態度は父母とも「放任」が最も多く、それぞれ約3割に上ります。
養育態度に「問題がない」ケースは父親が約25%で、母親は約24%でした。
○ 父親の約47%と母親の約60%は非行相談に協力的です。しかし、それ以外 には「消極的」など何らかの問題があります。
3 地域の環境
○ たまり場は「友人の家」が最も多くなっています。たまり場のある場所は「自 宅近辺」が約75%で、「自宅から遠い場所」は約20%です。
○ 非行が起きる場所として「自宅」(非行内容は家出外泊、金品持出など)が最 も多く、次いで「友人の家」、「公園」となっています。
○ 地域の環境については「問題がない」が約41%と多数を占めている半面、「非 行を助長する場所や風潮がある」が約22%あります。
6.2 6.8
7.4 8.2
8.5
11.9
14.8 15.8
15.9
21.7
0 5 10 15 20 25
無気力 内向的 情緒不安定 依存的 劣等感 攻撃的 衝動的 意志が弱い 未熟 自己中心的
合計=1928(複数回答)
%