が限界費用の上昇の大きさを上回っているので,税率切り上げによって人的資 本投資が常に増加することになる.このケースでは,外生的信用制約モデルも 内生的信用制約モデルも,定性的な結果にほとんど差がないことになる.
4. 人的資本投資のコストが直接的費用と放棄所得からなる一般
(77)式では,放棄所得というコストは税控除可能であるのに対し,直接的費用 というコストは税控除可能ではないことが示されている.この効用最大化問題 の1階の条件は次のようになる.
(79) −u0(c1)w+ 1
1 +ρu0(c2)αω0(H)δhδ−1e1−δ = 0, (80) −u0(c1) + 1
1 +ρu0(c2)(1−t)αω0(H)(1−δ)hδe−δ= 0, (81) u0(c1)− 1
1 +ρu0(c2)(1 +r) = 0.
(79)式と(80)式より以下の式が成立する.
(82) (1−t)wh
e = δ
1−δ.
(79)式と(81)式より (1 +r)w =αω0(H)δ(e/h)1−δ であるから,これに(82)式 を代入して整理すると e と h を消去することができ,t と H の関係を見るこ とができる.
(83) (1 +r)w= (1−t)1−δαω0(H)(1−δ)1−δδδw1−δ.
(83)式をHとtで微分して整理することによって,以下の関係が成立すること が分かる.
(84) ∂H
∂t = (1−δ)ω0(H) (1−t)ω00(H) <0.
この場合には,(84)式より明らかに定率税は人的資本投資を抑制する.ただし,
人的資本投資のコストの中に占める直接的費用の比率1−δ が小さくなればな るほど効果は小さくなる17.
4.2.
外生的信用制約外生的に決定された信用の上限に制約されている場合には,予算制約式は以 下のようになる.
(85) a+ ¯b+ (1−t)w(1−h) = c1+e,
17人的資本投資のコストは(1−t)wh+eである.(82)式を代入するとこれは(1/δ)(1−t)wh に等しい.したがってδ= (1(1−−t)wh+et)wh が成立する.同様に1−δ= (1−t)wh+ee が成立する.こ れらはまさにコブ・ダグラス型関数の性質である.
(86) (1−t)αω(H) = c2+ (1 +r)¯b.
このとき,この効用最大化問題の1階の条件は次のようになる.
(87) −u0(c1)w+ 1
1 +ρu0(c2)αω0(H)δhδ−1e1−δ = 0, (88) −u0(c1) + 1
1 +ρu0(c2)(1−t)αω0(H)(1−δ)hδe−δ= 0.
(87)式と(88)式より,(82)式と同じ式が成立する.
(89) (1−t)wh
e = δ
1−δ.
(89)式とH =hδe1−δ より,h と e をそれぞれ H によって表すことができ,
(90) h= (1−t)δ−1(1−δ)δ−1δ1−δwδ−1H, (91) e= (1−t)δ(1−δ)δδ−δwδH,
を得ることができる.さらに,(89)式を用いると人的資本投資のコストは (92) (1−t)wh+e = (1−t)wh+1−δ
δ (1−t)wh= (1−t)δ(1−δ)δ−1δ−δwδH, と変形され,第1期と第2期の消費も次のように表すことができる.
(93) c1 =a+ ¯b+ (1−t)w−(1−t)δ(1−δ)δ−1δ−δwδH, (94) c2 = (1−t)αω(H)−(1 +r)¯b.
以上の(87)式から(94)式を全て用いて整理すると,この問題の1階の条件を以 下のように表すことができる.
−u0(a+ ¯b+ (1−t)w−(1−t)δ(1−δ)δ−1δ−δwδH) (95)
+ 1
1 +ρu0((1−t)αω(H)−(1 +r)¯b)[(1−t)1−δαω0(H)(1−δ)1−δδδw−δ]
= 0.
(95)式をHとtで微分して整理することによって,以下の式を得ることができ る18.
(96) ∂H
∂t =−
1
1−tu0(c1) [
σ
((1+r)¯b
c2 +a+¯cb−e
1
)−(1−δ) ]
I .
ただし,
I ≡u00(c1)(1−t)δ(1−δ)δ−1δ−δwδ (97)
+ 1
1 +ρu00(c2)(1−t)αω0(H)[(1−t)1−δαω0(H)(1−δ)1−δδδw−δ]
+ 1
1 +ρu0(c2)[(1−t)1−δαω00(H)(1−δ)1−δδδw−δ],
と定義する.I は常に負であるが,分子の符号は確定しないので,(96)式の符 号も確定しない.a= ¯b = 0 の場合には,∂H/∂t < 0が常に成立する.a+ ¯b > e の場合にσ が大きく 1−δが小さいなら,∂H/∂t >0になる可能性が高くなる.
4.3.
内生的信用制約借入れの上限が内生的に決定される場合,予算制約式は次のようになる.
(98) a+φ(1−t)αω(H) + (1−t)w(1−h) = c1+e, (99) (1−t)αω(H) = c2+ (1 +r)φ(1−t)αω(H).
このとき,この効用最大化問題の1階の条件は次のようになる.
−u0(c1)[w−φαω0(H)δhδ−1e1−δ] (100)
+ 1
1 +ρu0(c2)[1−(1 +r)φ]αω0(H)δhδ−1e1−δ = 0,
18付録Aで(96)式の分子を導出している.ところで,(96)式右辺の分子の[ ]の中は∂h∂t に関す る部分と ∂e∂t に関する部分に分解することができる.すなわち,σ
((1+r)¯b
c2 +a+¯cb−e
1
)−(1−δ) = σ
((1−t)αω(H)−c2
c2 +c1−(1−ct)w(1−h)
1
)−(1−δ) = σ
((1−t)αω(H)
c2 −(1−t)w(1c1 −h))
−(1−δ) = δσ
((1−t)αω(H)
c2 −(1−t)w(1c1 −h))
+ (1−δ) {
σ
((1−t)αω(H)
c2 −(1−t)w(1c1 −h))
−1 }
,と分解すること ができる.上式において最後の式の第1項が ∂h∂t に関する部分であり,第2項が ∂e∂t に関する 部分である.(96)式自体がどのように分解されるかの詳細に関しては,付録Cを参照.
−u0(c1)[1−φ(1−t)αω0(H)(1−δ)hδe−δ] (101)
+ 1
1 +ρu0(c2)[1−(1 +r)φ](1−t)αω0(H)(1−δ)hδe−δ = 0.
前節までと同様に,c2 > 0 のために 1−(1 +r)φ > 0,内点解のために w− φαω0(H)δhδ−1e1−δ > 0,を仮定する.(100)式と(101)式より,(82), (89)式と 同じ式が成立する.
(102) (1−t)wh
e = δ
1−δ.
(102)式を用いれば,w[1−φ(1−t)αω0(H)(1−δ)hδe−δ] =w−φαω0(H)δhδ−1e1−δ>
0が成立することを確認できるので,上記の仮定の下では1−φ(1−t)αω0(H)(1− δ)hδe−δ >0 も成立していると言える.第4.2節と同様にして以下の式を得るこ とができる.
(103) h= (1−t)δ−1(1−δ)δ−1δ1−δwδ−1H, (104) e= (1−t)δ(1−δ)δδ−δwδH,
(105) (1−t)wh+e= (1−t)δ(1−δ)δ−1δ−δwδH,
(106) c1 =a+φ(1−t)αω(H) + (1−t)w−(1−t)δ(1−δ)δ−1δ−δwδH, (107) c2 = [1−(1 +r)φ](1−t)αω(H).
以上の(100)式から(107)式を全て用いて整理すると,この問題の1階の条件を
以下のように表すことができる.
−u0(a+φ(1−t)αω(H) + (1−t)w−(1−t)δ(1−δ)δ−1δ−δwδH) (108)
×[w−φαω0(H)(1−t)1−δ(1−δ)1−δδδw1−δ]
+ 1
1 +ρu0([1−(1 +r)φ](1−t)αω(H))
×[[1−(1 +r)φ]αω0(H)(1−t)1−δ(1−δ)1−δδδw1−δ] = 0.
(102)式を用いれば,w−φαω0(H)(1−t)1−δ(1−δ)1−δδδw1−δ =w−φαω0(H)δhδ−1e1−δ>
0が成立していることを確認できる.(108)式をHとtで微分して整理すること
によって,以下の式を得ることができる19.
∂H
∂t =−
1
1−tu0(c1)[w−φαω0(H)(1−t)1−δ(1−δ)1−δδδw1−δ] (109) J
× [
σa−e
c1 −(1−δ) w
w−φαω0(H)(1−t)1−δ(1−δ)1−δδδw1−δ ]
. ただし,
J ≡u00(c1)[(1−t)δ(1−δ)δ−1δ−δwδ−1] (110)
×[w−φαω0(H)(1−t)1−δ(1−δ)1−δδδw1−δ]2 +u0(c1)φαω00(H)(1−t)1−δ(1−δ)1−δδδw1−δ
+ 1
1 +ρu00(c2)([1−(1 +r)φ](1−t)αω0(H))
×[[1−(1 +r)φ]αω0(H)(1−t)1−δ(1−δ)1−δδδw1−δ]
+ 1
1 +ρu0(c2)[[1−(1 +r)φ]αω00(H)(1−t)1−δ(1−δ)1−δδδw1−δ], と定義する.J は常に負であるが,分子の符号は確定しないので,(109)式の符 号も確定しない.a ≤ e なら(したがって a = 0 の場合も)常に ∂H/∂t < 0 である.たとえ a > e でも σ が非常に小さいか 1−δ が非常に大きいなら,
∂H/∂t <0 になる可能性が高い.a > eでも σ が非常に大きいか1−δ が非常 に小さいなら,∂H/∂t >0 になる可能性がある.したがってこの一般的なケー スにおいても,内生的信用制約モデルの方がより現実的な結論を得ることがで きたと言えよう.