第3章 不飽和砂質地盤の地震時沈下メカニズム
3.2 室内試験による検討
3.3.2 実験結果
(1) 沈下挙動
模型地盤の初期乾燥密度をρd0 = 1.30 g/cm3とし,初期飽和度Sr0を変化させた場合の平均 沈下量と加速度との関係を図 3-27 に示す.同図より,初期飽和度が大きいほど沈下量は 増大傾向にあること,初期飽和度が大きいほど加速度の小さい段階で沈下を開始すること がわかる.平均沈下量は加速度の増加とともに大きくなる.また,初期飽和度が大きいほ ど,100 Galの増加にともなう沈下量の増加割合が大きいことがわかる.ただし,初期飽和 度 Sr0 = 60 %のケースでは,加速度600~700 Galでの平均沈下量の増加割合が小さい.
0 20 40 60 80 100
0.01 0.1 1 10
通過質量百分率(%)
粒径(mm)
鹿島海浜砂
1.56 1.58 1.60 1.62 1.64
0 5 10 15 20 25 30
乾燥密度ρd (g/cm3)
含水比w %
ゼロ空隙曲線 試験結果1 試験結果2
図 3-27 模型地盤の初期乾燥密度ρd0=1.30 g/cm3一定とし 初期飽和度Sr0を変化させた場合の沈下挙動
模型地盤の初期飽和度Sr0 = 40 % とし,初期乾燥密度ρd0を変化させた場合の平均沈下量 と加速度との関係を図 3-28 に示す.同図より,初期乾燥密度が小さいほど沈下量は大き いこと,初期乾燥密度が小さいほど加速度が小さい段階で沈下を開始すること,加速度の 増加にともなう沈下量の増加割合は初期乾燥密度によらず概ね同様であることがわかる.
なお,本検討においては,土槽内の試料全体の容積と質量から試料全体の平均飽和度を 求めている.不飽和地盤において部分的な不均質性や飽和度のばらつきはしばしば議論さ れるところではあるが本検討では考慮していない.また,初期乾燥密度 ρd0 = 1.15~1.30 g/cm3を実験条件としており,実地盤の密度から考えると小さい状態であるが,図 3-28 に 示すように,乾燥密度や飽和度の変化(乾燥密度変化0.05 g/cm3ごと,飽和度変化5 %ご と)に応じて平均沈下量等の傾向が得られており,地震時の挙動・メカニズムを考察する 上での再現性は十分有しているものと考えられる.
図 3-28 模型地盤の初期飽和度Sr0=40 %一定とし 初期乾燥密度ρd0を変化させた場合の沈下挙動
0 4 8 12 16 20
200 300 400 500 600 700
平均沈下量(mm)
加速度(Gal)
Sr0=60%
Sr0=55%
Sr0=40%
Sr0=35%
0 4 8 12 16 20
200 300 400 500 600 700
平均沈下量(mm)
加速度(Gal)
ρd0=1.15Mg/m3 ρd0=1.20Mg/m3 ρd0=1.25Mg/m3 ρd0=1.30Mg/m3
(2) 破壊形態の違い
振動実験終了後の模型地盤の観察からは,地表面に流出水を確認したケース(以下,不 飽和液状化と称す)と地表面にクラックを伴う変状やすべりを確認したケース(以下,不 飽和クラック変状と称す)が認められた.なお,目視では明瞭な地下水位面や飽和・不飽 和の境界等を確認することはできなかった.
小型土槽の実験後における「不飽和クラック変状」と「不飽和液状化」の様子をそれぞ れ図 3-29に示す.「不飽和液状化」が発生した地盤地表面には泡が発生した.これは,模 型地盤の間隙中の空気の浮上によるものと考えられる.(a)と(b)両者の初期飽和度は5 % の相違であるが,加振後の破壊形態は大きく異なっている.初期飽和度のわずかな違いが 不飽和地盤に全く異なる破壊形態をもたらすことを示している.なお,(a)と(b)両者の加 振後の飽和度Srfはそれぞれ 71.7 %,82.5 %であった.
(a) 不飽和クラック変状(Sr0 = 55 %, af = 700 Gal, Srf = 71. 7 %)
(b) 不飽和液状化(Sr0 = 60 %, af = 700 Gal, Srf = 82. 5 %)
図 3-29 小型土槽(ρd0 = 1. 30 g/cm3)の加振実験後の地表面の様子
大型土槽の実験後における「不飽和クラック変状」と「不飽和液状化」の様子をそれぞ れ図 3-30に示す.初期飽和度Sr0 = 60%,初期乾燥密度ρd0 =1.35 g/cm3の条件で行った実験 であり,(a)は500 Galでの加振終了時,(b)は600 Galでの加振終了時をそれぞれ示してい る.(a)は「不飽和クラック変状」の状態であり,土槽の中央部ではクラックの発生が確認 され,加振方向に直交する面付近で大きな沈下が発生している.(b)は「不飽和液状化」の 状態である.(a)500 Gal終了時の飽和度Srfは79.8 %,(b)600 Gal終了時の飽和度は81.7 %
であった.
(a) 不飽和クラック変状(af = 500 Gal, Srf = 79. 8 %)
(b) 不飽和液状化(af = 600 Gal, Srf = 81. 7 %)
図 3-30 大型土槽(Sr0 = 60 %, ρd0 = 1. 35 g/cm3)の加振実験後の地表面の様子
小型土槽を用いて行った実験のうち初期乾燥密度1.20~1.35g/cm3,初期飽和度45~65 % の範囲にある8ケースをプロットして図 3-31に示す.図中の×印は700 Gal加振後に地盤 にクラックやすべりが認められた「不飽和クラック変状」のケースであり,○印は 700 Gal 加振後に地表面に流出水が認められた「不飽和液状化」のケースである.「不飽和クラッ ク変状」と「不飽和液状化」それぞれの破壊形態を示した初期条件は概ね線形上にあるこ とが確認できる.
図 3-31 加振後の初期飽和度と初期乾燥密度の関係 1.20
1.25 1.30 1.35
45 50 55 60 65
不飽和液状化 不飽和クラック変状
初期飽和度(%) 初期乾燥密度(g/cm3)
つまり,不飽和地盤の初期飽和度がわずか5 %異なるだけでそれぞれ二つの全く異なる 破壊形態「不飽和クラック変状」と「不飽和液状化」をもたらすことがわかる.このこと は,不飽和地盤の乾燥密度と飽和度が既知で,地震外力を想定しておけば,地震後の破壊 形態を予測できる可能性があることを示唆している.もっとも,わずか1種類の正弦波加 振の振動実験であり,今後,材料条件や加振条件などを変えた追加実験などにより,一般 性を示す必要がある.
(3) 地震動に伴う飽和度の変化
模 型 地 盤 の 初 期 乾 燥 密 度 ρd0 = 1.25g/cm3 一 定 と し た ケ ー ス(a), 初 期 乾 燥 密 度 ρd0 = 1.30g/cm3一定としたケース(b),それぞれの実験ケースにおいて,初期飽和度 Sr0を変化さ せて加振実験を行った.加速度と加振後の飽和度Srfとの関係を図 3-32に示す.
ケース(a)では,初期飽和度Sr0 = 55%試料において700 Gal加振後にSrf = 80 %を超えた.
ケース(b)では,初期飽和度Sr0 = 60%試料において700 Gal加振後にSrf = 80 %を超えた.両 ケース共に,加速度600~700Galの間で飽和度80 %を超えてから加振による飽和度の増加 割合が減少していることがわかる.このことは,飽和に達しない状態,すなわち不飽和で 空気をトラップした状態でも液状化が生じることを示唆するものと考えられる.
(a) 初期乾燥密度ρd0=1.25 g/cm3一定 (b) 初期乾燥密度ρd0=1.30 g/cm3一定 図 3-32 模型地盤の初期乾燥密度ρd0を一定とし,初期飽和度Sr0を変化
させた場合の加速度と加振後の飽和度の関係
模型地盤の初期乾燥密度ρd0 = 1.30g/cm3一定としたケース(b)において,加振後の飽和度 Srfから初期飽和度Sr0を減じた飽和度増分(ΔSr = Srf - Sr0)と加速度との関係を図 3-33に示 す.同図から,初期飽和度が大きいほど加振後の飽和度が上昇しやすいことがわかる.
20 30 40 50 60 70 80 90
200 300 400 500 600 700 加振後の飽和度Srf(%)
加速度(Gal)
Sr0=55%
Sr0=50%
Sr0=40%
Sr0=35%
Sr0=30%
30 40 50 60 70 80 90
200 300 400 500 600 700 Sr0=60%
Sr0=55%
Sr0=40%
Sr0=35%
加振後の飽和度Srf(%)
加速度(Gal)
図 3-33 飽和度増分と加速度との関係
(模型地盤の初期乾燥密度ρd0= 1.30g/cm3一定としたケース(b))
図 3-34 加振にともなう飽和度増分と加振後の飽和度の関係
ここで,図 3-33 における飽和度増分と加速度との関係の傾き,すなわち,100Gal ごと の飽和度増分 Δ(ΔSr))について,加振後の飽和度Srfとの関係を示して図 3-34 に示す.白 抜きのプロットが小型土槽による実験結果,塗りつぶしのプロットが大型土槽による実験 結果を示している.5ケースはいずれも700 Gal加振後に飽和度80 %を超えていたケース であり,「不飽和液状化」が発生したケースである.図 3-34から,飽和度80 %以下におい て,100 Galごとの飽和度増分Δ(ΔSr)は,試料の初期乾燥密度や実験に用いた土槽のサイズ に関わらず線形的に増加し,傾きは概ね同じ傾向にあることがわかる.また,飽和度80 % を超えると,100 Galごとの飽和度増分Δ(ΔSr)が急激に減少することがわかる.この結果か ら,不飽和地盤の飽和度が80 %を超えた後は,飽和度の増加が抑制されるものと考えられ る.
0 5 10 15 20 25
200 300 400 500 600 700
Sr0=60%
Sr0=55%
Sr0=40%
Sr0=35%
飽和度の増分(%)
加速度(Gal)
0 5 10 15 20 25 30 35
40 50 60 70 80 90 100
'ρdo=1.20 ρd0=1.25 ρd0=1.30 ρd0=1.35
1.30oogata 1.35oogata 加振後の飽和度(%)
一回の加振に伴う飽和度の増分(%) ρd0=1.20g/cm3
ρd0=1.25g/cm3
ρd0=1.30g/cm3
ρd0=1.35g/cm3 大型 ρd0=1.30g/cm3
大型 ρd0=1.35g/cm3