第2章 既往の研究と本研究の位置づけ
2.4 不飽和地盤の地震時沈下量評価手法
2.4.1 不飽和地盤の動力学特性に関する既往の研究
図 2-24 繰返し三軸試験の応力-ひずみ関係および有効応力経路,風間ら(2006) 2)
既往研究における目的の二つ目として,不飽和砂質土の液状化抵抗強度が飽和砂質土の それと比べてどの程度大きいのかを把握することが挙げられる.このような研究の代表と しては,Yoshimi et al (1989) 32),Tokimatsu et al (1990) 33),Tsukamoto et al (2002) 34),がある.
最近では,地下水位以下の飽和地盤内に意図的に空気を注入して不飽和化し,液状化抵抗 強度を向上させる地盤改良工法の開発が行われており,それらに関連した研究も行われて いる(Okamura et al (2006 35);2009 36)),永尾ら(2015) 37)).
例えば,Tsukamoto et al (2002) 34) は,相対密度DrおよびB値を変えて作製した豊浦砂 の供試体に対して非排水三軸繰返しせん断試験を実施している.相対密度 Dr=40%および 60%の供試体における両振幅軸ひずみ 5%に達したときの繰返しせん断応力比と繰返し回 数の関係(液状化強度曲線)を図 2-25に示す.同図より,B値が低下することで液状化強 度が増加することが示されている.
図 2-25 繰返しせん断応力比と繰返し回数の関係,Tsukamoto et al(2002) 34)
また,Okamura et al (2009) 36) は,繰返し三軸試験装置を用いて液状化試験を実施し,図 2-26に示すような飽和度の違いによる液状化抵抗強度の比較を行っている.同図において Test series 1はサクションを作用させていない試験,Test series 2はサクションを作用させた 試験である.これらから,飽和度が低下するほど液状化抵抗強度が大きくなること,また,
サクションの作用が液状化抵抗強度の上昇に寄与していることなどを示している.
図 2-26 液状化抵抗強度に及ぼす飽和度とサクションの影響,Okamura et al (2009) 36)
■本研究の位置づけ
以上に記した不飽和砂質土を対象とした既往の研究では,液状化メカニズムや液状化抵 抗強度に着目しているため,繰返しせん断過程は非排水条件としていることが多い.
一方,本研究で対象としている不飽和砂質地盤は,地下水位面より浅部に存在する飽和 度の比較的小さい状態(概ね飽和度75%程度以下)を対象としており,繰返しせん断荷重 が作用した際には地盤中の間隙水が移動するものと仮定した排水条件下での挙動に着目す る.
(2) 排水条件下での動的挙動
排水条件で繰返しせん断試験を実施した数少ない研究事例として,Stewart et al (2004) 38) によるものが挙げられる.Stewart et al (2004) 38) では,粒径分布や粒子形状を段階的に変 化させた 14種類の異なるきれいな砂,8種類のシルト質砂と1種類の可塑性粘土を対象と し,排水条件下における繰返し単純せん断試験(せん断ひずみ振幅一定)を行っている(図 2-27~図 2-29).それらの試験結果から,繰返しせん断を受けた不飽和砂の鉛直ひずみ(体
積ひずみ)に関して,次のような知見が得られたとしている.
・ 均等係数(CU = D60/D10),中央粒径(D50)と粒子形状のような土粒子構成パラメータに 対する鉛直ひずみ(体積ひずみ)の変動において統計的に有意な傾向は認められなかっ た,としている.
・ 割線せん断弾性係数を増加させると鉛直ひずみ(体積ひずみ)が小さくなり,地震時の圧 縮性が低下する,としている.
・ きれいな砂では,地震時の圧縮性に対する飽和度(S)の影響は認められなかった.しかし,
シルト質砂では,飽和度 30%の場合,飽和度 5%および飽和度 60%の場合と比較して鉛 直ひずみ(体積ひずみ)が減少することが認められた.飽和度(S)の変動によって鉛直 ひずみ(体積ひずみ)が変化する事実は,土のマトリック・サクションに関連している,
と考察している.
・ シルト質砂では,相対圧縮度(RC)一定(およそ 90%)のもとでは,細粒分含有率(FC) が増加すると圧縮性が増加する(沈下しやすくなる)ことが認められた,としてい る.
・ 高い可塑性の砂質粘性土(PI=27)の鉛直ひずみ(体積ひずみ)はPI=15の土のおよそ1/2 であった,としている.
図 2-27 Stewart et al (2004) 38) による繰返し単純せん断試験の例
図 2-28 せん断ひずみ~体積ひずみ(εv,N=15)関係における相対密度(DR)の影響, Stewart et al (2004) 38)
図 2-29 せん断ひずみ~体積ひずみ(εv,N=15)関係における飽和度(S)の影響, Stewart et al (2004) 38)