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人的資本投資のコストが直接的費用と放棄所得からなる一般 的なケース

ドキュメント内 課税の経済分析 (ページ 48-53)

が限界費用の上昇の大きさを上回っているので,税率切り上げによって人的資 本投資が常に増加することになる.このケースでは,外生的信用制約モデルも 内生的信用制約モデルも,定性的な結果にほとんど差がないことになる.

4. 人的資本投資のコストが直接的費用と放棄所得からなる一般

(77)式では,放棄所得というコストは税控除可能であるのに対し,直接的費用 というコストは税控除可能ではないことが示されている.この効用最大化問題 の1階の条件は次のようになる.

(79) −u0(c1)w+ 1

1 +ρu0(c2)αω0(H)δhδ1e1δ = 0, (80) −u0(c1) + 1

1 +ρu0(c2)(1−t)αω0(H)(1−δ)hδeδ= 0, (81) u0(c1) 1

1 +ρu0(c2)(1 +r) = 0.

(79)式と(80)式より以下の式が成立する.

(82) (1−t)wh

e = δ

1−δ.

(79)式と(81)式より (1 +r)w =αω0(H)δ(e/h)1δ であるから,これに(82)式 を代入して整理すると eh を消去することができ,t と H の関係を見るこ とができる.

(83) (1 +r)w= (1−t)1δαω0(H)(1−δ)1δδδw1δ.

(83)式をHtで微分して整理することによって,以下の関係が成立すること が分かる.

(84) ∂H

∂t = (1−δ)ω0(H) (1−t)ω00(H) <0.

この場合には,(84)式より明らかに定率税は人的資本投資を抑制する.ただし,

人的資本投資のコストの中に占める直接的費用の比率1−δ が小さくなればな るほど効果は小さくなる17

4.2.

外生的信用制約

外生的に決定された信用の上限に制約されている場合には,予算制約式は以 下のようになる.

(85) a+ ¯b+ (1−t)w(1−h) = c1+e,

17人的資本投資のコストは(1t)wh+eである.(82)式を代入するとこれは(1/δ)(1t)wh に等しい.したがってδ= (1(1t)wh+et)wh が成立する.同様に1δ= (1t)wh+ee が成立する.こ れらはまさにコブ・ダグラス型関数の性質である.

(86) (1−t)αω(H) = c2+ (1 +r)¯b.

このとき,この効用最大化問題の1階の条件は次のようになる.

(87) −u0(c1)w+ 1

1 +ρu0(c2)αω0(H)δhδ1e1δ = 0, (88) −u0(c1) + 1

1 +ρu0(c2)(1−t)αω0(H)(1−δ)hδeδ= 0.

(87)式と(88)式より,(82)式と同じ式が成立する.

(89) (1−t)wh

e = δ

1−δ.

(89)式とH =hδe1δ より,h と e をそれぞれ H によって表すことができ,

(90) h= (1−t)δ1(1−δ)δ1δ1δwδ1H, (91) e= (1−t)δ(1−δ)δδδwδH,

を得ることができる.さらに,(89)式を用いると人的資本投資のコストは (92) (1−t)wh+e = (1−t)wh+1−δ

δ (1−t)wh= (1−t)δ(1−δ)δ1δδwδH, と変形され,第1期と第2期の消費も次のように表すことができる.

(93) c1 =a+ ¯b+ (1−t)w−(1−t)δ(1−δ)δ1δδwδH, (94) c2 = (1−t)αω(H)−(1 +r)¯b.

以上の(87)式から(94)式を全て用いて整理すると,この問題の1階の条件を以 下のように表すことができる.

−u0(a+ ¯b+ (1−t)w−(1−t)δ(1−δ)δ1δδwδH) (95)

+ 1

1 +ρu0((1−t)αω(H)−(1 +r)¯b)[(1−t)1δαω0(H)(1−δ)1δδδwδ]

= 0.

(95)式をHtで微分して整理することによって,以下の式を得ることができ る18

(96) ∂H

∂t =

1

1tu0(c1) [

σ

((1+r)¯b

c2 +a+¯cbe

1

)(1−δ) ]

I .

ただし,

I ≡u00(c1)(1−t)δ(1−δ)δ1δδwδ (97)

+ 1

1 +ρu00(c2)(1−t)αω0(H)[(1−t)1δαω0(H)(1−δ)1δδδwδ]

+ 1

1 +ρu0(c2)[(1−t)1δαω00(H)(1−δ)1δδδwδ],

と定義する.I は常に負であるが,分子の符号は確定しないので,(96)式の符 号も確定しない.a= ¯b = 0 の場合には,∂H/∂t < 0が常に成立する.a+ ¯b > e の場合にσ が大きく 1−δが小さいなら,∂H/∂t >0になる可能性が高くなる.

4.3.

内生的信用制約

借入れの上限が内生的に決定される場合,予算制約式は次のようになる.

(98) a+φ(1−t)αω(H) + (1−t)w(1−h) = c1+e, (99) (1−t)αω(H) = c2+ (1 +r)φ(1−t)αω(H).

このとき,この効用最大化問題の1階の条件は次のようになる.

−u0(c1)[w−φαω0(H)δhδ1e1δ] (100)

+ 1

1 +ρu0(c2)[1(1 +r)φ]αω0(H)δhδ1e1δ = 0,

18付録A(96)式の分子を導出している.ところで,(96)式右辺の分子の[ ]の中は∂h∂t に関す る部分と ∂e∂t に関する部分に分解することができる.すなわち,σ

((1+r)¯b

c2 +a+¯cbe

1

)(1δ) = σ

((1t)αω(H)c2

c2 +c1(1ct)w(1h)

1

)(1δ) = σ

((1t)αω(H)

c2 (1t)w(1c1 h))

(1δ) = δσ

((1t)αω(H)

c2 (1t)w(1c1 h))

+ (1δ) {

σ

((1t)αω(H)

c2 (1t)w(1c1 h))

1 }

,と分解すること ができる.上式において最後の式の第1項が ∂h∂t に関する部分であり,第2項が ∂e∂t に関する 部分である.(96)式自体がどのように分解されるかの詳細に関しては,付録Cを参照.

−u0(c1)[1−φ(1−t)αω0(H)(1−δ)hδeδ] (101)

+ 1

1 +ρu0(c2)[1(1 +r)φ](1−t)αω0(H)(1−δ)hδeδ = 0.

前節までと同様に,c2 > 0 のために 1(1 +r)φ > 0,内点解のために w− φαω0(H)δhδ1e1δ > 0,を仮定する.(100)式と(101)式より,(82), (89)式と 同じ式が成立する.

(102) (1−t)wh

e = δ

1−δ.

(102)式を用いれば,w[1−φ(1−t)αω0(H)(1−δ)hδeδ] =w−φαω0(H)δhδ1e1δ>

0が成立することを確認できるので,上記の仮定の下では1−φ(1−t)αω0(H)(1 δ)hδeδ >0 も成立していると言える.第4.2節と同様にして以下の式を得るこ とができる.

(103) h= (1−t)δ−1(1−δ)δ−1δ1−δwδ−1H, (104) e= (1−t)δ(1−δ)δδδwδH,

(105) (1−t)wh+e= (1−t)δ(1−δ)δ1δδwδH,

(106) c1 =a+φ(1−t)αω(H) + (1−t)w−(1−t)δ(1−δ)δ−1δ−δwδH, (107) c2 = [1(1 +r)φ](1−t)αω(H).

以上の(100)式から(107)式を全て用いて整理すると,この問題の1階の条件を

以下のように表すことができる.

−u0(a+φ(1−t)αω(H) + (1−t)w−(1−t)δ(1−δ)δ1δδwδH) (108)

×[w−φαω0(H)(1−t)1δ(1−δ)1δδδw1δ]

+ 1

1 +ρu0([1(1 +r)φ](1−t)αω(H))

×[[1(1 +r)φ]αω0(H)(1−t)1δ(1−δ)1δδδw1δ] = 0.

(102)式を用いれば,w−φαω0(H)(1−t)1δ(1−δ)1δδδw1δ =w−φαω0(H)δhδ1e1δ>

0が成立していることを確認できる.(108)式をHtで微分して整理すること

によって,以下の式を得ることができる19

∂H

∂t =

1

1tu0(c1)[w−φαω0(H)(1−t)1δ(1−δ)1δδδw1δ] (109) J

× [

σa−e

c1 (1−δ) w

w−φαω0(H)(1−t)1δ(1−δ)1δδδw1δ ]

. ただし,

J ≡u00(c1)[(1−t)δ(1−δ)δ1δδwδ1] (110)

×[w−φαω0(H)(1−t)1δ(1−δ)1δδδw1δ]2 +u0(c1)φαω00(H)(1−t)1δ(1−δ)1δδδw1δ

+ 1

1 +ρu00(c2)([1(1 +r)φ](1−t)αω0(H))

×[[1(1 +r)φ]αω0(H)(1−t)1δ(1−δ)1δδδw1δ]

+ 1

1 +ρu0(c2)[[1(1 +r)φ]αω00(H)(1−t)1δ(1−δ)1δδδw1δ], と定義する.J は常に負であるが,分子の符号は確定しないので,(109)式の符 号も確定しない.a e なら(したがって a = 0 の場合も)常に ∂H/∂t < 0 である.たとえ a > e でも σ が非常に小さいか 1−δ が非常に大きいなら,

∂H/∂t <0 になる可能性が高い.a > eでも σ が非常に大きいか1−δ が非常 に小さいなら,∂H/∂t >0 になる可能性がある.したがってこの一般的なケー スにおいても,内生的信用制約モデルの方がより現実的な結論を得ることがで きたと言えよう.

ドキュメント内 課税の経済分析 (ページ 48-53)