第5章 性能設計への応用
5.3 地盤の物理特性のばらつきが地震時地盤沈下量推定に及ぼす影響
5.3.1 乾燥密度および含水比と体積収縮特性の関係
試料の初期含水比を平均の20%とし,初期乾燥密度を変化させた場合の繰返し回数と体 積ひずみの関係を図 5-6に,試料の初期乾燥密度を平均の1.60 g/cm3 とし,初期含水比を 変化させた場合の繰返し回数と体積ひずみの関係を図 5-7に示す.
図5-6より,同等のせん断応力比の条件では,初期乾燥密度が小さいほど体積ひずみが大 きくなることがわかる.図5-7からは,同等のせん断応力比の条件では,初期含水比20%の 状態で生じる体積ひずみが初期含水比10%の状態で生じる体積ひずみよりも大きいことが わかる.また,表5-3から,繰返し回数20回および50回時での体積ひずみは後者が前者の15
~60%程度大きいことがわかる.
表 5-3 初期乾燥密度および初期含水比を変化させた試験条件と 繰返し回数20回,50回時の体積ひずみ
(KK発電所:不飽和砂質土)
初期乾燥密度 ρd0
(g/cm3)
初期含水比 w0
(%)
拘束圧 σm’ (kPa)
最大せん断 応力比
SRd
体積ひずみ εv_N20
(%)
体積ひずみ εv_N50
(%)
εv_N50/εv_N20
1.60 ※) 20 ※) 100
0.26 0.444 0.708 1.59 0.39 1.199 1.689 1.41 0.52 2.814 3.499 1.24 0.60 3.630 4.441 1.22
1.60 10 100
0.26 0.212 0.276 1.30 0.41 0.533 0.647 1.21 0.52 0.854 1.067 1.25 0.62 1.607 2.047 1.27
1.52 20 100
0.25 0.961 1.363 1.42 0.41 2.269 3.122 1.38 0.51 4.409 5.308 1.20
1.70 20 100
0.37 1.072 1.404 1.31 0.51 1.591 1.856 1.17 0.60 1.833 2.087 1.14
※) ρd0 =1.60 (g/cm3), w0 =20 (%) の状態が平均物理特性を呈する試料
(a) ρd0 = 1.52 g/cm3 (b) ρd0 = 1.60 g/cm3
(c) ρd0 = 1.70 g/cm3
図 5-6 試料の初期乾燥密度を変化させた場合の繰返し回数と体積ひずみの関係
(拘束圧100kPa, w0 =20%),KK発電所:不飽和砂質土
(a) w0 = 10 % (b) w0 = 20 %
図 5-7 試料の初期含水比を変化させた場合の繰返し回数と体積ひずみの関係
(拘束圧100kPa, ρd0 =1.60 g/cm3),KK発電所:不飽和砂質土 0
1 2 3 4 5 6 7
0 10 20 30 40 50
繰返し回数 N 体積ひずみ εv (%)
せん断応力比 0 .2 5 せん断応力比 0 .4 1 せん断応力比 0.5 1
乾 燥 密 度 ρd = 1.52 g/cm3 初期含水比 w = 20 %
0 1 2 3 4 5 6 7
0 10 20 30 40 50
繰返し回数 N 体積ひずみ εv (%)
せん断応力比 0.2 6 せん断応力比 0.39
せん断応力比 0 .52 せん断応力比 0.6 0
乾 燥 密 度 ρd = 1.6 g/cm3 初期含水比 w = 20 %
0 1 2 3 4 5 6 7
0 10 20 30 40 50
繰返し回数 N 体積ひずみ εv (%)
せん断応力比 0.3 7 せん断応力比 0.51
せん断応力比 0.60
乾 燥 密 度 ρd = 1.7 g/cm3 初期含水比 w = 20 %
0 1 2 3 4 5 6 7
0 10 20 30 40 50
繰返し回数 N 体積ひずみ εv (%)
せん断応力比 0.5 2 せん断応力比 0 .6 2 せん断応力比 0 .26
せん断応力比 0.41
乾 燥 密 度 ρd = 1.6 g/cm3 初期含水比 w = 10 %
0 1 2 3 4 5 6 7
0 10 20 30 40 50
繰返し回数 N 体積ひずみ εv (%)
せん断応力比 0.26 せん断応力比 0.39
せん断応力比 0.52 せん断応力比 0.60
乾 燥 密 度 ρd = 1.6 g/cm3 初期含水比 w = 20 %
初期含水比が異なると体積ひずみが異なる原因としては次のように推察できる.含水比 が大きいほどサクションが小さく(有効応力が小さく),土粒子間の接触力を低下させるた めに粒子の再配列化が容易になり,間隙の減少,すなわち体積収縮(体積ひずみの増加)と して現れているものと考えられる.これらは,コラプス沈下10), 11)として知られる現象であ るが,本検討のように,排気排水条件下の繰返しせん断過程におけるサクションの挙動は 不明であり,今後の検討課題に挙げられる.
初期含水比と体積ひずみの関係,初期乾燥密度と体積ひずみの関係に対して,それぞれ せん断応力比ごとに比較した結果を図 5-8に示す.同図からは,せん断応力比が異なると 初期乾燥密度や初期含水比の変化に対する体積ひずみの変化率が異なることが認められる.
(a) 繰返し回数N=20
(b) 繰返し回数N=50
図 5-8 せん断応力比ごとに比較した初期乾燥密度と体積ひずみの関係
および初期含水比と体積ひずみの関係(KK発電所:不飽和砂質土)
0 1 2 3 4 5 6 7
1.45 1.5 1.55 1.6 1.65 1.7 1.75
初期乾燥密度 ρd0 (g/cm3) 体積ひずみεv (%)
せん断応力比 0.25 せん断応力比 0.4 せん断応力比 0.5 せん断応力比 0.6 N=50
0 1 2 3 4 5 6 7
5 10 15 20 25
初期含水比 w0 (%)
体積ひずみεv (%)
せん断応力比 0.25 せん断応力比 0.4 せん断応力比 0.5 せん断応力比 0.6
N=50
(2) 相関関係の設定
上記のデータから,繰返しせん断を受けた際の不飽和砂質土の体積ひずみは,初期乾燥 密度や初期含水比などの物理特性の相違に応じて異なることが認められた.そこでここで は,後述する地盤物性のばらつきを考慮した地震時地盤沈下量評価のために,これらの物 理特性と体積ひずみの関係を規定する.具体的には,初期乾燥密度と体積ひずみの関係式 (係数α1),初期含水比と体積ひずみの関係式(係数α2)を設定する.
はじめに,初期乾燥密度と体積ひずみの関係を規定する係数α1 について設定する.図 5-8(a)の左図に示した繰返し回数N=20におけるせん断応力比ごとの初期乾燥密度と体積ひ ずみの相関式に対し,それぞれ平均の初期乾燥密度で生じる体積ひずみで基準化し,以下 のように設定する.
α1 = 725.05・ρd0 -11.27 / 3.63 (τd /σ’m > 0.55) α1= 201.67・ρd0 -9.115 / 2.81 (0.55 τd /σ’m > 0.45)
α1 = 31.765・ρd0 -6.556 / 1.20 (0.45 τd /σ’m > 0.325) (5.5) α1 = 527.80・ρd0 -15.07 / 0.444 (0.325 τd /σ’m)
次に,初期含水比と体積ひずみの関係を規定する係数α2 について設定する.図5-8(a)の 右図に示した繰返し回数N=20におけるせん断応力比ごとの初期含水比と体積ひずみの相 関式に対し,それぞれ平均の初期含水比で生じる体積ひずみで基準化し,次のように設定 する.
α2 = (0.202・w0 -0.416) / 3.63 (τd /σ’m > 0.55) α2= ( 0.196・w0 -1.105) / 2.81 (0.55 τd /σ’m > 0.45)
α2 = (0.0666・w0 -0.133) / 1.20 (0.45 τd /σ’m > 0.325) (5.6) α2 = (0.0231・w0 -0.0191) / 0.444 (0.325 τd /σ’m)
(5.5)式および(5.6)式において,せん断応力比の範囲は実施した試験条件(τd /σ’m = 0.6, 0.5, 0.4, 0.25)の中央値(0.55, 0.45, 0.325)とした.繰返し回数N=20での関係式を適用した のは,検討で用いている地震動(前出:図4-12参照)の主要動部分の振幅がゼロクロスする 回数を考慮したことによる.
また,繰返し回数N=20の場合(図5-8(a)右図)に示した初期含水比と体積ひずみの関係 については,初期含水比について2点のみのデータによるものであることから直線式とした が,繰返し回数N=50の場合(図5-8(b)右図)に示すように下に凸な曲線形状となることや,
締め固め試験における最適含水比が存在するように,極小点を有する曲線形状となること が予想される.今後,データの拡充により関係式の改良が有り得る.
本検討では,平均的な物理特性(初期乾燥密度 ρd0 =1.60g/cm3,初期含水比 w0 =20%)
のもとで生じる体積ひずみに対し,関係式α1およびα2を乗じることにより,初期乾燥密 度や初期含水比が変動した際の体積ひずみを簡易に設定する帰納的方法を示した.(5.5)式 および(5.6)式に示した相関性は,本検討対象地点の地盤特有のものであり,一般性を有す
るものではない.今後の課題として,データを増やすと共に,不飽和砂質土の物理特性と 体積ひずみの関係を演繹的に導く必要があると考えている.