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カリブレーションの手順

ドキュメント内 課税の経済分析 (ページ 117-124)

A Ramsey-Cass-Koopmans モデルにおけるラッフ ァー・カーブ

C.2. カリブレーションの手順

カリブレーションの手順はPecorino (1995)と同じである.すなわち,A1 =A2 の条件の下で,以下の条件が成立するようにA1A2を設定する.

0.015 =

[1 + (1−t1K)(r1−δK) 1 +ρ

]1

σ 1.

感度分析においては,これらのパラメータについては同様の方法で再度カリブ レーションを行う.

84A1=A2という条件はPecorino (1995)では明示的に述べられていない.しかしながら,こ の条件を課さない限り,A1 A2 を一意に決定することはできない.実際,Pecorino (1993) ではこの条件が明示的に述べられている.

D 行列 M の計算

付録Dでは行列Mの計算方法を説明する85.まず最初に,関数 ΓをXt+1に 関して偏微分し,偏導関数を定常均衡値で評価する.

∂Γ1

∂at+1 = (m+ (1−δH)),

∂Γ1

∂bt+1 = 0,

∂Γ1

∂p2t+1 = 0,

∂Γ2

∂at+1 = (1−t1H)p2[(1−l)∂w1

∂a −w1∂l

∂a](1−t1K)p2∂r1

∂a ,

∂Γ2

∂bt+1 = (1−t1H)p2[(1−l)∂w1

∂b −w1∂l

∂b](1−t1K)p2∂r1

∂b,

∂Γ2

∂p2t+1 = [(1−t1H)w1(1−l) + (1−δH)]

+ (1−t1H)p2[(1−l)∂w1

∂p2 −w1 ∂l

∂p2](1−t1K)p2∂r1

∂p2,

∂Γ3

∂at+1 = (1 + (1−t1K)(r1 −δK))Ω(1−σ)1 l

∂l

∂a + (1−t1K)∂r1

∂a,

∂Γ3

∂bt+1

= (1 + (1−t1K)(r1−δK))[(−σ)1

b + Ω(1−σ)1 l

∂l

∂b] + (1−t1K)∂r1

∂b ,

∂Γ3

∂p2t+1 = (1 + (1−t1K)(r1−δK))Ω(1−σ)1 l

∂l

∂p2 + (1−t1K)∂r1

∂p2.

次に,関数ΓをXtに関して偏微分し,その偏導関数を定常均衡値で評価する.

∂Γ1

∂at =a∂m

∂a (1 + (1−t1K)(r1−δK))(1−t1K)a∂r1

∂a

(1−t1H)p2[(1−l)∂w1

∂a −w1∂l

∂a](1−η)∂n

∂a +p2∂m

∂a,

∂Γ1

∂bt =a∂m

∂b (1−t1K)a∂r1

∂b (1−t1H)p2[(1−l)∂w1

∂b −w1∂l

∂b]

(1−η)∂n

∂a + (1 +tc) +p2∂m

∂a ,

∂Γ1

∂p2t =a∂m

∂p2 (1−t1K)a∂r1

∂p2 (1−t1H)w1(1−l)

(1−t1H)p2[(1−l)∂w1

∂p2 −w1 ∂l

∂p2](1−η)∂n

∂p2 +p2∂m

∂p2 +m,

∂Γ2

∂at = 0,

∂Γ2

∂bt = 0,

∂Γ2

∂p2t =(1 + (1−t1K)(r1−δK)),

∂Γ3

∂at = (1 + (1−t1K)(r1−δK))Ω(1−σ)(−1 l)∂l

∂a

(1 +ρ)σ(m+ (1−δH))σ1∂m

∂a,

∂Γ3

∂bt = (1 + (1−t1K)(r1−δK))[(−σ)(−1

b) + Ω(1−σ)(−1 l)∂l

∂b]

(1 +ρ)σ(m+ (1−δH))σ1∂m

∂b,

∂Γ3

∂p2t = (1 + (1−t1K)(r1−δK))Ω(1−σ)(−1 l) ∂l

∂p2

(1 +ρ)σ(m+ (1−δH))σ−1∂m

∂p2.

上の計算から,例えば∂a∂l,∂b∂l,∂p∂l2 等のような偏導関数を得ることができれば,

偏導関数 ∂Γ(X∂X,X)

t+1∂Γ(X∂X,X)

t をそれぞれ計算することができる.このとき,以 下の行列を得ることができる.

M ≡ −

[∂Γ(X,X)

∂Xt+1

]1

∂Γ(X,X)

Xt

.

実際,そのような偏導関数は陰関数定理を用いて簡単に計算することができ る.第3.5節の(41), (42), (43), (44), (45), (46), (47), (48), (49), (50), (54), (55), (56)式を考える.この13式の方程式を全微分し,定常均衡値で評価する86. (D.1) dy1 = (f10)

(φ1

u1da+ a

u11 φ1a (u1)2du1

) ,

86例えば,表記のために混乱が生じるかもしれないが,(u2)2 は第2部門の生産に向けられる 時間の割合である変数u22乗を意味する.

(D.2) dy2 = (f20) (φ2

u2da+ a

u22 φ2a (u2)2du2

) , (D.3) 1+2 = 0,

(D.4) du1+du2+dl = 0,

(D.5) (1−t1K)dr1 = (1−t2K)dr2, (D.6) (1−t1H)dw1 = (1−t2H)dw2, (D.7) dr1 = (f100)

(φ1

u1da+ a

u11 φ1a (u1)2du1

) , (D.8) dr2 =f20dp2+p2(f200)

(φ2

u2da+ a

u22 φ2a (u2)2du2

) , (D.9) p2dw1+w1dp2 =

(φ1 u1a

) (f100)

(φ1

u1da+ a

u11 φ1a (u1)2du1

) , (D.10) dw2 =

(φ2 u2a

) (f200)

(φ2

u2da+ a

u22 φ2a (u2)2du2

) , (D.11) Ωdb= (1−t1H)

1 +tc

[w1p2dl+w1ldp2+p2ldw1], dn=t1K(r1−δK)[φ1da+adφ1] +t1Kφ1adr1 (D.12)

+t2K(r2−δK)[φ2da+adφ2] +t2Kφ2adr2 +t1H[u1w1dp2+u1p2dw1+w1p2du1]

+t2H[u2w2dp2+u2p2dw2+w2p2du2] +tcdb, (D.13) dm=u2dy2+y2du2.

ただし,

fj(kj) = AjjKkψjj+ (1−αjK)]

1 ψj, fj0(kj) = AjαKj kjψj1jKkjψj + (1−αjK)]

1 ψj1

, fj00(kj) = (ψj1)AjαjKkjψj2jKkjψj + (1−αjK)]

1 ψj1

+ (1−ψj)AjjKkjψj1)2jKkjψj + (1−αjK)]

1 ψj2

.

上の(D.1)式から(D.13)式の連立方程式体系において dbt =dp2t = 0 と置く ことによって,∂a∂l 等のような定常均衡で評価したa に関する偏微係数を得るこ とができる.同様に,dat=dp2t = 0と置くことによって∂b∂l 等を,dat =dbt= 0

E 計算手順

付録Dで説明した方法によって,行列M を計算する.このとき,行列Mの 固有値λ1, λ2, λ3 と固有ベクトル v1, v2, v3 を計算することができる.

もし1つの固有値(例えばλ1とする)が1より小さい絶対値(modulus,母 数)を持ち,他の2つの固有値(すなわち,λ2, λ3)が1より大きい絶対値を持 つならば,任意のH0K0に対して,定常均衡に収束する唯一の均衡径路が 存在する.固有値λ1に対応する固有ベクトルをv1とし,v1



 v11 v12

v13



と定義

する.便宜のために,v13 を 1に基準化する.

第3.5節で説明したように,(41)式から(56)式と横断性条件がこの経済の動 きを特徴づけている.他方,(41’)式から(56’)式より,この連立方程式体系の 定常均衡解を得ることができる.

a, b, p2, y1, y2, φ1, φ2, u1, u2, l, r1, r2, w1, w2, m, n.

定常均衡からv1 と逆方向に後方発射する(Shoot backwards).具体的には,ε を 非常に小さい 値として,a∗∗≡a−ε·v11, b∗∗≡b−ε·v12, p2∗∗≡p2−ε·v13を定 義する87a∗∗, b∗∗,p2∗∗を所与として,(41)式から(50)式と(54)式から(56)式の 13式の連立方程式を解くことによってy1∗∗, y2∗∗, φ1∗∗, φ2∗∗, u1∗∗, u2∗∗, l∗∗, r1∗∗, r2∗∗, w1∗∗, w2∗∗, m∗∗, n∗∗ を得ることができる.(41)式から(56)式において,at+1 = a∗∗, bt+1 =b∗∗, p2t+1 =p2∗∗, y1t+1 =y1∗∗, yt+12 =y2∗∗, φ1t+1 =φ1∗∗, φ2t+1 =φ2∗∗, u1t+1 = u1∗∗, u2t+1 =u2∗∗, lt+1 =l∗∗, r1t+1 = r1∗∗, r2t+1 = r2∗∗, wt+11 =w1∗∗, w2t+1 = w2∗∗, mt+1 =m∗∗,nt+1 =n∗∗と置くと,(41)式から(56)式を解くことによって at, bt, p2t, yt1, yt2, φ1t, φ2t, u1t, u2t, lt, r1t, rt2, wt1, wt2, mt, nt の16個の変数を得ることが できる.これらのt期の変数を所与として,(41)式から(56)式を解くことによっ てt−1期の変数 at1, bt1, p2t−1, yt−11 , yt−12 , φ1t−1, φ2t−1, u1t−1, u2t−1, lt1,

r1t1, rt21, w1t1, w2t1, mt1, nt1 もまた得ることができる.aが,歴史的に与え られた値a0 = KH0

0 に等しくなるまでこのループを続ける.この体系は離散的な

87このルールはaの初期値がaの定常均衡値より小さいケースにのみ適用される.aの初期値 aの定常均衡値より大きいケースではa∗∗=a+ε·v11, b∗∗=b+ε·v12, p2∗∗=p2+ε·v13 と定義する.

体系であるから,ある 所与 のεに対して,aが歴史的に与えられた値a0 = KH0

0

に常に正確に一致するとは限らない.したがって,aがa0 = KH0

0 に正確に一致 するように,εの大きさを調整するのである.これはBackward Shooting 法と 呼ばれる88.上の計算手順から,以下の変数の流列を得ることができる.

a0, a1,· · · ·, a∗∗, b0, b1,· · · · , b∗∗, p20, p21,· · · · , p2∗∗, ...

n0, n1,· · · · , n∗∗.

a∗∗, b∗∗, p2∗∗, y1∗∗, y2∗∗, φ1∗∗, φ2∗∗, u1∗∗, u2∗∗, l∗∗, r1∗∗, r2∗∗, w1∗∗, w2∗∗, m∗∗, n∗∗に到 達した後,単純化のためにこれらの変数が定常均衡値(すなわち,a, b, p2, y1, y2, φ1, φ2, u1, u2, l, r1, r2, w1, w2, m,n)になると仮定する.したが って,これらの変数の全流列を得ることができることになる.

a0, a1,· · · ·, a∗∗, a, a,· · · · , a,· · · · , b0, b1,· · · · , b∗∗, b, b,· · · · , b,· · · ·, p20, p21,· · · · , p2∗∗, p2, p2,· · · · , p2,· · · · , ...

n0, n1,· · · · , n∗∗, n, n,· · · ·, n,· · · ·.

このようにして,これらの変数の全ての時間径路を得ることができる.

88Mulligan and Martin (1991, 1993)Time Elimination法は基本的にBackward Shooting 法のアイデアに基づいており,さらに連立微分方程式体系から時間を消去する.すなわち,ちょ うど「Time Elimination法の重要な利点の一つは,Time Elimination法は運行方程式と横断 性条件によって描写される境界値問題を初期値問題に変換するということである」(Mulligan and Martin (1991))ように,Backward Shooting法もまたそのような変換を行う.Backward Shooting法がより幅広く応用可能であるのに対し,Time Elimination法はより取り扱いやすい.

時間を消去することによって,Time Elimination法は計算プログラムを簡単にし,計算時間を 劇的に短縮するが,rwのような他の変数は基礎変数(basic variable)の明示的な関数とし て表されなければならない.他方,Backward Shooting法では,計算プログラムは少し難しく なり,計算時間はより長くなるが,rwのような他の変数は基礎変数の明示的な関数として 表される必要はない.そのような他の変数は,基礎変数の陰関数として表されさえすればよい.

これはBackward Shooting法の一つの利点である.本章のモデルは複雑であるので,このモデ

ルを解くためには,Time Elimination法を適用することはできないが,Backward Shooting

次に,(33)式,すなわち HHt+1t = (1−δH) +mt,を考える.歴史から H0 を 知っており,上で説明した計算からmtの全ての時間径路を得るので,Htの全 ての時間径路を計算することができる.Htの時間径路にat, bt, yt1, yt2, mt, ntの 時間径路を掛けることによって,Kt, ct, Yt1, Yt2, ItH, TRtの全ての時間径路を得 ることができる.

経済が定常均衡に到達するのにかかる期間の長さを T とする89.このとき,

人的資本の時間径路,税収の現在価値,政府支出の現在価値,厚生変化を以下 のように計算することができる.

E.1. 人的資本

まず第1に,人的資本蓄積式(33)を考える.

(E.1) Ht+1 = [(1−δH) +mt]Ht, H0 :所与.

mtの時間径路を知っているので,以下のようにHtを計算することができる.

(E.2) Ht =H0 t1

s=0

[(1−δH) +ms].

もし経済が最初から元の定常均衡に留まり続ければ,そのときHtは以下のよう になる.

(E.3) Ht =H0[(1−δH) +m]t.

ただし,mは元の定常均衡におけるmの値(定数)である.

税率変更の結果として,経済は第0期から第T 期まで新定常均衡に向かう移 行径路上にあり,第T + 1期に新定常均衡に到達し,第T + 1期以降ずっと新 定常均衡に留まり続けるとしよう.このとき,Htを以下のように表すことがで きる.

Ht =H0

t1

s=0

[(1−δH) +ms] 0≤t ≤T のとき, (E.4)

={H0

T s=0

[(1−δH) +ms]}[(1−δH) +m]t(T+1) t ≥T + 1のとき.

ただし,mは新定常均衡におけるmの値(定数)である.

89このとき,例えば,a∗∗=aT になる.

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