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モデルと解

ドキュメント内 課税の経済分析 (ページ 160-166)

A Ramsey-Cass-Koopmans モデルにおけるラッフ ァー・カーブ

E.3. 政府支出の現在価値( PVG )

2. モデルと解

本章のモデルは,瞬時的効用関数を消費と余暇に関してコブ・ダグラス型と 特定化した以外は,Bodie, Merton and Samuelson (1992) と同様のモデルであ る4.個人の最大化問題は以下のように表される5

J(W, w, t) = max

c,l,x Et

t

1

β[chl1−h]βe−ρτdτ, (1)

− ∞< β <1, 0< h < 1, subject to

(2) dW = [(xα+ (1−x)r)W −c−wl]dt+σxW dz, (3) dw=gwdt+kσwdz.

ただし,Et は時点tの情報の条件付期待演算子である.相対的危険回避度の一 定の係数を RAとすると,β = 1−RAが成立する.c は消費,l は余暇,hは 支出シェアのパラメータ,ρ は時間選好率,W は 金融資産と人的資本価値の和 で表される総資産6,α は危険資産の瞬時的期待収益率,σ2 は瞬時的条件付分 散7,r は無リスク資産の瞬時的収益率,x は総資産のうち危険資産に投資され る割合,wは賃金率,dz はウィーナー過程,k は確率的賃金が危険資産と完全 に相関しているという仮定を反映している0でない係数である8

4もちろん,Bodie, Merton and Samuelson (1992)では明示的な解を導出していない.

5β= 0のときには,瞬時的効用関数は対数関数,すなわちln(chl1h)になる.

6この定式化が,closed-form 解を導出するためにキーとなる定式化である.

7すなわち,危険資産の価格Pは伊藤過程(dP =αP dt+σP dz)に従うと仮定されている.

8賃金は伊藤過程(dw=gwdt+σwdz)に従うと仮定されている.確率的賃金が危険資産 と完全に相関すると仮定されている,すなわちσdz=kσdzが仮定されているので,(3)式を

ディンキン演算子(Dynkin operator)Lを以下のように定義する9L ≡

∂t+ [

(x(α−r) +r)− c+wl W

] W

∂W +gw (4) ∂w

+1

2σ2x2W2 2

∂W2 +1

2k2σ2w2 2

∂w2 +kxσ2wW 2

∂w∂W.

このとき,Merton(1971)の定理1より,以下の連続時間確率的ベルマン方程式

(continuous-time stochastic Bellman equation)を得ることができる10. (5) 0 = max

c,l,x

[1

β[chl1h]βeρt+L[J(W, w, t)]

] .

したがって,最大化のための1階の条件は以下のようになる11 12. (6) h[chl1h]β1ch1l1heρt =JW,

(7) (1−h)[chl1h]β1chlheρt =wJW, (8) (α−r)JW +2W JW W +2wJW w = 0.

(7)式の両辺を(6)式の対応する辺で割ると,以下の関係を得ることができる.

(9) 1−h h

c l =w.

消費と余暇に対する支出を full consumption と定義する.すなわち,full

con-sumption をyとすると,以下のように表される.

(10) y≡c+wl.

このとき,(9)式と(10)式から以下の2式を得る13. (11) c=hy,

9Merton(1971), p.377の脚注8を参照.

10確率的動的計画法については,例えば,Malliaris and Brock(1982)を参照.

11単純化のために,本章では内点解を仮定しているが,実際にはc0,0l1の制約があ る.ただし,u(c, l) = β1[chl1h]β, uc(0, l) =, ul(c,0) =が成立するから,c 0, l 0 制約を気にする必要はない.しかしながら,c <のときにul(c,1) = (1h)c <が成立 するから,l1の制約は確かに重要である.

12(6), (7), (8)式はそれぞれ,(5)式がc, l, xに関して最大化されていることを述べている.と ころで,JW = ∂W∂J, JW W = ∂W2J2, JW w =∂W ∂w2J と表している.

13この関係は,効用関数を消費と余暇に関してコブ・ダグラス型と仮定したことに由来する.

(12) wl= (1−h)y.

したがって,以下の瞬時的間接効用関数を得る.

u(c, l) = 1

β[chl1h]β (13)

= 1

β[(hy)h((1−h)w1y)1h]β

= 1

β[hh(1−h)1hw(1h)y]β =v(w, y).

この問題に対称性定理14(Boyd(1990), p.238)を適用する.以下の変換を考 える.

W →ζW, w →w, x→x, c→ζc, l→ζl.

明らかに,この変換は(2)式と(3)式の予算制約を満たしており,効用は変換前 の効用の値のζβ倍になる.したがって,対称性定理によって,以下の関係が成 立する.

(14) J(ζW, w, t) = ζβJ(W, w, t).

ζ = 1/W と置くと,(14)式は以下のようになる.

(14’) J(1, w, t) = ( 1

W )β

J(W, w, t).

次に,以下の変換を考える.

W →W, w →ζw, x→x, c→c, l→ (1

ζ )

l.

明らかに,この変換もまた(2)式と(3)式の予算制約を満たしており,効用は変 換前の効用の値のζβ(1h)倍になる.これは,(12)式と(13)式をチェックする ことで確認することができる15.したがって,対称性定理によって,以下の関 係が成立する.

(15) J(W, ζw, t) = ζβ(1h)J(W, w, t).

14Boyd(1990) による本定理の記述はスペースを取りすぎるので,ここでは以下の

Ro-driguez(1993)による本定理の要約に言及するだけに留める.「本定理によれば,最大化問題

における諸変数の(予算制約を維持する)単調変換は,以下の特性を満たす.価値関数が諸変 数の変換によってどのような影響を受けるのかを見つけるためには,最大化しようとしている 関数にその変数変換がどのように影響するかを見るだけで良い.

15wlが変換前の値と同じ値に留まるので,y もまた(12)式から同じ値に留まる.このとき

ζ = 1/w と置くと,(15)式は以下のようになる.

(15’) J(W,1, t) = (1

w

)β(1h)

J(W, w, t).

(15’)式は全てのW に対して成立するので,W = 1に対しても成立することに

なる.そこでW = 1 と置くと,(15’)式は以下のようになる.

(15”) J(1, w, t) =wβ(1h)J(1,1, t).

したがって,(14’)式と(15”)式より以下を得る.

(16) J(W, w, t) = Wβwβ(1h)J(1,1, t).

この問題の設定より,(16)式をさらに単純化することが可能である.

(17) J(W, w, t) = AWβwβ(1h)eρt,

ただし,A は定数である16.定数Aは後に脚注17で導出する.これがこの問題 の価値関数の正確な形である.

(17)式を(6)式に代入すると,以下を得る.

h[chl1h]β1ch1l1h =AβWβ1wβ(1h),

⇔h[chl1h]βc1 =AβWβ1wβ(1h). (13)式を用いると,上式は以下のように変形できる.

[hh(1−h)1hw(1h)y]β

y =AβWβ1wβ(1h). したがって,以下の式を得る.

(18) y= [(Aβ)hβh(1−h)β(1h)]β11W.

すなわち,full consumptionは総資産に関して線形である.したがって,(11)式 と(18)式より,以下の式を得る.

(19) c=h[(Aβ)hβh(1−h)β(1h)]β11W.

16J(1,1, t) =Aeρt.

すなわち,消費は総資産に関して線形である.総資産からの限界消費性向と平 均消費性向は,(19)式右辺の定数で与えられる.

次に,(8)式に(17)式を代入すると,以下を得る.

−r) +xσ21)−β(1−h)kσ2 = 0, (20)

⇔x= α−r

σ2(1−β) β(1−h)k 1−β .

(20)式によって,最適ポートフォリオ比率が与えられる.

最後に,ディンキン演算子(4)を利用して,ベルマン方程式(5)に(13), (17), (18)式を代入すると,以下を得る.

1 β

[

hh(1−h)1h{

(Aβ)hβh(1−h)β(1h)}β−11

w(1h)W ]β

(21)

−ρAWβwβ(1h)+ [

(x(α−r) +r)− c+wl W

]

βAWβwβ(1h)

−β(1−h)gAWβw−β(1−h)+ 1

2σ2x2β(β−1)AWβw−β(1−h) + 1

2k2σ2β(1−h)[β(1−h) + 1]AWβw−β(1−h) +kxσ2[−β2(1−h)]AWβwβ(1h) = 0.

両辺をAWβwβ(1h)で割って整理すると,以下を得る.

1

βh1βhβ(1−h)β(1−h)1β β(Aβ)β11 −ρ+ [

(x(α−r) +r)− c+wl W

] β (22)

−β(1−h)g+1

2σ2x2β(β−1) + 1

2k2σ2β(1−h)[β(1−h) + 1]

+kxσ2[−β2(1−h)] = 0.

ところで,(18)式を用いると以下が得られる.

x(α−r) +r− c+wl

W =x(α−r) +r− y (23) W

=x(α−r) +r−[

(Aβ)hβh(1−h)β(1h)]β11 . (22)式に(23)式を代入すると,以下を得る.

(1−β)(Aβ)β11h1βhβ(1−h)

β(1h)

1β −ρ+ (x(α−r) +r)β−β(1−h)g (24)

+ 1

2σ2x2β(β−1) + 1

2k2σ2β(1−h)[β(1−h) + 1]−kxσ2β2(1−h)

(24)式に (α−r) =−xσ21) +β(1−h)kσ2((20)式)を代入すると,以下 を得る.

(1−β)(Aβ)β−11 h1−ββh (1−h)β(11−βh) (25)

=ρ+ (g(1−h)−r)β− 1

2σ2x2β(1−β)−1

2k2σ2β(1−h)[1 +β(1−h)].

したがって,(18)式と(25)式より,以下の式を得る17y

W = (Aβ)β11h1βhβ(1−h)

β(1h) 1β

(26)

= 1

1−β [

ρ+ (g(1−h)−r)β−1

2σ2x2β(1−β)

1

2k2σ2β(1−h)[1 +β(1−h)]

] .

したがって,(11), (18), (26), (20)式より,以下の消費のclosed-form 解が得ら れることになる.

(27) c=mW.

17価値関数の定数係数Aは,(26)式と(20)式から導出することができる.すなわち,

A= 1

βhβh(1h)β(1h) (y

W )β1

= 1

βhβh(1h)β(1h)

× [ 1

1β [

ρ+ (g(1h)r)β1

2σ2x2β(1β)1

2k2σ2β(1h)[1 +β(1h)]

]]β1

= 1

βhβh(1h)β(1h)

× [

1 1β

[

ρ+ (g(1h)r)β1 2σ2

{ αr

σ2(1β)β(1h)k 1β

}2

β(1β)

1

2k2σ2β(1h)[1 +β(1h)]

]]β1

.

ただし,

m= h 1−β

[

ρ+ (g(1−h)−r)β− 1

2σ2x2β(1−β) (28)

1

2k2σ2β(1−h)[1 +β(1−h)]

]

= h

1−β [

ρ+ (g(1−h)−r)β− 1 2σ2

{ α−r

σ2(1−β)− β(1−h)k 1−β

}2

β(1−β)

1

2k2σ2β(1−h)[1 +β(1−h)]

] , である.

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