41
42
もとづき持ち物を整え(実行)、確認(評価)する。こうしたプロセスの遂行に 困難が認められるのであれば、算数文章題に限らず他の課題にも影響すること が予想される。
極低出生体重児における教科学習や学校生活の困難と新生児期の医学的な状 況および就学前の
IQ
値との間には明確な関連を見出すことはできなかったが、結果としての困難状況のみならず、上述した解決プロセスの遂行状況やその経 年変化の検討を通じ、教科学習および学校生活における背景にある要因を見出 せる可能性もあると考える。
先述したように小学校の教科のうち算数において困難を示す極低出生体重児 が比較的多くみられ、その者たちについて算数文章題の困難があげられていた こと、従来のいくつかの研究(長尾ら,2015;大西ら,2017)において算数文 章題で困難を示す事例が多く報告されていること、算数文章題については、問 題理解・立式(プラン立案)・計算(実行)・答えの見直し(評価)といった側 面から解決プロセスを検討しうること(岡本,
1992
;田坂・隝田,1996
,1997b
,2000
)を踏まえると、解決プロセスの検討が比較的容易で、かつ学齢期(小学 校段階)を縦断的に検討することが可能な課題を用いることが望ましいと考え られる。算数文章題(田坂・隝田,2000)は、そのような課題の有力な候補に なりうると考えられた。43
第5章 視覚的な情報処理に弱さがみられた極低出生体重児の 算数文章題解決の遂行(研究2)
第
1
節 問題と目的研究1では、極低出生体重児に算数文章題の解決を苦手とする者が多く、そ れは高学年で顕著になっていくことが示された。この結果は、鴨下(2008)ほ か、いくつかの諸研究と一致するものであった。しかし、算数文章題困難と直 結した要因は、出生体重、在胎週数、アプガースコア、リスク要因数、6 歳時 の知能指数(IQ)のいずれにも認められなかった。
極低出生体重児の学齢期に
WISC-Ⅲ知能検査を実施した安藤ら( 2012)は、
小学3年生まで全検査
IQ
値の伸びが認められるものの、高学年に向けて動作 性知能指数(PIQ)値で低下がみられることを報告している。加えて、PIQ を構成する知覚統合や処理速度の群指数が低値となること(高橋ら,2019)、K-ABC
検査においては同時処理劣位を示すことも報告されている(伊藤,2017)。
極低出生体重児の学齢期の知能検査や認知能力検査には、視覚的な情報処理が 要求される課題での成績低下という特徴がみられ、こうした特徴が学習に影響 を及ぼしていることが指摘されている(河野,
2017)。極低出生体重児の算数文
章題を含む算数学習の困難についても、知覚統合、処理速度、同時処理といっ た視覚を介した処理能力の関与が示唆されている(Hannula-Sormunen et al.,2017;Simms et al.,2015;Taylor et al.,2009)。
極低出生体重児に認められるこれらの認知能力の問題と、算数文章題困難を 示す者が高学年に多くなっていくことには、関係があることが推察される。 研 究2では、知覚統合や処理速度といった視覚情報処理能力がかかわる
WISC
知 能検査でのPIQ
値やK-ABC
検査での同時処理尺度において弱さが認められた 対象児を抽出し、算数文章題解決困難の状態を確認する。研究1では、中学年 から高学年に向けて、算数教科、特に算数文章題解決に困難を示す児が多くな ったことから、研究2では、小学3年生時から6年生時にわたる算数文章題解 決の遂行変化を検討する。対象児の算数文章題解決の経年変化を捉えるうえで、低学年から高学年に実施可能な田坂・伊藤(2016)や田坂・隝田(2000)の算