第5章 性能設計への応用
5.4 累加せん断ひずみによる地震時地盤沈下量推定
5.4.2 累加せん断ひずみと体積ひずみの関係を用いた沈下量推定結果
図 5-19 地震応答解析によるせん断ひずみ時刻歴と双曲線モデルで算定した 累加せん断ひずみ時刻歴および体積ひずみ時刻歴
(KK発電所,不飽和砂質地盤,標高T.P.+4.5mの深度での例)
繰返しせん断試験データを「累加せん断ひずみ」を用いて整理し,KK 発電所不飽和砂 質地盤に対して等価線形解析手法のもとで沈下量の推定約 32cm と推定された結果は,せ ん断応力を指標とした場合の推定結果約 50cm と異なるものとなった.すなわち,地震に よる地盤沈下量の推定に際して,体積ひずみをせん断応力と関連付けて評価した手法(第 4章での等体積ひずみ曲線を適用した手法)と,体積ひずみをせん断ひずみ(累加せん断ひ ずみ)と関連付けて評価した手法を試行したわけだが,結果的に両者は異なった.
このことは,不飽和砂質地盤の地震時沈下量を推定する場合,体積ひずみと関連付ける 指標としてせん断応力を適用するのか,またはせん断ひずみを適用するのか,という認識・
判断の相違(認識論的不確実さ)が入り込む余地が存在することを示唆している.
いずれにしろ,提案した推定手法から得られる沈下量の精度は,適用する地震応答解析 手法の精度に左右される.このことはすでに5.2節で述べた.地盤の地震応答解析手法と して最も簡便なのは重複反射理論に基づく方法であろう.本項での検討における地震応答 解析手法としても重複反射理論に基づく方法を用いた.この手法では地盤剛性や減衰定数 のせん断ひずみ依存性について等価線形化法を用いて評価することが多く,その際の基準 ひずみの設定値に課題がある.一般的に,基準ひずみとして最大せん断ひずみの0.65倍前 後の値が採用されるが,大地震動入力時において表層地盤の応答を大きめに評価しがちで ある.
設計では,重複反射理論による地震応答解析でせん断応力時刻歴を算出し,応力制御方 式の繰返しせん断試験で求めたせん断応力~体積ひずみ特性(等体積ひずみ曲線)に対し て累積損傷度解析を用いる方法が安全側の評価となって使いやすい.一方,逐次非線形解 析手法や弾塑性解析手法によって精緻なせん断ひずみが算出できるならば,累加せん断ひ
-20 -10 0 10 20
0 5 10 15 20 25 30 35 40
時 間 (sec) せん断ひずみ γ (%)
0 1 2 3 4
0 5 10 15 20 25 30 35 40
時 間 (sec) 累加せん断ひずみ γacm
0 3 6 9 12
0 5 10 15 20 25 30 35 40
時 間 (sec) 体積ひずみ εv (%)
ずみで規定した体積ひずみ特性を用いて沈下量を推定することが望ましいと思われる.現 状では,不飽和地盤の沈下量(体積ひずみ量)を推定する場合,せん断応力による評価手法 とせん断ひずみ,あるいは累加せん断ひずみによる評価手法を併用し,総合的な判断を行 うことが,実用上必要ではないかと考えられる.