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沈下量推定におけるモデル化誤差の検討

第5章 性能設計への応用

5.2 地震応答解析手法の相違が地震時地盤沈下量推定に及ぼす影響

5.2.3 沈下量推定におけるモデル化誤差の検討

モデル化誤差の特性は,以下に記すように,大竹・本城(2014) 8) によるbiasとCOVの2つ の指標を用いた表現方法に倣った.

ここで,biasとは計測値Aを計算値Bで除した値(A/B)の平均であり,計測値に対する計算 値の偏りを表している.1.0より大きい場合には計算値が計測値を過小に評価していること

を示し,1.0より小さい場合には計算値が計測値を過大に評価していることを示す.COV

変動係数であり,A/Bの標準偏差/biasで定義される.誤差の大きさをbiasで基準化して表し た指標である.

本検討において,計測値A は2007年新潟県中越沖地震後にKK発電所内の埋戻し不飽和 砂質地盤を対象とした実測沈下量であり,前出の表4-2に示した地盤構成を呈する地点にお ける実測沈下量30~40cm(前出:図3-1参照)の中央値35cmとした.計算値B は各地震応答 解析より算定したせん断応力時刻歴を用いて累積損傷度解析を実施して得られた推定沈下 量である.

推定沈下量およびモデル化誤差の特性を表5-2に示す.(a)等価線形解析を用いた推定沈 下量50.6cmは,実測値に対してやや過大評価となった.他の(b)~(d)逐次非線形FEM解析を 用いた推定沈下量26.7~30.3cmは,実測値を若干下回りやや過小評価となった.これら4種 の地震応答解析手法を用いて算定した不飽和砂質地盤の地震時推定沈下量におけるモデル 化誤差の特性を示す指標は,bias=1.09,COV=0.25である.

表5-2 推定沈下量およびモデル化誤差の特性

解析手法

実 測 沈下量 A (cm)

推 定 沈下量 B (cm)

A/B bias COV (a) 重複反射理論に基づく

等価線形解析

35

50.6 0.69

1.09 0.25 (b) 逐次非線形FEM解析

(R-O履歴モデル) 26.7 1.31 (c) 逐次非線形FEM解析

(H-D履歴モデル) 29.3 1.19 (d) 逐次非線形FEM解析

(多重せん断ばねモデル) 30.3 1.16

以上の結果は,わずか4種類の地震応答解析手法(応力ひずみモデル)の違いを反映した モデル化誤差の検討であり,ここでの数値に汎用的な意味はない.しかし,地盤の非線形 特性や地震動特性(継続時間やキラーパルスの存在)の影響を反映した変位量(沈下量)を推 定する問題であるにもかかわらず,ばらつきはそれほど大きくない(COV=0.25)と考えら れる.

今回の検討では,地盤の応力ひずみモデルを規定するパラメータや非線形解析における レイリー減衰の設定などに関し,解析手法およびモデル間の整合性を考慮している.しか し,同一問題に対して異なる組織,異なる解析担当者が対応した場合,モデルのパラメー タ設定などは独立した判断の下で行われることになり,推定結果のばらつきは本検討結果 より大きくなるものと考えられる.今後,データの拡充とともに更なる分析,検討が必要 である.

5.2.4 「鉄道標準」に基づいた沈下量推定結果

第2章「2.4.2 鉄道盛土の地震時沈下量算定方法」に記したように,「鉄道標準」9) に は,地震時における地盤の揺すり込み沈下量の算定法が示されている.地震応答解析を行 ってせん断ひずみを求め,地震前後における地盤の剛性の劣化度から変位(沈下)量に換算 する方法である.

ここでは,「鉄道標準」の方法にしたがって沈下量を算定し,前項の結果と比較する.「鉄 道標準」における沈下量算定式(2.1)を以下に再掲する.

(2.1) 再掲

ここに,Sg:残留沈下量,z:深度方向の距離,H:層厚,σv :鉛直応力,Eaft :地震後の 変形係数,Ebef :地震前の変形係数,である.

地震応答解析の対象としたのは,前項と同じ,柏崎刈羽発電所(KK発電所)1号機原子 炉建屋南東部における不飽和状態の埋戻し土層 25m とその下位の原子炉建屋設置岩盤で ある西山層泥岩から構成されている地盤をモデル化したものであり(前出:表 4-2,図 4-7 参照),入力地震動は同発電所において観測された13秒付近に大振幅のパルス(キラーパル ス)を有する地震動(前出:図 4-12参照)である.地震応答解析手法は重複反射理論に基づ く等価線形解析である.

「鉄道標準」の方法にしたがって 1mごとに算定した残留沈下量の深度分布を図 5-5 に 示す.これらを足し合わせた地表沈下量は17.7cmとなる.前項における4種類の地震応答 解析手法を用いた場合の推定沈下量(26.7~50.6cm)に比べてかなり小さい.また,実測 沈下量(35cm)の半分程度である.

「鉄道標準」の方法は,剛性低下(剛性劣化)を想定した沈下量推定方法であるのに対 し,本論で提案する沈下量推定手法で考慮している等体積ひずみ曲線(実験式)は,剛性硬 化をともなう体積ひずみの発生機構が前提となって設定されている.すなわち,異なるメ カニズムの沈下現象を対象としていることになり,推定結果が異なるのは必然ともいえよ う.

図 5-5 「鉄道標準」の方法にしたがって算定した残留沈下量の深度分布 (1mごとに算出した残留沈下量の総和=地表沈下量17.7cm)