第Ⅰ部(第
1
章~第3
章)では、これまでの極低出生体重児の発達に関する 諸研究を展望し、近年の極低出生体重児の現状と予後に予想される新生児期の 影響や極低出生体重児の乳幼児期に認められなかった問題が、学齢期の学習困 難となって生じる問題について論じ、算数文章題解決過程から極低出生体重児 の学習の困難を明らかにする意義を示した。第Ⅱ部(第
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章~第10
章)では、まず、極低出生体重児の小学校6年間の教 科学習の実態を報告し(研究1)、極低出生体重児に指摘される視覚的認知処理 の弱さ(安藤,2012;高橋ら,2019)を示す対象児について、算数文章題解決 の状況を確認した(研究2)。そして、極低出生体重児の学習困難が示された算数文章題解決の特徴を検討 するため、正期産の典型発達児における算数文章題解決の習得過程を明らかに し(研究3)、典型発達児の算数文章題解決との比較から、極低出生体重児の算 数文章題解決の特徴および解決困難となる児を示した(研究4)。さらに、算数 文章題解決に示された困難について、援助を導入してその要因を検討した(研 究5)。
加えて、研究3に示された典型発達児の算数文章題の習得過程を指標に、実 態把握をおこない、指導計画を立案・実践した研究6において、算数文章題の 解決から得られた情報が、教育的支援にもたらす効果を報告した。
第Ⅲ部(第
11
章~第13
章)では、第Ⅱ部において、算数文章題解決に示さ れた極低出生体重児の学習困難の要因について、極低出生体重児の発達との関 係性をみるため、極低出生体重児の出生時における医学情報や学齢期に縦断的 に実施した知能検査等の諸検査を検討したのち(研究7)、学齢期に示された問 題が、乳幼児期の発達経過の中で、どのように認められるのか、0 歳から就学 前にわたって実施した発達検査等の結果から検討した(研究8)。第Ⅳ部(終章)では、第Ⅱ部から第Ⅲ部で得られた結果をまとめ、新生児期 や乳幼児期に異常所見がみられず、発達経過においても顕著な問題が示されな かった極低出生体重児が、学齢期になって学習困難となる背景および要因を述
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べ、学習実態を把握するツールとして算数文章題の有用性や、就学以前に学習 困難を有する児を見出しえる可能性を提言し、本研究の寄与および今後の課題 について示した。
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第Ⅱ部 算数文章題解決過程から捉える極低出生体重児の学習の様相
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第4章 極低出生体重児の教科学習の状況 (研究1)
第1節 問題と目的
乳幼児期から極低出生体重児の
follow up
の多くを担ってきた医療機関では 学齢期の極低出生体重児の学習評価が難しく、極低出生体重児の学習到達度の 詳細は明らかとなっていないことを、長尾ら(2015
)は指摘している。長尾ら(2015)は、小学
4
年生の学習内容から簡易的な国語と算数の学習習熟度テス トを作成し、テストの成績から10
歳時点での極低出生体重児の学習状況を確 認しているが、困難を示した児についての学習経過や経年変化については明ら かにしていない。極低出生体重児の学習状況については、学年により変化(鴨 下,2008)していくことが指摘されるものの、同じ対象児を追跡した結果では なく、教科学習の困難性についての実態は明らかとなっていない現状がある。竹中・荒木(2016)は、極低出生体重児の多くに医療専門機関での発達検査 や経過観察がおこなわれているものの、実際の学校生活の困難を把握すること は経過観察場面のみでは難しいことを踏まえ、母親との面接から聞き取った集 団生活の情報を分析している。面接の中で母親たちは、我が子の発達の特徴に ついて、他の同年齢児との違いを認識し、学校生活上の困難と結びつけて明確 に言及していた。このことから、極低出生体重児の学校での生活状況を把握す るうえで、母親からの情報が有用であることがうかがえた。竹中・荒木(2016)
のインタビューでは教科学習について情報を聴取していないが、学校での教科 学習の状況についても、母親から情報を得ることは可能であろうと思われた。
研究1では、障害診断がなく、乳幼児期に顕著な遅れがみられなかった極低 出生体重児の学校での学習達成度を確認する。母親への聴取により、対象児が 通う学校から提出される通知表の成績を含め、学校での学習の情報を得ること とした。小学校6年間の学校での教科学習の達成度から、どの教科がどの学年 で困難を示すようになるのか、明らかにすることを目的とした。加えて、教科 学習と学校生活の状況に共通するものがあるのか検討するため、学校生活につ いても聴取をおこなうこととした。