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2 欧州各国における電力・ガス小売市場の競争評価

2.6 スペイン

2.6.3 競争状況レビューにおける評価指標及び評価軸

2.6.3 競争状況レビューにおける評価指標及び評価軸

2.6.3.2 評価指標の実績数値及び評価結果~電力小売市場

2015年10月8日に公表された「INFORME DE SUPERVISIÓN DEL MERCADO MINORISTA DE ELECTRICIDAD Año 2014」における評価指標の実績及び評価結果を以下に示す。

(1) 直近の実績の総括

スペインでは、既に全需要家が供給事業者を選択できる。2014年時点で、PVPC制度の適 格需要家の約半数(件数ベース47%、電力量ベース51%)は、参照小売会社以外から供給を受 けている。5大グループに属していない供給事業者のシェアは、21%から22%に微増した。

これは中小企業向け契約において、新規参入事業者が増進したことが寄与している。結果 として、中小企業及び産業での市場集中度は低下しているが、家庭の市場集中度は高止ま りしている。5大配電事業者の配電エリアに多数の顧客を抱えている供給事業者数は66社か ら90社へと急増している。これは電力小売市場の新規参入余地の大きさを示している。

スイッチング率は13%と欧州のなかでも最高水準に達している。200万の需要家が規制料 金市場から自由料金市場にスイッチングし、自由料金市場内でも150万の需要家がスイッチ ングしている。

小売市場監視報告書では、供給事業者の請求した平均価格を分析し、売上総利益を推定 している。平均合計価格は家庭・中小企業セグメントで上昇している。特にPVPCの適格需 要家となる契約電力10kW以下のセグメントでの上昇率が最も高くなっている。この価格上 昇の少なくとも一部は、系統利用価格の上昇に起因している。逆に産業セグメントでは、

系統利用価格の下落以上に、平均合計価格が下落している。売上総利益の推定値は、2013 年から2014年にかけて全体として上昇した。特にその傾向はPVPCの適格需要家セグメント で顕著である。この傾向に基づき、同報告書はスイッチングにおいて十分にメニューを比 較することの重要性を指摘している。

表 2-36 スペイン電力小売市場の構造

(出所) CNMC「INFORME DE SUPERVISIÓN DEL MERCADO MINORISTA DE ELECTRICIDAD Año 2014」

(2) 中長期傾向の分析

前述の総括の他、小売市場監視報告書は個々の指標の中長期傾向を分析している。

1) 自由化進展状況

2014年末時点で、全2,770万件の需要家のうち約1,200万件が、新規参入事業者から供給を 受けている。いずれの割合も前年度から上昇している。この指標からは、自由化が長期的 にみて順調に推移し、PVPC制度の導入も奏功している様子が伺える。

中小企業 産業 合計 中小企業 産業 合計

PVPC料金供給件数 38,856 168 15,730,662 28,562 132 13,974,364

自由料金市場供給件数 777,112 21,934 11,991,986 766,228 22,068 13,799,709

≦10KW >10KW ≦10KW >10KW

40% 90% 47% 92%

≦10KW >10KW ≦10KW >10KW

44% 93% 51% 95%

自由料金市場で活動している供給事業者数 113 69 125 146 86 161

5大配電事業者の配電エリアに多数の顧客を

抱えている供給事業者数 50 37 66 68 44 90

5大グループに属していない供給事業者のシェア

(電力量) 14% 30% 21% 21% 29% 22%

上位3供給事象者による、自由料金市場における

シェア(電力量) 75% 55% 67% 70% 57% 67%

顧客ロイヤルティ(電力量)(当該配電事業者系列

の供給事業者から需要家が受ける供給量) 51% 40% 49% 46% 38% 47%

ラストリゾート料金市場から自由料金市場へ変更

した件数 14,740 293 2,089,155 12,879 222 2,163,554

自由料金市場供給者間でのスイッチング件数 207,446 4,437 1,299,212 220,236 5,054 1,488,833

年間スイッチング率 26.7% 21,5% 12.2% 28.6% 23.9% 13.2%

自由料金市場供給者間でのスイッチング率 26.6% 20.4% 13.2%

≦10KW >10KW ≦10KW >10KW

185 189 195 197

≦10KW >10KW ≦10KW >10KW

87 94 89 96

≦10KW >10KW ≦10KW >10KW

9-14 16-22 12-18 19-25 0-6 N/A

N/A 87 60 N/A

売上総利益の推定値(€/MW/h) 9-15 0-5

N/A 153

N/A 10-17

90 N/A

エネルギー費用価格(€/MW/h) 86 61

平均合計価格(税込)(€/MW/h) 150 92

11.8% 12.7%

12.0%

2,074,122 2,150,453

1,087,329 1,263,543

70% 69%

75

3% 5%

54

100% 86%

90% 88%

113 145

50%

自由料金市場での供給率(電力量)

50%

98% 100% 83%

95% 99% 43%

48%

96% 99%

自由料金市場での供給率(件数)

42%

56%

99%

15,691,638 13,945,670

11,192,940 13,011,413

2013年12月 2014年12月

家庭 家庭

図 2-69 電力小売市場自由化の経緯と自由料金市場で供給された電力量の割合 (出所)「INFORME DE SUPERVISIÓN DEL MERCADO MINORISTA DE ELECTRICIDAD Año 2014」

2) 供給事業者数

2014年末時点で、参照小売会社以外に200の供給事業者が活動している。これらの供給事 業者は、家庭・中小企業部門でも活発に活動を増している。5大グループの配電エリアへの 進出も活発であり、下図のように事業者数は順調に増加し続けている。

図 2-70 5大配電事業者の配電エリアに多数の顧客を抱える供給事業者数(部門別) (出所) CNMC「INFORME DE SUPERVISIÓN DEL MERCADO MINORISTA DE

ELECTRICIDAD Año 2014」

3) 市場構造

自由料金市場における部門別市場シェア及びHHIの推移(電力量ベース)を見ると、どの需 要家部門でもHHIが確実に減少していること、特に中小企業部門と産業部門では2,000未満 の水準にまで市場集中度が減少していることが確認できる。他方CNMCは、家庭部門におい ては未だ市場集中度が高い、と評価している。この傾向は件数ベースの集計結果からもみ

全高圧需要家 全需要家

高圧料金 廃止

ラストリ ゾート料 金開始

PVPC料 金開始

99年1月 00年1月 01年1月 02年1月 03年1月 04年1月 05年1月 06年1月 07年1月 08年1月 09年1月 10年1月 11年1月 12年1月 13年1月 14年1月

■家庭 ■中小企業 ■産業

てとれる。

表 2-37 自由料金市場における需要家部門別の市場シェア及びHHIの推移(電力量ベース)

(出所) CNMC「INFORME DE SUPERVISIÓN DEL MERCADO MINORISTA DE ELECTRICIDAD Año 2014」

図 2-71 自由料金市場における需要家部門別の市場シェア及びHHIの推移(件数ベース) (出所) CNMC「INFORME DE SUPERVISIÓN DEL MERCADO MINORISTA DE

ELECTRICIDAD Año 2014」

4) 顧客ロイヤルティ

5大配電事業者の系列の供給事業者から引き続き電力供給を受けている需要家の割合は、

電力量ベースで過去5年間の間におおよそ10パーセントポイント減少した。2014年12月時点 でも、従来からの供給事業者からの供給量は47%に達している。

END IBL GNF HC-NAT FORTIA E.ON VILLAR AXPO ACCIONA NEXUS ALPIQ その他 HHI

2009 44% 34% 16% 5% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% 1% 3,338

2010 37% 39% 15% 5% 0% 2% 0% 0% 0% 0% 0% 1% 3,171

2011 32% 41% 18% 4% 0% 2% 0% 0% 0% 0% 0% 1% 3,104

2012 31% 43% 16% 4% 0% 2% 0% 0% 0% 0% 0% 2% 3,152

2013 33% 41% 16% 4% 0% 2% 0% 0% 0% 0% 0% 2% 3,068

2014 33% 39% 16% 4% 0% 2% 1% 0% 0% 0% 0% 4% 2,931

2009 37% 30% 20% 7% 0% 2% 1% 0% 0% 0% 0% 3% 2,727

2010 36% 28% 19% 7% 0% 3% 2% 0% 0% 2% 1% 3% 2,515

2011 37% 26% 19% 6% 0% 3% 1% 0% 0% 3% 1% 3% 2,493

2012 38% 24% 19% 7% 0% 4% 2% 0% 0% 2% 1% 5% 2,424

2013 36% 21% 18% 7% 0% 4% 3% 0% 0% 2% 0% 8% 2,220

2014 31% 21% 18% 5% 0% 4% 4% 1% 0% 2% 0% 13% 1,997

2009 36% 15% 15% 12% 12% 1% 1% 0% 0% 0% 1% 7% 2,105

2010 37% 15% 12% 13% 11% 1% 2% 0% 0% 1% 4% 4% 2,084

2011 37% 15% 11% 12% 10% 1% 2% 2% 1% 1% 5% 2% 2,015

2012 37% 14% 11% 11% 8% 2% 2% 3% 3% 1% 5% 4% 1,915

2013 33% 11% 11% 11% 9% 3% 2% 5% 5% 1% 1% 7% 1,645

2014 32% 12% 12% 11% 8% 3% 3% 3% 3% 1% 0% 9% 1,666

家庭

中小企業

産業

家庭 中小企業 産業

5大グループ以外

図 2-72 当該地域における配電事業者系列の供給事業者から需要家が受ける供給量 (出所) CNMC「INFORME DE SUPERVISIÓN DEL MERCADO MINORISTA DE

ELECTRICIDAD Año 2014」

5) スイッチング

中小企業部門及び産業部門では既に、スイッチングの大部分が自由料金市場内で生じて いるのに対し、家庭部門では、スイッチングの6割程度がPVPC市場から自由料金市場への 退出となっている。CNMCは家庭部門についても、自由料金市場内でのスイッチングが活発 化する必要があると評価している。

2014年度の年間回数別PVPC市場-自由料金市場間のスイッチング分布を見ると、スイッ チングした需要家の中で、最も度数の多い階級は、PVPC市場からの退出を表す1回であり、

7.1%であった。これに対し、自由料金市場内で1年間にスイッチングした需要家は合計して も4%台、2回以上のスイッチングは0.5%程度に留まっている。CNMCは自由料金市場内のス イッチング率は低調であると評価している。

E.ON Endesa Unión Fenosa HC Iberdrola

表 2-38 需要家部門別スイッチング実績

(出所) CNMC「INFORME DE SUPERVISIÓN DEL MERCADO MINORISTA DE ELECTRICIDAD Año 2014」

表 2-39 PVPC市場から自由料金市場へのスイッチング回数分布

(出所) CNMC「INFORME DE SUPERVISIÓN DEL MERCADO MINORISTA DE ELECTRICIDAD Año 2014」

表 2-40 自由料金市場内でのスイッチング回数分布

(出所) CNMC「INFORME DE SUPERVISIÓN DEL MERCADO MINORISTA DE ELECTRICIDAD Año 2014」

6) 平均合計価格及びエネルギー費用価格

ネットワークアクセス料金及び税を含む、自由料金市場の平均合計価格は、前年比で産 業部門以外の全需要家部門について上昇した。またネットワークアクセス料金も、産業部 門以外で上昇している。系統料金の変化の原因について、CNMCは2013年と2014年の制度変 更にあると分析している。エネルギー費用価格の対前年比も需要家部門により異なる結果 となっており、産業部門以外で上昇した。2014年度、合計価格に占める系統料金の割合は、

家庭部門では5割を超えたが、中小企業及び産業部門ではより小さな値となっている。結果 として使用電力量当たりの費用は、需要家規模と反比例の関係にある。

自由料金市 場内のスイッ チング数

PVPC市場か ら自由料金 市場へのス イッチング数

全スイッチン グ数

スイッチング

自由料金市 場からPVPC 市場に戻った

2012年度合計 1,188,420 2,048,384 3,236,804 12% 92,718 家庭 998,845 2,019,456 3,018,301 11% 92,718 中小企業 185,730 28,625 214,355 26%

産業 3,845 303 4,148 20%

2013年度合計 1,299,212 2,089,155 3,388,367 12% 155,141 家庭 1,087,329 2,074,122 3,161,451 12% 155,141 中小企業 207,446 14,740 222,186 27%

産業 4,437 293 4,730 22%

2014年度合計 1,488,833 2,163,554 3,652,387 13% 201,134 家庭 1,263,543 2,150,453 3,413,996 13% 201,134 中小企業 220,236 12,879 233,115 29%

産業 5,054 222 5,276 24%

0回 1回 2回 3回 4回 5回 5-10回 10回超 合計

昨年度 92.9% 7.1% 0.1% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 100.0%

3年間 77.5% 21.9% 0.5% 0.1% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 100.0%

5年間 65.2% 33.9% 0.8% 0.1% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 100.0%

全期間 54.0% 43.4% 2.5% 0.2% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 100.0%

0回 1回 2回 3回 4回 5回 5-10回 10回超 合計

昨年度 95.4% 4.0% 0.5% 0.1% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 100.0%

3年間 90.2% 6.8% 2.1% 0.6% 0.2% 0.1% 0.0% 0.0% 100.0%

5年間 88.9% 6.9% 2.7% 0.9% 0.4% 0.2% 0.1% 0.0% 100.0%

全期間 86.9% 8.2% 3.0% 1.1% 0.5% 0.2% 0.2% 0.0% 100.0%

規制料金である累積赤字分、キャパシティ・ペイメント等を控除した残分は、エネルギ ー費用価格及び売上総利益となる。累積赤字分が前年比で10%程度の増加となっているのに 対し、エネルギー費用及び供給事業者の利益は-2%~+1%程度の変化に留まっている。

図 2-73 自由料金市場の平均合計価格の推移(需要家部門別) (出所) CNMC「INFORME DE SUPERVISIÓN DEL MERCADO MINORISTA DE ELECTRICIDAD Año 2014」

図 2-74 ネットワークアクセス料金及びエネルギー費用価格の推移(需要家部門別) (出所) CNMC「INFORME DE SUPERVISIÓN DEL MERCADO MINORISTA DE

ELECTRICIDAD Año 2014」

家庭 (PVPC適格)

家庭 (PVPC不適格)

中小企業 産業

家庭 (PVPC適格)

家庭 (PVPC不適格)

中小企業 産業

■ネットワークアクセス料金 ■エネルギー費用

図 2-75 価格構成要素の推移(需要家部門別)

(出所) CNMC「INFORME DE SUPERVISIÓN DEL MERCADO MINORISTA DE ELECTRICIDAD Año 2014」

7) 売上総利益の推定値

CNMCは、供給事業者に通知を義務付けている参照市場価格の情報に基づき、エネルギー 費用価格を推定している。これと規制料金を平均合計価格から控除して求めたものが、売 上総利益の推定値である。この推定値は、供給事業者、需要家部門、参照市場価格によっ て大きくばらついているが、5大グループと新規参入者を比べると、いずれの需要家部門に おいても、5大グループの利益率が高くなっていると見られる。

図 2-76 供給事業者別 売上総利益推定値の例 (出所) CNMC「INFORME DE SUPERVISIÓN DEL MERCADO MINORISTA DE ELECTRICIDAD Año 2014」

家庭 (PVPC適格)

家庭 (PVPC不適格)

中小企業 産業

■累積赤字分 ■キャパシティ・ペイメント ■マーケティング費用 ■システム費用 ■左記以外に関連する価格

家庭 (PVPC適格)

家庭 (PVPC不適格)

中小企業 産業

■スポット市場参照・・・ エネルギー費用をスポット価格に連動させる約款

■四半期参照・・・ 供給四半期直前月の月間平均価格に連動させる約款

■年間参照・・・ 供給年直前年の年間平均価格に連動させる約款

■ダイナミック参照・・・ 供給四半期の4四半期前最終月、3四半期前最終月、2四半期前最終月、

1四半期前最終月の平均価格に連動させる約款