7.1 節の最初に述べたように、5つの研究テーマを掲げて一連の研究を行い、中国不動 産業の歴史と現状、不動産企業の事業と財務の特徴、財務分析の方法論等をある程度示す ことができたと考えている。ただし、時間の制約もあって、上記 5 つのテーマそれぞれに 関しても多くの課題が残されている。以下は、残された主な研究課題である。
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(1) 中国の不動産と不動産業の歴史に関する研究課題
不動産と不動産業に関する歴史には、①不動産の所有権の変遷、②不動産の移転と所有 権を保証する法整備、③不動産の賃貸借、④不動産ローン、⑤地方政府の財政と不動産企 業への土地の売却益との関係、など歴史を交えた議論が課題として残された。
(2) 中国不動産バブルの評価に関する研究課題
日本の高度成長期と中国における不動産価格と GDP の伸びについて議論し、類似性を示 すことはできたが、統計的分析を含め、議論は十分精緻であったとはいえない。
(3) 中国不動産企業の事業と財務に関する研究課題
不動産企業の事業は、第 2 章で述べたように開発・分譲事業、賃貸事業、仲介事業など が含まれる。第 4 章と第 5 章で取り上げた企業は、開発・分譲事業を主とする企業が多く、
それらと賃貸事業を主とする企業や仲介事業を主とする企業の間での財務の特徴比較が 今後必要である。また、本研究で分析した企業のサンプル数は小さい。より多くのサンプ ル数での分析も望まれる。
(4)第 6 章では、新築住宅の売買は、開発企業と個人との取引であると述べたが、開発企業 は多くの子会社をもっていて、実際は販売子会社が各地方で個人と売買取引を行っている と推察される。開発企業の組織構造や販売チャネルなどについても論究が必要である。
(5) 賃貸事業の経営財務の安定性への寄与に関する研究課題
日本の不動産業において、オフィスビル賃貸事業は、利益率は低いものの不動産事業の 安定に寄与するとされる[3]。本当に事業の安定に寄与するのかどうかを、日本企業の賃貸 事業モデルを整理し、それら企業の過去の財務データを利用して検証するのは経営学的に 興味深い。
(6) 中国における不動産取引と不動産取引業に関する実態調査
中国不動産業における重要な事業分野に不動産流通業と呼ばれる仲介業がある。不動産 仲介業は、机一つで仕事ができることもあって、日本におけると同様、小規模零細な企業 が多く[4, 5]、その実態を中国で掴むことは難しい。このため、研究者が中国の現地へ赴 き調査する必要がある。
(7) 中古住宅売買における物件の価値の評価等に関する研究課題
今後中国では、中古住宅の売買が多くなると考えられる。中古住宅の価値を適切に評価す るためのデータベースの整備、不動産仲介業に携わる従業員の育成システムの開発などが課 題として存在する。
(8) 財務分析と主成分分析を併用した分析手法の開発とその有効性の検証
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第 5 章で議論したように、多様な財務指標を総合評価するための方法として主成分分 析法が利用可能である。従来の財務分析の方法と主成分分析法を併用してより総合的に 財務評価を行う手順の開発とその有効性の検証が研究課題としてあげられる。
本論文を終えるに当たって,しばしば指摘される点,すなわち,「中国の不動産取引が土 地使用権の取引をベースとしており、制度が異なる日中間で比較が可能か」という指摘に 対しても簡単に触れておきたい。この点に関して、(1)日本においても、借地権の売買や借 地上に建設したマンションの売買が存在すること,また、(2)オーストラリアにおいても土 地使用権に類する制度が存在することなどをヒントとすれば,不動産業に関する日中比較 研究が,土地の所有権と使用権の相違によって制限される場面は,ごく狭い領域に限られ ると著者は考えている。
参考文献
[1]森島義博『不動産学教学書』東洋経済新報社、2012 年。
[2]新日本有限会社責任監査法人編『業種別会計シリーズ 不動産業』第一法規株式会社、
2010 年。
[3]教育社編『会社全資料 23 不動産業界上位 10 社の経営比較』教育社、1980 年。
[4]中商情報網「2012 年中国房地産仲介服務行業界発展現状分析」(http://www.askci.
com:2014 年 1 月にアクセス)、2013 年。
[5]新聞中心「北京不動産仲介倒産再現」中国網 (http://new.china.cn/2011/11/9: 2013 年 2 月アクセス)、2011 年。
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謝 辞
私は、中国の大学を卒業した後、「なんとかチャンスがあれば留学をしたい」と考え ていました。その後、中国で約 8 年間にわたって企業で働きましたが、留学の夢を叶え るべく仕事を辞め、日本に留学しました。2010 年 10 月に愛知工業大学経営学部の研究 生となれたのです。研究生として 1 年半の間、日本語や専門教科を学んだ後、2012 年 4 月に愛知工業大学大学院博士前期課程・経営情報科学研究科に入学することができまし た。修了後、そのまま博士後期課程に進学し、研究テーマである中国不動産と不動産業 について先達の書物や論文を読み、論文の執筆に励みましたが、時間の経つのは早いも ので、いま、博士課程の 3 年間が終わろうとしています。
愛知工業大学の教育理念は、「創造と人間性」ですが、この理念は、深く私の心に染 みわたり響きました。愛知工業大学経営学部の先生方は、研究面ではもちろん素晴らし い教授の方々ですが、同時に優しい方ばかりで、またときには厳しく私を叱咤激励して くれました。それらは私の心に深く刻まれました。
愛知工業大学大学院の5年間は、学会論文を作成し、全国大会でそれを発表し、発表 した論文を投稿する毎日でした。これはとても苦しいことでしたが、論文が学会誌に掲 載され、また、その論文が他の研究者によって引用されているのを知ったときの喜びは 忘れることが出来ません。これらは、指導教授である田村隆善先生の寛大かつ懇切丁寧 なご指導がいただけたお陰です。深甚の謝意を申し上げます。先生は、本当に本博士論 文執筆のために、最初から最後まで、誠実に指導し励ましてくれました。重ねて心から 感謝を申し上げます。
本博士論文の審査では、愛知工業大学大学院経営情報科学科の鈴木達夫教授、近藤高 司教授、石井成美教授からご指導とご鞭撻をいただきました。これらの先生方は、5 年 間にわたって授業などでも大変お世話になりました。心から感謝を申し上げます。また、
共同研究を通じて貴重なご指導とご助言をいただきました吉成亮先生と老平崇了先生、
ならびに日々励ましのお言葉をかけて下さった山本勝先生にも深甚の謝意を申し上げ ます。
大学院生としての生活ならびに博士論文の作成に当たって、愛知工業大学図書館の職 員の方々と国際交流センターの方々に大変なご支援をいただきました。心から感謝申し 上げます。また、本論文で使用した資料の収集に関して中国福建信息職業技術学院の陳 忠先生のご支援をいただきました。深甚の謝意を申し上げます。私が愛知工業大学で学 ぶ機会が得られたきっかけは、故大野勝久教授のお陰です。ここに、「大野先生、有り 難うございました」と感謝の気持ちを申し上げます。
学資の乏しい私が博士課程の 3 年間の学びを続けることができたのは、文部科学省外 国人留学生学習奨励金(留学生受入れ促進プログラム)、愛知工業大学 TA 制度、なら