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1.対象児

対象児は、修正

6

か月時から小学校卒業時まで発達を追跡してきた早産の低 出生体重児で、研究1および研究4と同じ対象児

25

名である。

対象児

25

名に対して、5年生時に実施した

WISC-R

知能検査、6年生時に

実施した

WISC-Ⅲ検査の FIQ(全検査 IQ)、VIQ(言語性検査 IQ)、PIQ(動

作性検査

IQ)の平均値および標準偏差(SD)を、表 8-1

に示した。

8-1 対象児25名の5年生時、6年生時のFIQ、VIQ、PIQの平均値(SD)

FIQ VIQ PIQ

5年

97.6

(13.2)

97.6

(12.7)

98.1

(14.0)

6年

92.8

(10.8)

94.6

(11.0)

92.3

(11.3)

研究4で確認された対象児

25

名に示された算数文章題解決の3タイプは、

次の(A)、(B)、(C)であった。

(A)小学3年生時から算数文章題解決に正答した

6

名(男

4

名、女

2

名)。

(B)小学3年生時では解決できなかったが、小学5年生時あるいは6年生 時に、算数文章題解決に正答した

14

名(男

10

名、女

4

名)。

(C)小学6年生時になっても解決ができなかった(算数文章題解決の正答 に至らなかった)5 名(男

3

名、女

2

名)。

2.算数文章題 (1)問題文

減算の逆思考の文章題(逆思考問題)を課題とした。問題文の数値は、分数

(同分母)を使用した。

実施した問題文を下記に示した。5年生時に実施した算数文章問題は、指導

96

前(5年事前テスト)、指導、指導後(5年事後テスト)とも1題ずつ、別問題 であった。6年生時に実施した算数文章問題(6年テスト)は、

5

年時事前テス トと同じ問題を使用した。

算数文章題は、5年生時では、事前テスト→指導→事後テストの順に実施し た。6年生時(6 年テスト)は、5年生時での指導効果の維持、および遂行の 変化を確認のため、5年生時の事前テストと同問題を実施した。

<問題文:

5

年事前テスト、6 年テスト>

部屋に リボンを かざろうと 思いましたが、 1/5m しか ありません でした。 お姉さんに リボンを もらった ので 4/5m に なりました。

お姉さんに 何m もらった ので しょうか。

<問題文:指導>

ハイキングに行きました。 2/7 km歩いたところで おべんとうを 食べ ました。それから

10

分歩いたので、歩いた道のりは

6/7

kmになりま

した。

おべんとうを 食べてから 何km 歩いたのでしょうか。

<問題文:5 年指導後(5年事後テスト)>

新聞紙をまとめるために ひもを使おうと思いました。

3/8mしか

持っていませんでした。お店に行って 50円でひもを

買ったので、7/8 mになりました。 何m買ったのでしょうか。

(2)算数文章題解決過程

5

年事前テスト、5 年事後テスト、6年テストでは、予測・問題理解・プラン 立案・実行・評価の

5

つの解決下位過程を設定し、

2

設問をおこなった。各解 決過程での設問および実施内容と方法は、研究4と同様である。

問題用紙と回答用紙を提示し、設問は実施者がおこなった。回答は所定の回 答用紙の回答欄へ対象児に記入してもらった。

立式説明、予測・評価の3肢選択理由、の回答用紙への筆記を躊躇する者が いた場合、実施者が聴取し記録した。

97

(3)算数文章題指導

文章題解決過程の予測を除いて、問題理解、プラン立案、実行、評価の

4

つ の下位過程で指導を実施した。研究4に示された算数文章題解決の困難を考慮 し、田坂・隝田(2000)を参考に、指導内容を下記のように設定し、表

8-2

に も示した。

①問題理解過程:情報抽出が部分情報(求答事項)にとどまる者が多かった ことから、立式情報に注意を向け維持できるよう、(手がかりとして)問題 文に下線を引いて回答するよう援助をおこなう。

②プラン立案:抽出した情報を統合的に把握した(統合化)立式水準の困難 を考慮し、数直線図に、全体-部分(被減数と減数)の関係を捉える手が かりや数値の大小にあたる箇所への手がかりを付加した援助を導入する。

③実行:計算時に誤りがあった者がみられたことから、計算方略を教示する。

④評価:自発的なモニター行動の弱さが認められたことから、遂行結果等の 見直し行動を促進するため、後述する援助水準に合わせた教示を実施する。

また、これらの各過程での指導の援助方法として、援助水準(援助度)を設 定し、対象児が遂行できるまで援助を付加していった。

加えて、各過程で正答ができた後、その解決方法が有効であると、対象児が 理解したと確認できるまで、具体的な説明を加えて実施した。この確認は、正 答を導いた後でも、指導で遂行できた方法の有効性を理解することで、自発的 使用を促す目的におこなった。

98

表 8-2 4つの解決下位過程での指導内容

過程 指導内容

問題理解

問題文の必要情報抽出の弱さ(部分情報にとどまる)を 補うため、選択した必要情報箇所に注目し、注意が維持 できるよう、問題文に下線を引くことを指導。

プラン立案

問題文にある全体-部分(被減数と減数)の関係を捉え る手がかりとして、数直線による線分図(図

8-1)を利

用して指導。

実 行 計算できない場合に、分数の計算方略を援助方法(援助 度)に合わせ教示。

評 価 計算結果や問題文などへ見直しがおこなえるよう、援助 方法(援助度)に合わせ教示。

<プラン立案過程で利用した線分図の例>

自発的に数直線図を利用することに躊躇や困難がみられた時は、下記のよう な線分図(図

8-1)を用いた。指導者が図を示して説明し、問題文にある数値と

図に示した①②に該当する箇所を選択(選択肢を提示)するよう、助言をおこ なった。選択肢①②を提示しても回答できない場合は、直接、問題文の数値を 一対一対応で指し示すといった援助を付加した。

8-1 プラン立案過程で利用した線分図

99

<指導の援助方法>

指導の援助として、援助度の低から高への3水準(①②③)を設定した。

援助なく(自発の水準)で正答できなかった者には、順次、より援助度の高 い水準へ、正しい答が出せるまで援助をおこなった。

<援助水準>

(援助)

援助度 低 ①注意喚起・促し

②選択肢を提示

援助度 高 ③直接、指導者が教示

<指導後の確認>

各過程の指導では、正しい答が確認できた後、「なぜ、その方法(指導した方 略)を使用する必要があるのか」について、以下のような質問を実施した。質 問は、その解決方法が有効であると、対象児が理解したと確認できるまで、内 容を付加して(具体的な説明を加えて)おこなった。

(確認の例:問題理解過程の指導後の確認)

確認はその方法が有効であると、対象児から回答を得られるまで、次の

①②③の順に教示をおこなった。

①「どうして線を引いたと思う?」

②「線を引いておくと分かりやすくなるよ。」

「式を立てる時かな?計算する時かな?

答を見直した時かな? 」

③「線を引いておくと、式を立てる時や後から答を見直す時によく 分かるよ。」

100

<指導の具体例:問題理解過程>

対象児が問題文を読み終えた後、問題理解過程の設問(「この問題は答 に何を聞いているのかな」「答を出すために他に分かっていることは何か な」)に正答できなかった場合、次の教示をおこなった。

対象児が正答するまで、順次、援助度の高い水準(下記の①→②→③)

へ援助を行った。

①注意喚起・促し

「もう一度、声を出して読んでみよう。」

(1)「この問題は答に何を聞いている(求めている)のかな?それが書 いてあるところに2本線を引いてみよう。」

(2)「答を出すために他に分かっていることは何かな? それが書いて あるところに1本線を引いてみよう」

②複数例(選択肢)から選択

「もう一度、声を出して読んでみよう。」

(1)「この問題は答に何を聞いているのかな? 今から3つ言うので選 んで下さい。」

1)「何分歩いたでしょうか。」

2)「歩いた道のりは全部で何kmでしょうか。」

3)「お弁当を食べてから何km歩いたでしょうか。」

(選んだら)「それが書いてあるところに2本線を引いてみよう」

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