第 6 章 中国における不動産取引の現状と課題
6.7 中国における住宅購入時の税金と費用
6.7.1 日中における不動産取得でかかる税金と費用の概要
日本と中国における住宅取得でかかる税金を表 6.2 に示す[5]。取得時にかかる税の 科目は日中でほぼ同じであるが、取得後の固定資産税に関して、中国では大都市での 課税が試行され始めたばかりであり、地方での実施は決定されていない。
これら税金以外に、住宅登記のための手数料や銀行ローンの設定にかかる費用等は 中国でも存在する。また、中古住宅の売買では、売り手と買い手がそれぞれ仲介業者 に仲介手数料を支払うが、これも日中間で同じである。日本は売り手と買い手それぞ れが 3%程度、中国では 1%~2%程度である。
6.7.2 中国における住宅購入時の税金と費用の計算例
中国における住宅購入時に発生する税金等を表 6.3 に示す。ただし、住宅の価格は 2000 万円、専有面積は 90m2として計算した。ほぼ、日本と同じ税金が必要で、総額は 約 41.5 万円となっている。ただし、中国では固定資産税と都市計画税が原則としてか からない。表 6.2 の税金等を住宅本体の支払い以外に支払う必要がある。
表 6.3 に示した税金以外にも住宅購入時に支払いが発生する。以下では、それらを 計算してみよう。
(1)マンションの維持費
マンションの購入者は、マンション維持費として、不動産会社に住宅価格の 2~3%
を支払う。2000 万円の住宅だと 40 万円~60 万円となる。日本では、入居時の維持管 理費はこれほど高くはないが、毎月の支払いが発生する。
134 (2)仲介手数料
中古マンションの売買では仲介手数料が発生する。これは、住宅価格の 1%~1.5%で あり、2000 万円の住宅で 20 万円〜30 万円となる。日本での仲介手数料は、3%前後 で、中国より高い。
(3)固定資産税
中国では現在、固定資産税は徴収されない。ただし、大都市部での徴収が試行され つつあり注2、政府は、不動産に対して固定資産税を徴収するかどうかについて最終的 な決定を迫られている。
表 6.2 不動産取得にかかる税金の日中比較
日本 中国
➀印紙税(国税) ① 印紙税
契約金額による(1 万円~10 万円) 住宅取得額の 0.05%
➁不動産取得税 ② 不動産取得税
不動産価額額の 4% 不動産取得額の 1.5%
➂登録免許税(国税) ③不動産所有権登記費
1.所有権保存 1m2当たり 50 中国元 不動産の価額評価額の 0.6%
2.所有権移転
(相続)評価額の 0.6%
(購入)評価額の 5.0%
(贈与、遺贈) 2.5%
3.抵当権設定債権金額の 0.4%
➃固定資産税
固定資産税評価額の 1.4%~2.1%
➄都市計画税
固定資産税評価額の 1.3%
(文献[2][20]より筆者ら作成)
(注 2)「住宅の面積が 90m2以上」と「2 軒目の住宅購入」の場合など、条件で課税が異なる。
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表 6.3 中国における住宅購入時の税金と費用の計算例
税金と諸費用項目 税率 計算方法 金額(万円) 1)不動産取得税 1% A×1.5% 30 2)印紙税 0.05% A×0.05% 1
3)取引税 ― 50 円×B 0.45
4)不動産所有権登記費 ― 1200 0.12 5)評価費 0.05% A ×0.05% 1
6)公証費 ― ― 0.3
7)証明書など手数料 ― ― 0.6
8)財産保険費 ― 注:銀行ローンを借 りるとき、保険に入 る必要がある。
―
合 計 33.47 万円
注:A=アパート価格 B=占有面積
(住宅の総額 A=2000 万円、占有面積 B=90m2)
6.7.3 中国における中古マンション売買時の税金と費用
中国において新築住宅購入後 5 年未満で売却した場合の費用について検討しよう。た だし、 計算の条件は、面積が 90m2、購入価格が 2000 万円、販売価格が 2500 万円と する。販売価格が購入価格より高くなり、値上がり益が出た場合の例である。
(1) 購入側で発生する費用
不動産を購入する側において、住宅本体への支出以外に以下の費用が発生する。
① 不動産取得税: 2500 万円×1.5%=37.5 万円
② 印紙税: 2500 万円×0.05%=1.25 万円
③ 住宅の取引税: 50 円×90=0.45 万円
④ 証明書など手数料: 0.3 万円
⑤ マンション評価費: 2500 万円×0.05%=1.25 万円
⑥ マンション公証費など: 0.9 万円
以上の費用合計は、41.65 万円となる。中古住宅を購入する場合は、上記のほかに下 記の仲介手数料が発生する。
⑦ 仲介手数料: 2500 万円×1.5%=37.5 万円 仲介手数料を加えた総計は 79.15 万円となる。
136 (2) 売手側で発生する費用
中古不動産を売却するときに、以下の費用が発生する。
① 印紙税: 2500 万円× 0.05%=1.25 万円
② 取引税: 50 円/m2 × 90m2=0.45 万円
③ 営業税: 2500 万円× 5 %=125 万円
④ 個人所得税:
必要経費は、上記①~③を合計した費用 126.7 万円となる。値上がり益から この必要経費を差し引いた額に 20%の所得税が課せられる。すなわち、個人 の所得税は、
(2500 万円-2000 万円-126.7 万円) ×20%=74.66 万円 となる。
以上、①~④を合計すると 201.36 万となる。小規模な住宅の売却であっても、中国 では高額な税金の支払いが課せられることが分かる。とくに、営業税が大きい。
表 6.4 日本におけるマンション購入時の税金と費用
(文献[20]を参考に筆者ら作成) 6.7.4 日本におけるマンション購入時の税金と費用ならびに資産評価法
日本における住宅購入時に課せられる税金等は、大別すると 5 種類の費目に分けるこ とができる。それらを表 6.4 に示す。日本における住宅購入時の税金の中で、現在の中 国と異なるものは、固定資産税である。また、住宅の売買における住宅の資産評価の方 法として、比較法、原価法、ならびに DCF 法(Discounted Cash Flow法)が存在する [24]。これら 3 つの方法の中で、日本における住宅売買では、比較法と並んで DCF 法が
➀印紙税(国税)
契約金額による
1 万円(500 万円超~1000 万円) 2 万円(5000 万円以下)
6 万円(1 億以下) 10 万円(5 億以下)
➂登録免許税(国税)
1.所有権保存
不動産の価額評価額の 0.6%(新築など) 2.所有権移転
(相続)評価額の 0.6% (購入) 5.0%
(贈与、遺贈) 2.5%
3.抵当権設定 債権金額の 0.4%
➁不動産取得税
不動産の価額(評価額)の 4%
➃固定資産税
固定資産税評価額の 1.4%(標準税率) 2.1%(制限税率)
➄都市計画税(市町村税) 固定資産税評価額の 1.3%(制限税率)
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使用される。一方、中国での住宅売買では、比較法が通常使用され、DCF 法はまだ余り 使用されていない。
日本における不動産取引に関連した主要な資格制度[26]には土地家屋調査士、宅地建 物取引主任者、及び不動産鑑定士があるが、それらを中国における不動産取引に対応 させると