Outline of Walkdown
5.3 自然災害下での原子力防災
5.3.4 原子力リスクコミュニケーションの取り組み
⑤複数の構造物・機器が同時損傷した場合に多重防護が有効か
⑥地震動評価の信頼性が適正か
(b)原子力リスク情報の取り扱い上の留意事項
原子力リスク情報の取り扱いの留意事項としては、残余のリスク情報の数値結果だけではリス クコミュニケーションは成立しない。評価条件、評価モデル、使用データ、評価結果を陽に明示 し、透明性・説明性が確保されていることが必要となる。即ち、「結果」だけでなく、結果に至る
「過程」を示すことがより重要である。
原子力リスク情報は、原子力システム安全の専門家と協力して実施し有用情報を同定・提供す ること、結果を説明性の高い情報に加工・編集し社会や市民と双方向で繰り返し発受信するこ と、これにより信頼の醸成を図ることである。特に、地震・津波という自然現象の不確実さを考慮 した地震・津波ハザード評価、これに基づく設計地震動・津波水位、これらを超えた領域におけ る構造物・機器のフラジリティ(即ち、耐震・耐津波裕度)について、工学的に意味するところを 丁寧に説明することが必須となる。
(2)原子力リスクコミュニケーション実践における克服すべき課題
原子力リスクコミュニケーションの課題として、北村(19)は自らの実践経験に基づき、①市民と 専門家との双方向コミュニケーションの実践において、論争の本質が共有・認識されないまま、
類似的討論が繰り返されており、効率的討論のために、ヒューマンインタフェース技術の導入が 有効であること、②専門家と市民とのコミュニケーション以前に、専門家間でのコミュニケーショ ンの拙さを克服すべきことを指摘している。
NIIT,JNES及び東京電力は共同で新潟工科大学耐震安全・構造研究センターを設立し、耐 震安全研究を進めている。市民と専門家の協働作業の実践例として、同研究センターを拠点とし て、地元の柏崎・刈羽市民/メデア/教育機関/自治体(柏崎市、刈羽村)の協力を得て、さらに 国際原子力機関(IAEA)と連携して原子力リスクコミュニケーションの研究を進めている(3)。 IAEA及びJNESは、国際リスクコミュニケーションワークショップ(2012年11月、新潟工科大学)
を地元の協力のもとに開催した(図5.3.9)。同WSでは、次の決議がなされた(3)。
・「今は同意していないという状態であることに同意する(agree to disagree)」の認識が重要
・「不毛の対立を超えて意義のある不一致」の実現が必要
これまでの整合性を前面に押し出して対立を激化させる手法とは異なる、柔軟な考えをリスク コミュニケーションに包含する新しい方向の芽生えがある。
JNESは、「地震・津波に対する原子力防災・原子力リスクコミュニケーション」の演題で、柏 崎・刈羽地域における原子力リスクコミュニケーションの実践例を報告した。
(4)IAEA主催地震・津波等外的事象ハザード専門家会合
JNESは、上記柏崎・刈羽地域での研究成果をIAEA主催地震・津波等外的事象ハザード専 門家会合において報告した。その結果、パネルディスカッションの4トピックスの1つに「リスクコ ミュニケーション」が取上げられ、議長決議書中の重要課題として「原子力リスクコミュニケー ション戦略」が明記された(図5.3.10)。
図 5.3.9 IAEA/JNES 主催原子力コミュニケーションワークショップの状況(2011.12、新潟工科大)
図 5.3.10 IAEA 主催地震・津波等外的事象ハザード専門家会合における パネルディスカッションの状況(2012.8、IAEA,ウイーン)