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シミュレーション結果

ドキュメント内 課税の経済分析 (ページ 102-107)

引後賃金率は共に単調減少する60.したがって,(53’)式より,長期成長率は単 調減少する61.図2Aと表2は,税率と長期成長率との関係を示している62.平 均限界税率を40%から5%引き下げることによって,成長率が0.21%増加す る63.この値は,「実証研究の結果は,税を引き下げると経済成長に対してわず かな正の効果があることと一貫している」64ことを発見したEngen and Skinner

(1996)の実証分析の範囲内にある.長期成長率は人的資本投資によって決定さ

れ,それ故に,第2部門の生産は単調減少しなければならない.それは,φ2u2の両者が単調減少して0に近づき,その結果としてφ1 は1に近づき,u1は 単調減少することを意味する.したがって,物的資本は第2部門から第1部門 へ移動し,第1部門と第2部門の生産に向けられる人的資本の割合は減少する.

結果として,課税ベースは縮小する65.第1部門の物的資本集約度は第2部門 の物的資本集約度よりも常に大きいことに注目する.したがって,この経済は 常に,教育部門が人的資本集約的なケースにある.図2Bは,定常均衡間の,税 率,第1部門の税引前純利子率,税引後純利子率の間の関係を示している(純 利子率は減価償却引後の意味)66.税率が高くなるにつれて,税引後純利子率 は単調減少し,税率が90%を超えると税引後純利子率と税引前純利子率の双方 が負になる.図2Cは,定常均衡間の,税率,税収・GNP比率,税収・潜在的 GNP比率の間の関係を示している67.どちらの比率も最初は単調増加し,税率 が90%を越えると低下する.なぜなら,物的資本減価償却費用の完全税控除可 能性の仮定より,物的資本所得からの税収が負になるからである.

次に,税率変更後に定常均衡に向かう移行径路を考慮に入れて,政府の現在

60これは図1Jと図1Lから明らかである.

61長期成長率はmδHで与えられる.

62Rebelo (1991)Stokey and Rebelo (1995)は租税政策と長期成長率との関係を解析的に 詳細に説明している.Pecorino (1994)は同様のモデルで,税制改革の他の局面(例えば,所得 税を消費税に置き換える)の成長率効果について分析している.

63Lucas (1999)の初期労働所得税率は平均限界税率と考えることができる.「全労働所得がよ

り高い税率で課税されると考え,このより高い税率での労働所得税収と実際の税収との差額を 消費者に返還される一括移転とみなす」(Lucas (1990), p.307).

64Engen and Skinner (1996), p.618を参照.

65この効果については,付録Bを参照.

662部門の物的資本所得は非課税であると仮定しているので,第2部門の税引後純利子率 と税引前純利子率は等しい.

67GNP Y1と定義され,潜在的GNPY1+p2Y2と定義される.

価値予算制約式を分析する.まず第1に,解釈(a)の観点から,異なった租税制 度の下での税収を比較する68.税引後純利子率(純利子率は減価償却引後の意 味)で割り引いた税収の現在価値は,以下のように表される69

(63) PVR=

t=0

TRt

t

s=1(1 +γs).

ただし,γt= (1−t1K)(r1t −δK) = (1−t2K)(rt2−δK)である.

図3は税率と(63)式との関係を示している70.税収の現在価値は,税率が90

%に引き上げられるまでは単調増加する.図2Aで示されているように,たとえ 税率が70%を越えて成長率が負になっても,税収の現在価値は税率が90%に 引き上げられるまでは増加し続ける71.第2節の単純なモデルとは異なり,こ の一般的なモデルにおいては転換点が存在する72.それは,図2Bで示されてい るように,税率が90%を越えると税引前純利子率が負になり,それ故に物的資 本所得からの税収が負になる,すなわち物的資本減価償却費用の完全税控除可 能性を仮定しているので,実際のところ物的資本に補助金を与えていることに なるからである.第2節のモデルでは,A−δが常に正の定数であるから,こ のようなルートは存在しない.この点を除くと,基本的なメカニズムは第2節 のモデルと同じである.したがって,この転換点を調べることには意味がない.

解釈(d)に関しては,図2Cで示されているように,定常均衡において最初は税 収・GNP比率が単調増加するが,上と同じ理由により税率が90%を越えると 折り返して減少する.課税ベースが正である限り,税収・GNP比率を常に増加 させることができる.この基本的なメカニズムもまた第2節のモデルと同じで ある.上の議論が明らかに示しているのは,内生的成長の枠組では解釈(a) あ るいは(d)の観点から税収を比較することには意味が無いということである.

68解釈(a)から(d)については,第2節を参照.

69Brock and Turnovsky (1981)は,税引後利子率で割り引いた政府の現在価値予算制約式が 重要であることを示している.

70税率が変更されず,経済が元の定常均衡に留まり続ける場合の税収の現在価値を,1に基準 化している.

71すなわち,税率が70%を越えると永遠の成長のための条件は成立しない.永遠の成長のた めには,(53’)式より 1+γ1+ρ >1の条件が必要である.これはJones and Manuelli (1990)の条 Gに対応している.

72各種パラメータに関する感度分析は以下の結果を示している.すなわち,転換点は,η= 0

全税収が一括的に返還されると仮定することによって(すなわち,η= 0と置 くことによって),Ireland (1994)と同じ実験73を分析することができる74.政 府の初期の公債が0であると仮定すると,解釈 (b) の観点からは,政府の現在 価値予算制約式は以下のようになる75

(64)

t=0

(g+ ∆g)H0[(1−δH) +m]t

t

s=1(1 + ˆγs) =

t=0

ˆ ntHˆt

t

s=1(1 + ˆγs).

ただし, は旧定常均衡における変数であることを意味し,は税率変更後に 移行径路を経由し新定常均衡に向かう際の変数であることを意味している.図 4Aと表3Aは,税率と,効率単位当たり定額政府支出の変化率∆g/gとの関係 を示している.∆g/gは税率が46%のときに最大化され,そのとき g を2.08

%増加させることができる.したがってこの一般的なケースにおいては,解釈 (b)の観点からは,減税はself-financingではない.解釈(c)の観点からは,政府 の現在価値予算制約式は以下のようになる76

(65)

t=0

t G

s=1(1 + ˆγs) =

t=0

ˆ ntHˆt

t

s=1(1 + ˆγs).

図4Bと表3Bは,税率と,ファイナンス可能な定額政府支出Gの変化率∆G/G との関係を示している.ただし,Gは元の定常均衡における値である.∆G/G は税率が53%のときに最大化され,そのとき Gを9.55%増加させることがで きる.

税率引き上げは歪みを増加させ,それ故に厚生損失を発生させる.税率が0

%のときにパレート効率性が達成される77.税率が引き上げられるにつれ,本 章で仮定した租税構造のために,異時点間の意思決定,同時点間の消費・余暇

73Ireland (1994)の実験については,本章第2節を参照.

74Pecorino (1995)η= 0.436を仮定しているので,本章では比較のために以下の計算を行っ た.まず第1に,Pecorino (1995)の実験を再現することによって,本章ではPecorino (1995) 同じ結果(税収を最大化する税率は64%)を得た.次に,η= 0と置いて再計算すると,税収 を最大化する税率は60%になった.したがって,今後,両研究を比較するときには,Pecorino の尺度では転換点は60%で生じ,一方,Irelandの尺度では転換点は15%で生じると仮定す る.

75(64)式は(8)式に対応している.脚注(24)で述べた理由により,本章では,政府の公債も,

政府予算が毎期均衡しないことが経済活動に与える効果も,明示的に考察しない.

76(65)式は(17)式に対応している.

77本章では,異なった租税制度に対して同額の税収が徴収されなければならないという制約 を課していないことに着目されたい.

の意思決定,物的・人的資本投資の意思決定が歪められるだけではなく,両資本 の部門間配分もまた歪められる.税率が高くなるにつれ,両資本の部門間の配 分ミスがますます悪化し,それ故に発生する厚生損失は加速度的に増大する78. 厚生損失はLucas (1990) とKing and Rebelo (1990)の尺度で測定する.すなわ ち,厚生損失は「補償消費補足(compensating consumption supplement)」79

(ζと表す)で測定する.

(66) V({(1 +ζ)¯ct,¯lt}t=0) =V({ˆct,ˆlt}t=0).

ただし,V は異時点間効用,{¯ct,¯lt}t=0 は旧定常均衡における消費と余暇の時 間径路,{cˆt,ˆlt}t=0 税率が変更されたときの消費と余暇の時間径路を表す.旧定 常均衡における消費をζ×100(%)だけ補償することによって,代表的個人は 税率が変更されたときと同じ効用水準を達成することができる.図4Cと表3C は,税率とζ×100(%)との関係を示している.税率を46%に引き上げると,

厚生損失は毎期の消費が5.5%減少することと同値である.Gを最大化するた めに税率を53%に引き上げると,厚生損失は毎期の消費が約13%減少するこ とと同値である.

総合的に言えば,Ireland (1994) の結果とは異なり,成長率効果が Ireland

(1994)の一部門AKモデルより小さいので,この一般的なモデルで妥当なパラ

メータ値の下では,減税がself-financingにはなり得ない.しかしながら,Pecorino

(1995)の税収を最大化する税率と比較すると,Pecorino (1995)と同じパラメー

タ値を使っているにもかかわらず,最大の政府支出の流列をもたらす税率は高 くない.それは,Pecorino (1995) が移行径路を考慮に入れておらず,それ故に 現在価値を評価するための利子率変化の効果を捉えていないからである.

図5Aから図5Pは,税率が40%から46%に引き上げられたときの,移行径 路上におけるいくつかの主要変数の時間径路を示している.ただし,時間1 は旧定常均衡を意味し,時間 0は税率が変更された瞬間を意味している.移行 径路上では,利子率が変化し,それ故に現在価値を評価するためにはこれらの 効果を考慮に入れなければならない.対照的に,税収・人的資本比率と税収・

78Chamley (1981)は外生的成長モデルにおいて,資本の部門間の配分ミスから生じる厚生費

GNP比率は安定している.移行径路上では第1部門の物的資本集約度が第2部 門より常に大きいことに着目されたい.

ドキュメント内 課税の経済分析 (ページ 102-107)