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経済の動学

ドキュメント内 課税の経済分析 (ページ 98-102)

3. モデル

3.7. 経済の動学

(52’) (1−t1K)(r1−δK) = (1−t1H)w1(1−l)−δH, (53’) (1 +ρ)(m+ (1−δH))σ = 1 + (1−t1K)(r1 −δK), (54’) Ωb

l = (1−t1H)p2w1 1 +tc ,

t1K(r1−δK1a+t2K(r2−δK2a (55’)

+t1Hp2w1u1 +t2Hp2w2u2+tcb=n, (56’) m=y2u2.

ただし,時間の添え数の無い各変数は定常状態の値であることを示している49

[1 + (1−t1H)wt+11 (at+1, bt+1, p2t+1)(1−lt+1(at+1, bt+1, p2t+1))−δH]p2t+1 (58)

= [1 + (1−t1K)(r1t+1(at+1, bt+1, p2t+1)−δK)]p2t, (bt+1

bt

)σ(

lt+1(at+1, bt+1, p2t+1) lt(at, bt, p2t)

)Ω(1−σ)

(59)

= (1 +ρ)(mt(at, bt, p2t) + (1−δH))σ 1 + (1−t1K)(rt+11 (at+1, bt+1, p2t+1)−δK).

したがって,(57), (58), (59)式の体系でこの経済の動きを描写できることになる.

Xt



 at bt p2t



を定義する.このとき,この体系は以下のように簡単に表すこ

とができる.

(60) Γ(Xt+1, Xt) = 0,

ただし,Γ(Xt+1,Xt)





Γ1(Xt+1, Xt) Γ2(Xt+1, Xt) Γ3(Xt+1, Xt)



と定義する.関数Γ1 は(57)式に,関

数Γ2 は(58)式に,関数Γ3 は(59)式に,それぞれ対応している.すなわち,以 下のように定義する.

Γ1 (mt(at, bt, p2t) + (1−δH))at+1

(1 + (1−t1K)(r1t(at, bt, p2t)−δK))at

(1−t1H)p2twt1(at, bt, p2t)(1−lt(at, bt, p2t))

(1−η)nt(at, bt, p2t) + (1 +tc)bt+p2tmt(at, bt, p2t) = 0,

Γ2 [1 + (1−t1H)wt+11 (at+1, bt+1, p2t+1)(1−lt+1(at+1, bt+1, p2t+1))

−δH]p2t+1[1 + (1−t1K)(r1t+1(at+1, bt+1, p2t+1)−δK)]p2t = 0,

Γ3 (bt+1

bt

)σ(

lt+1(at+1, bt+1, p2t+1) lt(at, bt, p2t)

)Ω(1σ)

×[1 + (1−t1K)(r1t+1(at+1, bt+1, p2t+1)−δK)]

(1 +ρ)(mt(at, bt, p2t) + (1−δH))σ = 0.

(60)式を定常均衡でテイラー展開して一次近似すると,以下の式を得る.

Γ(X, X) + ∂Γ(X, X)

∂Xt+1

(Xt+1−X) + ∂Γ(X, X)

∂Xt

(Xt−X) (61)

= ∂Γ(X, X)

∂Xt+1 (Xt+1−X) + ∂Γ(X, X)

∂Xt (Xt−X) = 0.

したがって,この経済は定常均衡のε近傍において,以下の一次 線形 定差方 程式体系によって近似的に特徴づけられる.

(62) Xt+1−X =M(Xt−X).

ただし,M ≡ −[

∂Γ(X,X)

∂Xt+1

]1

∂Γ(X,X)

∂Xt と定義する.行列M によって,この経 済の局所的安定性に関する情報を得ることができる51

at = KHt

t が歴史変数で bt= Hct

tp2t の両者がジャンプ変数であるから,行列 Mの固有値の絶対値(modulus,母数)に応じて3つのケースが存在する.

ケース1. M の2個以上の固有値が1より小さい絶対値(modulus,母数)を有す る.

このケースにおいては,不確定性(indeterminacy)が生じる.

ケース2. 1個の固有値の絶対値が1より小さく,他の2個の固有値の絶対値が1よ り大きい.

このケースにおいては,任意のa0(すなわち,H0K0)に対して,定 常均衡に収束する唯一の均衡径路が存在する.

ケース3. 全ての固有値の絶対値が1より大きい.

このケースにおいては,体系は不安定である.

表1は,異なった税率に対応する新定常均衡の近傍における固有値を報告し ている.妥当なパラメータ値の下では,常にケース2になる.一次線形定差方 程式体系の一般解は Xt−X = c1λt1v1 +c2λt2v2 +c3λt3v3になる.ただし,c1, c2, c3 は定数,λ1,λ2, λ3 は固有値,v1,v2,v3 は固有ベクトルである.この体系 は鞍点安定的であるから,λ1 のみが1より小さい絶対値を持ち,鞍点径路上で はc2 =c3 = 0であると仮定することができる.このとき,鞍点径路上の経済の

動きは Xt−X =λt1(X0−X)という式によって描写される.この式は,λ1が 経済の収束速度と逆の関係にあることを示している.すなわち,λ1が大きくな ればなるほど,経済が定常均衡に収束するのが遅くなる.表1より,税率が高 くなるにつれてλ1が大きくなり1に近づくことが分かる.これは,税率が高く なるにつれて,経済が定常均衡に収束する速度がより遅くなることを意味して いる.表1はまた,税率が高くなるにつれて,歴史変数 a が99.9%調整される のに必要な期間がより長くなることを示している.表1はまた,税率が高くな るにつれて,λ3 がより小さくなり上から1に近づくこと,λ2 は1の近くで(し かし1より大きい)ほぼ一定にとどまることも示している.したがって,税率 が高くなるにつれて,経済は相対的に安定的な位相(phase)から相対的に不安 定的な位相に動く可能性がある.本章のモデルと同様であるが労働供給の意思 決定が無いモデルにおいて,Bond et al. (1996) は生産要素に対する税があま りに歪んでいる(distortionary)時には,不安定性ないしは不確定性が生じる ことを示した.表1の結果はBond et al. (1996)の結果と一貫しているように 見える52

二部門内生的成長モデルは複雑な動学を示すことが知られている.図1O, 1P, 5Pで示すように,本章で仮定しているパラメータ値の下では,第1部門の物的 資本集約度は常に第2部門の物的資本集約度より大きい.すなわち,教育部門は 常に人的資本集約的である.したがって,経済は価格調整過程が安定的なケー スにある.人的資本の相対価格p2は,固定価格での不安定な生産調整過程を相 殺するために,移行径路上で調整される53

52しかしながら,Bond et al. (1996)の租税構造は本章の租税構造とは異なっている.Bond

et al. (1996)のモデルでは,第1部門と第2部門の物的資本所得税率は同じであり,消費税は

課税されないと仮定されている.この仮定によって,本章で考察している税率変化の範囲内で は,不安定性や不確定性が現れることが妨げられている可能性がある.

53教育部門が物的資本集約的であるとき,価格調整過程は不安定である.相対価格p2は定常 均衡値にすぐにジャンプしなければならず,固定価格での生産調整過程は安定的である.より 詳細は,Bond et al. (1996)を参照.

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