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第 5 章 中国不動産業中堅企業の経営財務分析

5.6 結 言

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表 5.15 各主成分の固有ベクトルの値

(JMP V9での分析結果を掲載)

表 5.16 因子負荷量行列

(JMP V9での分析結果を掲載)

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(1)中国不動産企業の中でトップ 4 社は、住宅の開発・分譲事業を主としている(売上高 の 94%以上)。一方、中堅企業は、住宅の開発・分譲事業を主としている企業があるもの の、不動産賃貸や不動産投資などを重要な事業としている企業も多く、トップ企業に比 べて多角化が進んでいる。

(2)2012 年~2014 の 3 年間について、中国不動産業中堅企業 13 社とトップ 4 社の財務分 析を行った。取り上げた指標は、収益性、効率性、安全性、成長性であり、結果は以下 の通りである。

(3)総合指標として総資本営業利益率を比較した。2012 年~2014 の 3 年間の平均で、トッ プ企業 4 社の平均は 7.61%、中堅企業の平均は 2.42%であり、両者の間に少なくとも 1%

有意水準で 2%以上の差がみられる。

(4)収益性の指標として、売上高営業利益率を使って大手企業と中堅企業の比較を行った。

トップ企業の 3 年間の平均値は 24.94%、中堅企業の平均値は 10.14%であり、両者の間 には少なくとも 1%有意水準で平均値に 5%以上の差がみられる。なお、日本の不動産企 業の 2014 年度の売上高営業利益率の平均値は 12.6%であった。また、中国トップ 4 社の 平均売上高(2014 年)は、中堅企業の平均の約 25 倍であった。

(5)効率性の指標として総資本回転率と棚卸資産回転率を取り上げた。総資本回転率の 3 年間の平均値に関しては、トップ企業は 0.299、中堅企業は 0.263 と差は小さく、差は統 計的に有意でない。一方、棚卸資産回転率の 3 年間の平均値に関しては、トップ企業は 0.459、中堅企業は 0.653 であり、5%有意で 0.1 回転以上の差がみられる。なお、日本の 不動産企業の 2014 年度の総資本回転率は 0.24、棚卸資産回転率は 3.4 回転である。

(6) 安全性に関して、流動比率、当座比率、固定長期適合率、自己資本比率の 4 指標を計 算し、中堅企業とトップ企業の間で比較し、以下の結果を得た。

・流動比率は、中堅企業の平均が 183.17%、トップ企業の平均が 165.70%(5%有意)で、

日本の不動産企業の 2014 年度平均値 113.6%よりかなり高い。

・当座比率は、中堅企業の平均が 53.72%、トップ企業の平均が 49.29%(有意差なし)

で、日本の不動産企業の平均値 55.9%と若干高い。

・固定長期適合率は、中堅企業の平均が 42.04%、トップ企業の平均値が 25.95%(1%有 意水準で 5%以上の差)である。

・自己資本比率は、中堅企業の平均が 30.73%、トップ企業の平均値が 27.73%、2014 年 度度の日本の不動産企業の平均値は 35.7%で日本企業が若干高い。

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(7)成長率として年当たり平均増収率を取り上げた。トップ企業の平均が 30.43%、中堅企 業の平均が 17.34%と両者で差が見られたが、統計的有意差は確認できなかった。

(8)多様な財務指標を少数の指標にまとめる統計的手法である主成分分析の適用を試み た。結果は以下の通りである。

① 財務指標間の相関係数を見ることで、財務指標に影響を与える要因を推測するこ とができる。例えば、「売上高の大きい企業ほど営業利益率が高い」という相関係 数から、トップ企業が住宅の開発・分譲を主事業としており、開発・分譲事業の営 業利益率が高いことが推察できる。このような知見は、財務分析において非常に有 益と考えられる。

② 主成分は、幾つかの変量を集約して構成した新しい指標である。このため、多様な 財務指標を集約し、そこから企業間の違いを特徴付ける指標を見つけるのに有効と 思われる。例えば、5.5 節での分析結果から、主成分1と高い正の相関をもつ変量

(経営指標)から、企業間の違いを特徴づけている変量が営業利益率と棚卸回転率 であることが推察できたなどである。

(9)以上の分析を通して、中国不動産業において、中堅企業とトップ企業の経営・財務を 特徴づける主な要素として、①事業の違い、②棚卸資産の多寡、③現金の多寡、④賃貸 用不動産(固定資産)の保有、が上げられる。

参考文献

[1]邱強『房地産投資分析』清華出版社、p.38、2014 年。

[2]中国指数研究院「2013 年中国房地产販売額百億企業」

(http://fdc.soufun.com/news/zt/201401/bybqyb.html)(2015 年 12 月アクセス)

[3] Fung, H.G. et al., "The Development of the Real Estate Industry in China”, Chinese Economy, Vol.39, No.1, pp.84–102, 2006年。

[4] 魏興福、田村隆善、吉成亮「日中不動産業主要企業間の経営・財務分析」日本経営 診断学会論集、No.15、pp.80-86、2016 年に J-Stage 掲載。

[5]Tao, P., Yuan, F. and Ju, Y.. “Empirical Research on Financial Risk Recognition and Coping Strategies for Real Estate Listed Companies”, Proceedings of ICCREM 2014, pp. 1379-1386, 2014年。

[6]王紅霞編「中小房地産企業財務管理中存在の問題と対応分析」中国外資、Vol.245、

pp.1004-8146、2011 年。

[7]馮志艶、魯光輝編[我国中小房地産企業財務管理中存在問題及び対応政策] 中国集体 経済・財務管理、vol.2、pp.166-167、2010 年。

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[8]教育社編『会社全資料 23 不動産業界上位 10 社の経営比較』教育社、1980 年。

[9]大津広一『経営分析入門』ダイヤモンド社、2013 年。

[10]大槻啓子「不動産大手三社の財務徹底分析」エコノミスト、1998 年 3 月号、pp.50-53、1998 年。

[11]原口俊道「日中房地産経営比較」鹿兒島経大論集、37(3)、pp.21-32、1996 年。

[12]廣野元久、林俊克『JMP による多変量データ活用術』海文堂出版(2 訂 2 版)、2011。

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