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経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)

ドキュメント内 表紙 (ページ 145-149)

第6章  原子力のリスクと安全目標

6.2  国際機関における安全原則と安全目標

6.2.2  経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)

 CSNIのリスク評価に関する作業グループ(WGRISK)のミッションは、加盟国における原子力 施設の継続的な安全を確かなものとするために、確率論的安全評価(PSA)の理解と利用を促 進することにある。そのため、WGRISKではリスク寄与因子とその重要度を確認するためのPSA 手法に着目すると同時に、PSAの利用に係る様々な課題、例えば、人間信頼性、ソフトウェア信頼 性、高経年化、安全目標等を検討するためにPSAの適用にも注目している。

 米国における リスク情報を利用した意思決定に関する作業グループ(COOPRA) や北欧諸 国のプロジェクト 安全目標の有効性 を勘案して、WGRISKでは2006年に 確率論的リスク判 断基準(クライテリア)(NEA ,2006)という課題を取り上げた。

 この課題では、個人と社会的リスク、敷地外への放出、炉心損傷、さらに下位の目標から、様々 なリスク情報の適用に用いられる数値基準に至るまでの広範なクライテリアを対象にした。 安 全目標 という用語は、しばしば上位のクライテリアとして用いられるが、この課題ではクライテリ アの設定と適用、およびPSAの現状と利用に関連した手法や根拠の情報を集めることに着目し た。

 安全目標を含め確率論的なリスククライテリアは、近年、規制機関や事業者に徐々に導入され つつある。「原子力利用は安全でなければならない。」といった上位の定性的な宣言から、「燃 料被覆管温度が1204度を上回る確率」といった技術的判断基準まで様々であり、法的文書に示 される場合から内部文書への記載、あるいは、法的限度として、また単なる 方向づけの値 とし て適用されることがある。

 このため、WGRISKの作業グループではクライテリアの根拠、適用方法とその経験を問に含

めた質問票を作成し加盟国に配布した。質問票には13の原子力安全機関(カナダ、ベルギー、台 湾、フィンランド、フランス、ハンガリー、日本、韓国、スロバキア、スウェーデン、スイス、英国、米 国)と6の事業者(カナダ、フィンランド)が回答した。質問は15問から成り、クライテリアの位置づ け等の全般的な質問では、社会的なリスク基準なのか、中間的あるいは技術的レベルの指標か を問う。また、指標ごとに、設定理由、参照文献、定義、適用のレベル(炉なのかプラント、ある いはサイト全体か)、数値(単一値かバンドか)、位置づけ、解析のスコープなどを質問した。最 後に、不確かさの扱い、適用の現状、適用経験などが問われた。

 確率論的リスククライテリアを法的制限値としたのは、唯一フィンランドで将来炉に要求してお り、制限値を満足しなければ設計変更を要求する。また、事業者としては制限値であるが法的要 求ではないとする例もあった。多くは、目標値で、 target value , orientation value , 

expectation , safety indicator として使用している。満足しない場合、費用便益あるいは ALARP原則を考慮して設計改善を考慮すべき、もしくは規制監視の強化となる。多くの国で は、既存炉に比べ将来炉については低い数値、典型的には1/10を目標としている。

 13機関のうち、8つの機関のクライテリアは社会的レベルでの定性的表現で、例えば、 公衆及 び環境に対して不合理なリスクを防止する というなものが一般的で、一部フィンランド規制機関

(STUK)のように、 must, shall not cause のような厳密な表現も存在した。同様に、8機関で 定量的及び、あるいは定性的な中間レベルのクライテリアとして、 核エネルギーの利用によるリ スクは、他のリスクと比較して小さくなくてはならない というような表現、あるいは、がんのバック グランドリスク、他のエネルギー源からのリスクのような原子力以外のリスクとの比較等で表現す る機関もあった。

 さらに、確率論的リスククライテリアは、定量的な確率論的な評価手法との関連で、技術的レ ベルが4つに分類できる。

• 炉心損傷頻度(CDF)/レベル1PSA−16回答

• 放出頻度(LERF、LRF、SRF)/レベル2PSA−14回答、うち  早期大規模放出(LERF)−12回答

 大規模放出(LRF)−12回答  小規模放出(SRF)−1回答、カナダ  格納容器破損頻度−1回答、日本

• 個人健康リスク/レベル3PSA−4回答

 個人死亡リスク−3回答、日本、英国、米国  線量頻度−1回答、英国

• スクリーニング基準/システムレベル−4回答

 PSAの現状を考慮すると、多くの機関で深層防護の観点から炉心損傷頻度(CDF)を判断基 準としている。定義は様々で、炉のタイプにも依存し、1204度の燃料温度、長期炉心不冠水、冷 却不能等の表現である。数値は炉を対象とし、フルスコープPSA(内的および外的事象、運転お よび停止時)に適用されるが、国によって注釈がつく。図1に示すように、CDFの値は5×10−4/年 から1×10−5/年。将来炉の場合、ほとんどの国が1×10−5/年を目標としている。

 格納容器損傷による大規模放出頻度も公衆の安全に直結した重要な判断基準となる。図2に 示すように、その値は1×10−5/年から1×10−7/年と大きな巾を示す。CDFと同様、将来炉の場合 は、ほとんどの国が1×10−6/年を目標としている。IAEAのINSAG-12では許容できない放出限度 として1×10−5/年を設定している。大規模放出の定義は様々で、LRFの場合、Cs-137の100TBq 放出(CNSC, STUK)、インベントリの0.1%(SKI)。LERFの場合は、早期の対策を要する、ある いは防護措置実施以前の大規模放出、と言った定性的表現も見られる。

 リスククライテリアは、定期安全レビュー(通常10年ごと)の枠組みの中でPSAを実施する際 に、また、より短期(3年、毎年)および設計変更時に適用される。リスククライテリアを上回った 場合、事業者でCDF規準に対して独自の活動を設定している例はあるが、通常はあくまでも目標 である。将来炉に対しては、多くの場合、運転許可の判断基準となる。

 リスククライテリア適用の経験は、全体的にポジティブな回答で、設計や手順の改善に繫が る、PSAモデルの質の改善に繫がるという回答であった。絶対値の適用は、PSAの品質に係わる ので改善のトリガーやスクリーニングとしての使用を推奨し、厳密な定量的安全指標としての適 用には多くが懐疑的で、スコープに制限がある場合の適用の困難さを指摘している。リスククラ イテリアの共通の定義のためには、さらなる検討が必要であるが、厳密な共通の定義によりプラ ント相互の比較が促進されるとしている。また、公衆とのコミュニケーションには、困難さを指摘 するものが多く、影響(consequence)は理解されやすいが頻度は難しい。誤解のない結果の表 示が課題であるとしている。

図 1 炉心損傷の数値基準

図 2 大規模放出に対する数値基準

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