4 まとめ
4.1 諸外国における競争状況レビューの要旨
諸外国における電力・ガス小売市場の自由化動向及び料金規制の存廃状況、更には競争 状況レビューにおける要旨を示す。
(EU)
EUでは2003年第二次EU電力指令において、2007年7月1日以降、家庭用需要家を含 む全ての需要家を対象として自由化を実施することが規定された。欧州委員会では規制料 金撤廃を求めているものの、特に家庭部門に関しては多くの加盟国において、規制料金が 存続している。
ACER は、毎年、市場監視報告書(MMR)を発表しており、電力・ガス小売市場の競争環 境について評価・分析を実施している。ACERは、小売競争市場の競争状況を国家単位でラ ンク付けすることを目的として、複合指標を用いた新たな方法論を開発しており、MMRで も国別評価が実施されている。
(イギリス)
イギリスでは、1999 年の全面自由化以降も料金規制を存続させていたが、競争状況評価 レビューを経て2000年代前半に撤廃した。2000年代中盤以降のエネルギー価格上昇を背景 として、2008年10月には、エネルギー供給調査(ESP)がOfgemにより実施されており、新 たに、エネルギー価格上昇による需要家への影響、更には社会的弱者の状況、卸電力取引 に関する課題等を提示した。さらに 2010 年以降は、小売市場レビュー(RMR)として、ESP における成果を踏まえつつ、需要家の経験、市場構造、市場の流動性、事業者の行動等に 焦点を当てて分析が実施された。
2013年以降、Ofgemは、公正取引庁(OFT)と競争・市場庁(CMA)と共同して、小売市場の 競争評価に関する検討を開始しており、2014年3月には「市場評価状況(SMA」として枠組 みを提示した。イギリスにおける競争状況レビューは、その時代の競争環境に併せて大き く変化しており、新たな指標なども検討されている。
(ドイツ)
1998 年改正エネルギー事業法に伴い小売全面自由化が開始されたが、低圧料金に対して 事前認可規制が適用されており、これが実質的に規制料金としての役割を果たしてきた。
この事前認可規制は、2005年改正エネルギー事業法に基づき、2007年7月に撤廃された 市場監視報告書は、2012年版以降、BNetzAとBKartAによる共同となっている。ドイツ では小売供給事業者数の数が非常に多いことから、小売供給事業の構造について様々な分
析が実施されている。また2000年代中盤以降、再生エネルギー賦課金等の影響により電力 価格が上昇したことから、電気料金の内訳等について詳細な分析が実施されている。
(フランス)
フランスでは、2007年7 月には家庭用を含む全ての需要家が自由化対象となった。自由 化適格となった需要家は、規制料金契約もしくは市場料金契約の 2 つの契約形態から選択 することが出来る。フランス電力小売市場は、全面自由化以降も長らく、規制料金と市場 料金が併存する形となっており、多くの需要家はEDF社の提供する規制料金にとどまる状 況が続いている。
2007年第3四半期以降の市場展望報告では、小売全面自由化を受け、家庭部門を含めた 全需要家の動向に焦点を当てて分析が実施されている。特に規制料金契約もしくは市場料 金契約の選択形態について詳細な分析がされている。
(ノルウェー)
ノルウェーでは1997年以降、、NVEが、四半期毎に供給事業者サーベイとして、電力小売 市場における競争状況や運用状況等について分析を行っている。供給事業者サーベイでは、
供給事業者変更件数・変更率、また支配的事業者の市場シェア、需要家価格などの基本的 指標について継続的に分析を実施している。
(スペイン)
スペインではCNMC設置法の下、市場支配力からの保護、市場開放と競争の効率化の実現、
消費者保護を目的とした価格比較システムの運用を目的として、電力・ガスの市場監視報 告書を公表している。電力小売市場は、2014年時点で需要家の約半数が新規参入事業者か ら供給を受けており、スイッチング率も欧州で最高の水準に達している。そのために需要 家行動については一般的な指標のモニタリングに留まっているが、新規供給事業者数、新 規供給事業者のシェア等、市場の開放度合いを示す指標について、検討が進んでいる。ま た供給事業者から提出された情報に基づく、供給約款の種類毎の価格や売上総利益の推定 にも力が入れられている。一方、ガス小売市場は、大幅な需要増加トレンドに支えられ、
自由料金市場での取引が大きなシェアを獲得している。電力同様、需要家行動については 一般的な指標のモニタリングに留まり、各市場の価格や料金水準の試算・比較に力が入れ られている。
(アイルランド)
アイルランドでは、1999年電力規制法により電気事業制度改革が進められた。CERは、規 制料金撤廃に当たり一定の閾値を設定の上、その是非について判断しており、2011年4月に は規制料金を完全に廃止した。規制料金撤廃の検討に当たり、CERはロードマップを提示し ており、市場画定の考え方、評価指標及びその閾値等について詳細が示された。
CERは、規制料金撤廃の検討に当たり、4半期ベースの競争状況レビューを開始しており、
この競争状況レビューは現在も継続している。アイルランドでは自由化以前の既存事業者 が、それぞれ電力・ガス市場において大きなシェアを有しており、当該事業者の市場支配 力の有無が4半期報告書においても主な論点となっている。
(米国連邦政府)
米国の電力・ガス市場は、州際取引は連邦政府、州内取引は州政府と規制権限が分有さ れており、小売市場監視は自由化州の公益事業委員会が実施している。連邦政府ではEIAが 総合的なエネルギー情報の公開の一部として各州の電力・ガスの小売価格について情報収 集し公表しているが、市場監視を目的としたものではない。
(ペンシルベニア州)
電力小売市場を巡る反競争的行為、差別的行為、そして非合法なマーケットパワーの行 使を防止するために、既存事業者である配電事業者と、新規参入事業者である小売事業者 に、契約・販売に関する定期報告を求め、その結果を公表している。配電事業者は、供給 エリア内の小売事業者数、小売事業者による供給状況を報告する。小売事業者は、供給約 款種類毎の契約数の推移を報告するが、公表されるのは全小売事業者の集計結果のみであ る。ガス小売市場については、電力小売市場のような競争監視目的の報告書は刊行されて いないものの、既存事業者である天然ガス配給事業者について、その財務データや料金構 成を開示している。
(ニューヨーク州)
電力・ガス小売市場の両方について、“需要家が競争のメリットを享受し、その権利が保 護されるべき”という家庭エネルギー公正取引法の理念の下、既存事業者であるユーティリ ティは、小売供給の状況として顧客数及び販売量の変化を毎月報告することとなっている。
しかし2016年12月現在、この月次報告は更新が停止しており、電力で2015年12月分が、
ガスで2012年4月分が最新データとなっている。
(テキサス州)
テキサス州の電力小売市場は、米国でも最も競争が進展した州のひとつといわれている。
移行的措置として、規制料金に該当する基準価格 (price-to-beat)が導入されたが、2007年 1 月には撤廃されており現在に至っている。 2003 年の競争評価報告書では、電力小売市場 に関連する評価指標として、小売市場の競争進展に伴う価格への影響、顧客によるスイッ チングの動向等に焦点を当てている。