3 米国各州における電力・ガス小売市場の競争評価
3.2 ペンシルベニア州
3.2.3 競争状況レビューにおける評価指標及び評価軸
2009年1月、PPUCは事務総局(Office of the Executive Director)内に、天然ガス小売市場の 監視を目的とする市場競争監視室(OCMO: Office of Competitive Market Oversight)を設置した。
そして同年9月、OCMOの業務に電力小売市場の監視業務が加わった。OCMOはPPUC内 のさまざまな部門の法務、技術、政策スタッフによって構成されている。
3.2.3.1 競争状況レビューの考え方 (1) 電力小売市場
PPUCは電力小売を巡る反競争的行為、差別的行為、そして非合法な市場支配力の行使を 防止するために、EDC 及び EGS に対し「小売電力選択活動報告(Retail Electricity Choice
Activity Reports)」で以下を報告するよう定めている193。
1) EDC の報告要件
州内の顧客を家庭用及び非家庭用(小規模・中規模・大規模)に区分し、それぞれについて 以下を報告するように規定している(提出頻度は毎四半期)。
・ 事業エリア内の全顧客数/総電力量(MWh)
・ 小売事業者が供給する顧客数及び電力量
・ 小売事業者が供給する顧客及び電力量の比率
・ その顧客区分で実際に契約を持っている小売事業者数
またスマートメータに関連し、TOU 契約またはリアルタイム契約でサービスを提供され ている顧客のそれぞれについて以下を報告する。
・ 事業エリア内の全顧客数/総電力量(MWh)
・ 小売事業者が供給する顧客数及び電力量
・ 小売事業者が供給する顧客及び電力量の比率
2) EGS の報告要件
州内の顧客を家庭用及び非家庭用(小規模・中規模・大規模)に区分し、それぞれについて 以下を報告するように規定している(提出頻度は毎年)。
・ 顧客数
・ 一律料金(flat rate)契約の顧客数
・ 季節別料金(seasonal rate) 契約の顧客数
・ TOU契約の顧客数
・ 混合契約の顧客数
・ 有期契約の契約年数別顧客数
193 PA州規約(Pennsylvania Code) title 52(Public Utilities) 54章( Electricity generation customer choice)
<http://www.pacode.com/secure/data/052/chapter54/chap54toc.html>
・ グリーン電力契約の顧客数
・ 強制供給停止契約の顧客数
・ 自発的供給停止契約の顧客数
・ 供給事業者請求契約の顧客数
・ リアルタイム契約の顧客数
(2) ガス小売市場
ガス小売市場については、電力と同様の報告の仕組みは確認できていない。ガスの供給 者選択プログラムは、電力同様に PA 州規約に規定されている194が、競争促進については PTC 制度などが規定されているのみで195、競争監視を目的とした報告については規定され ていない。
194 PA州規約(Pennsylvania Code) title 52(Public Utilities) 62章(Natural gas supply customer choice)
<http://www.pacode.com/secure/data/052/chapter62/chap62toc.html>
195 PA州規約(Pennsylvania Code) title 52(Public Utilities) 62章(Natural gas supply customer choice) G節 (Natural gas distribution companies and competition)
<http://www.pacode.com/secure/data/052/chapter62/subchapGtoc.html>
3.2.3.2 評価指標の実績数値及び評価結果 (1) 電力小売市場
2016年8月に公表された「Retail Electricity Choice Activity Reports」における評価指標の実 績を以下に示す。
1) 配電事業者による四半期報告 (EGS の供給状況の傾向)
EGSの供給を受ける需要家は2,044,947件であり、全体の36%となっている。このうち家庭 用需要家は1,722,757件となっており、同部門の34%を占めている。一方、非家庭用需要家は 322,190件(小規模253,913件、中規模63,009件、大規模5,268件)となっており、同部門の46%
となっている。
販売量ベースで80,208,301MWh であり、全体の67%となっている、その内訳は家庭用需 要家は14,519,632MWhであり、同部門の34%を占めている。非家庭用需要家は
65,688,669MWh(小規模7,580,224MWh、中規模15,209,250MWh、大規模42,899,195MWh)とな り、同部門の86%となっている。
表 3-5 契約件数及び販売量の推移
(出所) PPUC「Retail Electricity Choice Activity Reports 2015」
(EDC 供給エリア別)
EDC供給エリア別の件数ベース実績について見ると、PPL社、 PECO社、West Penn社が 家庭用需要家におけるEGS契約の大部分を占めている。
顧客数 販売量(MWh) 顧客数 販売量(MWh) 顧客数 販売量(MWh) 2015年 1,722,757 14,519,632 322,190 65,688,669 2,044,947 80,208,301 2014年 1,787,276 15,846,102 313,978 65,473,624 2,101,254 81,319,726 2013年 1,842,250 15,056,352 323,415 65,371,933 2,165,665 80,428,285 2015年 5,034,270 42,647,998 697,426 76,390,649 5,731,696 119,038,647 2014年 5,017,059 42,014,142 696,101 76,028,284 5,713,160 118,042,426 2013年 4,998,957 42,009,256 694,170 75,951,300 5,693,127 117,960,556
2015年 34.0% 34.0% 46.0% 86.0% 36.0% 67.0%
2014年 36.0% 38.0% 45.0% 86.0% 37.0% 69.0%
2013年 37.0% 36.0% 47.0% 86.0% 38.0% 68.0%
EGSの総供給
EGS及びEDCによ る総供給
EGSの供給率(%)
家庭用需要家 非家庭用需要家 合計
表 3-6 EGS及びEGSの供給する需要家件数(EDC供給エリア別)
(出所) PPUC「Retail Electricity Choice Activity Reports 2015」
また販売電力量ベースの実績について見ると、家庭用需要家においてPPL社、 PECO社、
West Penn社の3社が大きなシェアを持っている。一方、非家庭用需要家を見ると、PECO
社、 West Penn社、Duquesne社の3社が大きな割合を占めている。
表 3-7 EGSの販売電力量(EDC供給エリア別)
(出所) PPUC「Retail Electricity Choice Activity Reports 2015」
(リアルタイム料金の利用状況)
リアルタイム料金契約は、件数ベースで6%増、販売量ベースで5%減となった。PECO社、
Duquesne社、Met-Ed社、Penelec社、West Penn社、Penn Power社、PPL社、UGI社では、リア ルタイム料金契約の実績は非家庭部門のみで見られる。特に大規模需要家の割合が高い。
EGS 全体 EGS割合(%) EGS 全体 EGS割合(%) EGS 全体 EGS割合(%)
Citizens 12 5,765 0 79 1,170 7 91 6,935 1
Duquesne 167,967 524,560 32 26,383 61,589 43 194,350 586,149 33
UGI 392 55,197 1 933 8,506 11 1,325 63,703 2
Met-Ed 157,202 493,793 32 30,688 67,563 45 187,890 561,356 33
Penelec 143,917 497,959 29 36,661 86,039 43 180,578 583,998 31
Penn Power 32,706 143,073 23 8,788 20,740 42 41,494 163,813 25
PECO 482,105 1,444,465 33 82,790 165,251 50 564,895 1,609,716 35
Pike 1,932 3,681 52 463 994 47 2,395 4,675 51
PPL 567,001 1,241,062 46 99,111 181,668 55 666,112 1,422,730 47
Wellsboro 0 5,103 0 0 1,197 0 0 6,300 0
West Penn 169,523 619,612 27 36,294 102,709 35 205,817 722,321 28
合計 1,722,757 5,034,270 34 322,190 697,426 46 2,044,947 5,731,696 36
全需要家 非家庭用需要家
EDC 家庭用需要家
EGS 全体 EGS割合(%) EGS 全体 EGS割合(%) EGS 全体 EGS割合(%)
Citizens 257 86,888 0 49,327 87,837 56 49,584 174,725 28
Duquesne 1,514,808 4,137,059 37 8,497,664 9,852,825 86 10,012,472 13,989,884 72
UGI 3,661 556,349 1 242,356 435,783 56 246,017 992,132 25
Met-Ed 1,819,252 5,622,581 32 7,390,428 8,411,888 88 9,209,680 14,034,469 66 Penelec 1,463,719 4,398,849 33 7,990,467 9,293,631 86 9,454,186 13,692,480 69 Penn Power 399,029 1,705,120 23 2,252,325 2,835,815 79 2,651,354 4,540,935 58 PECO 4,877,343 13,848,983 35 21,733,918 24,678,102 88 26,611,261 38,527,085 69
Pike 5,590 9,698 58 7,645 15,066 51 13,235 24,764 53
PPL 2,489,290 4,971,898 50 7,240,901 7,855,531 92 9,730,191 12,827,429 76
Wellsboro 0 44,239 0 0 76,363 0 0 120,602 0
West Penn 1,946,683 7,266,334 27 10,283,638 12,847,808 80 12,230,321 20,114,142 61
家庭用需要家(MWh) 非家庭用需要家(MWh) 全需要家(MWh)
EDC
表 3-8 リアルタイム料金契約件数及び販売電力量
(出所) PPUC「Retail Electricity Choice Activity Reports 2015」
(EGS 数)
EDCの供給エリア内で活動しているEGS数196を見ると、Duquesne社、UGI社、Met-Ed社、
Penelec社、PennPower社、PECO社、PPL社、West Penn社の供給エリアでは増加傾向にある。
PPL社、PECO社、Duquesne社の供給エリアのEGSは、実際には主に非家庭部門で活動して いると報告されている。
非家庭部門のなかでは、概ね小規模需要家を対象とするEGSが多い傾向にある。
表 3-9 活動中のEGS数(EDC供給エリア別)
(出所) PPUC「Retail Electricity Choice Activity Reports 2015」
2) EGS による年次報告
各EGSから提出された、各種需要家プログラムの契約状況については、集計結果が公表さ れている。PPUCは以下のように総括している。
196 実際に1件以上供給しているEGS数
期 顧客数 販売電力量(MWh)
2014年末 5,550 42,857,196 2015年末 5,887 42,779,596 2015年
第1四半期 5,578 10,842,827 第2四半期 5,745 10,367,879 第3四半期 5,913 11,319,988 第4四半期 5,887 10,248,902
2014年 2015年 2014年 2015年
Citizens 1 1 1 1
Duquesne 57 61 68 69
UGI 3 3 6 7
Met-Ed 50 58 55 60
Penelec 48 56 48 53
Penn Power 23 32 30 36
PECO 79 84 84 89
Pike 3 3 3 3
PPL 88 91 100 103
Wellsboro 0 0 0 0
West Penn 45 51 50 54
EGS数
EDC 家庭部門 非家庭部門
(一律料金及び時間変動料金)
一律料金契約の口数は過去最多の1,508,196件であり、その84%が家庭用需要家である。非 家庭用部門では、小規模需要家の契約数が最も多く、184,727件となっている。
時間変動料金(TOU契約、リアルタイム料金、季節別料金等)契約の口数は、過去最多の 719,593件であり、その80%が家庭用需要家である。非家庭用部門では、小規模需要家の契 約数が最も多く、130,004件となっている。
(有期契約)
有期契約期間としては1年間が最も多く700,665件であり、その92%が家庭用需要家である。
非家庭用部門では、小規模需要家の契約数が最も多く、67,759件となっている。
(節電協力プログラム料金)
節電が義務とされるプログラムの契約口数は過去最多の42,703件であり、その95%が家庭 用需要家である。非家庭用部門では、小規模需要家の契約数が最も多く、2,174件となって いる。
(グリーン料金)
グリーン料金契約の口数は223,682件であり、その87%が家庭用需要家である。非家庭用 部門では、小規模需要家の契約数が最も多く、26,451件となっている。
(供給事業者請求)
EDCではなくEGSが請求業務を請け負う供給事業者契約の口数は、過去最多の81,506件で あり、その91%が非家庭用需要家である。非家庭需要用部門の小規模需要家の契約数が最も 多く、53,356件となっている。
(2) ガス小売市場
前述の通り、ガス小売市場については、電力と同様の競争監視目的の報告書は確認でき なかった。以下は参考として、2015年6月に公表された「Pennsylvania gas outlook report」に おける、NGDC各社の指標の実績を示す。
(需要家数データ)
需要家別に取り扱いガス量を集計すると、ガス輸送契約の需要家(主に自身のために買い 付けたガスを需要地に輸送する契約)が55%、家庭用34%、業務用11%、産業用0.39%となる。
表 3-10 主要NGDCの需要家データ(2013年)
MCF=1000 立法フィート
(出所)PPUC「Pennsylvania gas outlook report」
(財務データ)
PPUCは各NGDCの提出した財務データについて、以下の通り、評価している。PPUCは、
ガス事業はガスの購入/販売が主であることから、近年のガス価格の低下がNGDCの財務に 影響していると説明している。そして様々な財務分析項目のうち、事業収入、事業費用、
平均ガス購入費の間に高い関連性が見られると分析している。この他、NGDCが過去10年に 渡り、一定のインフラ整備を進めてきたことに注目している。
表 3-11 主要NGDCの財務データ(2013年)
(出所)PPUC「Pennsylvania gas outlook report」
そして各NGDCの総事業費用に占めるガス供給費用の割合を下表の通り推定している。
PPUCはガス供給費用率の小さかった事業者について、ガス購入費用が低かった(TWP及び NFG)、料金未納に係る支出と従業員への支払が大きかった(PGW)、垂直統合の度合が他社 より強いために供給費用が割安になっている(Peoples)等と個別に要因分析の結果を示して
Columbia 273,342 83 28,845 318 285 811 119,350 363
Equitable 229,539 100 13,991 300 41 1,301 18,417 1,424
Peoples 247,366 97 20,807 278 34 5,735 91,758 416
Peoples TWP 56,344 90 4,218 463 2 102,000 129 118,326
NFG 169,409 96 10,800 273 187 1,540 32,693 761
PECO 458,335 86 42,051 461 59 17 907 33,086
PGW 472,066 76 23,116 368 580 826 3,169 8,565
UGI CPG 68,983 88 9,048 327 141 1,943 1,709 8,570
UGI PNG 147,910 107 12,314 375 66 1,621 5,695 5,807
UGI Utilities 284,683 71 24,732 310 583 1,026 53,185 1,662
家庭用需要家 業務用需要家 産業用需要家 ガス輸送契約需要家
顧客あたり平均 消費量(MCF)
顧客数 顧客数 顧客あたり平均消費量(MCF) 顧客数 顧客あたり平均消費量(MCF) 顧客数 顧客あたり平均消費量(MCF)
会社
事業収入 事業費用 平均ガス購入費 稼働プラント資産
100万US$ 100万US$ US$/MCF 100万US$
2005 4,974 4,450 9.38 7,480
2006 4,738 4,284 10.21 7,737
2007 4,908 4,412 8.86 8,018
2008 5,362 4,537 9.85 8,351
2009 4,564 3,557 7.79 8,677
2010 4,145 3,129 6.03 8,958
2011 3,829 2,827 6.08 9,224
2012 3,276 2,363 4.70 9,665
2013 3,720 2,508 4.98 9,990
MCF=1000万立法フィート
いる。
表 3-12 総事業費用に占めるガス供給費用の割合 (2013年)
(出所)PPUC「Pennsylvania gas outlook report」
3.2.3.3 競争状況の監視 (1) 電力小売市場
2011年4月29日、PPUCは、州内の電力小売市場が適切に機能するための改善事項を明 らかにするために、州規模の査察プロジェクト(investigation)を開始した197。検査の第1フェ ーズでは、小売市場の現状の評価と、小売顧客が競争のメリットを実感できるようにする ために変更すべき点の検討を目的として、ステークホルダーに意見書の提出を求めた。更 に事業者ヒアリングを実施し、課題と解決の方向性を整理した。
第 1 フェーズの結論として、PPUC は電力小売市場には改善が必要と判断し、2011 年 7 月28日から第2フェーズを開始した。14回にわたる技術会合を経て、OCMOは、2012年 3月、市場の改善に向けた段階的作業計画を策定した。この作業計画では、競争環境改善に 向けた以下の取り組みが提案された。
・ EGSの変更期間を短くするための州共通標準手続きの整備
・ 需要家に対する、以下の料金提案プログラムの整備
⇒家庭用需要家が転居・転入を配電事業者に連絡する際に選択可能な発電供給事業 者を周知するプログラム(New/Moving Customer Referral Program)
⇒デフォルトサービスを受けている家庭用需要家に対し、当初の 4 か月から 1年間 は比較価格の 7%引の料金を提案するプログラム(Standard Offer Customer Referral Program)
⇒特定の地域内のデフォルトサービスを受けている家庭用需要家グループに対し、
197 Retail Markets Investigation
<http://www.puc.pa.gov/utility_industry/electricity/retail_markets_investigation.aspx>
Columbia 67.7%
Equitable 66.9%
NFG 47.2%
PECO 78.5%
Peoples 56.7%
UGI PNG 78.9%
PGW 53.6%
UGI CPG 64.3%
TWP 49.4%
UGI 74.3%
平均 65.1%
ガス供給費用 の割合