i 下位群にロール・プレイングの効果が生じたこと
まず学校環境適応感尺度(SEAS)からは、実験群下位群におい ての得点の上昇が見られている。それは、得点の上昇の差からも、
顕著に現れている。時期間の差からみるとSEASのすべての因子、
合計得点において下位群の方が上位群より高い得点を示している。
これは、明らかに下位群に有効な働きをしていると言っても過言で はないだろう。T1(教師との情緒的な絆)因子において下位群が 高い得点の上昇を示したということは、ロール・プレイング実施以 前には、教師に近づきたいと言う気持ちを持ちながら距離を持って いたのが、ロール・プレイングを体験することによって親近闇を持 ち、教師1ご対する情緒的な絆を強めるという結果がでたと考えられ
る。
また、下位群の児童にとっては、新学年において新しい担任教師 に対する期待感が下位群の児童は上位群の児童に比べて高く持って いるということが考えられるのではないか。
心理的距離地図(PDM)からは、 ISSSにおいて新学年には、実 験条件に関わらず、上位群は数値の下降を示し、下位群は数値の上 昇を示した。しかし、その上昇については、実験条件による差はな かった。このことについては、ロール・プレイングの実施回数、学 級における問題点、筆者の監督としての未熟さ、ロール・プレイン グの内容などなどの問題があり、再検討を要する点である。しかし、
ロール・プレイング直後には、自発的に自分の感情を表出するよう になった結果、児童の人間関係において衝突が生じたり、好ましく ない行動などの現象が生じるということになり、そのために、ISSS 値が低くなったということもあるだろう。これは、ロール・プレイ ング実施のあと、学級集団の再構成の過程を待たなければならない だろう。ロール・プレイングにより、自己に気づき、自発性、創造 性が高まったとしても、それが、クラスの人間関係に変化を及ぼす
までには時間の経過を待つ必要があるのではないか。
ロール・プレイング実施後の振り返り表によると、実験群の下位 群の児童がロール・プレイングに対する「興味・関心」が強いとい
う結果がでてきている。このことは、上位群の児童はロール・プレ イングに参加していても、授業だから、とか、仕方がないからとい う義務感で参加していて、 r興味・関心jを持つ割合が、下位群よ り低いという傾向を示している。しかし、回を重ねるにつれて、
「興味・関心」が高くなり、抵抗も僅かながら軽減される傾向がみ
られる。
2 次に、女子にロール・プレイングの効果が大きかったこと。
SEASから男子よりも女子の方にロール・プレイングの効果が大 きくでてきている。このことについては、女子の方が男子よりも素 直にロール・プレイングに臨み、実際に演じることに興味をもち演
.じることに、抵抗が少なかったと:いうことから生じた結果ではない かと考えられる。
このことについては、振り返り表においても現れているのである が、男子と比較して女子の方が、高い得点を示している。合計得点 においては、#1〜#5まですべて女子が高く、F1因子「興味・
関心」F2因子「創造性」の因子においては、非常に高い得点がで ている。特に、F2因子においては、男子の上昇より非常に高く、
ロール・プレイングを体験した結果、 「相手の気持ちを考えて行動 しよう」とか「自分の一言が相手に与える気持ちを考えた」という ことを感じ、今までの生活に対する意識の変革を図っていこうとす ることのあらわれであろう。ロール・プレイングを経験したものと そうでないものの比較からも、回を重ねるにつれて、経験したもの は得点の上昇がみられ、そうでないものは、得点のばらつきが大き かった。このことから、ロール・プレイングの体験によって、興味 関心を示し、創造性が向上し、自発性も増大したことが考えられる のではないか。
一 111 一
3 個人の対人関係の変容
本研究は孤立児童など、個人的な問題に焦点をあてた研究ではな かった。しかし、ロール・プレイングの実施によって、副次的に得 られた結果から、若干の考察ができよう。孤立児の対人関係の望ま しい変容が見られ、孤立児の行動・性格に対する学級の友人の評価 に望ましい方向への変容が見られたことである。これは、プレ実践 の報告(appendix参照)において、ララスの中で乱暴な行動をして、
孤立的な児童がロール・プレイングの経過の中でこの児童を「恐い」
としていた児童が、一緒に演技をしていく中で、この児童に対する 認知に変容が生じている。また、孤立的な児童本人も、ロール・プ レイングを経験していく中で、初めは演技をしょうとせず無関心を 装っていたのが、だんだん興味を示し、演技をするようになった。
このことは、この児童のSEASの得点上昇からも証明されている。
この点に関して、時田(1974)は、 「孤立児や周辺児の指導のため には、これらの内的感情を、ロール・プレイングの舞台で表現させ るように努めることが重要であり、これによって多くの偏見が氷解
し、友人関係の変容のきっかけが生じる」と述べている。
これらの本研究から得られた結果は、先行研究において報告がな されてるように、ロール・プレイングが児童の学級適応に有効な方 法であることを示唆して、いるといえよう。