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日中の不動産業トップ 3 社の事業比較

第 4 章 日中不動産業主要企業間の経営財務比較

4.3 日中の不動産業トップ 3 社の事業比較

当初、日中不動産業トップ5社の比較を試みたが、中国企業に関して十分なデータの 取得が困難であったことなどから、本節を含む以下の節では、売上高トップ 3 社を取り 上げて議論する。また、財務データは 2001 年~2013 年のものを使用する。

4.3.1 日本の不動産業トップ 3 社の事業概要

表 4.3 は、日本の不動産業トップ 3 社の 2012 年度の事業内容と各事業の売上高と営業 利益を示したものである。表 4.3 より、これら 3 社に関しては、賃貸事業と分譲事業が 経営の柱となっており、とくにビル賃貸事業が売上高に占める割合が一番大きい。これ は、営業利益でみても同様の結果となる。

表 4.3 より、日本の不動産業トップ 3 社の事業は以下のように要約される。

1) 不動産賃貸事業はトップ 3 社すべてで重要な事業である。すなわち、これら三菱地 所、三井不動産、住友不動産ではオフィスの賃貸事業が売上高、営業利益とも一番 大きい。また、本節では示さなかった東急不動産と野村不動産においては、賃貸事 業は第二位の事業となっている。

2)売上高でみた住宅分譲事業の事業比率は、トップ 3 社何れも賃貸事業に次いで大きな 事業であり、分譲事業と賃貸事業がこれらトップ 3 社の 2 大事業といえる。なお、東 急不動産と野村不動産は、分譲事業(住宅事業)が最も重要な事業となっている。

3)トップ 3 社の不動産事業は多角化している。それらには、賃貸事業と分譲事業に加 え、管理受託、海外事業、仲介事業、不動産サービス事業、投資マネジメント事業な どが含まれる。

4.3.2 中国の不動産業トップ 3 社の事業概要

表 4.4 は、中国の不動産業トップ 3 社の 2003 年と 2012 年の事業内容および各事業の 売上高と営業利益を示したものである。表 4.4 より、これら中国トップ 3 社に関して は、2012 年度でみた主要事業は住宅分譲事業であることが分かる。

表 4.4 から中国トップ企業の事業に関して以下の特徴が読み取れる。

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1) トップ 3 社の売上高は、2003 年から 2012 年の間に大きく拡大した。とくに、保利 地産の販売額の伸び率が大きく、売上高はこの間に約 60 倍となっている。一方、

トップ企業である万科企業の売上高は、約 16 倍(成長率は年 13.2%)拡大した。な お、この間の中国の GDP 成長率は年 7.8%(9 年間で約 2 倍)である。

表 4.3 2012 年に日本不動産業トップ企業 3 社の事業別売上高

内訳・会

三井不動産 三菱地所 住友不動産

売上高(百

万円) 営業利益 営業利

益率(%) 売上高 営業利益 営業利益

率(%) 売上高 営業利益

営業利 益率

(%) 分譲 393,534 23,059 5.9 315,351 11,180 3.5 232,149 38,923 16.8 賃貸事業 458,356 104,352 22.8 442,748 2,317 5.2 278,316 94,186 33.8 マネジメ

ント 348,596 41,579 11.9 7,108 2,129 29.9 - - - 三井ホー

218,387 566 0.3 - - - - - - 都市開発

事業 - - - 50,278 11,180 22.2 171,081 15,358 8.9 ホテル事

- - - 28,299 474 1.7 - - - 不動産サ

ービス事

- - - 27,209 1,058 3.9 50,957 14,494 28.4

海外事業 - - - 60,892 8,371 13.7 - - - 設計監理

事業 - - - 19,568 1,234 6.3 - - - その他事

107,245 △85 - 4,480 △10 - 15,790 1,666 10.6 売上高 1,445,644 148,184 10.3 955,865 134,423 14.1 748,295 165,029 22.1

(2013 年の各社 HP のデータにより筆者らが作成)

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表4.4 2003年と2012年の中国不動産業トップ3社の売上高と事業構成 2003 年売上高構成 万科 保利(百万元) 恒大(百万元)

売上高(百万元) 構成比 売上高 構成比 売上高 構成比

建設 - - - - - -

不動産開発 6,219 97.5 - - 229 98.2

不動産賃貸・管理 161 2.5 - - 3 1.3

不動産投資 - - 96 20.2 - -

電力・ガス - - 190 40.2 - -

海運 - - 59 12.5 - -

その他 - 0 128 27.1 1 0.5

合計 6,380 100 473 100 233 100 2012 年売上高構成 万科(百万元) 保利(百万元) 恒大(百万元)

売上高 構成比 売上高 構成比 売上高 構成比

建設 - - - - - -

不動産開発 101,580 98.5 19,676 94.5 63,507 97.3

不動産賃貸・管理 859 0.8 - - 507 0.8

不動産投資・管理 - - 687 3.3 99 0.2

ホテル経営 - - 202 1 - -

電力・ガス - - - - - -

その他 677 0.7 130 1.2 1147 1.7 合計 103,116 100 20,695 100 65,260 100

(2013 年の各社 HP のデータにより筆者らが作成、2015 年)

2) 中国不動産企業の事業の中心は住宅開発・分譲事業であり、トップ 3 社の売上高に 占める住宅開発の割合は 94.5%~98.5%(2012 年)と日本企業に比べて非常に高 い。とくに万科企業は比率が高く、98.5%にもおよんでいる。このことは、これら 中国のトップ企業が、都市部でのビル賃貸事業をほとんど行っていない、もしくは 規模が小さいことを意味しており、事業の多角化が進んでいないことを意味する。

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なお、万科企業の 2012 年度の実績は、住宅販売面積が 1,295.6 万㎡、販売金額が 103,116百万元であり、中小面積の住宅(144 ㎡以下のマンション)の売上高が 90%以上を占 めている。住宅の平均単価は 11,295 元/㎡であった。また、2012 年の時点での中国不動 産トップ 100 社の市場占有率はおおよそ 20%であり[17]、寡占化は進んでいないといえ る。

4.3.3 日中不動産業トップ 3 社の事業分析のまとめ

日本の不動産業トップ 3 社(三井不動産、三菱地所、住友不動産)と中国不動産業ト ップ 3 社(万科企業、保利地産、恒大地産)の事業分析の結果は以下の通りである。

日中不動産業トップ企業の間には、事業構造に関して顕著な違いが見られる。例え ば、2012 年度財務諸表でみる三井不動産の事業は、住宅開発・分譲 39.5%、オフィスビ ル賃貸 31.4%、不動産管理 29.1%であり、賃貸事業の比率が高い。このように、日本の 不動産トップ 3 社の事業は多角化しており、分譲、賃貸、管理受託、海外事業、仲介事 業、不動産サービス事業、投資マネジメント事業などを行っている[18]。

一方、中国トップ 3 社は、住宅開発・分譲の比率が 94%以上を占めている。中国におけ る賃貸事業は、急激な成長を見せてはいるものの、まだ売上高に占める比率は小さい。

その理由は、賃貸事業の収益性(とくに売上高営業利益率)が住宅の開発・分譲事業よ り低いためと考えられる。しかしそれでもなお、ビルの賃貸事業は中国の不動産業にお ける重要な事業であり、誰がそれを担っているか興味のもたれるところである。この点 は、次節ならびに第 5 章において議論したい。

また、中国不動産業大手企業の前身は、異業種からの参入が多い。例えば、第 2 位の 保利地産の事業を 2003 年と 2012 年で比較すると、2003 年には電力・ガス事業が 40.2%

と最重要事業であったが、2012 年には不動産開発・分譲事業が売上高の 94.5%を占めて いる。ここからも間接的ながら、中国において不動産開発・分譲事業の収益率の高いこ とが推察できる。