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第 3 章 効率性重視と行動的管理会計

Ⅰ 行動的管理会計のフレームワーク

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ートN.アンソニーは、どのような計画にも統制が必要であるため、計画と統制を本来分け

ることができないと考えた。アンソニーは、戦略的計画、マネジメント・コントロールお よびオペレーショナル・コントロールという3階層のフレームワークを提唱し、経営者の 主要職能を管理会計と関係づけることで、管理会計の体系に影響を与えたのである6

1971年にキャプランは、管理会計の機能を受託責任と意思決定のための情報提供と整理 している7。キャプランは、経営管理機能が管理会計と密接な関係があることを主張し、管 理会計における意思決定のための情報提供機能が人間の行動に影響を与えることを示して いる8。つまり、キャプランによって、管理会計が経営管理過程のあらゆる段階で人間の行 動に影響を与える重要な役割を果たしていることが示された。

同年に AAA によって公表された『会計カリキュラムの行動科学的内容に関する委員会 報告書(Report of the Committee on the Relationship of Behavioral Science and

Curriculum)』では、「会計が行動プロセスの一つであるなら、行動科学の理論を考慮すべ

きである9」と言及し、会計学の研究に行動科学の理論や手法を含めて検討を加えていくこ とが示されている。AAAは、1974年に『行動科学と会計の関係に関する委員会報告書(

Report of the Committee on the Relationship of Behavioral Science and Accounti-ng)』を公表し、「行動会計は、手法の適用と会計研究への行動科学の展望を意味する10」 と言及し、管理会計の研究に行動科学が重要であることを示した。

1978年、ジョンソンとキャプランによる『レレバンス・ロスト(Relevance Lost: The Rise and Fall of Management Accounting)』の発刊以降、管理会計に大きな検討が加えられた。

ジョンソンとキャプランは、伝統的原価計算から提供される歪んだ原価情報によって理論 と実務に乖離が生じていることを指摘した。この指摘に対処するために、ABC、品質原価 計算、ライフサイクル・コスティング、原価企画などの管理会計手法が開発され、経営戦 略の実行手段として管理会計システムが認識されるようになった11

このように時代とともに管理会計に検討が加えられ、管理会計情報が人の行動に影響を 及ぼすことが認識されるようになった。さらに、管理会計情報は、経営者や管理者だけで なく、組織を構成する従業員の意思決定と行動に対して、財務的視点からの判断を加味さ せるよう影響を及ぼすことが認識されるようになった。廣本は、不確実性が高まるなか従 業員が市場のニーズに反応し自律的に行動することが重要であり、財務的視点から従業員 の行動に影響を与えることが管理会計に求められていると指摘している12。廣本の主張は、

管理会計に期待される役割が変化しており、従業員の自発性や創造性に焦点をあてた新た

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な組織マネジメントとして、組織全体の業績向上に資する役割が管理会計に期待されてい ると理解できる。

本章では、行政サービスにおける効率性の向上に資する概念の整理をするために2つの 視角を設定する。

第1の視角は、行動的管理会計が、人的資源に着目したオペレーショナル・コントロー ルをいかに機能させるかという視点から、行動的管理会計手法の適用について検討を行う。

行動的管理会計手法の適用がオペレーショナル・コントロールに影響を与えることを念頭 におき、次節において行動的管理会計手法の整理を行う13

行動的管理会計手法の整理では、英国先端経営研究所(Advanced Institute of Mana-gement Research:AIMR)の『公共サービスにおけるプロセス改善手法調査報告書(R-eview of Business Process Improvement Methodologies in Public Services)14』を基 礎として、行動的管理会計手法に関する文献を調査する。AIMRの報告書を基礎とした理 由は、次のとおりである。第1に、本報告が、公共部門における行動的管理会計手法の適 用に向けた調査・検討を目的にしているからである。第2に、英国ラフバラ大学ビジネス スクール教授のラドナーがAIMRの調査担当を務めていることである15。ラドナーは、英 国におけるオペレーション・マネジメント研究の第一人者である。ラドナーは、2005年に スコットランド政府の委託によって行動的管理会計手法の調査報告書の作成に務めている。

筆者は、2012年2月22日および同年4月27日に英国を訪問し、ラドナーに英国地方自 治体における行動的管理会計手法の適用についてインタビューを行った。

第2の視角は、リーン・アプローチ、シックスシグマ、ビジネス・プロセス・リエンジ アリング(Business Process Reengineering:BPR)、総合的品質経営(Total Quality Management:TQM)およびベンチマーキングを抽出し、行動的管理会計手法の概念整理 を行う。この5つの行動的管理会計手法を抽出した根拠は、ラドナーが効果的な手法とし て英国地方自治体への適用可能性を検討しているからである16。英国地方自治体において、

これらの手法の適用が研究されている背景には、長期化する財政逼迫に起因した中央政府 から自治体への大幅な補助金削減がある。英国地方自治体は、財政的な困窮を回避する手 段として、民間企業で飛躍的な成果をあげた手法に着目したのである。つまり、予算の削 減が続いている英国地方自治体では、限られた予算のなかで行政サービスの提供水準を維 持していくために、行政サービスの効率性を重視した行動的管理会計手法の適用が検討さ れている。

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Ⅱ 効率性重視の行動的管理会計手法